法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」
スマートフォンで暮らしの快適化を目指す、ドコモ2016年夏モデル
(2016/5/18 14:40)
5月11日、NTTドコモの2016年夏モデルおよび新サービスの発表会が開催され、新機種や新サービスが発表された。NTTドコモは昨年、これから目指していくブランドビジョンとして、「いつか、あたりまえになることを。」を新スローガンに掲げ、新しい方向へ進む姿勢を見せていたが、今回はこれまでの集大成を受け、いよいよ本格的に新しい時代へと踏み出す内容だったと言えそうだ。発表会の詳細については、本誌の速報記事をご覧いただきたいが、ここでは今回の発表内容の捉え方と、それぞれの製品の印象などについて解説しよう。
使う、楽しむ『快適』を目指す
デジタルの世界ではハードウェアとソフトウェアが両輪となり、新しいものを生み出していく。パソコンではパソコン本体のスペックが向上し、OSが進化を遂げることで、誰もがパソコンを使う時代を迎えた。ケータイも「もしもし」「はいはい」の時代からiモードのようなモバイルインターネットが登場したことで、誰もがケータイを持つほどに広く普及した。
そして、スマートフォンも当初の数年はスペックばかりが注目されていたが、プラットフォームが安定し、さまざまなアプリやサービスが充実してきたことで、ハードウェアを含めたスマートフォンの利用環境が整い、国内市場においても半数を超えるところまで普及が進んだ。しかし、その一方で、昨年あたりから端末の販売がある程度落ち着き、今後、各携帯電話会社がどのように成長戦略を描いていくのかが注目されている。そんな中、2015年末には総務省の携帯電話料金に関するタスクフォースを受けた“指導”があり、今年に入ってからはさらに市場が停滞しそうな状況に陥りつつある。
こうした状況に対し、NTTドコモは単に携帯電話サービスを提供するだけでなく、かつてのiモードと同じように、「dTV」や「dマガジン」といったコンテンツサービスを提供したり、“「+d」の協創”を具現化した「すきじかん」といった他業種との連携による新サービスを提供したりするなど、スマートライフ領域を拡充するべく、積極的に取り組んできた。4月28日に発表された2015年度の決算でもスマートライフ領域が当初の計画を上回り、前年比で2倍以上の営業利益に達したことが明らかにされ、着実に拡大していることをうかがわせた。
こうして拡大してきたスマートフォンの利用環境をさらに高めるべく、今回の発表会では『快適』をキーワードに、新モデルや新サービス、新機能が発表された。
まず、2016年夏商戦へ向けた端末ラインナップとしては、スマートフォンが5機種、タブレットが1機種、モバイルWi-Fiルーターが1機種という構成になった。スマートフォンだけで比較すると、2015年夏モデルの8機種、2015年冬モデルの10機種に比べ、かなり機種数が絞り込まれたことになるが、開発するメーカーが少なくなってきたという事情がある一方、NTTドコモとして、端末の発売を『年間サイクル』にしたいという考えがあるという。
たとえば、最近はAQUOS ZETAなどの国内メーカーの新製品は、夏モデルと冬春モデルという形で、半年に一度のペースでフラッグシップに位置付けられる新機種が投入されてきたが、これを1年単位にしていきたいというわけだ。ただ、商戦期はボーナスをベースにした夏と冬の年2回があり、これにもっとも新規契約が多い春商戦があるため、実際には夏モデルと冬春モデルという形で新製品が発表され、シリーズによってはコンパクトモデルなどのバリエーションが追加されるようだ。
端末のライフサイクルが長くなることで、各メーカーへの影響を心配する声も聞かれたが、実際にはひとつのモデルを開発し、長く売ることになるため、メーカーとしても追加発注が増え、安定したビジネスが見込めるという解釈もできる。もっとも、デザインやスペックなどで失敗すると、次のモデルまでは厳しいビジネスを強いられるため、全体的に手堅いモデルが増えることになるかもしれない。同時に、キャリアもメーカーもひとつのモデルを継続的にアピールする必要があるため、プロモーションなどの戦略も大きく転換する必要に迫られそうだ。
「VoLTE(HD+)」
次に、新技術として、「VoLTE(HD+)」が導入される。NTTドコモでは2014年夏モデルから高音質通話が可能なVoLTE対応端末を提供してきたが、今回のVoLTE(HD+)は「EVS(Enhanced Voice Services)」と呼ばれる、標準化された新しいコーデックを採用することで、さらなる高音質通話を実現する。
具体的には、3Gで利用できる音声周波数が300Hz~3.4kHz、高音質を可能にしたVoLTEが50Hz~7kHzであるのに対し、VoLTE(HD+)は50Hz~14.4kHzにまで拡大する。VoLTEが登場したとき、AMラジオ相当の音質と表現されていたが、VoLTE(HD+)はFMラジオ相当の高音質を実現しており、特に高音域を中心に拡大する。筆者も実機で音を聴いてみたが、十分に既存のVoLTEとの違いがわかるレベルで、相手の声の細かい調子なども知ることができそうな印象だ。
ただし、対応機種は今回の主力モデルである「Galaxy S7 edge SC-02H」「AQUOS ZETA SH-04H」「Xperia X Performance SO-04H」の3機種に限られているため、実際に体感できる環境はまだ限られている。同時に、キャリア間のVoLTE通話もまだ実現されていないため、VoLTEのアドバンテージの浸透にはもう少し時間がかかりそうな印象だ。
「スグ電」
同じく通話機能で新たに搭載されるのが「スグ電」だ。さまざまなスマートフォンの操作の内、もっとも基本的なものでありながら、意外に手間がかかるのが音声通話を『快適』にするための機能になる。音声通話については、電話をかけたり、切ったり、受けたり、受けるのを控えたりと、いろいろな操作をする際、いずれも待機モードの解除、ディスプレイのロック解除、タッチパネルの操作を伴うため、数ステップが必要になる。これに加え、端末を片方の手で持つため、多くの場合は両手を使って操作することになる。片手で簡単に操作していた折りたたみデザインのフィーチャーフォンの時代から考えると、かなり手間が増えた印象だ。
そこで、「スグ電」ではディスプレイをタップせずに、応答、切断、発信、消音、拒否の操作をできるようにしている。具体的には、電話がかかってきても耳に当てるだけで応答でき、平らなところにスマートフォンの画面を下向きに置くと、電話を切ることができる。電話の発信も一度、端末を振って、耳に当てれば、あらかじめ登録した相手に電話をかけられ、左耳と右耳に1人ずつ登録しておくことができる。
いずれも本体のセンサーなどを活用することで実現した機能で、類似の機能を各端末メーカーが実現していたことがあったが、今回ドコモから発表されたスマートフォンの4機種に標準で搭載された。ちなみに、スグ電は常駐アプリではなく、プラットフォームに組み込まれた状態で出荷されるが、ユーザー自身でON/OFFを切り替えることができる。GalaxyやXperiaなど、各携帯電話会社が同じモデルを扱う中、NTTドコモがこうした独自の機能を搭載し、差別化に取り組んできたことは注目される。
「PREMIUM 4G」、最大375Mbpsを可能に
ネットワークの『快適』として、この夏モデルから対応が開始されるのが受信時最大370Mbps超を可能にする「PREMIUM 4G」だ。NTTドコモでは昨年からLTE-Advancedによる高速データ通信サービス「PREMIUM 4G」の提供を開始し、昨年10月の2015-2016冬春モデルでは3波を束ねる「3CA」による受信時最大300Mbpsに対応した2機種を発表していたが、今回発表された2016年夏モデルの内、モバイルWi-Fiルーターの「Wi-Fi STATION HW-01H」は、新たに割り当てられた3.5GHz帯の2波と既存の周波数を組み合わせ、受信時最大370Mbpsを実現する。
また、「Galaxy S7 edge SC-02H」と「XPERIA X Perfomance SO-04H」については、2GHz、1.7GHz、800MHzの3波を束ねて受信時最大375Mbpsを可能にする。受信時の最大速度が300Mbps超にもなってしまうと、なかなか体感速度だけではメリットがわかりにくい部分もあるが、空いている周波数帯域を効率良く使うことができるうえ、ネットワーク的にも早くデータ転送が終わり、他のユーザーに周波数帯域のリソースを割り当てられるなどのメリットがある。
「おすすめ使い方ヒント」
ユーザビリティの快適化を実現する「おすすめ使い方ヒント」という機能も提供される。これはユーザーの利用状況などから、その場面で必要なヒントをポップアップで表示するもので、今回発表されたスマートフォン5機種とタブレット1機種に搭載される。たとえば、AndroidプラットフォームのWi-Fiの画面を開いたとき、接続にはWi-FiのSSIDや暗号化キーなどが必要で、それらの情報が無線LANアクセスポイントのどこに記載されているのかといったヒントをイラスト付きで確認することができる。しかもこのヒントは一律で、どの環境でも表示するわけではなく、ユーザーの利用状況などに応じて表示されるという。スマートフォンが市場の半数近くまで普及した中、十分に使いこなせないという声が多い状況に応える機能として、注目される。
dリビングとiコンシェルを進化
前述のように、NTTドコモはここ数年、スマートフォンのラインナップ拡充や新料金プランの提供などに取り組む一方、スマートライフ領域と呼ぶコンテンツやサービスの提供にも力を入れてきた。なかでも「dTV」や「dマガジン」などは市場調査などでも高い人気が裏付けられており、定番的なサービスとして定着しつつある。
今回の発表ではこのスマートライフ領域をさらに拡充するものとして、「dリビング」と「iコンシェル」という2つのサービスについて、発表された。
まず、dリビングはこれまで「家のあんしんパートナー」という名称で提供されていたサービスをリニューアルしたもので、名称をdリビングに改め、提供することになる。新たに追加されるサービスとしてはキッズ・ベビーシッターや家事代行サービスで、ポータルサイトとアプリについても「ホームモニター」と「暮らしにお得」が提供される。さらに、月額料金を支払っている会員プランのほかに、新たにビジタープランを提供し、水道やカギ、ガラスなど、生活トラブルに対応するサポート、エアコンクリーニングや宅配クリーニングなどの家事サポートのサービスを提供する。
こうした生活サポートのサービスは国内でも数多く提供されており、インターネットで検索すれば、すぐに見つけることができるだろう。しかし、なかにはこうしたサービスをインターネットで検索することができなかったり、見つけたサービスが安心して利用できるかどうかが判断できないといったケースも考えられる。そんなとき、NTTドコモのサービスメニュー内で、こうしたサービスをすぐに利用できるというのは、ユーザー層によっては安心できるものと言えるだろう。サービスの提供開始は7月からになるが、その都度料金を支払うビジタープランも用意されており、月額料金を支払うユーザーではなくても、覚えておいて損はないサービスと言えそうだ。
iコンシェルについては、これまで一人ひとりに合った情報を提供するサービスとして展開されてきたが、7月から機能が拡充され、一人でも家族でも活用できるサービスへと進化する。
まず、ユーザビリティの面ではこれまでのように、iコンシェルのアプリを起動して、画面にタッチしながら操作する方法に加え、「会話モード!」と話しかけ、音声で情報を検索したり、機能を呼び出したりできるようにする。先般のマイクロソフトの開発者イベントでも対話で機能を使う『会話プラットフォーム』が取り上げられ、注目を集めたが、身近なiコンシェルでも対話形式でさまざまな機能が利用できるようになるわけだ。
また、家庭内でiコンシェルを活用してもらうために、タブレット用アプリ「iコンシェル ホーム」が提供される。音声でコントロールできる点は同じだが、家族でスケジュールやメモを共有したり、住んでいる地域の情報なども家族でいっしょに確認することができる。ちなみに、契約については主たる契約者のdアカウントを登録しておき、家族のdアカウントについては個別にiコンシェルの契約がなくても使うことができるという。
さらに、家庭に置いてあるタブレットのインカメラを利用し、簡易的な防犯として、留守宅の部屋を見守ったり、動体検知で帰宅した家族の情報を外出中の親が確認できるといった機能も提供される。タブレットの設置など、いくつか課題はあるが、月額100円で提供されるiコンシェルをフルに活用できる取り組みとして、期待される。ちなみに、今回のdリビングとiコンシェルの拡充に伴うキャンペーンが実施され、dリビングの会員プランを契約した人はダスキンの「エアコンクリーニング」が無料でプレゼントされ、ビジタープランを利用したユーザー向けにはdポイントが5000ポイント、プレゼントされる。
スマートフォン5機種を中心にラインナップ
さて、ここからは夏モデルとして発表されたスマートフォン5機種、タブレット1機種、モバイルWi-Fiルーター1機種について、個別に説明しよう。各機種の詳しい内容については本誌の速報記事を参照していただきたい。これから数カ月の間に発売される製品なので、発表会の会場で触れたこれらの評価は、最終的な製品と差異があるかもしれないことをお断りしておく。
Galaxy S7 edge SC-02H(サムスン電子)
今年2月のMWC 2016で発表されたフラッグシップの日本向けモデル。本体前面の両端をラウンドさせたエッジスクリーンに加え、背面も両端をラウンドさせ、持ちやすい形状に仕上げた両面エッジデザインが特徴。ディスプレイは約5.5インチのSuperAMOLEDディスプレイを搭載するが、両面エッジデザインにより、ボディ幅は約73mmに抑えられており、同じ約5.5インチディスプレイの他機種よりも4mm程度スリムに仕上げられている。ほぼ同じボディ幅で比較しても他機種は約5.2インチを搭載するに留まっており、Galaxy S7 edgeの大画面・スリムボディが際立つ。
カメラは一部の一眼レフのセンサーなどにも採用されているデュアルピクセルセンサーを採用し、F1.7の明るいレンズと組み合わせることとで、暗いところでも早くピントを合わせることが可能。特に、暗いところでの撮影については、人間の見た目よりも明るく撮影できるなど、かなり強化されている。
Galaxy SシリーズとしてはGALAXY S5以来となる防水にも対応する。CPUの熱対策のため、従来モデルよりも強化されたヒートパイプを内蔵する。スグ電話、VoLTE(HD+)対応、3CAによる受信時最大375Mbpsなど、今夏のモデルとしては最高スペックを実現しており、内容的にももっとも期待できる一台と言えそうだ。
AQUOS ZETA SH-04H(シャープ)
2260万画素のイメージセンサーを搭載し、AQUOS史上最高のカメラ性能を実現したモデル。従来の三辺狭額縁によるEDGESTデザインから一新し、メタルフレームに、周囲をラウンドさせた2.5Dガラスを組み合わせ、ボディも角をラウンドさせることで、全体的にやさしいイメージのデザインに仕上げられている。従来モデルでは背面に備えられていたスワイプ式指紋センサーが側面に移動し、タッチ式に変更された。着信や通知などを光って知らせるヒカリエモーションも従来モデル同様、搭載されているが、今回はLEDの位置が側面のスリット部分に移動している。
ディスプレイはAQUOS ZETA SH-01Hに引き続き、120Hz駆動が可能なハイスピードIGZOを搭載し、なめらかなスクロールを実現。Webページ閲覧時に便利な「スクロールオート」などの新機能も搭載する。カメラはAQUOS史上最高画質を謳う2260万画素のイメージセンサーを採用し、従来モデルに引き続き、リコーの画像認証プログラム「GR Certified」を取得。花火を美しく自動撮影できるモードも搭載する。
ユーザビリティについては本体を持つだけで画面がONになるグリップマジックを継承し、本体をひねる動作でひとつ前のアプリに戻る「ツイストマジック」を新たに搭載。話題のロボホンとも「友だち」関係にあるとされる「エモパー」は4.0にバージョンアップする。本体デザインが一新され、大きくイメージは変わったが、グリップマジックやエモパーをはじめ、人気の機能はしっかりと継承されており、安心して選べる一台に仕上げられている。
Xperia X Performance SO-04H(ソニーモバイル)
今年2月のMWC 2016で発表されたフラッグシップの日本向けモデル。これまでのXperia Zシリーズに代わり、新たなフラッグシップのXperia Xシリーズとしてスタートを切るモデルであり、その中でも最上位モデルに位置付けられる。従来のXperia Zシリーズがスクエアなデザインを特徴としていたのに対し、今回はディスプレイ面に2.5Dガラス、背面も側面にかけて、なめらかなラウンドフォルムで仕上げることで、手にフィットする形状を実現している。
背面もメタル素材で構成されているが、グローバルモデルが一枚のパネルを採用しているのに対し、今回のモデルは本体背面の下の部分が樹脂製パーツに変更されている。NTTドコモによれば、電波強度を確保するためとのことだが、KDDIなど国内の他事業者向けに供給されるXperia X Performanceも同じ仕上げになっており、国内版はデザインが統一されているようだ。
また、背面がメタル素材で構成されていることもあり、おサイフケータイ利用時にタッチするFeliCaのロゴマークはディスプレイ側の上部に移動しており、アンテナの位置を示すロゴは、刻印ではなくシールが貼られている。シールを剥がして利用すれば、気にならないが、シールで位置を示すという手法はやや不格好な印象は否めない。
カメラは2300万画素のイメージセンサーを採用し、カメラの起動から撮影までを0.6秒で済ませる高速動作を実現する。動く被写体を撮影するときに有効な先読みオートフォーカスなど、撮影機能も充実している。安定した動作を実現するため、自動的にストレージやメモリーを整理するスマートクリーナーも搭載するなど、従来モデルよりもユーザビリティに配慮しようという姿勢がうかがえる。
arrows SV F-03H(富士通)
十分なスペックと購入しやすい価格設定を狙ったミッドレンジモデル。2015-2016冬春モデルではarrows NX F-02Hやarrows Fit F-01Hがやや直線的なデザインを採用していたのに対し、ボディの角を丸め、背面のカメラもリングを目立たせないなど、全体的にクセのないデザインにまとめられている。ボディカラーはGold、Black、Whiteの3色がラインナップされるが、それぞれに質感の異なる背面パネルを備え、傷の付きにくいハードコート処理を施している。ボディ周囲はハードアルマイト処理を施したアルミフレームと組み合わせることで、質感のいいボディに仕上げている。防水防じんに加え、耐衝撃や耐塩水など、14項目のMIL規格に準拠し、長い期間、安心して使える耐久性を確保している。
全体的にスリムなボディにまとめられているが、ワンセグはアンテナを内蔵しており、アンテナを持ち歩かなくても視聴できる。カメラは1310万画素ながら、F2.0の明るいレンズにより、暗いシーンでの撮影にも強い。LTEネットワークの対応などは昨年モデルと同等のスペックだが、コストパフォーマンスと長く使うことを重視するユーザーには適した一台と言えそうだ。
Disney Mobile on docomo DM-02H(LGエレクトロニクス)
2015-2016冬春モデルで発売されたDisney Mobile on docomo DM-01Hに続く、Disney Mobileの新モデル。今回のモデルはディズニーランドのエレクトリカルパレードをテーマにデザインされており、背面にミッキーマウスとミニーマウスが描かれ、着信時にはハートのイルミネーションが浮かび上がるという仕掛けが用意されている。
本体前面のディスプレイ右下にはスワロフスキー・クリスタルのストーンを使ったミッキーマウスのアイコンを備え、背面のカメラ周りもミッキーマウスのデザインで仕上げ、カメラ撮影時のボイスシャッターで「ミッキー!」という呼び声に反応するなど、随所にDisney Mobileならではの演出を楽しむことができる。
約5.2インチのフルHD液晶ディスプレイを搭載し、カメラに1610万画素イメージセンサー、CPUにSnapdragon 430 MSM8937オクタコアを搭載するなど、ハイエンドモデルに迫るスペックを実現している点も見逃せない。ディズニーの世界観を存分に楽しめる一台だ。
arrows Tab F-04H(富士通)
10.5インチのWQXGA対応有機ELディスプレイを搭載したタブレット。arrows Tabとしては2014年11月に発売されたarrows Tab F-04G以来、1年半ぶりの後継モデルになる。特徴的なのは「grip edge」と呼ばれる滑り止めで、本体を壁などに立てかけたとき、滑らないように、本体の下と左右の側面にエラストマー製ラバー状のグリップが備えられている。たとえば、バスルームやキッチンなど、タイルなどを使われている場所で、本体を立てかけておいても本体が倒れにくいといった使い方を想定している。
本体はスマートフォンのarrows NXにも搭載されている虹彩認証をタブレットとして初搭載しており、画面を見るだけでロック解除ができる。防水防じんに対応し、耐衝撃をはじめとしたMIL規格の14項目に準拠するタフネス性能を持ちながら、430g前後という軽量ボディを実現している。幅広い環境で活用することができる一台と言えるだろう。
Wi-Fi STATION HW-01H(Huawei)
NTTドコモが新たに割り当てられた3.5GHz帯のTD-LTE方式もサポートするモバイルWi-Fiルーター。3.5GHz帯の2波と1.7GHz帯の1波をキャリアアグリゲーションで束ね、受信時最大370Mbpsの高速通信を実現する。
3.5GHz帯は6月末から提供される予定で、当初は主要都市の主要駅周辺からエリアが展開される。本体はタッチパネル対応の2.4インチディスプレイを搭載し、本体のみで各機能を設定したり、確認することが可能。4750mAhの大容量バッテリーを搭載しており、スマートフォンやタブレットのモバイルバッテリーとして活用することもできる。3.5GHz帯の恩恵を受けることができる地域は、当面は限られているが、その地域で利用するユーザーにとっては、まだ3.5GHz帯の対応端末がほとんどないことを考慮すると、かなり大きなアドバンテージが期待できる一台と言えそうだ。
「いつか、あたりまえになることを。」へ向けて
2008年頃から進化と拡大を続けてきたスマートフォンを中心としたモバイルの市場は、ひとつの曲り角を迎えようとしている。スマートフォンの完成度が高められてきたことで、スペック至上主義的な指向が落ち着き、スマートフォンで何ができるか、何に使うかといったことがテーマになりつつある。そういった成熟期を迎えた時期だからこそ、ユーザーがいかに快適にスマートフォンを使えるか、モバイルインターネットを活用できるかが重要なカギを握ってくる。
今回のNTTドコモの発表内容は、そんな市場動向を反映した内容だったと言えるだろう。基本となる音声通話の音質にはじまり、電話を簡単かつ快適に使えるようにする「スグ電」、快適なネット環境を実現する「PREMIUM 4G」と、さまざまな面でユーザーがスマートフォンを快適に利用できる環境を整えようとしている。
端末ラインナップについては、機種数が絞り込まれ、年間サイクルで展開することが明らかになるなど、ユーザーとしてはややバリエーションの減少が気になるところだが、冒頭でも触れたように、裏を返せば、個々の機種がしっかりと使い込まれていくことになるため、キャリアとしてもメーカーとしてもこれまでのような派手な売り方だけでは通用しなくなってくる。
サービス面については、ユーザーによって、興味の有無や必要性がかなり分かれてくるかもしれないが、それがある日、自分にとって、有用になったり、フィットしてくることも十分に考えられる。たとえば、dリビングも生活環境の変化に伴い、ハウスクリーニングや家のトラブルで必要になるかもしれないし、健康指向に目覚めて、SHOP JAPANが提供する「Hill's Epicure」にハマってしまうかもしれない。特に、最近のNTTドコモのサービスのラインナップを見てみると、ユーザー自身が今すぐ利用しなくてもいつか必要になったとき、欲しくなったとき、興味を持ったときに対応できるように、うまく人々の生活の周囲に関連するサービスを展開しているように見える。NTTドコモが新スローガンとして掲げる「いつか、あたりまえになることを。」は先端的なことを目指しているように受け取れるが、実は意外に我々の生活や仕事のさまざまなシーンにおいて、NTTドコモがサポートする体制を着実に整えていることを表わしているのかもしれない。
ただ、惜しむらくはこうして着実に拡大しつつあるサービスが、なかなかユーザーの目に届かず、今ひとつ活用されていないことも気になるところだ。dTVやdマガジンのように、ヒットしたサービスはともかく、それ以外のサービスでも、実際に使っている人からはたいへん評価が高いが、それ以外の人たちはまったくサービスの存在すら知らないといったケースもよく耳にする。有用なサービスをユーザーの周囲にうまくレイアウトすることも大事だが、今後はNTTドコモとして、サービスをもっと広く知ってもらい、使ってもらうための取り組みが重要になってくるだろう。
そして、最後に今回の発表会の2日後、すでに本誌でもお伝えしているように、NTTドコモは、今年6月に、代表取締役社長を加藤薰氏から吉澤和弘氏に交代することを発表した。NTTドコモの社長は4年ごとに交代する慣例があり、これに従う形での交代ということになるが、加藤社長の4年間には「iPhoneの販売開始」「新料金プランの導入」「ドコモ光の開始」という3つの大きな変革を実現した。この他にも、前述のスマートライフ領域のコンテンツサービスをはじめ、dカード、dポイントなどもスタートさせている。これを受ける形で、次期社長となる予定の吉澤氏がどのようにNTTドコモをハンドリングしていくのかがユーザーとしても気になるところだ。今後の発表にも注目していきたい。
今回発表された端末はGalaxy S7 edge SC-02Hを皮切りに販売が開始され、その他のモデルも順次、店頭やドコモスマートフォンラウンジなどにデモ機が展示される予定だ。本誌では今後、各機種の開発者インタビューやレビュー記事が掲載される予定なので、こちらも参照いただきつつ、自分にとって、もっとも快適な一台を見つけていただきたい。