法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

新料金プランとVoLTEで「最高のコミュニケーション」を目指す、ドコモ 2014年夏モデル

 5月14日、NTTドコモは2014年夏商戦へ向けたラインアップを発表した。スマートフォン6機種、タブレット2機種、らくらくシリーズ1機種、フィーチャーフォン2機種を発表し、6月下旬からLTEネットワーク上で音声通話を可能にする「VoLTE」サービスの提供を開始することが明らかにされた。

 NTTドコモは4月に新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」を発表しており、料金、サービス、端末のそれぞれの面を充実させることで、ユーザーに最高のコミュニケーション環境を提供することをアピールしている。発表会の詳細については、本誌の速報記事(※参考)をご覧いただきたいが、ここでは今回の発表内容の捉え方と各製品の印象などについて、解説しよう。

変わり続けるコミュニケーションのスタイル

 ここ数年、スマートフォンの普及が進んできたことで、市場環境やユーザーの利用スタイルが大きく変化したと言われている。しかし、通信業界において、こうした変化はくり返し起きてきたもので、ここ数年だけが特異だったわけではない。

 たとえば、私たちが利用する携帯電話は、元々、音声通話が中心に使われてきたが、1990年代後半に端末同士で文字メッセージをやり取りするサービスが登場し、非音声利用が大きく拡大した。NTTドコモのiモードがそれを加速させ、携帯電話向けのコンテンツサービスも広く普及した。音声通話についても一人ひとりが携帯電話を持つようになったことで、自宅やオフィスの固定電話より、携帯電話が利用されるようになり、携帯電話の通話料が高いことから、プライベートの連絡ではメールが多用されるようになった。データ通信も従量課金の時代は「パケ死」という言葉が聞かれたが、パケット定額サービスが登場したことで、多くの人が料金を気にすることなく、メールやコンテンツサービスを利用するようになった。LTEのサービスが開始され、料金プランが変わったことで、携帯電話の音声通話は利用が減り、逆にTwitterやFacebook、LINEといったSNSのメッセージサービスが利用されるようになり、そこで提供される音声通話サービスの利用も増えた。つまり、市場環境やユーザーの利用スタイルは、利用する機器が変わったことだけで変化するのではなく、その時々に提供されるサービスや料金プランなどによって、大きく変わってきたと言えるわけだ。

 そんなユーザーの利用スタイルの変化について、今、もっとも注目を集めているのが今回のNTTドコモの発表会で真っ先に触れられた新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」だ。新料金プランの詳しい内容については割愛するが、やはり、何と言ってもインパクトが大きいのは、国内通話が定額でかけ放題になるということだ。これまで、国内の各携帯電話事業者ではいくつか音声通話の定額サービスが提供されてきたが、いずれのプランも同一事業者内だったり、1~21時の時間帯に限られていたり、1回あたり10分に制限されるなど、条件付きの定額サービスだった。これに対し、今回のNTTドコモの「カケホーダイ」プランは、一部の例外を除き、ほぼ無条件で国内通話がかけ放題になる。相手はNTTドコモだろうが、他事業者の携帯電話だろうが、固定電話だろうが、基本的にはどれでも構わない。今のところ、連続通話時間の制限なども考えていないという。しかもNTTドコモが従来プランで提供していた「Xiカケ・ホーダイ」のような通話料割引サービスではなく、新料金プランの「カケホーダイ&パケあえる」を契約すれば、そのまま国内通話かけ放題が適用される。ちなみに、「カケホーダイ」プランで定額の対象外とされている例外は、SMS、「0570」「0180」などの特番、「104」の電話番号案内料、衛星電話・衛星船舶電話などだ。

 この「カケホーダイ」プランについて、「でも、最近、音声通話しないし……」といった反応が聞こえてきているが、前述のように、提供されるサービスや料金プランによって、ユーザーの利用スタイルは変化してくるものであり、今回の料金プランを機に音声通話の需要が増えてくることも十分に考えられる。ちなみに、筆者は各携帯電話事業者の回線を利用しているが、おそらく当面の音声通話は新料金プランに移行したNTTドコモの回線を使うだろうし、他事業者で契約している通話料割引サービスは基本的に解除する方向で考えている。ユーザーとしては国内通話がかけ放題の料金プランを提供することで、NTTドコモのネットワークに影響が出ないかが気になるところだが、元々、ここ数年で音声通話の利用は漸減傾向にあるうえ、激増するパケット通信量よりも少ない通信量であり、ユーザーが料金プランを変更しない限り、対象にはならないので、当面はあまり影響がないと見ている。

 「カケホーダイ」プランで音声通話サービスへの注目が集まる中、NTTドコモの音声通話サービスでもうひとつ気になるのが6月下旬からサービスが開始される「VoLTE」サービスだ。VoLTEは「Voice over LTE」の略で、LTEネットワークに音声通話の信号を載せて伝送するサービスだ。これまでの3G/LTE対応スマートフォンは、LTEがデータ通信専用サービスであるため、音声通話のときは3Gにネットワークを切り替え、音声通話の信号を流していたのに対し、VoLTEではデータ通信も音声通話も同じLTEネットワークでやり取りができるため、今までの3G/LTE対応スマートフォンの環境にはないさまざまなメリットが生まれてくる。

 たとえば、音質もそのひとつだ。従来の3Gネットワークでの通話は音声の帯域が300Hz~3.4kHzに制限されていたのに対し、VoLTEでは50Hz~7kHzに拡大するため、通話時の音質が格段に良くなる。発表会のタッチ&トライコーナーでも実際に通話を体験することができたが、これはほとんどの人が普通に通話をして、わかるくらいの明確な差がある。また、VoLTEでの音声通話は発着信が非常に早く、すぐに着信する。地図などのアプリを利用しながらの音声通話も、従来は、通話中に3Gネットワークへ切り替わってしまうため、データ通信が遅くなってしまうが、VoLTEではLTEネットワークのみで利用できるため、パフォーマンスが落ちることはない。ビデオコールについてはSkypeなど、他のメッセージサービスでも同様の機能を利用できるが、FOMAのテレビ電話などと違い、映像はQVGA(320×240ドット/20fps/H.264)になり、画質も比較的良好だ。

 料金については今のところ、音声通話は通常の音声通話と同じで、VoLTEを利用しても追加料金が発生することはない。前述の「カケホーダイ」プランを契約していれば、そのまま適用される。ビデオコールについてはデータ通信量で課金されるが、当面、2015年9月までは無料で利用することができる。対応機種はスマートフォン、「ARROWS NX F-05F」「AQUOS ZETA SH-04F」「Xperia Z2 SO-03F」「GALAXY S5 SC-04F」の4機種、タブレットが「AQUOS PAD SH-06F」「Xperia Z2 Tablet SO-05F」の2機種となっており、今後、発売されるスマートフォンは基本的にVoLTE対応が標準になっていくという。

 音質の良さが魅力的なVoLTEだが、このメリットを享受するにはいくつかの条件がある。ひとつは対応端末であること、もうひとつはLTEネットワークに接続されていることだ。そして、この2つの条件は双方とも満たす必要がある。つまり、発信者と着信者の両方がVoLTE対応端末を使い、なおかつ両者がLTEネットワークにつながっていなければ、VoLTEによる高音質の音声通話やビデオコールが利用できないわけだ。たとえば、VoLTEで音声通話を開始しても発信者か、着信者のいずれかが移動し、3Gのエリアに移動してしまうと、3Gの音声通話に切り替わってしまい、再びLTEのエリアに戻ってもVoLTEに復帰することはない。ただし、高速マルチアクセスについてはLTEのエリア内に居る限り、利用できるので、相手が3Gエリアに移動して、音声通話の品質が3G並みになってもこちらの音声はLTEネットワークを経由して、相手に送られる。

 国内初のサービスであるため、利用条件があることはしかたないが、実際の音声通話の音質は非常によく、その点は十分なアドバンテージがあると言えそうだ。とは言うものの、国内の電話サービスを振り返ってみると、音声通話の音質の良さが普及の後押しになった例はあまりなく、NTTドコモとして、VoLTEの訴求にはかなり力を入れていく必要がありそうだ。また、当初はVoLTE対応端末を購入しても相手がいないため、高音質通話などが体験できないが、できれば、発表会のプレゼンテーションで使われていた「リカちゃん電話」のようなものでも構わないので、対応端末を購入したユーザーが高音質通話などと体験できるサービスを提供して欲しいところだ。

14日の発表会では、「もしもし、わたしリカよ。わたしの声、綺麗に聞こえるかしら」というセリフが会場に流れた

スマートフォン6機種、タブレット2機種などをラインアップ

 さて、ここからは今回発表されたスマートフォン6機種とタブレット2機種などについて、それぞれの印象を踏まえながら説明しよう。ただし、いずれも開発中の製品を使用した範囲の印象であり、最終的な製品とは差があるかもしれないことをお断りしておく。また、各製品の詳しい内容については、本誌の速報レポートを合わせて、ご覧いただきたい。

 まず、ラインアップ全体についてだが、NTTドコモは昨年10月の段階で、「NTTドコモ2013年冬~2014年春モデル」と題し、全18機種を発表している(※参考)。その数から考えれば、今回は機種数が少ないが、『ツートップ』が話題になった2013年夏モデルがスマートフォン9機種をはじめとした11機種だったことを考えてもモデル数は減ったことになる。メーカー別ではシャープがディズニー・モバイルやフィーチャーフォンを含む4機種でもっとも多く、これにXperiaシリーズを展開するソニーモバイルがタブレットを含む3機種、富士通がらくらくスマートフォンとフィーチャーフォンを含む3機種で続く。海外勢はLGエレクトロニクスがグローバル向けフラッグシップモデル発表のタイミングが良くなかったのか、今回のラインアップには含まれておらず、スマートフォンはサムスン電子のみが供給し、ファーウェイはアクセサリー扱いの「TV BOX」を供給する構成になった。

 また、端末のバリエーションについては、スマートフォンが6機種、タブレットが2機種、らくらくシリーズが1機種、フィーチャーフォンが2機種となっている。スマートフォンやタブレットの機種数は順当なところだろうが、昨年10月の発表に続き、フィーチャーフォンがさらに2機種、追加されたというのも興味深いところだ。NTTドコモのユーザーにはフィーチャーフォンに根強い支持があり、それを反映したものと言えそうだ。もっとも前回発表されたモデルがNECカシオとパナソニックモバイル、今回がシャープと富士通という構成になっていることを考えると、フィーチャーフォンを手がけられる主要4社が冬春と夏モデルでうまくばらけて、バランスを取ったという見方もできる。

 主力であるスマートフォンの仕様については、前述のように、6機種中4機種がVoLTEサービス対応で、6月下旬のサービス開始時期にソフトウェアバージョンアップにより、利用できる予定だ。電池については容量だけでなく、クアルコムの「Quick Charge 2.0」の技術を採用した「急速充電2」に対応し、スマートフォン4機種とタブレット2機種が対応する(※参考)。スマートフォンのバッテリーは大容量化が進み、短時間での効率良い充電が期待されているが、さらに筐体の大きいタブレットは4000mAh以上のバッテリーを搭載しているため、スマートフォン以上に充電時間の短縮が重要だ。

 また、昨年発売されたGALAXY Note3の「緊急時長持ちモード」が好評を得たことを受け、今回は他機種にも非常時に長時間の利用を可能にする「非常用節電機能」が搭載される。東日本大震災のような災害時に、設定を切り替えることで最小限の電力消費に抑え、電池残量約15%から約3日間の待受を可能にする。災害というと、東日本大震災のような大規模災害ばかりを想像してしまうが、台風や集中豪雨、土砂崩れなどで避難することもあるだろうし、登山などで天候不順で下山できないといったことも起こり得る。そんなときでもこの非常用節電機能を利用すれば、少しでも長く待ち受け状態を継続できる。こうした機能はNTTドコモに限らず、他事業者の端末でも積極的に採用して欲しいところだ。

 スマートフォンのスペックについては、エントリー向けに位置付けられるXperia A2 SO-04Fを除いた5機種がほぼ横並びに近い状況だ。ディスプレイサイズではAQUOS ZETA SH-04Fがもっとも大きく、CPUはGALAXY S5 SC-04FのMSM8974AC/2.5GHzがもっとも高クロックで、ROM/RAMではXperia Z2 SO-03Fのみが3GBのRAMを搭載する。日本仕様を含めた『全部入り』と呼べるのは、ARROWS NX F-05FとAQUOS ZETA SH-04Fの2機種だが、他機種が対応していないのは赤外線通信など、利用頻度がさほど高くない機能に限られているため、実質的な機能差はほとんどないという見方もできる。

GALAXY S5 SC-04F(サムスン電子)

 今年2月のMWC 2014で発表されたグローバル向けフラッグシップモデル。基本仕様はグローバル向けモデルと同じだが、ワンセグやおサイフケータイなどの日本仕様をサポートする。サムスンはグローバル向けモデルで「GALAXY Active」という防水モデルを販売しているが、フラッグシップモデルのGALAXY Sシリーズで初めて防水防塵に対応する。日本向けモデルはグローバル向けモデルをベースに、ワンセグやおサイフケータイなどの日本仕様を盛り込んでいるが、防水に関連するところでは本体側面に小さな接点を備えることで、付属の卓上ホルダーに置いて充電することが可能だ。卓上ホルダーはアタッチメントを取りはずすことで、オプションのS Viewカバーを装着した状態でも置くことができる仕様になっている。ハードウェアの仕様は先に発表され、同時に発売されたau向けと変わらず、1600万画素CMOSセンサーによるカメラは一眼レフにも採用される位相差方式によるオートフォーカスを採用し、0.3秒の高速オートフォーカス、リアルタイムHDRなどの機能を搭載する。LTEとWi-Fiで同時にダウンロードするハイブリッドダウンロードは、dビデオのコンテンツをダウンロードするときにも役立つ。背面はグローバル向けモデル同様、ドットをあしらったパネルを装備しており、指紋などが目立ちにくい仕上がりだ。ボディカラーはshimmery WHITE、charcoal BLACKのほかに、日本向けオリジナルとして、NTTドコモ向けにはsweet PINKが供給される。グローバル向けフラッグシップモデルと同じ仕様やデザインを継承しつつ、日本向け独自仕様で日本のニーズにもしっかりと応えた魅力的なモデルと言えるだろう。

Xperia Z2 SO-03F(ソニーモバイル)

 今年2月のMWC 2014で発表されたグローバル向けフラッグシップモデルに、日本仕様を盛り込んだモデル。au向けのXperia ZL2 SOL25がディフュージョンモデルであるのに対し、NTTドコモ向けのXperia Z2 SO-04Fはグローバル向けモデルの仕様をほぼそのまま受け継いでおり、デザインや外観もロゴ表記などを除けば、基本的には共通仕様で仕上げられている。ボディはXperia Z/Z1の流れをくむオムニバランスデザインを採用しており、背面もガラス仕上げの美しいデザインとなっている。同じデザインを継承することで、安定した定番的な仕上がりが魅力だが、カラーバリエーションなども含め、従来モデルとの明確な差異が少なく見えてしまう部分が気になる。仕様面では1/2.3型の裏面照射積層型CMOSイメージセンサーによる2070万画素カメラを搭載し、4K動画やスローモーション動画などが楽しめる。端末のディスプレイはフルHD対応のため、撮影した4K動画をフルに楽しむには4K対応テレビが必要だが、現時点で4K対応テレビはまだ普及しておらず、メリットを享受できるユーザーはかなり限られる。むしろ、このXperia Z2 SO-03Fで注目すべきは、Walkmanなどにも採用されているデジタルノイズキャンセリング機能だろう。専用イヤホンが必要になるが、周囲の音と逆位相の音を使うことでノイズを消し、周囲の雑音を最大98%までカットできるという。音楽を存分に楽しみたいユーザーには魅力的な機能のひとつだ。

AQUOS ZETA SH-04F(シャープ)

 他事業者向けなどで採用されてきた三辺狭額縁によるEDGESTデザインを採用したフラッグシップモデルだ。今回発表されたNTTドコモのスマートフォンでは最大となる5.4インチのIGZO搭載液晶を採用し、同じく最大となる3300mAhの大容量バッテリーを内蔵しながら、ボディ幅で74mm、厚さも9.3mmという持ちやすいサイズにまとめている。従来のシャープ製スマートフォンはどちらかと言えば、背面をラウンドさせたデザインだったが、今回のモデルは断面が六角形になるような「ヘキサグリップシェイプ」を採用し、全体的に直線的なデザインで仕上げられている。従来のAQUOS PHONE SH-01Fで大変好評を得た本体側面に内蔵されたグリップセンサーによる「グリップマジック」も継承され、本体を手に持つと画面が自動的にONになり、机などに置くと、自動的にOFFにできる。今回はグリップセンサーによる機能もさらに進化し、着信時に連絡先の登録名を表示せず、手に持つと表示するといった動作が可能。シャープ独自のホームアプリ「Feel UX」は従来の「3ラインホーム」からデスクトップとアプリ画面の2枚構成に変更され、全体的な操作感も見直されている。機能面で意外に面白いのが全天球撮影で、画面の指示に従って、周囲の写真を撮れば、ストリートビューのような360度パノラマ写真を生成することができる。IGZO搭載液晶とエコ技による省電力性能も優れ、実使用時間は今回発表されたスマートフォンでは最長となる101.7時間をたたき出す。総合力No.1の一台と言えそうだ。

Disney Mobile on docomo SH-05F(シャープ)

 昨年10月に発表されたAQUOS PHONE ZETA SH-01Fをベースにしたディズニー・モバイル端末。ハードウェアの仕様は同じだが、背面のプリントやスピーカー部の処理、ボディ周囲のメタルフレームなど、ディズニーの世界を活かした独自デザインが採用されている。コンテンツとしては、ディズニーの「魔法の瞬間」を描いた6つの物語をモチーフにしており、それぞれの物語をホーム画面のテーマとして設定することができる。シャープ製端末でおなじみののぞき見防止機能「ベールビュー」のグラフィックもディズニー独自のものが設定される。少し変わった機能としては、同梱される「マジックミラースタンド」に端末を置くと、ミッキーマウスが鏡から飛び出すようなアニメーションが再生される。スペック的にも申し分なく、ディズニーの世界を堪能したいユーザーにおすすめの一台だ。

ARROWS NX F-05F(富士通)

 昨年の夏モデルから安定路線に生まれ変わった富士通のARROWS NXの最新モデル。今回のNTTドコモの発表会に先駆けて、ジャストシステムと共同で発表会が行なわれたが、同社と共同で開発した日本語入力システム「SuperATOK ULTIAS」を搭載する。Android向けに供給されている「ATOK」をベースに、タッチパネルの動作を含めたチューニングを加えることで、スマートフォン史上最高の日本語入力環境を実現している。利用するアプリと連動し、地名や人名が優先して推測変換の候補に表示されたり、話し言葉優先で表示される。入力する言葉の間違いも自動的に修正した変換候補が表示され、ら抜き言葉なども修正候補が表示される。パソコン版でもおなじみの「ATOKキーワードExpress」もサポートしており、比較的新しい単語が表示されるのも便利だ。ディスプレイは従来モデルよりも新しいWhiteMagic液晶パネルを採用し、直射日光下でも見やすい1000カンデラを実現する。ボディはARROWS NX F-01Fのデザインを継承しながら、側面にカーボンファイバーをあしらったデザインを施し、ラウンドした背面はキズの付きにくいハイパーダイヤモンドタフコートで仕上げている。メールがspモードメールからドコモメールに移行したことに伴い、Fシリーズのケータイで高い人気を得ていたプライバシーモードもほぼ完全に再現されるようになり、背面の指紋認証センサーとも相まって、セキュリティ面でも安心感の高い端末に仕上げられている。正しい言葉をきちんと使いたいユーザーにおすすめしたい実力派の一台と言えそうだ。

Xperia A2 SO-04F(ソニーモバイル)

 今回発表された夏モデルのうち、もっともコンパクトなボディにまとめられたエントリー向けのモデルだ。昨年の夏モデルでツートップを務めた「Xperia A SO-04E」の後継に位置付けられ、冬モデルでおすすめ3機種の一角を担った「Xperia Z1 f SO-02F」をベースに作られている。ハードウェアの仕様はXperia Z1 f SO-02Fとほぼ同等で、カメラ機能のチューニングを除けば、ほとんど変わらない。ボディ幅65mmのコンパクトサイズで、手の大きくない女性などにも持ちやすいサイズだ。デザインはXperia Z1 f SO-02Fを継承しているが、背面に樹脂が採用されていることもあり、従来モデルのようなメタルっぽさがなくなっている。ディスプレイは夏モデルのスマートフォンで唯一のHD(720×1280ドット)対応で、バッテリー容量もボディサイズが小さいこともあり、2300mAhと控えめだ。カメラは夏モデルのXperia Z2と同等の1/2.3型の裏面照射積層型CMOSイメージセンサーによる2070万画素カメラを搭載し、F値2.0のGレンズ、画像処理エンジンのBIONZ for mobileを組み合わせる。カメラアプリも充実し、本体側面にはシャッターボタンも備える。スマートフォンが全体的に大型化する中、コンパクト路線のモデルは大事であることは間違いないが、ディスプレイの解像度など、スペックを抑えたところが目立ってしまうのが気になってしまう。コンパクトなモデルが欲しいというユーザーなら、チェックしておきたいモデルと言えそうだ。

らくらくスマートフォン3 F-06F(富士通)

 シニア&シルバー世代向けスマートフォンとして、日本だけでなく、海外でも着実に評価を高めているらくらくスマートフォンの三代目モデル。今回はらくらくホン ベーシックを手がけた原研哉氏がデザインを担当し、本体色と画面色を統一することで、今までのらくらくスマートフォンとはかなり違った印象に仕上げている。ホームアプリは基本的にタイル表示で構成されているが、アイコンがシンプルになり、ボディカラーと統一されたことで、他のスマートフォンでも見ない独特の一体感を演出している。ホームボタンのみの1ボタン構成や卓上ホルダによる充電、Google Play非対応などの仕様は継承されており、シニア&シルバー世代にも安心して持ってもらうことができる。従来モデルではバージョンアップで対応したLINEについては、まだ対応が決まっていない。日本語入力はARROWS NX F-04Fと同じ「Super ATOK ULTIAS」が採用されており、正しい言葉で日本語を快適に入力できる。シニア&シルバー世代におすすめであることは変わりないが、これまでデザイン的に抵抗感のあったユーザーにも興味を持ってもらえる一台と言えそうだ。

AQUOS PAD SH-06F(シャープ)

 三辺狭額縁によるEDGESTデザインを活かしたタブレット。昨年の夏モデルとして発売されたAQUOS PAD SH-08Eの後継に位置付けられ、7インチのLTE対応タブレットとしては世界最軽量になる。同じくEDGESTデザインを採用したタブレットとして、auからAQUOS PAD SHT22が発売されたが、NTTドコモ向けのAQUOS PAD SH-06Fはまったく別のデザインを採用しており、AQUOS ZETA SH-04Fと同じ「ヘキサグリップシェイプ」で仕上げられている。ボディを手にして感じるのは約233gという軽さで、厚さも8.4mmと薄いため、非常に持ちやすい。ディスプレイは省電力性能に優れたIGZO搭載液晶を採用し、解像度はフルHDを超えるWUXGA(1920×1200ドット)になる。本体にはレシーバーも搭載されており、本体のみでの音声通話の機能もサポートする。VoLTEサービスにも対応しており、高音質な音声通話が利用できる。タブレットでの通話というと、イヤホンマイクやBluetoothヘッドセットでの利用が一般的だが、この軽さとサイズ感なら、片手で持って、耳に当てても使うことができそうだ。フルセグチューナーも搭載しており、幅広いシチュエーションで活用できる魅力的なタブレットと言えそうだ。

Xperia Z2 Tablet SO-05F(ソニーモバイル)

 今年2月のMWC 2014で発表されたソニーモバイルのグローバル市場向けタブレットをベースに開発された日本向けモデルだ。10インチクラスの防水対応タブレットとして、世界最薄最軽量を実現し、わずか6.4mmの薄さに仕上げられている日本仕様としては、防水防塵に加え、フルセグ/ワンセグチューナーも搭載し、録画にも対応する。Xperia Z2 SO-03Fに搭載されたデジタルノイズキャンセリング機能にも対応しており、周囲の雑音をカットした状態で、音楽や映像コンテンツを楽しむことができる。ちなみに、本体のスピーカーは前面側に備えられているため、イヤホンなどを利用しない環境でも迫力あるサウンドを楽しめる。周辺機器として、BluetoothキーボードやBluetoothリモコンも販売され、Bluetoothリモコンはハンドセットとしても活用できるAndroidプラットフォームの印刷環境も整ってきており、今まで以上にパソコン的な活用もしやすくなってきている。同型の製品はau向けにも供給されており、基本仕様やデザインも共通となっている。au向けモデルとの違いは音声通話対応で、VoLTEにも対応するため、高音質の音声通話だけでなく、10.1インチの大画面を活かしたビデオコールも楽しめる。

最高のコミュニケーション環境をどう広めていくか

 冒頭でも触れたように、コミュニケーションのスタイルは、携帯電話事業者が提供するサービス、料金体系、サービスプロバイダが提供するサービスなど、さまざまな要因によって、変化し続けている。この十数年を見るだけでもメールが普及し、音声通話が減少し、メッセージングサービスが使われるようになりと、かなり変化してきた。もちろん、成功した事例ばかりではなく、FOMAのテレビ電話やプッシュトークのように、携帯電話事業者が積極的にアピールしながら、うまく普及しなかったサービスもいくつか存在する。

 ここ数年、NTTドコモはMNPの転出が増え、契約数の減少が伝えられてきた。カンフル剤として期待されたiPhoneの導入も一定の成果は収めたものの、反転攻勢と言えるほどの状況には至っていない。しかし、今回の夏モデルをはじめ、4月に発表された新料金プラン、6月下旬にスタートするVoLTEサービスなど、次々とNTTドコモの強みを活かした手を打ち出し、一気に攻勢を強めつつある。なかでも国内通話がかけ放題となる新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」は、予約段階で100万契約を突破するなど、好調なすべり出しを見せており、今後のNTTドコモの攻勢を一段と加速させそうな気配だ。

 昨年、NTTドコモは「ツートップ」「おすすめ3機種」という販売施策を打ち出し、夏商戦及び年末商戦を戦ったが、業界内でさまざまな歪みを起こしてしまったこともあり、今回はそういった機種を絞った戦略をやめ、各機種を総じて、買いやすい価格帯で提供しようとしている。なかでもこれまでMNP偏重と言われてきた施策を一転し、「ファミリー特割」や「プレミア10年特割」といった施策で、買い換えユーザーや長期ユーザーを手厚くサポートしようという構えだ。MNPで転出したユーザーがNTTドコモに戻ってもらうための「おかえりボーナス」も提供される。

 今回の発表会のプレゼンテーションの最後に、NTTドコモの加藤薰代表取締役社長は「最高のコミュニケーションを皆さまへ」と書かれた掛軸を掲げていた。一見、地味に見えるアピールだが、4月に発表された新料金プランや今回発表されたVoLTEサービスの存在を考えれば、この文言にはNTTドコモとしての意気込みがしっかりと込められていると言えそうだ。携帯電話事業者の競争はスマートフォン時代になってからも激しさを増しているが、やはり、携帯電話事業者に求められる基本中の基本は音声通話であり、それを軸にしたコミュニケーションにある。この部分がしっかりしていなければ、どんなにコンテンツや周辺サービスが魅力的でもユーザーは快適に利用することができない。加藤社長が掲げた掛軸には、そんな思いが少なからず込められているように感じられた。今後はNTTドコモが掲げる「最高のコミュニケーション」の環境をどうやってユーザーに周知し、広めていくかがカギになってくる。いいモノ、いいサービスを作ったから売れる、支持されるわけではないところが市場の難しさだ。

 今回発表されたモデルはすでに一部のモデルが発売され、その他のモデルも各地のドコモスマートフォンラウンジなどで、順次、展示が開始される。本誌でも今後、各機種の開発者インタビューやレビュー記事を掲載する予定なので、こちらもご覧いただき、店頭などでデモ機も試しつつ、「最高のコミュニケーション」が体験できる一台をぜひ見つけていただきたい。