法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

MVNOが相次いで採用するコンパクトボディの「LG G2 mini」

 今年に入り、MVNO各社が音声通話対応のサービスを開始し、SIMロックフリーのスマートフォンとセットにしたプランを提供しはじめているが、なかでも採用例が多いのがLGエレクトロニクスの「G2 mini LG-D620J」だ。8月から販売が開始されているが、実機を試用することができたので、その印象をレポートしよう。

MVNO各社が相次いで採用する期待のモデル

 昨年来、市場で少しずつ認知されつつあるMVNO各社によるサービスだが、今年に入り、音声通話対応のサービスが増え、各携帯電話会社からのMNP転入も受け付けられるなど、今まで以上に幅広いユーザー層に浸透する環境が整いはじめている。

 しかし、その一方で、端末についてはあまり選択肢が増えておらず、新たに登場する製品も日本のユーザーにあまりのなじみのないブランドが多く、はじめてのユーザーにはやや手を出しにくい印象もあった。

LGエレクトロニクス「G2 mini LG-D620J」:129.6×66.0×9.8mm、約121g

 そんな中、MVNO各社が今夏、新プランや新サービス開始のアナウンスに際し、相次いで採用を発表したのがLGエレクトロニクス製「G2 mini LG-D620J」だ。LGエレクトロニクスについては改めて説明するまでもないだろうが、日本市場向けにはNTTドコモ向けにケータイ時代から端末を供給してきた実績があり、最近ではauと共同でグローバル向けモデルをベースにした独自モデル「isai」シリーズを開発するなど、グローバル向けモデルを日本市場に持ち込むだけでなく、日本市場に合ったモデルを開発する実力も持ち合わせたメーカーだ。SIMロックフリー端末など、新しい市場展開にも積極的で、昨年夏には同社がGoogleと共に開発した「Nexus 4」をSIMロックフリーで投入し、その後、今年春には同製品がイオンの「イオンスマホ」に採用されたのも記憶に新しいところだ。

グローバル向け「G2 mini」をベースに、日本の技術適合認定を受けたSIMロックフリーモデルとして販売される。技術適合認定の表記は電池パックを外したところにある

 今回取り上げる「G2 mini LG-D620J」は、今年2月、Mobile World Congress 2014の開催に合わせ、グローバル市場向けに発表したモデルをベースに、日本の技術適合認定などを取得したSIMロックフリー端末として供給される。ちなみに、同社の「G」シリーズは昨年8月にフラッグシップモデルとして発表され、NTTドコモ向けには「G2 L-01F」が販売され、今年5月にはグローバル市場向けに「G3」が発表されている。

 G2 miniの採用するMVNOとしては、IIJmio、hi-ho、BIGLOBE、日本通信、Amazon、OCNがすでに発表済みで、今後もさらに増えそうな勢いだ。過去にタブレットで、ASUS/GoogleのNexus 7をMVNO各社が採用したことがあったが、これほどまでに多くのMVNO各社が同じモデルを一斉に採用したというのは、各社の期待の大きさを感じさせる。

コンパクトなボディに4.7インチIPS液晶を搭載

 前述のように、LGエレクトロニクスとしては、G2、G3と続くラインアップをフラッグシップモデルに位置付けており、今回のG2 miniはフラッグシップのコンセプトを継承したコンパクトボディのミッドレンジモデルに位置付けられる。

背面は指紋などがつきにくいメッシュ仕上げを採用。独特のざらつき感で、すべりにくい印象
G2で初めて採用された背面キーを継承。片手で持ったとき、ちょうど人さし指が当たる位置にレイアウトされている

 ボディはG2などに比べると、ひと回り小さく、あまり手の大きくないユーザーでもすんなり持てる印象だ。デザインコンセプトはG2の流れを受け継いでおり、背面にはG2でもおなじみの音量キーと電源キーを組み合わせた背面キーを備える。背面キーは端末を手にしたときにちょうど人さし指が当たる位置にあり、操作がしやすい。端末を机などに置いた状態では、画面をONに切り替えにくいが、後述する「Knock Code」「Knock On」を利用すれば、簡単に切り替えることが可能だ。背面パネルは着脱が可能なタイプで、独特のメッシュ仕上げにより、指紋などが目立たず、すべりにくい印象だ。側面にはキーがなく、上面に3.5φのステレオイヤホン端子と赤外線センサー(リモコン用)、下面にmicroUSB外部接続端子を備える。

SIMカードはmicroSIMカードを採用。背面パネルを外し、側面から装着する構造。ディスプレイ側にSIMカード、背面側にmicroSDカードを挿す
背面カバーは取りはずすことができ、バッテリーは着脱式を採用。2370mAhの容量を持つ

 SIMカードはmicroSIMカードを採用し、背面パネルを開けると、microSDメモリーカードと一体構造のスロットが見える。電池パックは着脱式を採用し、2370mAhの容量を持つ。ただ、国内のオンラインショップなどではまだ電池パックのみの販売が開始されていないため、現時点では交換しながら利用することができない。ちなみに、電池パックはグローバル向けモデルが2440mAhと、わずかに容量が違うため、そのまま利用できない可能性もある。

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 ディスプレイは960×540ドット表示が可能な4.7インチIPS液晶を採用する。ミッドレンジのモデルとしては標準的なサイズだが、解像度は国内市場の現状を考えると、ちょっと物足りない印象は否めない。国内市場はグローバル市場よりもハイエンド指向が強く、すでにHD対応を超え、ほとんどの最新モデルがフルHD対応になってしまっているためだが、仮にここでディスプレイのスペックを一段上げてしまうと、グローバル市場向けとは別モデルになってしまうため、コストアップにつながり、現在のようなMVNO各社での採用には至らなかったかもしれない。こうしたスペックのさじ加減は、今後、国内のオープンマーケット向けに供給するメーカーとして、悩ましいところだろう。

ミッドレンジモデルとして必要十分なスペック

 チップセットはSnapdragon 400/1.2GHzを搭載し、メモリーはRAM 1GB/ROM 8GBで構成される。国内向けモデルのチップセットの型番は明示されていないが、グローバル向けではLTE対応モデルでSnapdragon 400 MSM8926/1.2GHzが採用されており、おそらく共通仕様と推察される。国内の各携帯電話事業者が販売するハイエンドモデルよりもかなり抑えたスペックだが、実利用のパフォーマンスはそれほど悪くない印象で、タッチパネルのレスポンスなども標準レベルで申し分ない。各携帯電話事業者向けモデルのような数多くのプリインストールアプリが搭載されていないことも十分なパフォーマンスを確保している要因のひとつと言えそうだ。

今回試用した製品では出荷時に5つのサービスのAPNが設定済みだった

 通信機能については、国内向けの仕様表によれば、3Gが2GHz帯と800MHz帯、LTEが2GHz帯と1.7GHz帯と800MHz帯となっている。NTTドコモの回線を借り受けるIIJmio、日本通信、BIGLOBEなどで利用する限りは、この表記で十分かもしれないが、SIMロックフリー端末ということを考慮すると、LTEネットワークはBandで表記するなど、もう少し詳しい情報が欲しいところだ。ちなみに、今回試用したモデルでは出荷時に「b-mobile」(日本通信)、「hi-ho」、「IIJmio」、「@nifty」、「So-net」のAPNが設定されおり、試用に使ったIIJmioのSIMカードは何も追加設定することなく、自動的にネットワークに接続された。

 Wi-Fiについても詳しい仕様が国内向けモデルのWebページ上で表記されていないが、グローバル向けモデルの仕様表ではIEEE 802.11b/g/n対応と表記され、2.4GHzのみに対応するようだ。5GHz帯が利用できないのは残念だが、この価格帯の商品としては十分な仕様だろう。Wi-Fiの簡易設定についてはWPSプッシュボタン/WPS PINに対応し、Wi-Fi Direct、Wi-Fi/Bluetoothテザリングにも対応する。細かいところでは電波が弱いときやインターネット接続不良時のWi-Fi自動切断、Wi-Fi ON時のバッテリー使用率の最適化などの機能も備える。

 また、NFCにも対応しており、背面下半分くらいの位置にアンテナが内蔵されている。LGエレクトロニクスのポケットフォトとのペアリングをはじめ、他の機器との連携などに利用することが可能だ。

 Androidプラットフォームについては、出荷時にAndroid 4.4.2が搭載されており、LGエレクトロニクスから提供されるアプリやソフトウェアと共に、端末内の更新センターでバージョンアップされる仕様だ。各携帯電話事業者の独自アプリなどが搭載されていない分、グローバル向けモデルなどに近いタイミングでアップデートが実施されることが期待される。

カメラの設定画面は大きく表示され、わかりやすい。声でシャッターを切るボイスシャッターにも対応する
多彩な撮影モードに対応。ダイナミックトーンやビューティーショットなどの実用性の高い機能も備える

 カメラはアウト側が800万画素、イン側が130万画素という構成で、パノラマ、連続撮影といった一般的な撮影モードに加え、他のLGエレクトロニクス製スマートフォンでも採用されている撮影機能もサポートする。複数箇所にピントが合う「マルチポイントAF」、シャッター押下前の連続写真を5枚撮影する「タイムキャッチショット」、明暗差のあるところで多重露光により美しく写真を撮る「ダイナミックトーン(HDR)」、肌を明るく、なめらかに撮影する「ビューティーショット」などは、普段の撮影でも役に立つ実用的な機能と言えそうだ。ビデオ(動画)の撮影にも対応する。

 撮影した写真は[ギャラリー]アプリで表示したり、編集することができる。編集機能は回転やリサイズ、切り抜き、エフェクトなど、ひと通りの機能を備えている。

Knock CodeやQメモなどの便利機能も充実

 現在、国内の各携帯電話事業者が販売するモデルは、各社のサービスに対応したアプリなどが数多く搭載されて、内容的にもかなり充実しているが、G2 miniはMVNO向けに供給されることもあり、全体的にアプリやソフトウェアの構成はシンプルな印象だ。

ホームアプリの[ホーム]はAndroid標準に近いユーザーインターフェイス
アプリケーション一覧画面は横方向にページ切り替え。アプリに続いて、ウィジェットも選択できる
「easyホーム」は一画面に必要な機能をまとめたホームアプリ。初心者にもわかりやすい

 ホームアプリはLGエレクトロニクス製端末で標準の「ホーム」、au向けの「G Flex LGL23」などにも採用された「easyホーム」がプリセットされている。LGエレクトロニクス標準のホームは、Android標準のホームに近い印象で、ホーム画面、アプリケーション一覧画面共に、左右にフリックして切り替える構成だ。easyホームはひと通りの機能がひとつの画面にまとまられているため、初心者にもわかりやすい。

前面のフロントタッチボタンはボタンの追加や入れ替えなど、カスタマイズが可能

 Androidプラットフォームでは必ずレイアウトされるホームキーなどの「フロントタッチボタン」は、左から順に「戻る」「ホーム」「メニュー」が出荷時設定だが、設定画面の[表示]-[フロントタッチボタン]-[ボタンの配列]で、「通知パネルの表示」「Qメモ」「最近使ったアプリ」を追加したり、入れ替えることができる。フロントタッチボタンには最大5つまでのボタンを配置することができる。

通知エリアはクイック設定パネル、Qスライドアプリの一覧が選択できる

 画面最上段から引き出す通知パネルは、Wi-FiのON/OFFなどをすぐに切り替えられる「クイック設定パネル」、アプリを小さなウィンドウで表示する「Qスライドアプリ」の一覧、画面の明るさと着信音の音量調整バーなどが表示される。通話機能のうち、非通知や指定番号を設定する「着信拒否」、着信時に相手の電話番号などを非表示にできる「プライバシーキーパー」などが利用できる。契約する通信事業者が提供していれば、留守番電話も利用可能だ。

 その他の実用的な機能としては、auの最新モデル「isai FL LGL24」にも採用され、高い評価を得ている「Knock On」「Knock Code」がおすすめだ。Knock Onは画面OFFの状態で、ディスプレイをトントンと2回、軽く叩くと、画面がONになり、もう一度、トントンと叩くと画面がOFFに切り替わる機能で、従来からLGエレクトロニクス製スマートフォンに搭載されてきた機能だ。Androidスマートフォンではセキュリティロックのために、パターンやPINコード(暗証番号)などが利用されているが、パターンは軌跡が見えたり、画面の汚れなどで、内容が類推されてしまうリスクがある。

 Knock CodeはこのKnock Onをセキュリティロックに応用したもので、ユーザーがあらかじめ設定した順に画面をノックすると、セキュリティロックが解除することができる。たとえば、画面を四分割したエリアの内、左上、右上、右下、左下の順にタップして、Knock Codeを登録すると、次回以降は画面がOFFの状態でも同じ順に画面をタップすると、ロックが解除される。しかもタップする場所は画面のどこでも構わないため、周囲からも盗み見されにくく、特定の場所だけが汚れて、内容が類推されてしまう心配も少ない。万が一、Knock Codeを忘れたときのために、バックアップPINを登録する仕様なので、安心して使うことができる。

画面を2回、叩くと、画面のON/OFFが切り替えられる「Knock On」
「Knock Code」はあらかじめ設定したパターンで画面を叩くと、画面がONに切り替わり、ロックも解除される
設定時はこの4つのエリアを叩くが、利用時は画面内のどこでも同じパターンで叩けば、利用できる
万が一、Knock Codeを忘れたときのために、バックアップPINも設定する
子どもなどに一時的に渡すとき、特定の機能のみを利用できるようにする「ゲストモード」も搭載

 また、LGエレクトロニクス製スマートフォン独自の機能として、これまでのモデルにも搭載されてきた「Qメモ」「Qスライド」なども便利な機能だ。Qメモはキャプチャした画像に手書きでメモを書き加えたり、通話中に画面に手書きでメモを取ることができる。Qスライドはブラウザや動画、メッセージなどのアプリをウィンドウ表示できるもので、複数のアプリを同時に使いたいときなどに役に立つ。

普及価格帯のミッドレンジモデルとしての完成度は高い

 冒頭でも説明したように、今年はMVNO各社が音声通話対応サービスを提供したり、各携帯電話事業者からのMNP転入が受け付けられるなど、MVNO各社のサービスが注目を集めている。しかし、その一方で、SIMロックフリーのスマートフォンはあまりバリエーションが拡がらないうえ、MVNO各社としてもなかなか積極的に推せるモデルが少ない状況が続いていた。そんな中、相次いで各社が採用を発表したLGエレクトロニクス製スマートフォン「G2 mini LG-D620J」は、同社のフラッグシップモデルである「G2」「G3」の流れを継承しながら、コンパクトなボディに実用的な機能を充実させたモデルに仕上げられている。各携帯電話事業者のハイエンドモデルと比較すると、ディスプレイやチップセット、メモリー容量などのスペックが数ランク落ちるが、カメラの撮影機能やKnock Codeなど、実用系の機能はほぼ同等のものが搭載されており、まったく遜色はない。アプリについても各携帯電話事業者の数多くのプリインストールがない分、むしろストレスなく使うことができる。ワンセグなどの日本仕様こそないものの、着信拒否など、日本のエントリーユーザーが必要とする機能もサポートしており、全体的に完成度の高いモデルと言えそうだ。

 気になるサポート面については、まだLGエレクトロニクスから提供される情報量が足りない感は否めないが、国内市場でブランドネームをほとんど知られていない『格安スマホ』とされる製品に比べると、NTTドコモやauといった各携帯電話事業者に端末を供給してきた実績があり、ユーザーとしては安心して、利用できるだろう。ディスプレイや光学ドライブなどのPC関連製品、テレビなどのAudio&Visual製品などが家電量販店で扱われてきており、コンシューマー製品のサポートや営業体制が整っていることも隠れたアドバンテージとして評価できそうだ。

 ちなみに、価格については、MVNO各社が月額料金とセットで販売しているため、端末のみの実質価格が見えにくいが、オンラインショップなどの価格を見る限り、およそ3万円台半ばで販売されている。これを高いと見るか、安いと見るかは、判断の分かれるところだが、各携帯電話事業者の端末のみの販売価格(月額割引などを考慮しない価格)がハイエンドモデルで約7万円以上という状況を考えれば、はじめてのユーザーでも手を出しやすい価格帯と言えそうだ。

法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 8.1」「できるポケット docomo AQUOS PHONE ZETA SH-06E スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」「できるポケット+ GALAXY Note 3 SC-01F」「できるポケット docomo iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット au iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット+ G2 L-01F」(インプレスジャパン)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。