法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「Galaxy Z Fold7」、驚くべき薄さと軽量化で進化した新世代のフォルダブルスマートフォン

 7月に米国・ニューヨークで開催された「Galaxy Unpacked」で発表されたフォルダブルスマートフォン「Galaxy Z Fold7」が8月1日に国内でも発売された。

 オープン市場向けのSIMフリー版、NTTドコモ、auに加え、ソフトバンクでも取り扱われる。実機を試用することができたので、レポートをお送りしよう。

フォルダブルへの興味と躊躇

 新しいスマートフォンのスタイルとして、徐々にモデル数が増えてきたフォルダブルスマートフォン。折り曲げられるという有機ELの特性を活かし、大画面ディスプレイを搭載しながら、コンパクトに折りたたんで持ち歩くことができるというメリットを持つ。

 スタイルとしては、かつてのケータイのように縦方向に折りたためる縦開きモデル、文庫本などのように横方向に開く横開きのモデルの2つのタイプが展開されている。

 こうしたフォルダブルスマートフォンの市場をリードしてきたのが「Galaxy」シリーズを展開するサムスンだ。2019年2月に初代モデル「Galaxy Fold」を発表し、国内では同年10月からauが「Galaxy Fold SCV44」として発売。

 その後、2020年に「Galaxy Z Fold2」、2021年に「Galaxy Z Fold3」というように、毎年、新モデルを投入してきた。2020年には縦開きフォルダブルの「Galaxy Z Flip」も発表され、国内向けは同じくauが独占販売という形で取り扱った。

 2021年の「Galaxy Z Fold3」では、はじめて防水とおサイフケータイに対応し、auに加え、NTTドコモでも取り扱いが開始。

 2023年の「Galaxy Z Fold5」では、Samsung.comオンラインストア限定で、SIMフリー版の販売も開始され、着実に国内市場にフォルダブルスマートフォンの浸透を図ってきた。

 横開きフォルダブルの「Galaxy Z Fold」シリーズは、7インチオーバーの大画面メインディスプレイを搭載しながら、折りたためば、一般的なスマートフォンと変わらないボディ幅で持ち歩くことができるというメリットを持ち、「Galaxy」シリーズのハイスペックと多彩な機能とも相まって、これまでも多くのユーザーが「持ってみたい」、「使ってみたい」という興味を示していた。

 ただ、本体を閉じたときの厚みや重量が課題で、価格面の負担も大きいため、二の足を踏むユーザーが多いのも実状だ。

 今回発売されたシリーズ7代目の「Galaxy Z Fold7」は、横開きのフォルダブルスマートフォンの課題であったボディの厚さと重量を大幅に改善し、従来モデルとはは一線を画した仕上がりとなっている。

 これまでの「Galaxy Z Fold」シリーズもボディのスリム化やヒンジ部の改良、閉じたときの筐体の隙間をほぼなくすなど、ハードウェア面でも着実に進化を遂げてきたが、今回の「Galaxy Z Fold7」はこれまでのモデルチェンジに比べ、格段にジャンプアップの幅が大きく、まさに新世代のフォルダブルスマートフォンに仕上げられている印象だ。

 本製品発表後、ひと足早くデモ機を借りて、いろいろな人に見せたが、ほぼすべての人の第一声が「うすっ!」という驚きの声を上げ、スマートフォンなどにあまり詳しくない人たちから見てもかなりインパクトのある仕上がりであることが認識できた。

 サムスンがこうしたジャンプアップを図ってきた背景には、やはり、ライバル製品と激しい開発競争がくり広げられていることが挙げられる。

 現在、国内で販売される横開きのフォルダブルスマートフォンは、サムスンの「Galaxy Z Fold」シリーズ、Googleの「Pixel Fold」のみだが、グローバル市場ではOPPOやファーウェイ、シャオミ、OnePlusなど、さまざまなメーカーが製品を投入しており、ボディのスリム化の競争も激しい。

 サムスンとしてはそういったライバル製品との開発競争に勝ち抜くため、大幅にジャンプアップした製品を投入してきたという見方もできる。

 今回の「Galaxy Z Fold7」はSamsung.comオンライストアでのSIMフリー版、NTTドコモとauに加え、ソフトバンクでも販売される。ソフトバンクは今年2月から10年ぶりに「Galaxy」の取り扱いを再開しており、「Galaxy S25」シリーズや「Galaxy A25 5G」に続いての取り扱いで、縦開きの「Galaxy Z Flip7」も販売される。

サムスン/NTTドコモ/au/ソフトバンク「Galaxy Z Fold7」、開いた状態:約158.4mm(高さ)×143.2mm(幅)×4.2mm(厚さ)、閉じた状態:約158.4mm(高さ)×72.8mm(幅)×8.9mm(厚さ)、約215g(重さ)、ブルー シャドウ(写真)、シルバー シャドウ、ジェットブラック、ミント(Samsung.com限定)をラインアップ

 各社の販売価格は別表の通りだが、もっとも安いモデルでも26万円を超える価格設定となっている。NTTドコモ、au、ソフトバンクでの購入であれば、端末購入サポートプログラムが利用できるため、少し負担を軽減できるが、NTTドコモとauは2年後、ソフトバンクは1年後に返却することが条件となる。

もっとも安いモデルでも26万円を超えるが、フォルダブルスマートフォンの仕様を考えると、しかたないところか……。NTTドコモ、au、ソフトバンクでは端末購入サポートプログラムを利用することで、分割払いの金額を月々7000円~1万円程度に抑えることができる

 価格的にはSamsung.comオンラインストアのSIMフリー版がもっとも安いが、少しでも費用を抑えたいのであれば、楽天グループが展開する「楽天リーベイツ」経由でSamsung.comオンラインストアを利用したり(支払いは楽天カード以外のクレジットカードでも可)、8月1日に楽天市場にオープンした「Samsung公式ストア 楽天市場店」を利用し、楽天ポイントの還元を受ける方法などが考えられる。

 ちなみに、筆者は前者の「楽天リーベイツ」経由でSIMフリー版を購入し、約1万ポイント近い還元を受けることができた。

閉じて8.9mm、開いて4.2mmの超スリムボディ

 ボディから順にチェックしてみよう。今回の「Galaxy Z Fold7」の最大のトピックと言えるのが従来モデルから大幅に進化したボディだろう。

 本体の厚みは閉じた状態で8.9mm、開いた状態で4.2mmという超スリムボディに仕上げられている。閉じた状態の厚さは、初代モデルの「Galaxy Z Fold」の17.1mmの約半分、昨年の「Galaxy Z Fold6」の12.1mmから3.2mm減のスリム化を実現している。

本体を閉じた状態。下側に位置する筐体の右側面に電源ボタンなどを内蔵する
背面はプリントなどもほとんどなく、非常にすっきりとしたデザイン
本体下部にはUSB Type-C外部接続端子を備える

 一般的なスレート形のスマートフォンとの比較では、今年2月発売の「Galaxy S25 Ultra」の8.2mm、「iPhone 16 Pro Max」の8.3mmに比べ、1mm以下の差しかない。端末を開いた状態も驚異的な4.2mmという仕上がりで、「Galaxy Tab S10 Ultra」の5.4mm、13インチiPad Pro(M4)の5.1mmよりも薄い。

「Galaxy Z Fold7」(左)と「Galaxy S25 Ultra」(右)の前面。ボディの幅は「Galaxy S25 Ultra」が4.8mm広い程度の違い
「Galaxy Z Fold7」(左)と「Galaxy S25 Ultra」(右)の底面。ボディの厚さは「Galaxy Z Fold7」がわずか0.7mm、厚いだけで、手にした印象はほとんど変わらない
本来を開いた状態の背面。通常、この状態ではサブディスプレイ(カバーディスプレイ)は点灯しない
本体をパソコンのように折り曲げ、動画を再生するときにも便利。手前側のエリアにはコントロールバーが表示される

 本体の重さも前モデル「Galaxy Z Fold6」から24gの軽量化を実現し、215gに抑えられており、「Galaxy S25 Ultra」の218gよりも3g軽いというから驚きだ。

 こうした軽量スリム化を実現できた理由のひとつが新開発のヒンジ「Armor FlexHinge」になる。従来モデルではヒンジの回転部と本体の支持部が一体化された構造だったのに対し、「Galaxy Z Fold7」ではそれぞれを分離したことで、ヒンジがより薄くなり、内部の空間部分も広く確保できるため、ディスプレイの折れ曲がる部分の水滴型の形状もカーブが緩やかになり、折り目を改善できている。

閉じた状態の左側面はヒンジ部分。従来モデルはヒンジ部分のみで約9.4mmの厚さだったが、今回は約6.4mm。カメラ部の突起は約4.6mm
Galaxy Unpackedで展示されていた「Galaxy Z Fold7」と「Galaxy Z Fold6」のヒンジパーツの比較。ヒンジを構成するパーツの改良により、大幅はスリム化を実現
「Galaxy Z Fold7」(左)と「Galaxy Z Fold6」(右)の本体を開いた状態のメインディスプレイ。縦方向にサイズが大きくなり、約11%の大画面化
「Galaxy Z Fold7」(左)と「Galaxy Z Fold6」(右)の本体を閉じた状態のサブディスプレイ(カバーディスプレイ)。表示領域の幅は5mm近く拡大。一般的なスマートフォンと変わらないサイズ感
「Galaxy Z Fold7」(左)と「Galaxy Z Fold6」(右)の本体を閉じた状態の側面。従来モデルに比べ、約26%の薄型化。電源キーの位置が少し移動し。ボディの薄型化に伴い、ボタンそのもののサイズも少し薄くなった

 耐環境性能については、従来に引き続き、IPX8防水、IP4X防塵に対応する。スリム化に伴い、強度が気になるが、ディスプレイ枠にはグレード4チタン格子を採用するなど、より堅牢な構造を実現している。

 軽量スリム化はユーザーとしてもうれしいが、悩みどころはケースの装着だ。「Galaxy Z Fold」シリーズに限らず、フォルダブルスマートフォンは落下などでヒンジ部分などが破損する不安があり、多くのユーザーはケースを装着して持ち歩いている。

 かく言う筆者も「Galaxy Z Fold4」以降、サムスン純正や市販品のケースを装着して、持ち歩いてきた。今回も試用中のデモ機には、前面と背面を保護する市販品のケースを装着したが、ケースを装着すると、どうしても厚みが増してしまい、「Galaxy Z Fold7」本来の薄さが牛名分けてしまうのが悩みどころだ。

 そういった面を考慮してか、今回のサムスン純正ケースは、いずれも筐体の背面側のみをカバーする片面ケースが販売されている。市販品のケースには前面と背面を保護するケースのほかに、背面とヒンジ部分のみを保護するカバーなども販売されている。

 薄さを活かすなら、ケースなしで持ち歩くのも手だが、ケースは本体の保護以外にもメリットもある。実は、「Galaxy Z Fold7」はスリム化を実現した影響で、右側面部分(両方の筐体が合わさる長辺部分)の隙間が狭くなり、やや端末が開きにくくなった印象がある。

 ところが、背面側だけでもケースを装着すると、左筐体と右筐体の合わせ部分に段差ができ、指先が引っかかりやすくなり、端末を開きやすくなる。

 このあたりはユーザーによって、好みがあるので、一概にどちらがいいとは言い切れないが、できれば、実物を見ながら、どんなケースを装着するか、あるいはケース無しで使うのかを検討することをおすすめしたい。

スリム化でも同容量の4400mAhバッテリーを搭載

 「Galaxy Z Fold7」は従来モデルに比べ、大幅なスリム化を実現したが、従来モデルと同じ4400mAhのバッテリーを内蔵しており、カタログスペック上の動画再生時間は従来の最大23時間から最大24時間に伸びている。今回の試用でも従来モデルとほぼ変わらない感覚で利用できている。

 充電は本体下部のUSB Type-C外部接続端子を利用した有線充電が最大25W、本体背面のQi規格準拠のワイヤレス充電が最大15Wに対応するほか、本体のバッテリーを使い、Galaxy Budsなどのワイヤレスイヤホンを充電する最大4.5Wのワイヤレスバッテリー共有にも対応する。

 バッテリー保護のための機能も従来モデルに引き続き、用意されており、バッテリーを100%まで充電すると、95%に低下するまで充電を停止できる。設定を「最大」に変更すれば、充電停止のしきい値を80%/85%/90%/95%に設定し、バッテリーを保護して、より長持ちさせることも可能だ。

 生体認証は本体右側面の電源ボタンに内蔵した指紋センサーによる指紋認証、サブディスプレイ(カバーディスプレイ)とメインディスプレイに内蔵されたカメラによる顔認証に対応する。

本体を閉じた状態の右側面。上側にはシーソー式の音量キー、隣に指紋センサー内蔵の電源キーを備える

 指紋認証も顔認証も画面ロックやアプリ起動などに利用できるが、dアカウント連携など、一部のサービスは指紋認証のみの対応になる。顔認証はマスクを装着しての利用に対応していない。

 電源ボタン内蔵の指紋センサーは従来モデルに引き続いての採用だが、「Galaxy Z Fold7」では本体のスリム化に伴い、電源ボタンの形状が変更され、幅がわずかに細くなっている。

 そのため、指の太さや指紋によってはスムーズに認証できないケースもある。前述のケースも指紋認証の操作感に影響を与えるので、注意が必要だ。

メイン/サブ共にディスプレイを大型化

 「Galaxy Z Fold7」は軽量スリム化に伴い、ボディの形状が変更され、ディスプレイもメイン/サブ共に、対角サイズが大型化されている。

 本体を開いたときのメインディスプレイは、8インチのQXGA+(2184×1968ドット表示)対応のDynamic AMOLED 2X(有機EL)を採用する。従来モデルの7.6インチに比べ、0.4インチのサイズアップで、端末を開いたときの印象も少しワイドになった印象だ。

 コンテンツをより大きな画面で表示できるのはメリットだが、両手でボディを挟むように持ち、表示されたキーボードを親指でタイプするような使い方(かつてのHP 200LXやBlackBerryのような持ち方)を好むユーザーには、中央付近に指が届きにくく感じられるかもしれない。

 ディスプレイ中央部分の折り目については、前述の通り、新しいヒンジが採用されたことで、前機種よりも目立たなくなった。

本体を開いた状態の下部。左右の筐体は中央部分でぴったり合わさる。厚みはわずか4.6mmしかないが、十分な剛性感はある

 ただ、折り目については購入前のユーザーから気にする声が聞かれる一方、実際に使ってみると、普段は何らかのコンテンツを表示しているため、筆者を含め、周囲のGalaxy Z Foldユーザーは「それほど気にならない」という声が多い。

 表面に貼られているフィルム(ガラス)の耐久性も筆者は「Galaxy Z Fold4」のとき、購入から一年後、上下に少し浮きが見られ、Galaxy Harajukuで貼り替えたものの、この一年、利用してきた「Galaxy Z Fold6」は浮きも見られず、問題なく、利用できている。

 今回の「Galaxy Z Fold7」は前述のように、ヒンジ部分の構造が変わっているため、一年後、二年後にどのように変化するのかはわからないが、いざとなれば、Galaxy HarajukuやGalaxy Studio OSAKAなどで貼り替えサービス(基本的に無料)が利用できるので、それを頼ればいいだろう。もっとも関東や関西以外のユーザーがどうするのかは、今後の課題だが……。

 本体を閉じたときに利用するサブディスプレイ(カバーディスプレイ)は、6.5インチのフルHD+(2520×1080ドット表示)対応のDynamic AMOLED 2X(有機EL)を採用する。

 実は、今回の「Galaxy Z Fold7」の隠れた進化ポイントのひとつがサブディスプレイで、従来モデルは対角サイズが6.3インチで、解像度は横方向がフルHDに100ドットほど足らない2376×968ドット表示だったのに対し、「Galaxy Z Fold7」では対角サイズも0.2インチ大きくなり、解像度も横方向が1080ドット表示となっている。

 実際に表示するエリアも横方向で比較すると、従来モデルが約60mmだったのに対し、「Galaxy Z Fold7」は約65mmに拡がっている。

 これまでの「Galaxy Z Fold」シリーズは閉じた状態をスリムにするため、カバーディスプレイは一般的なスマートフォンに比べ、幅が狭く、縦長だったが、今回のサブディスプレイは縦横比も含め、一般的なスマートフォンと変わらないサイズ感に仕上げられているわけだ。

Sペン非対応の背景

 今回の「Galaxy Z Fold7」で、これまでのユーザーから賛否両論の意見が聞かれるのが「Sペン非対応」という措置だ。Sペンについては改めて説明するまでもないが、かつての「Galaxy Note」シリーズに採用され、現在は「Galaxy S25 Ultra」などに引き継がれている。

 実は、2019年3月に当時、サムスンのモバイル部門のトップだったDJ Koh氏がGalaxy Harajukuのオープンに合わせて来日し、日本の報道関係者の取材を受けた際、発表されたばかりの「Galaxy Z Fold」について触れ、「いつか大きい画面にペンで書けるようになると面白いよね」と話していたことを記憶している。

 その後、2021年発売の「Galaxy Z Fold3」でSペン対応が実現したわけだが、残念ながら、わずか約4年で非対応ということになってしまった。

 Sペン非対応の要因のひとつとしては、「Galaxy S25 Ultra」や「Galaxy Tab S」などと違い、「Galaxy Z Fold」には専用のSペンが必要であることが挙げられる。

 「Galaxy Z Fold」シリーズのメインディスプレイは、一般的なスマートフォンと違い、曲げられるしくみになっているため、独自のガラスを採用しており、Sペンもこれを傷めないようなものが必要になる。

 昨年の「Galaxy Z Fold6」ではアクセサリーとして販売された「Galaxy Z Fold6 S Pen Case」に付属のSペンしかなく、単品としてはSペンが販売されなかった。「Galaxy S」シリーズなどに比べ、販売数が限られている機種向けに、アクセサリーとして、専用のSペンを販売することは難しかったという判断だろう。

 また、「Galaxy S25 Ultra」や「Galaxy Z Fold6」などに採用されているSペンは、ペンタブレットなどでおなじみのワコムが特許を持つ電磁誘導(EMR)技術が採用されている。

 ペンに電源が不要で、電力がディスプレイのガラス面を通じて、本体側から供給されるというユニークな構造の技術で、優れた操作性や耐久性を実現できるが、この技術をスマートフォンに組み込むには、ディスプレイ側にも格子状のセンサー(コイル)を内蔵する必要がある。

 今回の「Galaxy Z Fold7」の4.2mmという超スリムボディの実現は、おそらくSペン対応をやめたことで、電磁誘導技術のためのセンサーがなくなったことも少なからず寄与していると推察される。

 文字やグラフィックを書くだけでなく、画面上に浮かせて操作するエアコマンドなど、他製品にない機能を提供してきたSペン非対応は残念な限りだが、これらの機能を求めるユーザーは「Galaxy S25 Ultra」や「Galaxy Tab S」を選ぶことになる。

Snapdragon 8 Elite for Galaxyを搭載

 チップセットは米Qualcomm製Snapdragon 8 Elite for Galaxyを採用する。Qualcomm製チップセットの最高峰に位置付けられるものだが、「Galaxy S25」シリーズに引き続き、Galaxy向けに厳選されたロットが採用されている。

 ゲームや動画再生、画像編集をはじめ、メインディスプレイでの複数のアプリの同時起動など、パフォーマンスについてはまったく申し分ない。熱については「Galaxy S25 Ultra」などと違い、チップセットや内部を冷却するベイパーチャンバーが内蔵されていないとのことだが、本体の構造が異なり、効率良く放熱ができているようで、今回、試用した範囲では、放熱などで困ることはなかった。

 もっとも今夏のように、外気温がかなり高くなるようなシーンでの利用は、「Galaxy Z Fold7」に限らず、十分注意する必要があるだろう。

 メモリーとストレージについては3種類のSKUが用意され、ストレージが256GBと512GBのモデルはメモリーが12GB、ストレージが1TBのモデルは16GBのメモリーがそれぞれ搭載される。

 メモリーについては「Galaxy Z Fold7」の特長を活かし、大画面ディスプレイで複数のアプリを同時に利用するときなどに効果があるが、それ以上にAIの処理により多くのメモリーを必要とするため、Galaxy AIの機能を幅広く活用したいユーザーは、16GBのメモリーを搭載した1TBモデルを検討する余地があるだろう。

 ストレージはアプリやデータの保存領域だが、Galaxy AIの通訳や翻訳では対応する言語ごとに「言語パック」をインストールする必要がある。この言語パックがひとつの言語あたり500MBとファイルサイズが大きいため、より多くの言語を利用したいユーザーは512GBモデルや1TBモデルを検討するのも手だ。

設定アプリ内に「Galaxy AI」をまとめたメニューも用意される。随所に「★」のアイコンが表示され、Galaxy AIの機能が利用できる

 ネットワークは国内の5G/4G、海外の5G NR/4G LTE(TDDE/FDD)/3G W-CDMA/2G GSMに対応する。5GについてはSub6に加え、ミリ波にも対応する。SIMカードはnanoSIM/eSIMのデュアルSIM対応で、eSIMはデュアルeSIMとしても利用できる。

2億画素イメージセンサーを搭載したカメラ

 カメラは背面にトリプルカメラ、サブディスプレイ(カバーディスプレイ)内のパンチホールにインカメラ、メインディスプレイ内のパンチホール内にもインカメラを内蔵する。

 まず、背面のトリプルカメラについては、上から順に1/2.5インチ1200万画素イメージセンサー/F2.2の超広角カメラ(12mm)、1/1.3インチ2億画素イメージセンサー/F1.8の広角カメラ(24mm)、1/3.9インチ1000万画素イメージセンサー/F2.4の望遠カメラ(67mm)で構成される。

背面にはトリプルカメラを搭載。中段の広角カメラは2億画素イメージセンサーを搭載
ポートレートで撮影。日陰ながら、顔や衣装も明るく撮影され、背景も自然にボケている。モデル:多胡うらら(Instagram:@urara.05、所属:ボンボンファミン・プロダクション

 「Galaxy Z Fold」シリーズはサムスンのラインアップにおいて、プレミアムラインに位置付けられ、価格的にももっとも高価な端末だが、フォルダブルという構造やコスト面での制約もあり、「Galaxy S」シリーズなどに比べ、カメラのスペックはやや抑えられていた。

 今回の「Galaxy Z Fold7」では、ついにメインカメラに「Galaxy S25 Ultra」と同等の2億画素イメージセンサーを採用。従来モデルに比較して、約4倍の解像度で、明るさも44%向上させている。

 複数の画素をまとめて、より多くの光を取り込むピクセルビニングも従来モデルの2×2(4画素を1画素として利用)から、4×4(16画素を1画素として利用)に向上したことで、暗いシーンにおいてもより多くの光を取り込み、解像感の高い写真や動画を撮ることができる。

ナイトモードで撮影。ショーウィンドウ内の商品もクリアに撮影されている
薄暗いバーで撮影。全体的に明るく撮影できている

 カメラ関連でもうひとつ大きな変更点は、メインディスプレイ内のインカメラだろう。「Galaxy Z Fold6」まではメインディスプレイのインカメラとして、ディスプレイの内側にカメラを内蔵した「UDC(Under Display Camera)」を採用していた。

 UDCはディスプレイに穴を開けず、ディスプレイの内側にカメラを内蔵する構造だったが、被写体からの光がディスプレイによって遮られるため、他製品のインカメラのような高画質化が望めなかった。

 特に、メインディスプレイのインカメラは、ビデオ会議などでも利用するため、室内での利用時にあまり明るく撮影できないことがマイナス点だった。そういった事情も踏まえて、今回の「Galaxy Z Fold7」では一般的なパンチホールのインカメラに変更したようだ。

インカメラで自撮り。画角も広く、背景を活かした撮影もできる

 ただ、UDCがこれで終了というわけではないようで、一部では2026年以降のGalaxyでUDCを採用するという噂も流れている。メインディスプレイのカメラがパンチホールになったことで、ビデオ会議などの画質は向上したが、やはり、映像コンテンツを表示してみると、一部に穴が空いているのはやや違和感が残る印象は否めない。

 撮影モードは標準で「ポートレート」、「写真」、「動画」、「その他」が並び、その他には「EXPERT RAW」、「プロ」、「食事」、「ナイト」、「ポートレート動画」なども選べる。ユーザーインターフェイスが変更され、カメラの各機能を画面中段のメニューから操作できるようになり、全体的に大画面を考慮した操作体系にまとめられている。

少し離れた位置からポートレートモードの1倍(23mm)で撮影
同じ位置から広角カメラの光学2倍(46mm)で撮影
同じ位置から望遠カメラ3倍(69mm)で撮影
同じ位置から望遠カメラ5倍(115mm)で撮影

 撮影した写真や動画は、Galaxyシリーズ独自の「ギャラリー」アプリで閲覧できる。Googleフォトと連携した「フォト」アプリもインストールされ、撮影した写真や動画をGoogleフォトに保存しておくこともできる。

「ギャラリー」アプリの編集で、背景のぼけ具合いを調整

 「ギャラリー」アプリは「Galaxy AI」を利用した編集機能や生成が充実しており、写真で「消しゴムサジェスト」ボタンをタップして、背景の不要な人物などをまとめて消去したり、動画で「オーディオ消しゴム」を利用することで、メインの音声以外のノイズを簡単に消去(抑制)できる。

「ギャラリー」アプリの編集で、「AI」アイコンをタップし、右上の「消去の候補」をタップすると、消去する候補がまとめて認識される
背景の人物を消去したら、画面下段の「生成」をタップ
消去された部分の足りない部分を生成し、映像が補完される
画面右側の植え込みや窓などが生成され、自然な形で仕上がった

 特に、画像編集については「Galaxy Z Fold7」の大画面ディスプレイを活かし、編集前と編集後の写真を並べて表示し、見比べながら作業を進められるのも便利だ。

「ギャラリー」アプリで写真を編集するとき、補正前と補正後を同時に表示し、中央の区切り線を左右に動かすことで、違いを確認できる 1

 ちなみに、画像編集で不要なものを消去する機能は、他のプラットフォームも含め、多くの機種が対応しはじめているが、製品によっては消去後の背景に不自然な残像が残ったり、自然な背景が生成されないなど、製品ごとに仕上がりに差が見られる。その点、Galaxy AIの画像編集は風景なども自然な仕上がり、AIの完成度に違いを見せる。

ガラス越しで街中を撮影すると、よくガラスが反射してしまうことがあるが、画面を上方向にスワイプし、表示された項目の候補から「反射を消去」をタップすると……
写真の内容を分析し、AIによる編集と生成が実行される
きれいにガラスの反射が消去され、クリアに仕上げられた

「One UI 8」で視認性やパーソナライズが向上

 プラットフォームはAndroid 15を採用し、サムスンのユーザーインターフェイス「One UI 8」がインストールされる。日本語入力は独自の「Samsungキーボード」を採用する。

 かつては各社が独自の日本語入力システムを搭載していたが、現在はほとんどがAndroid標準の「Gboard」になってしまい、残されるのは「Galaxy」シリーズの「Samsungキーボード」くらいとなってしまった。開発にはコストもかかるが、サムスンにはぜひ、独自のキーボードを今後も継続して、開発して欲しいところだ。

 OSのバージョンアップは最大7世代、セキュリティパッチは最大7年が保証されており、「Galaxy S」シリーズなどと同様に、長期間に渡り、安心して利用できる。

 本体の構造も長期間の利用に耐えられるように、世代を追うごとに改善が図られてきたものの、それでも一般的なスレート状のスマートフォンと違い、ヒンジという可動部分があるため、どうしても不安が残ってしまう人は少なくないだろう。

 こうした状況に対応するため、「Galaxy Z Fold7」では各社が提供する補償サポートの契約を積極的に検討したいところだ。

 NTTドコモ、au、ソフトバンクで購入した場合の補償サポートは、NTTドコモの「smartあんしん補償」が月額1720円、auの「故障紛失サポート ワイド with Cloud」とソフトバンクの「あんしん保証パックネクスト」はいずれも月額1980円で利用できる。

 サムスンが提供する「Galaxy Care」は月額払いが1280円から、2年一括払いが2万6580円からとなっているが、一般的な保険サービスをベースにしているため、販売価格によって、月額料金が高くなる。

 たとえば、256GBモデルは月額1280円だが、1TBモデルでは月額1580円となってしまう。各携帯電話会社の同様のサービスと違い、即日(地域限定)で交換用端末を提供するサービスなども提供されない。

 「One UI 8」については、今年2月発売の「Galaxy S25」シリーズに搭載された「One UI 7」に続くバージョンで、「One UI 7」で実装された「Now Brief」や「Now Bar」などの機能も継承されている。

サブディスプレイのホーム画面。One UI 8にになり、ウィジェットなどの種類やデザインは従来モデルから変更された。「New Bar」や「Now Brief」などが設定される
画面右上から下方向にスワイプすると、クイック設定パネルが表示される。二段目はアイコンのみが表示されるが、もう一度、下方向にスワイプすると、キャプションが表示される
本体を開いたメインディスプレイのクイック設定パネル。基本的にサブディスプレイに表示するものと内容は同じだが、少し左右に拡げられていて、操作しやすい

 実際の使用感も昨年モデルの「One UI 6」に比べると、アイコンやメニューなどの視認性が良く、直感的な操作が可能になり、パーソナライズやカスタマイズもしやすい印象だ。

ホーム画面を上方向にスワイプすると、アプリ一覧が表示される。アプリをフォルダーにまとめられ、下段の検索ボックスから検索もできる
本体を開いたメインディスプレイのアプリ一覧は、基本的にサブディスプレイで表示するアプリ一覧と連動し、1ページめと2ページめを一画面に表示している
メインディスプレイの大きさを活かし、複数のアプリを同時に表示することも簡単にできる

 フォルダブルスマートフォンをはじめて使う人は、サブディスプレイとメインディスプレイの違いに戸惑うかもしれないが、慣れてくれば、手放せなくなるほど、快適に使うことができる。

 「Galaxy AI」によって、実現される機能は、前述の通り、画像編集などが強化される一方、昨年の「Galaxy S24」シリーズ以降に搭載された音声通話での「リアルタイム翻訳」、対面での「リアルタイム通訳」、「ボイスレコーダー」アプリでの文字起こし、「+メッセージ」、「LINE」、「Instagram」のDMでも利用できる「チャットの翻訳」なども継承されている。

 Webページや文献で表示した内容を「Samsung Notes」アプリで要約したり、内容を翻訳したり、ゲーム中に攻略方法を「かこって検索」で調べるといった機能もサポートされる。

本体を開いたメインディスプレイのホーム画面。画面最下段にDock、中段に検索ボックスやウィジェットなどが並ぶ。最下段のナビゲーションハンドルを長押しして、「かこって検索」を起動可能

 こうしたAIに関連する使い方で、個人的に便利だと感じているのが「Galaxy Watch 8」シリーズでのGeminiの連携だ。普段の生活の中で、何か調べたいモノ、知りたいことなどがあったとき、あるいはスマートフォンでメッセージを送ったり、カンレダーに情報を登録するといった操作をしたいとき、これまではスマートフォンを操作するしか手がなかったが、Geminiをはじめとした対話型AIが登場したことで、新しい使い方ができる環境が整いつつある。

 その具体例として、「Galaxy Z Fold7」と「Galaxy Z Flip7」では「Galaxy Watch 8」シリーズと組み合わせ、時計に話しかけることで、Geminiを利用できる。以前からスマートフォンでのAI利用のカギを握るのは、スマートウォッチとイヤホンだと予想していたが、今回の「Galaxy Z Fold7」はこれをいち早く実現した形だ。同様の使い方はGoogleの「Pixel Watch」シリーズでも利用できる。

 たとえば、クルマを運転中、Geminiに話しかけるため、スマートフォンを手にすると、道路交通法に触れるが、身に着けている「Galaxy Watch 8」シリーズに話しかける分には、今のところ、問題がないとされる(確約はできないが……)。

 クルマでの利用はあくまでも一例だが、かつては音声入力やGoogleアシスタントのため、スマートフォンに話しかける利用スタイルが「ちょっと恥ずかしい」と考える向きも少なくなかったが、最近の街中では、ワイヤレスヘッドセットやワイヤレスイヤホンを装着したまま、通話をしていたり、スマートフォンに話しかけて、何らかのコマンドを実行する人を見かけることが増えている。

 すでに筆者は「Galaxy Watch 8 Classic」を身に着け、クルマで移動中、信号待ちのタイミングなどでGeminiに話しかけているが、非常に便利に使うことができている。もし、機会があれば、ぜひ一度、「Galaxy Z Fold7」と「Galaxy Watch 8」シリーズを組み合わせたGeminiの環境を試してみていただきたい。

想像を超える軽量スリム化でフォルダブルの新時代を切り開く一台

 より大きな画面を折りたたむことで、コンパクトなボディで持ち歩くことができるフォルダブルスマートフォン。サムスンが2019年2月に世に送り出した初代モデル「Galaxy Fold」は、「折りたためる」という構造を実現し、スマートフォンの新しい可能性を示したものの、ボディは厚く、スリムな端末の2台分に迫る重量で、なかなかメイン端末として扱うには厳しい印象だった。

 その後、ヒンジ部分の改良により、折りたたみ時の合わせ部分の隙間をほぼなくしたり、おサイフケータイ対応や防水など、日常で利用するスマートフォンの要件を満たすなど、着実に進化を遂げてきた。

 昨年の「Galaxy Z Fold6」を購入し、使いはじめたときは、「とりあえず、ひとつの完成形に近づいたかな」という印象で、今年の新モデル発表前は「それほど進化しないだろうな」、「薄くなるみたいだけど、そんなに劇的には薄くならないでしょ」と高を括っていた。

 ところが、今回の「Galaxy Z Fold7」の実機をはじめて見たとき、想像を大きく超えるスリム化と軽量化に驚かされた。正直なところ、昨年の「Galaxy Z Fold6」に対して、ここまで大きくジャンプアップするほどの進化を遂げるとは予想していなかった。

 また、スリム化と軽量化というハードウェア面の進化に留まらず、Galaxy AIをはじめとした多彩な機能の進化、「Galaxy Watch 8」シリーズとの連携によるGeminiの利用など、実用面での進化も大きく、全体的に見て、これからのスマートフォンの方向性をいち早く実現したモデルに仕上げられた印象だ。

 ただ、26万円以上という価格は、スマートフォンの価格として、かなり高価であり、残念ながら、誰にでもおすすめできるというレベルにはない。

 とは言え、そのポテンシャルは間違いなく高く、フォルダブルスマートフォンの可能性や新しい利用スタイルを追求したいというユーザーであれば、十分に検討してみる価値はあるだろう。

 全国のドコモショップ、auショップ、ソフトバンクショップで実機を手にできるが、東京・原宿の「Galaxy Harajuku」と大阪・心斎橋の「Galaxy Studio Osaka」ではスタッフによる実機デモや説明も受けられるので、ぜひ一度、足を運び、「Galaxy Z Fold7」の想像を超える進化を体験していただきたい。

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