法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「Galaxy Z Flip6」、「Galaxy AI」で楽しさが拡がるスマートフォンの新しいカタチ

 7月10日にグローバル向けに発表され、国内では7月30日から販売が開始されたサムスンのフォルダブルスマートフォン「Galaxy Z Flip6」。「Galaxy S24」シリーズでも搭載された「Galaxy AI」を搭載し、スマートフォンの新しい可能性を追求したモデルだ。筆者も実機を購入したので、レポートをお送りしよう。

サムスン/NTTドコモ/au「Galaxy Z Flip6」、開いた状態:165.1mm(高さ)×71.9mm(幅)×6.9mm(厚さ)、閉じた状態:85.1mm(高さ)×71.9mm(幅)×14.9mm(厚さ)、約187g(重さ)、シルバーシャドウ(写真)、ブルー、ミント、イエロー(au及びSamsung.com限定)、クラフテッド ブラック(Samsung.com限定)、ホワイト(Samsung.com限定)をラインアップ

『フツー』じゃ物足りなくなってきた今どきのスマートフォン

 今や生活にもビジネスにも欠かすことができないスマートフォン。この十数年の進化において、さまざまな機能やデザインなどが実現されてきたが、端末本体のデザインについては、スレート状(板状)を採用したモデルが中心になってきた。本体前面もほとんどをディスプレイが占めるデザインになり、端末デザインはカメラを搭載した背面やボディカラー、ボディの仕上げなどでしか個性を発揮できなくなりつつある。昨今、「スマートフォンは使うけど、端末はつまらくなったかも」といった声も聞かれ、もはや、『フツー』のスマートフォンに物足りなさを感じるユーザーも少なくないようだ。

 こうした状況の中、ここ数年、少しずつモデル数が増え、存在感を増しているのが折りたたみデザインの端末、つまり、『フォルダブルスマートフォン』だ。『折り曲げられる』という有機ELディスプレイの特性を活かし、大画面ディスプレイを搭載しながら、端末を折りたたんでコンパクトに持ち歩けるという特徴を持つ。2019年にサムスンやファーウェイが横開きのフォルダブルスマートフォンを発表したのをきっかけに、サムスンは「Galaxy Z Fold」シリーズと「Galaxy Z Flip」シリーズを展開し、世代を追うごとに、耐久性や耐環境性能、使いやすさを向上させてきた。Googleの「Pixel Fold」シリーズやモトローラの「motorola razr」シリーズ、ZTEの「nubia/Libero Flip」など、ライバル機種も増え、市場が拡大してきたことで、「次はフォルダブルにしちゃおうかな?」というユーザーも増えつつあるようだ。なかでも縦方向に折りたためる「Galaxy Z Flip」シリーズは、若い世代を中心に高い注目を集めており、街中ではカバーなどにデコレーションした「Galaxy Z Flip」を斜めがけのストラップで持ち歩く女性ユーザーを見かけることも増えてきている。

 今回発売された「Galaxy Z Flip6」は、縦方向に折りたたむフォルダブルスマートフォンの最新モデルになる。縦開きの「Galaxy Z Flip」シリーズは、2020年に初代モデルが発表され、その後、5G対応モデルの追加などを経て、2021年に「Galaxy Z Flip4」、2022年に「Galaxy Z Flip5」と、進化を遂げてきた。今回の「Galaxy Z Flip6」は昨年の「Galaxy Z Flip5」の基本的なデザインとフォームファクターを継承しているが、今年4月に国内向けに発売された「Galaxy S24」シリーズにも搭載された「Galaxy AI」を搭載することで、幅広いシチュエーションでAIを活用した機能が利用できる。

 販路はNTTドコモとauから販売されるほか、同じタイミングでサムスン公式ストアでのオープン市場向けのSIMフリー版も販売される。価格は別表の通りで、サムスン公式ストアがもっとも安く購入できるが、NTTドコモとauでの購入では、端末購入サポートプログラムが利用できるため、256GBモデルの場合、2年後の返却を前提に、端末代金の分割払いを月々4000円前後に抑えることができる。

「Galaxy Z Flip6」のNTTドコモ、au、サムスン公式ストア(Samsung.com)での販売価格。キャンペーンなどで価格は変更されることがあるので、ご注意いただきたい

 端末が故障したときの補償については、NTTドコモの「smartあんしん補償」が月額880円、auの「故障紛失サポート ワイド with Cloud」が月額990円となっている。サムスン公式ストアからSIMフリー版を購入したときは、サムスンが提供する「Galaxy Care」が月額790円(256GBモデル)、876円(512GBモデル)で契約できる。それぞれに補償内容に若干の差異はあるが、フォルダブルスマートフォンは内部構造も複雑で、落下などのアクシデントで破損するケースも考えられるため、それぞれの補償サービスは契約しておくことを強くおすすめしたい。

コンパクトで持ちやすく、開きやすいボディ

 まずは外観からチェックしてみよう。縦方向に開くフォルダブルスマートフォンは、折りたたんだ状態がコンパクトで、開いた状態では一般的なスレート状のスマートフォンと変わらない大画面で利用できるというのが共通した特徴。ただし、ヒンジの機構が複雑で、当初はサイズも大きかったため、「Galaxy Z Flip」シリーズも一昨年の「Galaxy Z Flip4」まではヒンジ側の合わせ部分に隙間があった。昨年の「Galaxy Z Flip5」ではデュアルレール構造のフレックスヒンジを採用したことで、ヒンジ部分がコンパクトになり、合わせ部分もほぼ隙間のないデザインに仕上げられた。

 今年の「Galaxy Z Flip6」もほぼ同じデザインを継承しており、サイズや持ちやすさ、折りたたみ部分の合わせ、開閉のしやすさなどはほぼ変わらない。実際のサイズも閉じた状態の厚さがわずか0.2mm薄くなっただけで、幅や高さ、重量などはまったく同じで、ボタン位置なども変更されていない。こうなると、ケースなども「Galaxy Z Flip5」と共通で利用できそうだが、筆者が利用していた「Galaxy Z Flip5」のケースは「Galaxy Z Flip6」にも装着できたものの、側面の形状がわずかに違うこともあり、やや無理やり装着するような印象だった。サムスンの純正ケースなどは、対応機種がそれぞれ別になっているので、実際には「Galaxy Z Flip6」用のものを利用した方がベターだろう。

本体を開いた状態の背面。上筐体と下筐体がほぼフラットに開く。下筐体側に各携帯電話会社の大きなロゴなどは表記されない。おサイフケータイのロゴもない
本体を開いた状態の左側面。上筐体側(右側)にピンで取り出すタイプのSIMカードスロットを備える
本体を開いた状態の右側面。上筐体側(左側)にシーソー式音量キー、指紋センサー内蔵の電源キーを備える
本体を閉じた状態の右側面。カメラ部の突起は約1.7mm
本体を閉じた状態の左側面。従来モデルに引き続き、上下筐体の合わせ部分はほぼ隙間がない
本体下部にはUSB Type-C外部接続端子を備える。充電はQi規格準拠のワイヤレス充電にも対応
本体を閉じた状態の上下筐体の合わせ部分
ボディを折りたたむと、片手に収まるサイズ。筆者のような大きな手だけでなく、手の大きくない女性にも持ちやすいサイズ感

 ボタン類などのレイアウトとしては、上筐体の右側面に音量キー、指紋センサーを内蔵した電源キー、左側面にピンで取り出すタイプのSIMカードスロット、下筐体の下部側にUSB Type-C外部接続端子を備える。ボディがスクエアな形状のため、使いはじめたときは電源ボタンの位置に戸惑いそうだが、閉じた状態ではヒンジ側が四角く、反対側の角が丸みを帯びた形状なので、その点を意識すれば、すぐに慣れるはずだ。

 耐環境性能はIPX8準拠の防水、IP4X準拠の防塵に対応する。これまでの「Galaxy Z Flip」シリーズは防塵に対応していなかったが、今回の「Galaxy Z Flip6」で初対応となった。ただし、保護性能としてはワイヤーなど、1mm以上の個体に対するもので、1mmより小さい埃や砂などに対する防塵性能はないため、砂場や土のある環境などでの利用は避けるべきだ。耐衝撃性能は備えていないが、従来モデルに引き続き、フレームやヒンジに強度の高いアーマーアルミニウムを採用し、本体の開閉も20万回の開閉テストをクリアしているため、一般的な利用には十分な耐久性を持つ。落下などに備え、本体を保護したいときは本体の上下筐体に装着する保護ケースの利用がおすすめだ。筆者も利用しているが、本体がコンパクトなため、保護ケースを装着してもそれほど大きさに違和感はない。

「Galaxy Z Flip6」(左)と「Galaxy Z Flip5」(右)のヒンジ部分。おそらくヒンジそのものの構造はほぼ変わっていない。開閉のしやすさも変わらない印象
ボディのサイズはほとんど変わらないが、実は側面の形状と仕上げが変更されている。「Galaxy Z Flip5」(下)は角の部分がやや丸く面取りされていたのに対し、「Galaxy Z Flip6」(上)はほぼフラットな側面に変更された。「Galaxy Z Flip5」(下)の左側にある長い楕円形のパーツはおそらくミリ波対応のアンテナ
「Galaxy Z Flip6」(左)と「Galaxy Z Flip5」(右)を開いたところ。ディスプレイの対角サイズや形状などもほぼ変わらない
「Galaxy Z Flip6」(左)と「Galaxy Z Flip5」(右)をフレックスモードで開いた状態。カメラ周囲のリングの仕上げが変更されているが、カバーディスプレイなどは共通

さらに高輝度化したメインディスプレイ

 本体を開いたときのメインディスプレイには、従来モデルに引き続き、2640×1080ドット表示が可能なフルHD+対応の6.7インチDynamic AMOLED 2X(有機EL)を搭載する。リフレッシュレートは1?120Hzで、解像度や対角サイズなども従来モデルと同じだが、ピーク輝度が「Galaxy Z Flip5」の1750nitsから2600nitsに引き上げられている。ピーク輝度の向上は夏日のような太陽光が強い環境下でも視認性を確保できるというメリットを持つ。ピーク輝度以外の仕様は基本的に従来モデルと変わらないが、[設定]アプリの[ディスプレイ]を確認すると、新たに[色調を最適化]という項目が追加されている。項目には「周囲の明るさに合わせて、色とホワイトバランスを調整し、さまざまな環境で色がより自然に見えるようにします」と表記されている。ブルーライトをカットする[目の保護モード]とは別の項目なので、画面に表示される色合いが気になるときは、オンにしてみるといいだろう。

 メインディスプレイは端末をフルに開いた状態で操作できるほか、端末をノートパソコンのように半開きの状態の「フレックスモード」にして、机の上などに置いて使うこともできる。カメラ利用時は後述するが、たとえば、動画を視聴するとき、画面の上側に動画を表示し、下側に動画をコントロールするためのボタンを表示したり、[カレンダー]では上半分に月表示、下半分に選んだ日付のスケジュールを表示する使い方ができる。

フレックスモードで動画を再生するときは、下筐体側に再生コントロールが表示される
一般的なスレート状のスマートフォンと同じように、大画面にマップを表示して、フレックスモードでは下半分にマップ、上半分にストリートビューといった表示も可能

 上筐体の外側に備えられているカバーディスプレイ(フレックスウィンドウ)も従来モデルに引き続き、720×748ドット表示が可能な3.4インチSuper AMOLED(有機EL)を搭載する。基本的な仕様は従来の「Galaxy Z Flip5」から変更されておらず、カバーディスプレイにウィジェットを表示したり、カメラ起動時にファインダーとして、利用することができる。フレックスウィンドウの基本操作も従来同様で、指紋認証や顔認証で画面ロック解除後、右にスワイプすると通知、左にスワイプするとウィジェット、下方向にスワイプするとクイック設定パネルがそれぞれ表示される。ウィジェットは[設定]アプリの[カバー画面]-[ウィジェット]で追加や削除ができる。ウィジェットには「Google」(Finance)「Health」「カレンダー」「天気」「電卓」「アラーム」などがあり、「Health」には「歩数」「1日の活動」「睡眠」など、複数のウィジェットが用意されている。サイズも2分の1、4分の1があり、これらを組み合わせて、表示できる。

 [設定]アプリの[便利な機能]-[ラボ]-[カバー画面で許可されたアプリ]を有効にすると、選んだアプリをカバーディスプレイに表示することができる。筆者が試した環境では[マップ][LINE][Netflix][YouTube]が候補として、表示された。端末を閉じた状態で、GoogleマップやLINEが利用できるのは、なかなか便利だろう。

カバーディスプレイにはウィジェットを設定可能。1/4と1/2のサイズを組み合わせ、複数のウィジェットを表示できる
カバーディスプレイを下方向にスワイプすると、メインディスプレイ同様、クイック設定パネルが表示される
[設定]アプリの[便利な機能]-[ラボ]-[カバー画面で許可されたアプリ]を有効にすると、カバー画面でアプリを表示できる。ここでは3つのアプリが表示されているが、LINEをインストールした端末では[LINE]も設定できた
[カバー画面で許可されたアプリ]で[マップ]を有効にすれば、Googleマップも表示可能

指紋認証を有効活用できる「Samsung Pass」

 生体認証は右側面の電源ボタン内蔵の指紋センサーによる指紋認証のほか、顔認証にも対応する。指紋認証は電源ボタンにタッチするだけでロック解除ができるが、不用意にロック解除してしまうことを防ぐため、カバー画面、メイン画面、両方の画面のそれぞれの状態に応じて、ロック解除をするかどうかを個別に設定することも可能だ。

 指紋センサーによる指紋認証は、他のGalaxyシリーズ同様、Samsungアカウントと紐付けた「Samsung Pass」を利用することで、指紋センサーにタッチするだけで、Webサイトへログインしたり、アプリの起動などができる。銀行や証券、クレジットカードなど、セキュリティに配慮したいアプリや用途が増えている中、ぜひ、活用したい機能のひとつだ。

 顔認証については端末を開いたときのインカメラだけでなく、端末を閉じた状態のメインカメラでも動作できる。メインカメラでの顔認証は、サブディスプレイに表示されるウィジェットなどを操作するとき、画面ロック解除のために利用する。顔認証はメインカメラもインカメラもマスクを装着しての解除には対応していない。

 バッテリーは従来の「Galaxy Z Flip5」から10%近く増え、4000mAhのバッテリーを搭載する。「Galaxy Z Flip」シリーズはボディがコンパクトなこともあり、バッテリー容量が少ないという指摘もあるが、端末を閉じている状態ではメインディスプレイが点灯しないため、スレート状のスマートフォンに比べ、電力消費は抑えられる傾向にある。今回の「Galaxy Z Flip6」は、従来モデルからバッテリー容量が増量されたことで、連続待受時間や連続通話時間などが10%程度、長くなり、動画の連続再生時間で最長23時間、音楽の連続再生で最長68時間と、こちらも従来モデルを10%以上、ロングライフを実現している。

 充電は本体下部のUSB Type-Cからの充電(QC2.0)に加え、Qi規格準拠の15Wワイヤレス充電にも対応する。25W対応のUSB充電器を使えば、約30分で50%程度までの充電ができる。4.5Wのワイヤレスバッテリー共有にも対応し、本体のバッテリー残量を使い、Galaxy BudsやGalaxy Watchなど、他のワイヤレス充電対応機器を充電することもできる。

 チップセットは米Qualcomm製Snapdragon 8 Gen3 for Galaxyを採用する。チップセットなどの冷却には「Galaxy Z Flip」シリーズ初のベイパーチャンバーを採用し、ゲームなどの負荷の大きいシーンでも発熱を抑えられるようにしている。今回は本体にカバーを装着した状態で、ゲームなどをプレイしてみたが、本体からの熱が気になるようなことはなかった。

 RAMは従来モデルの1.5倍の12GBを搭載し、ROMは256GB版と512GB版が用意される。ただし、512GB版が選べるのはau OnlineShopとサムスン公式ストアのみで、NTTドコモとauのショップ店頭では256GB版のみが購入できる。RAMの容量が大幅に増やされた背景には、Galaxy AIでのAI処理にメモリー容量が必要なことが挙げられる。こうしたRAMの増量はGalaxy S24シリーズなど、他機種にも見られる傾向で、AI機能を重視したいときはできるだけRAMが多いモデルを選ぶ必要がある。ストレージについては一般的な利用であれば、256GBでも十分だが、Galaxy AIの通訳及び翻訳では扱う言語に対応した『言語パック』をインストールする必要があり、その容量がそれぞれ500MB前後と大きいため、より多くの言語パックをインストールするのであれば、注意が必要だ。

 モバイルネットワークについては5G NR/4G LTE(TDD/FDD)/3G W-CDMA/GSMに対応する。5Gについては従来の「Galaxy Z Flip5」がSub6/mmWave(ミリ波)両対応だったのに対し、「Galaxy Z Flip6」はSub6のみに対応する。ミリ波対応が見送られたのは残念だが、コスト面やミリ波に対応した活用事例が多くないことを考えれば、妥当な判断と言えそうだ。NTTドコモとauが提供中の5G SA(StandAlone)に対応しており、すでにそれぞれの対応機種一覧にも掲載されている。SIMカードはnanoSIMカードとeSIMに対応し、eSIMについては複数のeSIMを登録できるデュアルeSIM対応となっている。

本体の上筐体の左側面にピンで取り出すSIMカードトレイを備える。nanoSIMカードを1枚のみ、装着できる。複数のeSIMを登録できるデュアルeSIMにも対応

 プラットフォームはAndroid 14を搭載し、サムスンのユーザーインターフェイス「One UI 6.1.1」がインストールされる。One UIは基本的にAndroidプラットフォーム標準をベースにしており、下方向にスワイプして「クイック設定パネル」、上方向にスワイプしてアプリ一覧が表示される。アプリ一覧は横方向のスワイプでページを切り替える仕様だが、アプリをフォルダにまとめられたり、並べ方やグリッド数の変更ができるなど、実用性とカスタマイズ性がよく考えられている。

ホーム画面は最下段にDock、中段に検索ボックス、中央に天気ウィジェットが設定されている。左方向にスワイプすれば、ホーム画面の次ページ、右方向にスワイプすれば、Google Discoverが表示される
ホーム画面を上方向にスワイプすると、アプリ一覧が表示される。左方向にスワイプすると、次のページが表示される。アプリのアイコンはフォルダーでまとめられるので、整理しやすい
下方向にスワイプすると、クイック設定パネルが表示される。主要な機能やディスプレイの明るさなどのボタンが並ぶ。出荷時設定では左方向にスワイプした次のページに[通訳]のアイコンが表示される
シンプルなホーム画面レイアウトの「かんたんモード」も用意される。シニアユーザーにも使いやすそうだ
「かんたんモード」に切り替えたホーム画面。Dockに並ぶアイコンは3つになり、ホーム画面のアイコンのグリッドも3列表示に切り替わる
[設定]アプリの[便利な機能]-[ラボ]では、お試し機能を使うことができる

多彩な撮影が可能なカメラ

 カメラは本体外側のカバーディスプレイ側に2つのアウトカメラ、内側のメインディスプレイの中央上のパンチホール内にインカメラを内蔵する。

背面にはデュアルカメラを搭載。閉じた状態で、カバーディスプレイにカメラのプレビューを表示したり、フレックスモードで自撮りができるため、インカメラよりも圧倒的に使用頻度が高い
インカメラはメインディスプレイのパンチホール内に搭載される。ディスプレイには保護フィルムが貼られているが、剥がさずに利用する

 メインで利用するアウトカメラは、5000万画素イメージセンサー/F1.8の広角(23mm)、1200万画素イメージセンサー/F2.2の超広角カメラで構成される。広角カメラは従来モデルの1200万画素イメージセンサーから大幅に強化され、フラッグシップモデルの「Galaxy S24」と同等のカメラが搭載された。通常は4つの画素を1つの画素として撮影する「ピクセルビニング」で撮影されるため、暗いところでの撮影にも強いが、画質を劣化させない光学2倍相当ズームでの撮影も可能で、デジタルズームは最大10倍まで拡大できる。

メインカメラのファインダー画面。撮影モードの文字をタップするか、左右にスワイプすると、撮影モードを切り替えることができる
ポートレートで撮影。背景は自然なボケ。モデル:望月ゆうり(X(旧Twitter):@Tiara00107、Instagram:@mochi.yuri_、所属:ボンボンファミン・プロダクション
インカメラで撮影。インカメラでも「ポートレイト」「写真」「動画」「その他」の撮影モードが選べる。フォーカスはパンフォーカス
[カメラ]アプリで[0.6x]を選び、超広角カメラで撮影
[カメラ]アプリで[1x]を選び、広角カメラで撮影
[カメラ]アプリで[10x]を選び、10倍デジタルズームで撮影

 撮影モードとしては「ポートレート」「写真」「動画」「その他」が選べ、「その他」には「ナイト」「食事」「ポートレート動画」などの項目が登録されている。ソフトウェアのダウンロードが必要だが、RAW形式で撮影する「Expert RAW」も利用可能。通常はAIでシーンが自動認識されるため、そのまま撮影すれば、クオリティの高い写真が撮影できるが、「Galaxy Z Flip」シリーズならではの撮影方法として、「フレックスカメラ」と名付けられたフレックスモードでの撮影をぜひ活用したい。

 フレックスカメラは昨年に続き、「Galaxy Z Flip6」のテレビCMで『新しい学校のリーダーズ』が利用シーンを演じているが、端末を半開きの状態にして、机の上などに置いて、撮影することができる。一般的に自撮りに利用されるインカメラは、カメラのスペックがあまり高くないうえ、手持ちでは手ぶれが起きてしまうが、フレックスカメラでの撮影であれば、よりハイスペックなメインカメラで撮影できるうえ、どこかに置くことで、安定した状態で撮影ができる。タイマーでシャッターを切るときもカメラに手のひらを向けるだけなので、撮りやすい。

 フレックスカメラでの撮影は、[カメラ]アプリを起動し、ファインダーをカバーディスプレイ側に表示するように切り替える方法でも利用できるが、テレビCMでもアピールされている[オートズーム]で撮影するときは、端末を閉じた状態でカバーディスプレイ(フレックスウィンドウ)から[カメラ]アプリを起動する。端末をフレックスモードのポジションにすると、カバーディスプレイのファインダーにアイコンが表示され、[オートズーム]で撮影ができる。オートズームはファインダー内に映り込む人物によって、自動的にズーム(拡大/縮小)して、撮影できるモードで、集合写真などを撮るときには便利だ。最初はズームの動きをつかみにくい感もあるが、慣れてくると、複数の人とセルフィーを撮ることが楽しくなる印象だ。

端末を閉じた状態から[カメラ]を起動し、端末を半開きにして、フレックスモードにすると、カバーディスプレイの左下にオレンジ色の[オートズーム]のアイコンが表示される。ピンチ操作などで[オートズーム]は解除されるが、左右にスワイプして、撮影モードを切り替えると、再び[オートズーム]のアイコンが表示されるので、タップすれば、有効にできる
カバーディスプレイのファインダー画面。左下に[オートズーム]のアイコン、ズームの倍率が表示される。

 撮影した画像はサムスン独自の[ギャラリー]アプリで確認や編集ができる。Googleフォトと連携する[フォト]アプリもインストールされているが、[ギャラリー]アプリでは今回の「Galaxy Z Flip6」のセールスポイントのひとつである「Galaxy AI」を利用した編集機能が利用できる。「Galaxy S24」シリーズで注目され、他機種にも展開された「かこって検索」なども利用できるが、楽しいのは「ポートレートスタジオ」だろう。写真を表示したとき、下段の星印の[Galaxy AI]ボタンをタップし、次の画面で[ポートレートスタジオ]をタップすると、下段に「コミック」「3Dアニメ」「水彩画」「スケッチ」のボタンが表示される。これらをタップすると、それぞれのテイストに合わせた絵がGalaxy AIで生成されるしくみだ。生成したイラストや絵が本人に似ているかどうかは、仕上がりによって、さまざまな意見があるが、Impress Watch Videoの「法林岳之のケータイしようぜ!! #780」で、MCの篠崎ゆきをイラスト化したところ、それらしいイラストに仕上がり、本人やスタッフにも好評だった。SNSなどでは本人のアイコンにアバターを設定することが多いが、こうしたGalaxy AIで生成したグラフィックを利用してみるのも面白そうだ。

撮影した写真は[ギャラリー]アプリで閲覧や編集ができる
[ギャラリー]で写真を表示し、下段の星を並べた[Galaxy AI]アイコンをタップすると、[Galaxy AI]による生成が可能なモードが起動する。ここでは右側の[ポートレートスタジオ]をタップ
Galaxy AIによる生成。元の写真の状態にもよるが、十数秒程度で生成される
[ポートレートスタジオ]で[水彩画]で生成
[ポートレートスタジオ]で[3Dアニメ]で生成
[ギャラリー]で[編集]を選べば、背景に映り込んだ人物やオブジェクトも消去できる
右後ろに居た人物を消すことができた

 また、写真ではないが、[Samsung Notes]アプリを起動し、ごく簡単な線画を手書きで描くと、それをベースに[Galaxy AI]でイラストを生成する機能も利用できる。「Galaxy Z Flip6」は「Galaxy Z Fold6」と違い、Sペンには対応していないため、指先かタッチペンなどで入力するが、これも意外にそれらしい絵が生成されるので、いろいろ試してみることをおすすめしたい。

フレックススタイルで楽しむ「Galaxy AI」

 「Galaxy Z Flip6」に搭載された「Galaxy AI」は、今年4月発売の「Galaxy S24」シリーズに続き、撮影した写真や手書きの絵からの画像生成ができ、[ボイスレコーダー]アプリで録音した音声をテキストに文字起こしをしたり、内容を要約するなどの機能が利用できるが、フォルダブルスマートフォンならではの利用スタイルも用意されている。そのひとつはカバーディスプレイとメインディスプレイを利用した「リアルタイム通訳」だ。

[設定]アプリの[Galaxy AI]にはGalaxy AIを利用した機能を設定できる。チュートリアルも表示されるので、はじめてのユーザーにもわかりやすい
[通訳]アプリを起動し、会話モードで話すと、翻訳された内容が音声で読み上げられ、テキストも表示される。上端の右から2つめのアイコンをタップすると、カバーディスプレイに会話の内容が表示される
[通訳]アプリでカバーディスプレイへの表示を有効にすると、このように表示される。画面はスペイン語で「あなたが話した内容の翻訳が相手の画面に表示されます」と表記されている

 機能そのものは「Galaxy S24」シリーズにも搭載され、テレビCMでも利用シーンが演じられているが、クイック設定パネルから[通訳]アプリを起動し、端末を半開きにしたフレックススタイルにして、画面右上の[カバーディスプレイ表示]のアイコンをタップすると、カバーディスプレイ側に相手の言語で話した内容が表示される。つまり、フレックススタイルの端末の両画面を介して、外国語を話す人と対話ができるわけだ。プライベートでは外国語を話す人との接点がそれほど多くないかもしれないが、訪日外国人が増えてきた現状を考えると、「Galaxy Z Flip6」のリアルタイム通訳を接客業などに活用するというのもアリだろう。

 また、通訳及び翻訳関連の機能は、対面の会話や音声通話だけでなく、メッセージアプリでも利用できる。[設定]アプリの[Galaxy AI]-[チャットアシスト]-[チャットの翻訳]を選ぶと、言語の設定などができる。対応するアプリは、標準の[メッセージ]アプリをはじめ、[+メッセージ]や[LINE]、[Instagram]などで、外国語とやり取りをする際、こちらの日本語を外国語に訳して、相手に送信し、相手から受け取った外国語を日本語に翻訳して表示できる。「Galaxy S24」シリーズのレビュー記事でも触れたが、外国語でやり取りすることが多いユーザーにとっては有用だろう。ちょっと変わった例を挙げると、LINEはタイや台湾などでも広く利用され、飲食店などではLINEで予約を受け付けるところもあるため、こうした店舗で予約を取るとき、「チャットの翻訳」を使って、現地語に翻訳して、送信するといった使い方ができそうだ。

 「Galaxy AI」はこの他にも「通話アシスト」「ウェブアシスト」「ヘルスアシスト」「今の天気壁紙」など、AIを活かした実用的な機能が数多く用意されている。AI対応を謳う機種は増えてきているが、実用面を考えた機能を実装しているのは、やはり、「Galaxy」と「Pixel」が2強であり、AIが今後のスマートフォンの進化の軸になっている可能性が高い。ぜひ、Galaxy AIでいろいろな機能を試してみることをおすすめしたい。

自由なスタイルと「Galaxy AI」をカジュアルに楽しめるフォルダブルな一台

 この十数年、スマートフォンはさまざまな機能を実現し、大きく進化を遂げてきたが、その一方でデザインという点においては、スレート状のボディばかりになってしまい、個性が失われてしまった感が強い。やや自虐的に「最新機種に買い換えたけど、買い換えた気がしない」という声も何度も耳にしているが、機能面でも飽和状態になり、「スマートフォンは必要だけど、今ひとつ目新しさが……」と感じる人も少なくないようだ。

 そんな国内外のスマートフォンの市場において、ここ数年、着実に進化を遂げ、ユーザーの注目を集めているのが折りたたみデザインのフォルダブルスマートフォンだ。折りたたんだ状態でコンパクトに持ち歩きつつ、端末を拡げると大画面でSNSやコンテンツを楽しむことができる。かつてのケータイ時代を知るユーザーにはちょっと懐かしさを感じさせる一方、若い世代には今までのスマートフォンとは違った新しいフォームファクターとデザインが新鮮に受け取られている。

 そんなフォルダブルスマートフォンの進化をリードしているのが「Galaxy Z Flip」シリーズと「Galaxy Z Fold」シリーズであり、なかでも「Galaxy Z Flip」シリーズはスタイリッシュなデザインと個性、実用的で楽しい機能を搭載し、若い世代を中心に支持を拡げている。テレビCMで印象的な「フレックスモード」でのカメラ撮影などは、『自撮り重視』の今どきのユーザーにとって、非常に実用的な機能のひとつとして、しっかりと認知されており、今後は街中でも活用するシーンを見かけることが増えそうだ。

 そして、今回の「Galaxy Z Flip6」では「Galaxy AI」を搭載し、通訳や翻訳、画像生成など、数々の新機能を実現している。「AI」というと、技術的なことやモラル的なことなど、小難しい話しばかりが語られているが、ユーザーにとって重要なのは、AIによって実現される機能、普段の生活などに役立つ便利機能であり、「Galaxy Z Flip6」には翻訳や通訳、文章の生成や邦訳、画像やイラストの生成など、ユーザーがスマートフォンを使っていくうえでの実用的な機能がしっかりとサポートされている。どこかの機種のように、来年まで待たなくても今すぐに役立ち、楽しめるAIが搭載されていることは、非常に魅力的であり、ぜひ一度、その楽しさを店頭のデモ機などで楽しんで欲しいところだ。「Galaxy Z Flip6」は『フォルダブル』と『AI』というスマートフォンの新しい潮流を手軽に楽しめる一台として、ぜひおすすめしたいモデルだ。