法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

スリムなOPPO A73はお手頃価格でeSIMにも対応

 オープン市場向けのSIMフリー端末を皮切りに、2020年には国内のキャリア向けモデルの供給もスタートさせたOPPO。昨年11月に国内市場向けでは、同社初となるeSIM&DSDV対応の「OPPO A73」を発売した。

 筆者も実機を試すことができたので、レポートをお送りしよう。

オウガ・ジャパン「OPPO A73」、約159.8mm(高さ)×72.9mm(幅)×7.45mm(厚さ)、約162g(重さ)、ネービーブルー(写真)、ダイナミックオレンジをラインアップ

2021年は「eSIMイヤー」になる?

 2020年は国内各社が5Gサービスをスタートしたが、まったく新しい周波数帯域を利用することもあり、「5Gスポット」とも呼びたくなるようなレベルでしかエリア展開ができず、データ通信の使い放題以外に、今ひとつユーザーのニーズに応えることができていない。

 5G対応端末についても当初はハイエンドのものが中心で、昨年末あたりからようやくミッドレンジの5G対応製品が出始めたような状況にある。

 エリアの展開や5Gならではのサービスを考えると、まだしばらくは「4G対応端末で十分」と考えるユーザーも少なくないようだ。

 そんな中、昨年10月には総務省が「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」(以下、アクションプラン)を発表し、モバイル市場の競争環境を新たに作り出そうと動き出している。このアクションプランには「利用者の理解を助ける」「多様で魅力的なサービスを生み出す」「乗換えを手軽にする」という柱が掲げられているが、これらの中に「eSIMの促進」が挙げられ、注目を集めている。

 eSIMは「Embedded SIM」の略で、「組み込みSIM」という意味を持つ。簡単に言ってしまえば、現在の物理的なSIMカードと同等の機能を持つものが端末本体に組み込まれた状態を指す。

 総務省としては、物理的なSIMカードを差し替えるより、eSIMの方が乗換えが簡単という解釈で、「eSIMの促進」を掲げたが、eSIMに対応した端末はiPhone XS以降やPixel 4以降などに限られているのが実状だ。

 しかし、IIJmioがeSIMを利用した「データプラン ゼロ」を提供するほか、楽天もeSIMに対応するサービスを提供し、昨年12月にはソフトバンクがオンライン専用ブランド「SoftBank on LINE」などを発表した際、eSIMを導入する方針を明らかにしている。

 KDDIも昨年、シンガポールのCircles Asiaと提携し、eSIMを活用したオンライン特化のMVNO新会社を設立し、準備を進めている。この他にもeSIMに関連する各社の動きが際立ってきており、もしかすると、2021年はeSIMサービスが国内で一気に拡大する「eSIMイヤー」になるかもしれない。

 今回、オウガ・ジャパン(OPPO日本法人の「オッポジャパン」が改名)が発売した「OPPO A73」は、同社として、国内初のeSIM対応のDSDV対応端末になる。詳しくは後述するが、物理的なSIMカード(nanoSIM)とeSIMを組み合わせ、デュアルSIMの状態で利用できるわけだ。

 OPPOはこれまでの記事でもお伝えしているように、オープン市場向けのSIMフリー端末だけでなく、auやソフトバンク向けにキャリア仕様の端末も供給しており、着実に国内市場での実績を積み重ねている。

 今回のOPPO A73はちょうど1年近く前に、国内向けに販売された「OPPO A5 2020」の後継機種に位置付けており、家電量販店での販売価格が2万4800円(10%ポイント還元前)と、かなりリーズナブルな価格が設定されている。同一モデルは楽天モバイルでも扱われており、価格は少し高い3万800円となっている。端末としての仕様はまったく共通で、オープン市場向けのモデルを購入しても楽天モバイルのeSIMサービスを契約できるので、自分の好みに応じて、購入と契約を検討すればいいだろう。

レザーっぽい質感を狙った背面デザイン

 まず、外観からチェックしてみよう。昨今、各社のスマートフォンのデザインは一部のモデルを別にして、かなり似通っており、手に取っただけではなかなか判別が付かないが、OPPO A73はボディが約7.45mmとスリムなうえ、本体背面を樹脂製パネルながら、レザーの質感を目指したという仕上げになっており、重量も162gとかなり軽い。スリムなボディはまさに“薄い板”のような仕上がりで、この厚みなら、手帳タイプのカバーなどに装着してもストレスなく使えそうだ。ちなみに、パッケージにはクリアタイプの背面カバーも同梱される。

 背面の仕上げはレザー調とまではいかないものの、指紋の跡もほとんど付かず、きれいに使うことができる。こうした指紋の跡が付きにくい仕上げは、Pixel 5などでも実現されており、これまでの『ガラス光沢仕上げ』とは違う方向性として注目される。

レザーっぽい質感を狙ったという背面。樹脂製ながら、指紋の跡が付きにくい仕上がり
下部にはUSB Type-C外部接続端子と3.5mmイヤホンマイク端子を備える
右側面は電源キーのみ。ボディの薄さがよくわかる。カメラ部の突起も少ない
左側面は分割式の音量キーとSIMカードスロットを備える

 ディスプレイは2400×1080ドット表示が可能な6.44インチのフルHD+対応有機ELディスプレイを採用する。この価格帯では有機ELディスプレイの採用例があまり多くなく、お得感が高い。ディスプレイは上部に極小の水滴型ノッチを備え、狭額縁のフレームとも相まって、画面占有率は90%を超え、外観も美しい仕上がりだ。

 ディスプレイが有機ELである特性を活かした機能も搭載される。電力消費を抑えることができる「ダークモード」は時間帯の指定も可能で、夜間のみ、ダークモードに切り替える設定も用意される。ディスプレイが発するブルーライトをカットすることで、目にやさしい調光を可能にする「アイコンフォート」、画面オフ時やスリープ時に時計を表示する「常時表示ディスプレイ」なども設定できる。

有機ELディスプレイのメリットを活かしたダークモードも選べる
ブルーライトをカットするアイコンフォートは時間帯での切り替えが可能
常時表示ディスプレイ(Always On Display)もサポート。これも時間帯で起動と終了を設定できる

 生体認証についても有機ELディスプレイの特徴を活かし、画面内指紋センサーを内蔵する。

 顔認証にも対応しており、周囲の明るさによる補正や目を閉じたときに認証しない設定も有効にできる。昨今の状況を鑑みると、外出時など、マスクを装着しているときは指紋認証、自宅などでマスクを装着していないときは顔認証が使えるため、両対応は使い勝手のいい仕様と言えそうだ。

 ちなみに、いずれの生体認証も画面ロックの解除だけでなく、アプリの暗号化やプライベートフォルダの設定などにも利用できる。

画面内指紋センサーを搭載。ロック画面にガイドが表示される。認識のレスポンスも速い
指紋認証や顔認証は画面ロックの解除だけでなく、アプリの暗号化などにも利用可能

 スリムなボディながら、本体には4000mAhの大容量バッテリーを内蔵し、Quick Charge 3.0(9V/2A)の急速充電にも対応する。

 省電力機能も充実しており、バッテリーの消費を抑える「省エネモード」に加え、バッテリー残量がわずかなとき、システムパフォーマンスを抑え、アプリの動作も制限しながら、ロングライフを可能にする「スーパー省エネモード」もサポートされる。

 このほかにも、ユーザーの利用状況を自動的に検出し、省電力を制御する「省エネオプション」などが設定できる。充電は本体下部のUSB Type-C外部接続端子を利用するが、パッケージには最大9V/2Aでの充電が可能なACアダプターとUSBケーブルも同梱される。

バッテリーは「省エネモード」「超省エネモード」を選ぶことができ、予想残り時間も確認できる

 ハードウェアで少し珍しいのは、FMラジオに対応しており、本体下部の3.5mmイヤホンマイク端子に有線イヤホンを接続すると、FMラジオアプリで放送が楽しめる。もっとも国内の場合、「radiko」が利用できるため、それほど活用できるシチュエーションが多くないかもしれない。

eSIM+nanoSIMカードのデュアルSIMが可能

 チップセットは、米Qualcomm製Snapdragon 662を採用し、4GB RAMと64GB ROMを搭載する。最大256GBのmicroSDメモリーカードも装着できる。

 パフォーマンスについてはハイエンドモデルなどに及ばないものの、実用レベルでは十分なパフォーマンスが実現されており、ブラウザやメール、SNSなどの一般的な用途であれば、不満を感じることはない。

 プラットフォームは、Android 10ベースのColor OS 7.2を搭載する。

 日本語入力はAndroidプラットフォーム標準の「Gboard」が採用されている。

 Color OSはOPPO製端末独自のユーザーインターフェイスで、設定画面の項目の並び順をはじめ、アイコンやクイック設定パネルのデザインなど、細々とした部分が異なり、使いはじめは少し戸惑うかもしれない。とは言うものの、Androidプラットフォームであることには変わらないため、Google PlayストアなどのGMS(Google Mobile Services)はほかのAndroid端末と同じように利用できる。

 独自のユーザーインターフェイスとしては、ディスプレイの右端からメニューを表示する「スマートサイドバー」、スリープ時に「O」の字を描いてカメラの起動などができる「スリープ時ジェスチャー」、三本指で下方向にスワイプしての「ジェスチャースクリーンショット」など、実用性の高い機能が数多く搭載されている。

標準モードではホーム画面にインストールされたアプリがすべて表示される
ドロワーモードやシンプルモードを選ぶこともできる
ジェスチャーによる操作も設定できる。耳に近づけて自動的に応答したり、本体を裏返して着信音を消すことも可能
設定画面は項目の並び方や表現が一般的なAndroidプラットフォームと異なるため、はじめてのユーザーは少し戸惑う
ナビゲーションキーは配列を変更したり、自動的に非表示にすることが可能
クイック通知パネルには一般的なAndroidスマートフォンと少しデザインが異なる。残りデータ通信量を表示させたり、ダークモードやアイコンフォートのON/OFFができる
3本の指でタッチしたまま、下方向にスワイプすると、スクリーンショットが撮れる。スクロールスクリーンショットにも対応
画面の端にある小さいバーから起動できるスマートサイドバー
スマートサイドバーなどから画面分割モードを起動することもできる

 ネットワークは4G LTEをはじめ、3G/GSMなどにも対応する。対応バンドはOPPOのスペックシートを参照していただきたいが、今回はNTTドコモ、au、ソフトバンクのネットワークを利用するMVNO、楽天(MNO)のSIMカードで動作を確認できた。

 OPPO A73のネットワーク関連で、注目されるのは、前述のeSIMだろう。

 今回はIIJmioのeSIM向けプラン「データプラン ゼロ」を契約し、mineoのAプランのSIMカードとデュアルSIMで利用してみたが、eSIMのアクティベーションも簡単で、すぐに利用することができた。

 ちなみに、OPPO A73のSIMカードトレイにはnanoSIMカードとmicroSDメモリーカードを1枚ずつ装着することができるが、多くの機種ではこのような構成の場合、2枚目のSIMカードとmicroSDメモリーカードが排他利用になってしまう。

SIMカードトレイにはnanoSIMカードとmicroSDメモリーカードを1枚ずつ装着できる

 以前は2枚のnanoSIMカードとmicroSDメモリーカードを同時に利用できるトリプルスロットのモデルが一定の支持を得ていたが、現在はこうした仕様のモデルは非常に少ない。

 たとえば、古くから利用している主要3社の回線のSIMカードを利用しつつ、安価なMVNO各社の契約でデータ通信を利用するニーズに応えていたわけだが、OPPO A73であれば、2枚目のSIMカードをeSIMとして契約することで、デュアルSIM+microSDメモリカードの環境で利用できるわけだ。

 ただ、eSIMサービスを提供する通信事業者は数少なく、今回のIIJmio以外では楽天(MNO)が提供しているくらいで、今後、ソフトバンクの「SoftBank on LINE」やauの「povo」などが対応するのを待つくらいだ。また、現在は利用が難しいが、海外渡航が多いユーザーは、海外の通信事業者が提供する国際ローミング対応のeSIMサービスを利用することも可能だ。

出荷時に設定されてるNTTドコモ網のAPN。主要なMVNO各社のAPNは登録済みだが、なぜかNTTドコモの「spモード」がない
出荷時に設定されてるau網のAPN。auの「LTE NET」も含め、ひと通り登録されている印象
出荷時に設定されてるソフトバンク網のAPN。ワイモバイルやLINEモバイルなども登録されている
出荷時に設定されてる楽天モバイル網のAPN
eSIMはモバイルネットワークの「eSIMを管理」から登録ができる
今回はIIJmioの「データプラン ゼロ」を申し込み、パソコンで送られてきたアクティベーションコードを表示して、読み込んだ
ダウンロードが完了したら、「有効化」をタップして、OPPO A73で使えるようにする
eSIMのAPNは自力で入力して、設定する必要があった
無事にeSIMを利用したデュアルSIM化ができた。1枚目の「KDDI」はmineoの「Aプラン」。eSIMの「IIJ」はIIJmioの「データプラン ゼロ」

メイン&超広角の4眼カメラを搭載

 カメラについては、背面にメイン&超広角を中心にした4眼カメラ、ディスプレイの上部の水滴型ノッチに内蔵されたインカメラから構成される。

背面に4眼カメラを搭載。メインレンズと超広角レンズに、モノクロレンズ(輝度センサー)とポートレートレンズ(深度センサー)を組み合わせる

 背面カメラは、左上にカメラモジュールとしてまとめられている。背面に向かって左上が1600万画素/F2.2のメインレンズ、左下が800万画素/F2.2の超広角レンズ、右上が200万画素/F2.4のモノクロレンズ(輝度センサー)、200万画素/F2.4のポートレートレンズ(深度センサー)で構成されている。これらのなか、モノクロレンズとポートレートレンズは補助的に使われるものであり、実際にはメイン(標準)と超広角のデュアルカメラという見方もできる。

 撮影モードは「夜景」「ビデオ」「写真」「ポートレート」「その他」が用意されており、「夜景」や「写真」では画面内の倍率のアイコンをタップすることで、「超広角」「1X」「2X」「5X」に切り替えることができる。

 おすすめは超広角の夜景撮影だが、正直なところを書いてしまうと、OPPO Reno3 Aなどの上位モデルに比べ、思ったほど、明るく撮れないという印象が残った。ただ、このクラスで言えば、十分なレベルのクオリティと言えるだろう。ポートレートについては左上の丸いアイコンをタップすると、スライダーが表示され、背景のぼかし具合いを調整できる。ビデオについては手ぶれ補正に対応しているため、動きのある被写体を追いかけながら撮影するようなニーズにも応える。

ホテルのガラス窓越しにメインレンズで夜景を撮影。ちょっと物足りない感も残るが十分にきれいなレベル
ホテルのガラス窓越しに超広角レンズで夜景を撮影。メインレンズに比べ、暗さが目立ってしまう印象
薄暗いバーで撮影。明るく撮影できているが、クッキリ感が足らない

 インカメラは1600万画素/F2.0というスペックで、画面右側の顔のアイコンをタップして、上位モデルでもおなじみの「AIビューティー」で顔を補正したり、「夜景」モードに切り替え、夜景をバックにした撮影を楽しむことができる。

インカメラはディスプレイの上部の小さな水滴型ノッチに収められている

3万円を切る安さで、eSIM&DSDVが使える一台

 昨年来、各携帯電話会社の料金プランが話題を集めているが、新たに登場するオンライン専用プランでは利用できる端末を自社で販売するものだけでなく、オープン市場向けのSIMフリー端末を含めた対応が検討されている。同時に、ソフトバンクの「SoftBank on LINE」やauの「povo」は、いずれもeSIMへの対応を謳っており、今まで以上にユーザーの端末の選び方が変わってきそうな印象だ。

 今回、オウガ・ジャパンが販売する「OPPO A73」は、3万円を切るというリーズナブルな価格で、eSIMを組み合わせたDSDV(Dual SIM&Dual VoLTE)を利用できる環境を実現している。

 非常にスリムで軽いボディは手触りもよく、手の大きさなどに関わらず、幅広いユーザーに扱いやすいモデルに仕上げられている。防水防塵やおサイフケータイといった日本仕様こそないものの、手軽に実用的なSIMフリー端末を購入したい、eSIMデビューしてみたいというユーザーのニーズには確実に答えられる端末だ。

パッケージには急速充電対応ACアダプター、USBケーブル、イヤホン、クリアケースなどが同梱されている