法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」
OPPO「R15 Pro」はおサイフケータイと防水で挑む
2018年8月24日 08:00
今年1月、「R11s」で日本市場に参入した中国のOPPO。アジアやアフリカ、オセアニアなどで事業を展開し、今年からは欧州市場にも本格参入をスタートさせた同社だが、日本市場向けの第2弾となる新端末「R15 Pro」を発表した。
日本のユーザーのニーズに応え、おサイフケータイと防水に対応したモデルになる。同時発表された「R15 Neo」も含め、実機を試すことができたので、レビューをお送りしよう。
日本市場に積極的に挑むOPPO
かつてのケータイ時代、国内市場はiモードや写メールなど、独自のケータイ文化を進化させていたこともあり、なかなか海外のメーカーが参入しても成功することが難しく、当時、圧倒的なシェアを持っていたNOKIAでさえ、日本での端末ビジネスから撤退せざるを得なかった。
しかし、スマートフォンが主役に時代に入り、ビジネスモデルも変わってきたことから、数多くの海外メーカーが国内のスマートフォン市場に参入している。iPhoneを展開するアップルをはじめ、サムスン、HUAWEI、LGエレクトロニクス、ASUS、モトローラなど、グローバル市場でビジネスを展開する端末メーカーが国内市場向けに製品を展開し、着実にシェアを獲得しつつある。
そんな国内市場に、今年1月、参入してきたのが中国のOPPO(オッポ)だ。
OPPOは2004年に中国で設立されたメーカーで、2008年からフィーチャーフォンで携帯電話事業に参入し、2011年からスマートフォンを販売している。
同社はカメラに注力することで知名度を上げてきており、中国をはじめ、アジアやアフリカ、オセアニアなどで、今年からは欧州市場への本格参入もスタートさせている。筆者もアジア各国を旅行しているとき、同社の広告やプロモーションイベントを何度となく見かけたことがあり、非常に勢いのあるメーカーだと認識していた。
そんなOPPOが今年1月、日本市場参入第1弾として発表したのがハイエンドモデル「R11s」になる。本コラムでもレビューをお届けしたが、OPPOらしく、デュアルカメラとAIビューティー技術に注力したモデルとして、仕上げられていた。
内容的にも完成度の高いモデルだったが、日本市場での知名度がまだ十分ではなく、価格面でのアドバンテージが弱かったことに加え、3月以降のライバルメーカーの攻勢がかなり強力だったこともあり、思ったほどのヒットは記録できなかったように見える。
今回発表された「R15 Pro」は9月下旬、「R15 Neo」は3GB RAMモデルが9月7日、4GB RAMモデルが8月31日から販売が開始される。販売はビックカメラやノジマ、ヨドバシカメラに加え、オンラインショップのAmazonでも扱われる。
日本市場での第2弾
そして、今回発表された日本市場向け第2弾がハイエンドモデルの「R15 Pro」、普及モデルの「R15 Neo」の2機種になる。
R15は今春からグローバル市場向けに販売されているハイエンドモデルだが、日本市場に投入される「R15 Pro」はグローバル向けをベースに、日本市場向けに再設計されたモデルで、おサイフケータイと防水に対応する。
日本市場で戦っていくうえで、もっとも重要視される機能を搭載してきたわけだが、グローバル市場で戦う端末メーカーが過去にキャリア向けに納入した実績もなく、おサイフケータイに対応してきたのはかなり異例のことで、OPPOの日本市場への並々ならぬ意気込みを感じさせる。
もうひとつの「R15 Neo」はコストパフォーマンスを重視するユーザー向けのモデルだが、縦横比19:9の大画面ディスプレイに、4000mAhを超える大容量バッテリーを搭載し、税抜ながら、3万円を切る価格を設定するなど、国内のSIMフリー市場において、ライバルメーカーの製品としっかり戦っていくことができる仕様を実現している。
グラデーションカラーのガラスボディ
まず、外観からチェックしてみよう。本体は両面にガラスを採用することで、光沢感のある美しいデザインに仕上げられている。
印象的なのが本体背面のカラーで、スマートフォンのボディカラーにはあまりないグラデーションカラーを採用することにより、光の当たり方によって、見え方が変わり、独特の存在感を演出している。
ボディも背面の両側面を湾曲させることで、手にフィットする持ちやすい形状に仕上げている。ちなみに、R15 Proのボディカラーはレッドとパープルが用意されており、いずれも世界的に有名なカラーマスターのカリム・ラシッド氏との共同で開発したものだという。
右側面には電源キーとピンで取り出すタイプのSIMカードスロット、左側面に音量キーを備える。下部にはmicroUSB外部接続端子、3.5mmイヤホンマイク端子を備える。
背面にはデュアルカメラ、指紋センサーが備えられており、中央部分にはおサイフケータイ対応を表わすマークがOPPOのロゴと共にプリントされている。IPX7準拠の防水にも対応しており、濡れた手で端末をつかんだり、雨の日でも安心して利用できる。
19:9の有機ELディスプレイ
ディスプレイは6.28インチのフルHD+(2280×1080ドット)対応の有機ELディスプレイを搭載する。縦横比は19:9、画面占有率は89%となり、本体前面のほとんどをディスプレイが占めるデザインとなっている。
上部にはノッチ(切り欠き)があるデザインで、左上に時計やアンテナピクト、右上にバッテリー残量などが表示される。アプリによって、ノッチ部分が正しく表示されず、操作に影響が出ることを考慮し、アプリごとにノッチ部分の表示をオフにする機能も備える。
独自規格の急速充電
本体には3430mAhの大容量バッテリーを搭載し、急速充電はOPPO独自のVOOCフラッシュチャージに対応しており、5分の充電で2時間の通話を可能にする。
充電は下部に備えられたmicroUSB端子に付属のACアダプターを利用するが、今のタイミングで外部接続端子にmicroUSBというのはやや残念な印象も残る。
おサイフケータイ対応
注目のおサイフケータイについては、今回、対応アプリをインストールしての試用ができなかったが、OPPOによれば、Suica、楽天edy、iD、QUICPay、WAON、nanaco、マクドナルドに対応しているとのことで、発売時にはそれぞれの対応アプリとサービスが利用できるようになる。
SIMフリー端末では、おサイフケータイを搭載する機種が非常に少ないが、OPPOでは今年春にFeliCa搭載の企画をスタートし、富士ソフトの協力などにより、短期間での実装ができたという。
指紋センサー搭載、顔認証も
セキュリティについては背面に備えられた指紋センサーによる指紋認証に加え、顔認識(顔認証)にも対応する。顔認識は画面を見るだけで、すぐに画面ロックが解除され、認識速度も早いため、非常に快適に利用できるが、外見が似ている他人などでも画面ロック解除などができてしまうケースがあるため、よりセキュアに利用したいときは指紋認証のみを利用するのがおすすめだ。
ハードウェアの仕様
ハードウェアのスペックとしては、チップセットに米Qualcomm製SDM660、RAMは6GB、ROMは128GBを搭載する。最大256GBのmicroSDメモリーカードも装着可能だ。
最近の機種ではROMが64GBの機種が増えてきたが、128GBはまだ少なく、microSDメモリーカードも大容量にすれば、ストレージにはかなり余裕を持って、利用できそうだ。
Android 8.1ベースのColor OS 5.1を搭載
OPPO製端末ではAndroidプラットフォームをベースにした独自に「Color OS」と呼ばれるOSを搭載しており、今回のR15 ProにはAndroid 8.1をベースにしたColor OS 5.1が採用されている。
Color OSは基本的に他のAndroidスマートフォンと同じように操作できるが、アプリの履歴表示など、多くの画面がiOSとよく似ており、iPhoneユーザーが乗り換えても比較的、スムーズに操作になじみやすそうだ。ただ、R11sに搭載されていたColor OS 3.2に比べると、Androidプラットフォームとしての操作に近寄った印象もある。
Androidプラットフォームの操作に欠かせないナビゲーションキーについては、画面内に表示される[戻る]キーと[履歴]キーの位置を変更したり、ナビゲーションキーの表示をオフにして、必要なときだけ表示できるようにも設定できる。
ジェスチャー操作
「スワイプアップジェスチャーナビゲーション」と呼ばれる機能を有効にすると、画面最下段から上方向にスワイプして[戻る]、同様にスワイプして途中で止めて[履歴]といった操作ができる。このあたりは画面を少しでも広く使いたいユーザー向けのものだが、操作にもある程度、慣れが必要な印象だ。
画面OFF時のジェスチャー操作もカスタマイズが可能で、ダブルタップで画面をONにしたり、ディスプレイに「O(オー)」を描いてカメラを起動、「V」を描いて懐中電灯を起動する操作が設定できる。iPhone Xのように、画面オフの状態で下から上方向にスワイプして、画面ロックを解除するといった設定も可能だ。
Operaがプリインストール
Androidスマートフォンでは、標準で利用するブラウザにChromeが登録されているが、R15 ProにはOperaが標準でインストールされており、ホーム画面中央にアイコンが登録されている。
Chromeもインストールされているので、Googleフォルダ内のアイコンをタップすれば、起動できるが、ブラウザの操作感がそれぞれ少し違うので、はじめてのユーザーは戸惑うかもしれない。ちなみに、日本語入力はGoogle日本語入力が搭載されている。
実用面では大画面ディスプレイを活かしたマルチウィンドウ表示にも対応しており、YouTubeなどで動画を視聴中、送られてきたメッセージ(SMS)をウィンドウで表示することなどが可能だ。
2000万画素+1600万画素のデュアルカメラを搭載
OPPOがこれまでのモデルでも注力してきたカメラについては、今回のR15 Proでも業界トップレベルのクオリティのものを搭載している。
アウトカメラは2000万画素と1600万画素のデュアルカメラの構成で、イメージセンサーにはソニー製IMX519を採用する。デュアルカメラの基本的な仕様は従来のR11sを継承している。
インカメラも2000万画素のイメージセンサーを採用する。発表会のプレゼンテーションでも触れられていたように、OPPOのカメラ機能の方向性として、面倒な設定をせずに、誰でも美しい写真を撮影できることを重視しているという。今回のモデルではAIを活かす機能を充実させることで、さらに高品質な写真を撮影することが可能だ。
ポートレート撮影
アウトカメラでは「A.I.ポートレートモード」を利用することで、背景をより自然にぼかすことが可能で、「自然光」「フィルム(明)」「トーン(明)」「輪郭光」などの光の効果も選択できるようにしている。
被写体や撮影シーンの認識についても120のシーンを認識し、その内、「室内」「犬」「夜」「赤ちゃん」など16のシーンについては画面内にアイコンを表示する。インカメラでは顔の296のポイントを正確に捉え、顔の認識精度を向上させたことで、800万パターンのビューティ効果による撮影を可能にしている。
普及モデルのR15 Neo
今回の発表会で、R15 Proといっしょに発表されたのが普及モデルの「R15 Neo」だ。現在、国内のSIMフリー市場では3万円前後の端末がもっともよく売れると言われており、その価格帯を狙ったモデルという位置付けになる。
ボディサイズはR15 Proとほぼ同じ。R15 Proの背面の両サイドが湾曲しているのに対し、R15 Neoはフラットな形状でデザインされている。ボディカラーはダイヤモンドピンクとダイヤモンドブルーの2色展開だが、非常にユニークなのが背面の仕上げで、薄らと斜めのパターンが浮かび上がる仕上げで、2046のグレーティングと26回のマイクロナノ加工、24層の光学コーティングを施しているという。
6.2インチのHD+ディスプレイ
ディスプレイは6.2インチのHD+(1520×720ドット)対応のTFT液晶を採用しており、上部にはインカメラなどを内蔵したノッチ(切り欠き)があるデザインとなっている。
本体には一般的なサイズのスマートフォンとして最大級とも言える4230mAhの大容量バッテリーを内蔵しており、通常の利用で約2日間の連続使用、約14時間の動画視聴、約11時間のゲームプレイが可能だという。充電は下部に備えられたmicroUSB外部接続端子に付属のACアダプタを接続する。
R15 Neoのチップセット、メモリ
チップセットは米Qualcomm製SDM450を採用し、3GB、もしくは4GBのRAMと64GBのROMを搭載する。SIMカードトレイには最大256GBのmicroSDメモリーカードも装着可能だが、トリプルスロット仕様になっているため、2枚のnanoSIMカードと1枚のmicroSDメモリーカードを同時に装着することができる。
日本市場への意気込みが感じられる「R15 Pro」「R15 Neo」に期待
国内のモバイル市場は特殊だと言われることが多いが、海外のメーカーのトップからは「消費者の目が厳しい日本市場で勝ち抜くことで、世界で戦っていける」といった主旨の発言を聞くことも多い。その「厳しい目」と言われる要素は、単純に品質という部分だけでなく、日本市場に合った機能、日本のユーザーが求める機能や仕様に、どれだけ対応してくるのかという部分も含まれる。
今回、OPPOが発表した日本市場向け第2弾となる「R15 Pro」と「R15 Neo」は、それぞれに仕様の違いこそあれ、日本のユーザーが期待するニーズにしっかりと応えるべく開発されており、OPPOの日本市場への意気込みが感じられる2機種となっている。
R15 Proはおサイフケータイと防水という日本のユーザーがもっとも重視する2つのスペックを実現した数少ないSIMフリー端末であり、環境を問わず、手軽に美しい写真を撮ることができるカメラも大きな魅力と言えるだろう。6万9880円という価格設定は日本独自の仕様を盛り込んだSIMフリー端末ということを考慮すると、バランスのいい価格と言えそうだが、同等のスペックを持つライバル機種と比べると、最初の段階からもう一息、踏み込んだ価格設定を狙って欲しかったという印象も残る。
R15 NeoはRAMが3GBのモデルも4GBのモデルも3万円を切る価格が設定されており、SIMフリー端末の主戦場に真っ向勝負を挑む構えだ。トップクラスの大容量バッテリー、2枚のnanoSIMカードとmicroSDメモリーカードを同時に装着できるトリプルスロット、AIを活かしたカメラ機能など、普及価格帯のモデルとしては十分な機能の充実ぶりも目を引く。カメラの暗いところでの撮影はもう少し頑張って欲しい印象があるが、A.I.ビューティーモードなど、今どきの機能はしっかりとサポートされており、さまざまなシーンで撮影を楽しむことができそうだ。