三井公一の「スマホカメラでブラブラ」

AIもカメラも進化、「Pixel 10 Pro Fold」で感じた折りたたみスマホとしての完成度

 グーグルから自社設計チップセット「Google Tensor G5」を搭載した折りたたみ式Androidスマートフォン「Pixel 10 Pro Fold」が登場した。カメラのハードウェア性能は前モデルと同等だが、新たな心臓を得てAI機能や処理能力が向上した。

 今回はこの「Pixel 10 Pro Fold」を持って撮影を楽しんでみた。端末の詳細や価格、スペックなどは、本誌別記事を参照いただきたい。

正常進化した「Pixel 10 Pro Fold」

 畳むと一般的なスマートフォンで、開くとタブレット的な使い方ができる「Pixel 10 Pro Fold」。今モデルはヒンジがアップデートされた。その「ギアレス高強度ヒンジ」は10年以上の折り畳み動作に耐えるとされ、IP68準拠の防水・防塵性能を有したのがうれしい。開閉動作は前モデルよりスムーズに感じられた。

 今モデルはカメラのハードウェア的な更新はないが、ディスプレイの明るさがピーク輝度3000ニトとアップし、撮影体験が向上した。実際に写真撮影と閲覧を行ったが、日中の屋外でも視認性が高くとてもいい印象を受けた。

「Pixelsnap」にも対応しているので、さまざまな撮影、充電アクセサリーを折り畳み式ながら利用できるのがうれしい

「Pixel 10 Pro Fold」のアウトカメラスペック

 「Pixel 10 Pro」、「Pixel 10 Pro XL」と比較するとちょっと残念な仕様だが、折り畳み式の実現に妥協は必要なのだろう。

カメラスペック
広角カメラ48 メガピクセル Quad PD 広角カメラ
絞り値 ?/1.70
画角 82°
イメージ センサーのサイズ 1/2 インチ
ウルトラワイド カメラ10.5 メガピクセル Dual PD ウルトラワイド カメラ(オートフォーカス機能付き)
絞り値 ?/2.2
画角 127°
イメージ センサーのサイズ 1/3.4 インチ
望遠カメラ10.8 メガピクセル デュアル PD 望遠カメラ(光学式手ぶれ補正機能付き)
絞り値 ?/3.1
画角 23°
光学ズーム 5 倍
イメージ センサーのサイズ 1/3.2 インチ

「Pixel 10 Pro Fold」各カメラ描写はいかに?

 それぞれの写る範囲はこんな感じだ。

0.5x
1x
2x
5x
20x(デジタルズーム最大時)

 どの画角も「Pixel」シリーズらしく整った画質だ。デジタルズーム最大時でもまずまずの描写になっている。

開いた状態での撮影画面は大迫力である。両手で端末をしっかりホールドして、フレーム内の被写体をじっくりと確認して撮影を楽しめる
閉じた状態では普通の「Pixel」での撮影体験となる
「クイックアクセスコントロール」を有効にすると、ハイライトとシャドウ、そしてホワイトバランスを撮影時にパッと調整できるところが「Pixel」シリーズのいいところだ
「プロ設定」を呼び出せば、シャッタースピードやISO感度などを数値で確認しながら撮影できるところも素晴らしい
「写真のプレビュー」をオンにすれば、開いたスタイルで撮りながら、サイドの画面で前の撮影結果を大きく表示できる。これは使いやすい
撮影結果もパッと開いて大画面でチェックできる。携行時は小さく、使用時は大きく、機材が多い撮影時にこれはとても助かる

 「Google Tensor G5」になりさまざまな動作速度が向上しているように感じた。各所がキビキビしており気持ちいい。また、AIを活かした機能「カメラコーチ」などももちろん搭載されている。機能詳細は過去記事を参照して欲しい。

「Pixel 10 Pro Fold」でブラブラ実写スナップ

 閉じた状態でも開いた状態でも撮影が楽しめる「Pixel 10 Pro Fold」。画質は上々で、バッテリーの保ちもよく、完成された折りたたみ端末だと思う。

ウルトラワイドカメラの写り。クリアで発色もよくのびやかな描写だ
東京湾夕景。HDRが適度に効き、夕焼けと人物がバランスよく再現されている
望遠カメラで日没のビルを狙った。デジタルズーム最大時ではあるがビル壁面のディテールもしっかりと残している
ヴィンテージのピックアップトラックに迫る。錆びた時代を感じさせるボディと、エンブレムなどメタリックパーツの質感描写がいい
望遠カメラで「たまがわ花火大会」を電線越しに撮った。ただシャッターボタンを押しただけだが半分雲に隠れた打ち上げ花火の様子を意外なほど写すことができた
ウルトラワイドカメラのヌケ感高い写りがいい。幹のささくれもディテール豊かにキャプチャーできた
20倍のデジタルズーム最大時でも写りはなかなかのもの。カワウとカワセミの感じもちゃんと写しとることができた
ポートレートモードの境界判定もしっかりとしており、自然なボケ感を演出している。御輿の前にある提灯もうまい具合にぼかすことができている
「クイックアクセスコントロール」でササッと好みの絵に調整して撮影できるところが気に入っている
成城の「病院坂」を深夜に撮影した。「夜景モード」だが手ブレせず、看板の文字も判別でき、アスファルトの路面や壁面のディテールもちゃんと再現できた

「Pixel 10 Pro Fold」は楽しい!

 「Pixel 10 Pro Fold」はそれ自体での撮影体験も秀逸だが、同時に登場した周辺機器と併用するとよりデジタルライフが楽しめる。

 「Pixel 10 Pro Fold」は折り畳み式という特長を活かして、テントスタイルやテーブルトップスタイルでの設置が可能だ。そこで「Pixel Watch 4」と連携して、ファインダーとリモートレリーズ代わりに撮影することも容易だ。

一緒に登場したイヤホン「Google Pixel Buds 2a」はついにノイズキャンセリング機能を搭載。シビアな撮影や集中したい編集時に有効だ
さまざまなところに設置しやすい「Pixel 10 Pro Fold」。ボディ保護のためにもケースを装着してキズから防ぎたい。純正ケースのフィット感と出来が素晴らしい

「Pixel 10 Pro Fold」まとめ

 スマホスタイルとタブレットスタイルの両方を楽しめる「Pixel 10 Pro Fold」。携行のしやすさと大画面の見やすさを両立し、カメラ性能も素晴らしい端末だ。デジタルカメラとの相性もよく、撮影データをWiFiで転送し、「Pixel 10 Pro Fold」の開いた状態でチェックし、対応アプリケーションでレタッチ処理をしてクラウドにアップロードしたりSNSに投稿したりすることも簡単だ。

このように撮影ルートとバイタルのデータをFitbitで確認でき、「Pixel Watch 4」と組み合わせた活用も興味深い
分割画面を使い、写真の一覧を見ながら現像作業ができるので、とても快適だ

 「Pixel 10 Pro Fold」はそれ自体の撮影も楽しいが、デジタルカメラと組み合わせるとその体験をより向上させることが可能だ。ぜひお試しあれ。

三井 公一

有限会社サスラウ 代表。 新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。 雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなども行っている。Twitter:@sasurau、Instagram:sasurau