みんなのケータイ

「毎週1500円」のクリーナーアプリが平然と存在するアプリストアの問題点

 それは夏頃のこと。iPhoneを使っている、離れた所に住む高齢の身内と電話をしていた際、「スマホの容量がいっぱいです」という警告がやたら出るので不安だ、という相談を受けました。

 その人は無料のカジュアルゲームアプリをプレイしていたので、恐らくそのアプリが表示するクリーナーアプリの広告だろうと思いまして、別の身内に頼んでそのアプリにお金を払い、広告が表示されないようにしました。

 ですがその後も、連絡をすると「スマホの容量がいっぱいです」の表示がまだ出てくるとのこと。それはおかしいと思いまして、再び別の身内に頼んでスマートフォンの中を確認してもらったところ、iPhoneの中には多数のクリーナーアプリがインストールされていたことが判明しました。

App Storeで配信されていた、いくつかのクリーナーアプリの起動直後のプロセスを、筆者がGeminiでイメージイラスト化したもの(なので不自然なフォントはご容赦いただきたい)。どこを押せば無料で利用できるか分かりますか?

 その身内は高齢だけに、日頃から「スマホは難しい、覚えられない」と話しているなど、スマートフォンの知識には詳しくありませんでした。それだけに、「スマホの容量がいっぱいです」という突然の広告表示にパニックとなり、そのまま広告に誘導されるがままにアプリをダウンロードすることを繰り返していたようです。

 ただそれだけならアプリを削除すれば済む話なのですが、非常に厄介なのはここから。多数のアプリのうち3つには有料のサブスクリプションを購入しており、しかもその金額が1つのアプリ当たり1500円/週という、にわかに信じ難い価格設定だったのです。

 もちろん、iPhoneでサブスクリプションの課金をするには本人認証が必要なのですが、先にも触れた通りその身内はスマートフォンに詳しくなく、しかも広告にあおられて非常に焦っている。それに加えて教えてもらったいくつかのアプリを筆者手元のiPhoneにインストールしてみますと、アプリを起動して使い始めるまで、下の画像のようなプロセスを経る仕組みとなっていました。

 画面には毎週1500円のサブスクリプション制で、3日間の無料トライアルが可能と明記されており、流れに沿って「続ける」を押していくとサブスクリプションの課金に誘導される仕組みとなっていたのです。無料で使い続けるには、アプリにもよりますが下の方に小さい文字で記載されている「後で」や、画面の左上や右上に薄い色で小さく表示される「×」ボタンを押すなどの操作が必要で、非常に分かりにくく一種のダークパターンという印象です。

 スマートフォンを熟知し数々のダークパターンを潜り抜けてきた猛者なら話は別でしょうが、スマートフォンに知識の乏しい高齢者が、しかも非常に焦っている状態でこのような場面に出くわしてしまったら、「続ける」ボタンを押してよく分からないまま契約を承諾してしまうことは容易に想像がつくのではないでしょうか。その結果、3つのクリーナーアプリに毎週1500円、判明するまでおよそ1カ月間課金がなされており、本人が気が付かないまま計2万円超の課金がされていた訳です。

実際には流れに従って「続ける」を押すと毎週1500円の課金に誘導されてしまい、無料で使い始めるには下部の「後で」を押す必要がある

 もちろん意図した契約ではないので、別の身内に頼んでそれらアプリは即刻解約してもらい、さらにアップルの返金手続きから手続きをしてもらったのですが、返金が認められたのは直近の1週間のみでした。

 1度目の申請が認められなかった場合、再検討をリクエストして2度目の申し立てが可能なことから、今度はより具体的な経緯を記述し、なおかつ悪質なアプリであることを説明して再申請してもらいました。ですがこちらは全て認められず、その後アップルのサポートに電話をしてもらったのですが、プライバシー保護の観点から2回以上の申請は認められないと言われたそうです。

アップルの返金手続きは、1度目の内容に不服な場合再申請も可能となっている。そこでより詳細に説明を入れて2度目の申請をしてもらったが、返金は認められなかった

 ここまで来ると、正直なところ、八方ふさがりで、後は国民生活センターに相談するくらいしか筆者には考えつきません。ですが、今回の出来事を踏まえ、あらためてApp Storeでクリーナーアプリを検索し、アプリ内課金のあるものを実際にダウンロードするなどして確認したところ、1000円以上/週の課金を要求するものがかなりの割合に上ることに強い衝撃を受けました。

クリーナーアプリを実際にインストールして試してみると、起動して間もなく1000円超のサブスクリプションを求められるものが非常に多いことが判明。中にはいきなり年間6000円のサブスクリプションを求めてくるものもあった

 また、今回は利用者がiPhoneだったことからApp Storeが舞台となりましたが、同種のアプリは「Goole Play」向けにも少なからず配信されています。それゆえどのスマートフォンを利用していても、同種のトラブルに巻き込まれる可能性が非常に高い状況にある訳です。

 アプリストア側としては、利用者に課金内容の説明をするなどストア側が定めたルールを守ってさえいれば、たとえユーザーが「高すぎる」と感じる価格であっても、アプリ開発者がどのような値付けをしても構わないという方針なのでしょう。またインストールや課金時にユーザーに明確な認証を求めている以上、どのようなプロセスを経ていようと、課金した責任は認証を許諾した本人にある、という考えなのではないかと思われます。

 不安をあおる広告でユーザーが誘導されていることも、そもそもアプリストアの管轄外なので対処のしようがない、と判断をしている可能性が考えられます。ですがそうした現状を放置していることで、アプリストアを舞台として意図しない課金の請求に苦しんでいる人がいることも、また事実なのです。

 そしてこのような状況がまかり通る現状では、どのプラットフォームであっても、詳しい知識を持たない高齢者などに、スマートフォンを安全に利用させることはできないと言わざるを得ません。実際、今回の被害に遭った身内は今回の出来事に強いショックを受け、以後「スマートフォンは怖い、使いたくない」と話し、電話と「LINE」以外利用しなくなってしまったそうです。

 そうした人たちでもアプリストアを安全に利用するためにも、適正水準ではない価格のアプリを排除したり、適正化やダークパターンに対するより厳しい対処をしたりするなど、対策できることは多くあるように思います。

 昨年のちょうど今頃、いわゆる「スマホ新法」に関連してアプリストアの安全性についての議論が白熱したことを記憶していますが、各社が真に安全なプラットフォームを実現したいのであれば、足元のアプリストアでいま起きている、グレーゾーンへの対処を急ぐべきではないかと筆者は強く訴えたいところです。