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住所変更したマイナンバーカードはeKYCで使えない!?
2023年5月9日 00:00
4月19日より、筆者が利用している地方銀行が「ことら送金」サービスに新たに対応。そこで、その地方銀行でもことら送金を利用できるよう準備を始めたのだが、その設定中に大きなトラブルに見舞われることになった。
4月19日からことら送金サービス対応銀行が増えた!
ことら送金サービスは、ことら送金に対応した銀行間での10万円以下の個人間送金を、0円または非常に低額な手数料で行える新たな送金サービスで、2022年10月11日より開始となった。サービス開始当初は、メガバンクや一部の大手地銀など全20行でスタートし、11月24日に11行、2023年4月19日に18行が追加され、現在は全49行で利用可能となっている。
ことら送金を利用するには、各行が対応するスマートフォンアプリを利用する。それらスマートフォンアプリからことら送金サービスを選択し、送金したい人の口座番号だけでなく、電話番号やメールアドレスを指定した送金も可能。ことら送金の送金手数料は、同一行宛はもちろん他行宛も無料としているところが多いようだ。
筆者は、メガバンクや地銀などの口座を所有しているが、4月19日に追加された銀行に、筆者が利用している地銀が含まれていたので、そちらでもことら送金を利用できるように早速準備を始めたのだった。
百十四銀行でのことら送金はBank Payアプリを利用
筆者が利用している地銀は、香川県を拠点とする「百十四銀行」だ。百十四銀行では、メインアプリとなる「百十四銀行アプリ」をはじめ、「114通帳アプリ」、「114バンキングアプリ」、「114デジタル通帳アプリ」、「114口座開設アプリ」と様々なアプリを提供しているが、ことら送金を利用するには日本電子決済推進機構が運営するスマホ決済サービス「Bank Pay」のアプリを利用することになる。
具体的な利用方法は、あらかじめBank Payアプリに対応する口座を登録しておき、その口座を選択した上で「ことら送金」を選択。あとは送金相手の口座番号や電話番号、メールアドレスなどを指定して送金することになる。つまり、まずはBank Payアプリに筆者の百十四銀行の口座を登録しておく必要があるわけだ。
本人確認で「確認NG」を連発
ところで筆者は、これまでBank Payアプリを利用していなかった。そこでまずBank Payアプリをスマホにインストール。次に、Bank Payアプリを利用するために必要となる、本人確認作業を行うことになった。
Bank Payでの本人確認作業は、基本的にオンライン本人確認、いわゆる「eKYC」で行う。その流れは、スマホのカメラを利用してマイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類を撮影して転送し、同じくカメラを利用して顔写真を撮影。さらにカメラで顔を捉えつつ指示通りに上下左右に顔の向きを移動させたりまばたきをする、といったものとなる。
このあたりは、読者のみなさんも実際に試したことがあるだろう。筆者も、過去に様々なアプリでeKYCを行っており、今回もいつもどおりにアプリの指示に従って作業を進めた。
通常、eKYCでの本人確認の可否については、別途メールで送られてくることが多い。Bank Payについても同様で、(作業を行う時間帯にもよるが)数分待てば本人確認の可否がメールで送られてくる。今回も数分でメールが届いたのだが、そのメールにはなんと「照合NG」とされ、本人確認が行えなかったと記載されていた。
過去にも、本人確認書類がブレて撮影されていたりして失敗したことがあったので、今回もそれと同じと思い、ブレずに本人確認書類が撮影できていることを確認しながら再度作業を進めた。しかし、それでもまた「照合NG」となった。
ここで、何かおかしいな、と感じつつも、再度チャレンジ。しかしそこでもまた「照合NG」となった。結局、3回連続で「照合NG」となったのだ。
運転免許証を利用すると、問題なく認証が通った
今回、本人確認書類として利用したのはマイナンバーカードだった。マイナンバーカードなら表面だけの撮影ですむこともあり、筆者はeKYCでは基本的にマイナンバーカードを使うようにしており、過去のeKYCでも本人確認がNGとなったことは一度もなかった。そのため、今回のNG連発にはかなり驚いたのが正直なところだ。
ただ、過去のeKYCで利用していたマイナンバーカードと、今回利用したマイナンバーカードには1つだけ異なる点があった。それは転居に伴い新住所が書き加えられている、という点だ。
筆者は昨年末に転居し、それに伴ってマイナンバーカードの住所変更を行った。マイナンバーカードには、表面に住所変更時の新住所を記載する欄が用意されており、筆者のマイナンバーカードにはそこに新住所が記載されている。
実際に住所変更したマイナンバーカードをお持ちの方はおわかりだと思うが、マイナンバーカードに記載される新住所は非常に小さな文字で記載される。そのため上部に書かれているカード発行時の住所と比べると、かなり見づらいのだ。
もちろん、eKYC時に撮影した写真で新住所も問題なく読めることは確認していた。そのため、多少文字が小さくてもほぼ問題ないだろうと思っていた。しかし実際には認証NGが連発したので、新住所の記載で何らかの問題があるとしか考えられなかった。
しかたがないので、マイナンバーカードでの認証は諦め、運転免許証を利用してeKYCを進めてみたところ、こちらは問題なく認証が通り、本人確認が完了したのだった。
マイナンバーカード記載の新住所の読み取りづらさが原因
後日、日本電子決済推進機構に問い合わせてみたところ、認証がNGとなった原因は、マイナンバーカードに記載されている新住所の一部文字が手書きのように読み取れるために真正性が確認できなかった、とのことだった。つまり、住所変更したマイナンバーカードが悪いのではなく、新住所の印字に問題があったのだ。
マイナンバーカードへの新住所の記載は、手書きではなく印刷されている。ただ、確かに一部の文字は印字が滲んだようになっていて、印刷ではなく手書きのように見えてしまっている。今回Bank PayのeKYCで弾かれたからには、おそらく今後eKYCを行う場合には同様の理由で弾かれる可能性が高い。とはいえこれは、筆者側ではどうしようもない部分で、これをもってNGとされてしまうのはかなりキツい。
今回の件で痛感したのは、本人確認書類を撮影して画像認識や目視で本人確認を行う方式、いわゆる『eKYC「ホ」方式』は限界がある、というものだ。今回の筆者の場合のように、本人確認書類に真正性が確認できないと取られかねない特定の問題がある場合に対処できないことからも、それは明白だ。
今回筆者は最終的に運転免許証を利用して認証は行えたが、もし本人確認書類を1つしか持っておらず、それに真正性が確認できない何らかの問題がある場合、eKYCが利用できなくなってしまう。それこそ大きな問題だろう。
ただこの問題は、マイナンバーカードの公的個人認証サービス(JPKI)を活用する『eKYC「ワ」方式』を利用できるようにすると簡単に解消できそうだ。ワ方式は非常に安全性が高いだけでなく、写真の目視による検証も不要となるので非常に有用だ。
確かに数年前まではマイナンバーカードの普及率もそれほど高くなかったのでワ方式の採用例が少ないのもしかたがないかもしれないが、マイナポイントなどの施策によってマイナンバーカードの普及率がかなり高まった現在、ワ方式を採用する下地は整ったと言える。
eKYCは、スマホを利用して金融系サービスなど様々なサービスを安全かつ手軽に利用するために不可欠なものだ。それだけに、今回のような問題を改善すべく、eKYCワ方式の採用を急速に進めてもらいたい。