みんなのケータイ

離島のバスで“タッチ乗車”できる「Ringo Pass」を使ってみた

 JR東日本が2020年から提供しているMaaSアプリ「Ringo Pass」は、シェアサイクルやタクシーの決済などが1つのアプリで完結するアプリです。

 これまでも、乗車券や特急券をまとめて購入できたり、お得なチケットを購入してアプリ画面の提示だけで利用できたりするMaaSアプリは登場していました。「Ringo Pass」は、QRコード以外にスマートフォンのFeliCa(おサイフケータイ)機能を利用し、シェアサイクルやバス運賃の支払い機能を搭載しています。

シェアサイクル「ドコモバイクシェア」

早朝でも利用できるバイクシェア

 ドコモバイクシェアが提供している全国のシェアサイクルサービスや、OpenStreetの「HELLO CYCLING(ハローサイクリング)」で、「Ringo Pass」を使ってシェアサイクルの借り受けができます。

 「Ringo Pass」アプリでは、「Ringo Pass」が使える交通機関がマップ上に表示されますが、シェアサイクルのステーションも掲載されます。シェアサイクルのアプリと同様に、どのステーションに何台借りられる自転車があるか、またその状態を確認できるので、「ステーションに行って借りられるものがなかった」という空振りを防げます。また、予約の有無にかかわらず、登録したSuicaなどの交通系ICカードやモバイルSuicaなどをかざせば貸出手続きが完了するのも、既存のシェアサイクルアプリと同様です。

「ドコモバイクシェア」と「HELLO CYCLING」のステーションが1つのマップで確認できます。利用には、それぞれの利用登録が必要

 地域によっては、複数のシェアサイクル事業者が入り乱れている地域もあるため、1つの画面でさまざまなステーションの状況を確認できます。

 一方で、「ドコモバイクシェア」や「HELLO CYCLING」のアプリでは、貸出時や施錠時、返却時などにプッシュ通知が届きます。これにより、施錠確認や返却確認のリチェックや、離れた場所からでもちゃんと返せているかといった確認に役立ちます。「Ringo Pass」アプリでは、これらの通知がメールでしか届きません。

 筆者は一度“5分しか走行していない”利用を、カギをかけ忘れて返却手続きをしていなかったため“3時間近くの利用”で数千円の利用料金になってしまったことがありました(盗難されずにほんとうによかった)。この経験もあり、シェアサイクル利用時は、返却通知を忘れず確認する癖付けをしているのですが、「Ringo Pass」の場合、この通知がメールで届くので、ラグもあることから若干不安になる場面がありました。

都内の路線バスでも利用できる!?

 「Ringo Pass」の決済機能ですが、東京都内の路線バスでも利用できます。

 都内と行っても、23区から南へ約180kmに位置する東京都神津島村の村営バスの話です。

 神津島村の村営バスは、一部の路線を除いて大人200円、小人100円の均一運賃で運行しています。バスは、観光シーズンに運行される大型バスを除いては、小型のマイクロバスで運行されています。

神津島村営バス
路線図

 運行本数の少なさや、車両自体の大きさ故、運賃箱などの大がかりな装置やICカード機器を導入することは今後も難しいと予想されますが、新たな支払い方法として6月から「Ringo Pass」が追加されました。

 利用方法は、シェアサイクル同様に地図上から乗車バス停を選択し、1グループで何人乗るかを選択、その後にバス車内のNFCタグにタッチすると、決済完了画面が表示されます。その画面を運転手に提示するとバスに乗車できるしくみです。

ユーザーの端末でバス停と乗車人数を選択、その後バス車内のNFCタグにタッチして決済完了画面を見せればOK

 メリットは、小銭がなくてもスムーズに乗車できる点です。神津島村には大手のコンビニがなく、場所によっては自販機もありません。運良く車内に釣り銭があればいいですが、車内には両替機もないので、崩す場所が限られてしまいますが、「Ringo Pass」ではクレジットカードから自動で決済されるため、小銭がなくても安心して乗車できます。

 1点改善してほしいのが、「決済完了画面のデザイン」です。決済完了後、運転手が人数の確認をするのですが、この字が小さいのです。日中のバス車内なので、天候次第では見えづらく、この確認に時間がかかることもありました。観光シーズンでしたが、特に混雑したことはありませんでしたが、大きい画面でみやすくしていただけるといいかなと思いました。

インフラ過疎地の新しい決済手段になるか?

 Suicaの技術を持っているJR東日本では、これまで交通系ICカードを利用したサービスの普及を促進する流れがあったかと思います。実際に多くの交通機関などで交通系ICサービスが利用できる一方で、地方ではまだまだ普及しておらず、現金や紙券のみといった交通機関もあります。

 一方で、近年普及してきたQRコードを使った決済サービスでは、事業者側の導入/運用コストが大幅に削減できる一方、ユーザーが金額を入力する手間や時間がかかる面や、QRコードや決済完了画面が偽造されるリスクもあります。

 「Ringo Pass」では、支払いの紐付けにNFCタグを用意することで、偽造防止と支払い手順の簡素化を目指したものだと思います。

 神津島村のケースでは、バス車内でも「Ringo Pass」のPOPなどで宣伝しているものの、そこまで利用されていないようでしたが、高価な機器を導入しなくてもキャッシュレス決済ができる「Ringo Pass」は、今後地方の交通機関に浸透するかもしれません。