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iPhone/iPadで完結できる海外旅行向けeSIMサービス「Soracom Mobile」

【iPhone 11 Pro Max】

 例年2月下旬にスペイン・バルセロナで開催される「MWC Barcelona」は、今年、残念ながら、新型コロナウイルスの影響により、中止となってしまった。毎年、MWC取材のため、早くから航空券やホテルも予約していたが、イベントそのものが中止となってしまったんじゃ、何もできない。でも、筆者の場合、航空券は変更/キャンセル不可だし、ホテルの予約も会期中の4日間の分はキャンセル不可。悩んだ挙げ句、やっぱり、マイルも貯まるし、現地でも少しは仕事ができるだろうと考え、2月21日にバルセロナへ向かって、羽田空港を飛び立った。

iPhone 11 Pro Maxに「Soracom Mobile」のeSIMをインストールして、バルセロナとフランクフルトで使うことができた

 本コーナーではこれまでも国際ローミングや渡航先のプリペイドSIMカードなどの話題を何度も取り上げてきたけど、渡航先ごとにプリペイドSIMカードを購入するシーンはほぼなくなり、最近は複数の国と地域で利用できるプリペイドSIMカード、なかでもeSIMが利用できるサービスが注目を集めている。

 今回、試してみたのは2月21日に発表されたばかりのソラコムの「Soracom Mobile」というサービス(関連記事)。iPhone/iPadのeSIMを利用する海外データ通信サービスで、欧州、北米、オセアニア地域を対象にしている。ちなみに、ソラコムはIoT向けの通信ネットワークをグローバル市場で提供する事業者で、2017年にKDDIが発行済み株式を取得として、子会社化したことでも知られている。

「Soracom Mobile」のeSIMサービスを利用したいときは、まずはアプリのインストールから開始s

 こうしたeSIMを利用した海外でのデータ通信サービスや国際ローミングはいくつかあり、筆者もiPhone 11 Pro Maxに以前、本コーナーで紹介したタイのAISの「SIM2FLY」のeSIM版を登録してある。今回のSoracom Mobileも海外でデータ通信が利用できるeSIMサービスだが、ちょっとユニークなのはセットアップの部分にある。

 セットアップは「Soracom Mobile」のアプリをAppStoreからインストール。アプリを起動して、料金プランを選ぶと、セットアップがスタートする。

 まず、こうしたサービスを利用するとき、気になるのがアカウント。サービスごとにメールアドレスなどをアカウントとして登録することが多いけど、どこかでメールアドレスが漏れたり、スパムメールが届いたりしないかを心配する声は多い。同時に、アカウントとパスワードを管理するのも面倒。

アップルが提供する「Appleでサインイン」に対応
「メールを非公開」を選べば、ユニークな文字列のメールアドレスが生成され、サービス提供元に伝えられる

 こうした状況に対し、アップルはランダムな文字列を使ったメールアドレスを発行して、対応サービスに提供する機能などを備えた「Appleでサインイン」というサービスを提供している。Soracom Mobileは「Appleでサインイン」に対応しているため、登録時に「メールアドレスを非公開」を選べば、ランダムな文字列を使ったメールアドレスが発行されて、登録される。Soracom Mobileからのメールは元のApple IDのメールアドレスに転送されるため、重要な情報を見逃す失敗はない。

 次に、支払いもiPhoneに登録されているApple Payがそのまま利用できる。おなじみの「ダブルクリックで支払い」の画面が表示され、決済すれば、完了。クレジットカードも使えるが、こちらの方がはるかに簡単。

支払いはApplePayが利用できる

 そして、最後はeSIM情報の登録。iOSでは2018年発売のiPhone XS/XS Max/XRからeSIMが搭載されているけど、端末にeSIMの情報を書き込むには、QRコードを読み取る形式が一般的。ところが、iPhone/iPadでQRコードを読み取るには、パソコンや他のスマートフォンなどにQRコードを表示する必要がある。

支払いが完了すれば、「eSIMをインストールする」をタップすれば、自動的にeSIM情報がダウンロードされ、iPhoneに書き込まれる
eSIM情報が書き込まれたら、モバイル通信プランの名称を設定する

 これに対し、Soracom Mobileは画面に表示された「eSIMをインストールする」をタップすれば、eSIMの情報がiPhoneに転送され、自動的に登録される。つまり、iPhone/iPadのみで完結できるわけだ。もちろん、日本の通信事業者なので、表示は基本的に日本語なので、非常にわかりやすい。

 実際の利用については、他のeSIMサービスと同様で、渡航先に着いたら、音声通話は国内の携帯電話事業者と契約した主回線を利用しておき、モバイルデータ通信をSoracom Mobileに切り替えればいいわけだ。ちなみに、Soracom MobileのeSIMサービスを利用するには、iPhoneのSIMロックは解除しておく必要がある。

 今回はスペイン・バルセロナ、ドイツ・フランクフルトで利用したが、通信速度は受信時3~5Mbps程度のことが多かった。あまり通信速度は速くないが、メールやWebページ閲覧、SNSなどであれば、十分利用できるレベルだ。

今のところ、「ヨーロッパ」「北米」「オセアニア」が対象エリア
ヨーロッパの料金プラン
北米の料金プラン
オセアニアの料金プラン

 料金プランとしては、今のところ、ヨーロッパ、北米、オセアニアの3地域で、アジア圏がないのが惜しいところ。期間は最大30日間で、利用できるデータ通信量は1/3/5/10GBの4種類。利用期間やデータ通信量はアプリで確認でき、残量が少なくなれば、メールで知らせてくれる。

データ残量が少なくなれば、メールでお知らせが来る
アプリではeSIMの有効期限やデータ通信の残量などが確認できる

 全体的に見て、「Appleでサインイン」や「ApplePay」など、アップルが提供するサービスをうまく活用して構成された海外旅行向けeSIMサービスという印象で、はじめてeSIMサービスを利用するiPhone/iPadユーザーに適している。ここのところ、海外渡航がちょっと厳しい時期が続いているけど、安心できるシーズンになったら、試してみるといいかもしれない。