みんなのケータイ
プロモードとRAW、Lightroomでフルマニュアルを楽しむ
【HUAWEI Mate 10 Pro】
2019年5月16日 06:00
値下げや安売りに続いて在庫切れも目立ちはじめ、SIMフリー版はコストパフォーマンス云々以前に店頭で入手が難しくなりつつある「HUAWEI Mate 10 Pro」。筆者がこの端末について紹介するのは今回が最後になるが、大きな特徴である「カメラ」機能に立ち返り、“お手軽”とは少し違う、ちょっとめんどうな楽しみ方を紹介してみたい。
「Mate 10 Pro」をはじめ、Leica監修のカメラを搭載するファーウェイのスマホのカメラ機能には、シャッター速度や絞り、ISO感度などをフルマニュアルで操作できる「プロ」モードが用意されている。このプロモードの場合のみ、解像度の設定で「RAWデータの保存」を有効にすることができる。実際に撮影すると、通常のJPEG形式に加えて、RAWフォルダの中に「.dng」形式のRAWデータが保存されるという、同時記録方式になっている。
RAWについての詳細は省くが、一般的に利用されるJPEGが、明るさや色、階調などをすべて決定(圧縮)した後の絵(データ)なのに対して、RAWはセンサーが捉えていたデータをすべて保持しているため、撮影後であってもはるかに柔軟な調整が可能。デジタルカメラではおおむね上級モデル以上でサポートされる機能だ。この“生のデータ”を調整をして絵に落とし込む工程は、フィルムに習って“現像”と呼ばれている。「Mate 10 Pro」が採用している「.dng」形式は、アドビが提唱する汎用性の高いRAWのフォーマットで、サードパーティのツールで現像・編集することが前提になるスマートフォンでは妥当な選択といえる。「Photoshop」や「Lightroom」といったアドビの写真編集アプリケーションでも、もちろん「.dng」はサポートされている。
スマホで撮影したRAWデータは、デジタル一眼レフなどで撮影した写真と同様に、PCに転送してPC上で「Photoshop」や「Lightroom」などを使って現像することが可能だが、最近ではこれらのアプリケーションにスマートフォン版も提供されている。つまり、スマホ(Mate 10 Pro)でRAWで撮影、それをそのままスマホアプリ上で現像、ということが可能なのだ。
スマホアプリの「Lightroom」はいくつものバージョンアップを経て、かなり利用しやすくなっている印象だ。また、昨日5月15日のニュース記事でも取り上げたが、最新版ではチュートリアルが大幅に強化されており、“どのパラメーターをいじればいいのか分からない”というようなユーザーでも始めやすくなっている。
筆者も最新版の「Lightroom」アプリでチュートリアルを試してみたが、自分が撮影した写真を題材に、定番的なパラメーターの調整が順番に指南され、そのパラメーターの意味なども簡単に解説されて、非常に分かりやすくなっていた。チュートリアルでは指定の値までスライダーを動かすと端末がブルッと振動するなど、細かい部分まで作り込まれている。どの状態でも、写真をタップで長押しすると「補正前」の写真に切り替わり、簡単に比較できるのも便利だ。
誤解のないように書いておくが、「Mate 10 Pro」のカメラ機能は、通常のモードですべてオートで撮影しても、かなり綺麗に(適切に)補正された写真になり、はっきりいって、水平などの角度以外は後工程で補正する必要はない。
一方で、旅行先や友人とのイベントなど、どうしても綺麗に残しておきたい場合、あるいは、世に氾濫している定番フィルターではなく、もっともっと印象的な写真に仕上げたい・共有したいと思うような、クリエイティブな一面を盛り込みたい場合、言うなれば“勝負の一枚”とでもいうべき写真にしたい場合は、RAW現像の調整幅はうってつけで、一般的な写真加工アプリのようにキツさや不自然さを出すことなく綺麗な写真に仕上げることが可能だ。
「Mate 10 Pro」はフルオートでもAIなどを駆使した綺麗な写真を撮影できるが、プロモードのRAWデータをLightroomアプリで編集すれば、プロさながらの工程で写真の仕上げを“追い込む”ことも可能。RAW現像アプリの使い勝手が向上してきたことで可能になった楽しみ方ともいえる。
マニュアルでの調整は面倒くさいといってしまえばそれまでだが、パラメーターの意味をひとつひとつ覚えて実感していけば、ありきたりなフィルターではマッチしなかった自分の好みも見えてくる。落ちぶれても元上流階級の「Mate 10 Pro」は、こうした楽しみを受け止める、懐の深さがある端末といえるのではないだろうか。