みんなのケータイ

ゼンリンがデータ提供したというMapboxを使ってみた

【V30+ L-01K】

本当にGoogle マップよりMapboxがいいの?

 Google マップの地図データの不備で、タイムラインが阿鼻叫喚の様相を呈していたのは記憶に新しい。個人的には騒がれているほどのトラブルは経験していないのだけれど、以前は住所検索時にピンポイントで位置を特定できたところが、最近は周辺エリア一帯を指し示すようになった箇所もあって、なんとなく不安は残る。

 代替地図を選ぶなら、やはりゼンリンのデータを利用しているものを、と思う人が多いだろう。選択肢としては、ゼンリン自身の「いつもNAVI」や「Yahoo!地図」などがあり、特にアプリとしての完成度も高いYahoo!地図が無難そうだ。けれども、米国の地図プラットフォーム「Mapbox」が、Google マップの問題が広がったのとほぼ同時にゼンリンとの提携を発表したこともあって、そちらもちょっと気になる。そんなわけで、さっそく試してみることにした。

MapboxのWebサイト

 あらかじめ言っておくと、Mapboxは地図アプリの形でリリースされているわけではない。あくまでも地図系アプリ開発者向けのプラットフォームとして、地図のデータやインターフェースを提供しているにすぎない。なので、Google PlayやApp Storeなんかでアプリを探しても、そのものズバリの地図アプリを手に入れることは不可能だ。どうしてもスマートフォンで試してみたいなら、Mapboxでどんな地図が見られるのかを理解するためのデモアプリをゲットしてみてほしい。

Mapboxのデモアプリ。さまざまなスタイルの地図が作れることがわかる

 さらに言うと、ゼンリンのデータ連携についてはMapbox曰く「プライベートベータ版で使えるよ」とのことで、この原稿を執筆している3月末時点では、一般の開発者であっても最新のゼンリンのデータが反映された地図をすぐに試せるわけでもない。だから、いずれにしても「だいたいどんな地図か」くらいしかわからないだろう。

 でも、開発者向けの地図プラットフォームとはいえ、とりあえず地図を表示するだけなら難しくない。スマートフォンアプリにMapboxの地図を組み込むためのSDKや、Webに埋め込むためのAPI(JavaScript)が使えるからだ。一番簡単なのは、後者を利用してHTMLを作成し、それをPCやスマートフォンで読み込むことだろう(PCならローカルファイルを参照できるが、スマートフォンはサーバーにアップロードしたHTMLを読み込む必要がある)。

 作成方法は、初めに無料のユーザー登録を行なって、ログイン後のダッシュボードからWeb埋め込み用のコードを取得し、それをHTMLファイルに貼り付けるだけ。ちなみにMapboxは完全無料のサービスではない。例えばWeb埋め込みの場合は地図データを一定回数以上リクエストしたりすると有料プランへの移行が必要になる。といっても、1カ月間に5万回以上というかなり余裕のある制限(リクエスト回数以外にも制限はあるが)なので、個人利用であれば無料プランの範囲に収まるだろう。

ユーザー登録後のダッシュボード
Web埋め込みの手順を丁寧に教えてくれる
作成したHTMLをサーバーにアップロード。PCで開いた。現在地の表示まで実装したが……
スマートフォンだとなぜか縦に伸びた地図になり、現在地の表示もズレる

 で、当初HTMLでいろいろ試してみたのだけれど、PCではうまくいっても、スマートフォンで表示すると地図のアスペクト比がおかしくなったり、現在地が正しく反映されなかったりして、この問題の解決が難しそうだったのでアプリ化することにした。こちらも地図を表示するだけなら(アプリ開発の環境が整ってさえいれば)わりと簡単だ。Mapboxのダッシュボードから指示される手順通りにコーディングしていけば、Mapboxの地図を表示するシンプルなアプリができあがる。

Web埋め込みの問題は解決が面倒そうなので、Androidアプリにしてみることに。こちらも手順通りにコーディングしていくだけ
Android Studioでアプリをビルド

 先述の通り、普通にアプリ化して見られる地図は、ゼンリンのデータ連携がまだ反映されていないものだ(地図データ自体はOpenStreetMapを使用している)。なので、データの品質からいえば現状は決して高いとは言えない。自宅など知っている建物の形はまるで違うし(現在のGoogle マップは古い建物形状に戻っているように見えるが、Mapboxの場合はそれとも違って、いびつだ)、詳しい建物の情報も少ない。バス停の位置も実際より離れていたり、なかったりする。これがゼンリンのデータ連携でどこまで変わるのか、楽しみではある。

 それに、このMapboxは、当たり前だけれど自分でオリジナルの地図アプリ(やオリジナルスタイルの地図)を作り出せるのが他にはない魅力だ。もちろん実用性のある地図アプリにするためには、現在地を取得するロジックや、キーワード検索するためのインターフェース、ポイントした箇所の情報を表示するための仕組みなど、さまざまな機能を自力で考えて開発しなければならないわけだけれど。ああ、ちょっと考えただけでも気が遠くなるなあ……。

こんな感じでアプリが完成。地図表示するだけで取り立てて他に機能はない
Google マップで問題になったのと同じ場所をいくつか確認してみたが、まだゼンリンのデータが反映されていないと思われる現時点では、優れていると感じるところはあまりない

 ということで、とりあえずゼンリンの正確なデータで快適に地図を使いたいなら、今のところはYahoo!地図を使うのがやっぱり無難なのかなあ、と改めて思ったのであった。Google マップについても、ネットで誤りを指摘されていた箇所はほとんど修正されているように見えるので、今回の騒動を過去のものとするようなさらなるパワーアップに期待したいところだ。