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無線機ベンダーシェアでは北欧勢が活躍、基地局工事会社は市場縮小見込み再編続く

携帯基地局市場と設備投資の実態 2022(2)

 MCAは、携帯基地局市場に関する調査結果を取りまとめた「携帯電話基地局及び周辺部材市場の現状と将来予測 2022年版」を5月に発刊した。そこで、前回に引き続き、同市場の動向を取り上げていきたい。今回は、無線機ベンダーシェアと基地局向けエンジニアリング市場を見ていこう。

<無線機ベンダーシェア>国内無線機市場で活躍する北欧ベンダー

国内無線機ベンダーシェアの推移をみると、2021年度は北欧ベンダーが42.5%を占めた。国内ベンダーも拡大し、アジアベンダーは韓国KMWによる楽天モバイルへの供給が続くものの、中国ベンダーの回復が見込めず、サムスン電子ジャパンの孤軍奮闘が続く。

 ノキアソリューションズ&ネットワークスは大手3社で低調であったが、楽天モバイルの旺盛な4G展開により、2021年度は国内最大手に返り咲いた。一方、エリクソン・ジャパンはKDDI(au)とソフトバンクでシェアを獲得し、国内第3位の位置にとどまっている。

 2021年度はNTTドコモが基地局投資を抑制したが、5G専用周波数帯によるネットワーク構築を推進したため、富士通と日本電気(NEC)に好影響をもたらした。さらにNECは楽天モバイルでの5G展開も追い風となっている。

 今後の5Gネットワーク構築はLTE周波数のNR化が主流になるとみられるが、NTTドコモと楽天モバイルは5G専用周波数帯による展開にも注力する見込みで、国内ベンダーの盛り返しが期待される。

<基地局向けエンジニアリング市場>全国系大手会社3社のシェアは70%強

 2021年度の基地局向けエンジニアリング市場は全国系大手エンジニアリング会社3社が72.5%のシェアを獲得した。最大手はコムシスグループで、エクシオグループ、ミライト・ワングループと続く。

 コムシスホールディングスは日本コムシスやサンワコムシスエンジニアリング、TOSYS、つうけん、NDS、SYSKEN、北陸電話工事を、エクシオグループがシーキューブや西部電気工業、日本電通、大和電設工業、エクシオテックを、ミライト・ワンは旧ミライトや旧ミライト・テクノロジーズを統合し、TTKやソルコム、四国通建を抱える。

グループ内再編を進めるエクシオグループとミライト・ワン

 全国系大手エンジニアリング会社でグループ内再編が進んでいる。エクシオグループが北海道及び東北エリアのグループ会社再編に続き、2022年7月にエクシオ・エンジニアリング西日本を設立した。

 ミライト・ホールディングスも2022年7月のミライト・ワンへの商号変更に伴い、社内にキャリアイーストカンパニー、キャリアウエストカンパニーを設けている。各社はグループ内での再編を進めることにより、事業の効率性を高め、今後の工事需要に備える。

今後はLTE周波数のNR化へのシフトで市場縮小が懸念

 基地局向けエンジニアリング市場は2021年度に楽天モバイルによる旺盛な工事発注から好調を維持した。NTTドコモも2021年度は5G専用周波数帯を中心としたネットワーク展開を図ったが、ソフトバンクはLTE周波数のNR化を中心とした動きとなった。

 2022年春からはNTTドコモもLTE周波数のNR化を進めており、5G開設計画遵守に力を抜けないKDDI(au)、2022年度を5Gネットワーク構築の仕上げの1年とするソフトバンクと大手3社はLTE周波数のNR化へシフトしている。

 一方、2021年度に旺盛な工事発注を行った楽天モバイルが2023年の新規工事発注を停止しているという話もある。エンジ会社にとって、重要な5G専用周波数帯を中心としたネットワーク展開が消極化される上、楽天モバイルの工事発注が停止されるなど、今後の基地局向けエンジ市場の規模縮小が懸念される。

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。 主に「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」サービスを展開。 所属アナリストとの意見交換も無償で随時受け付けている。 https://www.mca.co.jp/company/analyst/analystinfo/