DATAで見るケータイ業界

サブブランドの状況で濃淡が出た各社の「1契約あたり収入」、一方ECや決済の状況は?

グラフで比較するキャリア決算(2)

 通信キャリア各社の2020年10~12月期決算が出揃った。前回に引き続き、各社の主要数値の動きを比較していく。今回は「1契約あたり収入」と新領域分野の動向に焦点を当てる。

サブブランドの状況で濃淡が出た、各社の「1契約あたり収入」

 「1契約数」あたりの収入を示すARPUを開示している2社の今期は、NTTドコモの総合ARPUが4920円(前年同期比210円増)、ソフトバンクの主要回線総合ARPUが4300円(同140円減)だった。また、「1契約者数」あたりの収入を示すARPAを開示しているKDDIの状況は、8130円(同360円増)だった。

 各社で基準や数値がまちまちで比較しにくいため、2018年4~6月期の水準を100とした時の推移を取りまとめたのが次のグラフだ。

 ご覧の通り、3社で動向が全く異なることが見て取れる。

 成長を続けるのがKDDIだ。同社がARPA算出の対象としているのはauブランドのみのため、比較的安価なUQ mobileやMVNOの動向は数値に影響を与えない。また、決済や電気小売なども収入に含めており、クロスセルが奏功した結果と言えるだろう。

 横ばいながら回復基調なのがドコモだ。ドコモ光の収入が拡大している点に加え、通信料収入にあたる「モバイルARPU」も各種値引額負担が減少したことで値下げ影響を相殺している。

 最後にソフトバンクは、2019年前期まで好調だったがここに来てブレーキがかかっている。同社はソフトバンクブランドに加え、Y!mobileやLINEモバイルの契約も算出対象に含めている。サブブランド顧客が増えるにつれて、1契約あたり収入への下押し圧力が高まる構造にある。

 1契約あたり収入について、3月後半に各社が開始するオンライン専用プランを算出の対象とするかが気になるところだ。

 現在でもサブブランドを対象に入れているソフトバンクはそのまま含める方向だろうが、残る2社の対応が焦点だ。仮に計算から除外した場合、「別ブランドではなく新プラン」「サブブランドではなく全てがメインブランド」など、メインブランドと同等と説明してきただけに、矛盾をはらむことになろう。

「クレジットカード取扱高」と「EC流通総額」、いずれも各社軒並み大幅成長を記録

 最後に、通信以外の新領域として各社が力を入れている“金融・決済”と“EC”の2分野について触れたい。

 今期の各社クレジットカード取扱高は、楽天が3兆3674億円(前年同期比24.7%増)、ドコモが1兆4205億円(同30.8%増)、ソフトバンク傘下のZホールディングスが6571億円(同15.5%増)となった。

 カード取扱高に加えてQRコード決済などの金額も含んだ「金融・決済」額を開示している2社についても、KDDIが2兆4080億円(同44.6%増)、ドコモが1兆8995億円(32.8%増)と、カード取扱高以上の勢いで急拡大していることが分かる。

 ネットショッピングなどの状況をあらわす「国内EC流通総額」はどうだろうか。通信キャリア4社のなかで、数値を開示している2社の数字は、楽天が1兆4099億円(前年同期比38.5%増)、Zホールディングスが9182億円(同33.0%増)で、いずれも成長著しい結果となった。

 この2つの分野では楽天の強さが目立つ結果となった。逆にいえば、好調な非通信事業があるからこそ、通信事業での先行投資が可能となっている。

 非通信事業には通信各社も本腰を入れており、楽天が通信事業を軌道に乗せるのが先か、他社が非通信事業で一定のシェアを得るのが先かの激しい争いは今後も続きそうだ。

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。 主に「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」サービスを展開。 所属アナリストとの意見交換も無償で随時受け付けている。 https://www.mca.co.jp/company/analyst/analystinfo/