スタパ齋藤のコレに凝りました「コレ凝り!」

ぐはっ! 凄い! ホンダ「S660」!

マツダ「ロードスターRF」からホンダ「S660」に乗り換えだゼ!

 この秋、ホンダの「S660」(公式ページ)というクルマを買いました。2シーターのオープンカーで、MRの軽自動車。選んだのは6速MT車で、グレードはαにしました。これまで乗っていたマツダ「ロードスターRF」(関連記事)からの乗り換えです。

ホンダ「S660(エスロクロクマル)」。MR(ミッドシップエンジン・ リアドライブ)の2シーター・オープン軽自動車で、2015年4月2日に発売されました。2018年5月25日にはマイナーチェンジして発売され、専用7インチナビを追加できるようになり、ボディーカラーも新色が追加されました。※画像はメーカーサイトより抜粋。

 まず、S660に乗り換えた経緯から。興味のない方は飛ばして次章へどうぞ。
 前回の本連載「2018年モデルのホンダ・スーフォア買ったゼ!」で、ホンダ「CB400 SUPER BOL D’OR」というバイクを買った話を書きました。わりと久しぶりのオンロード・スポーツ系バイクです。非常にバランスの良いバイクで、難点は感じません。

 また、400ccという排気量は、筆者が扱うにはちょうどいい感じ。十分なパワーがあり、かと言ってパワフル過ぎない。エンジンの出力を十分使いつつ小気味良く走れます。CB400は400ccのバイクとしては出力が大きいほう(56PS/11000rpm)ですが、筆者がどうにか扱いきれるパワーである点をとても気に入っています。

 そんなCB400を楽しんでいたら、敢えてあまり考えないようにしていたことを再考し始めてしまいました。ロードスターRFのパワーのこと。

マツダ「ROADSTER RF」。電動オープン・ハードトップを備えた2シーターFRスポーツカーです。2000ccの排気量は余裕のある走りができ、山岳ドライブもパワフルにこなせます。

 ロードスターRFはヒッジョーに楽しく走りやすく気持ち良いクルマなんですが、筆者にとっては2000ccという排気量は「パワフル過ぎ?」という気がしていました。回転を上げてエンジン出力を十分発揮させるような走りをすると、公道では危険な走りになりがち。スピード域もかなり高くなるので、結局は「ロードスターRFの底力を出すような走りができない」という状態になっていました。まあ、上手い人が扱ったり、あるいはサーキットで走ったりすれば、そうではないのかもしれません。

 ともあれ、そんな感じだったので、ロードスターRFでのドライブは楽しいんですが、スポーツ的な走行はあまりできていませんでした。筆者は初代ロードスター(NA)に乗っていましたが、それに比べてロードスターRFは快適&パワフルで完成度が高いと思います。でも、前述のCB400とは違い、「エンジンなどの走行性能を持て余している」と頻繁に感じていたのでした。

 そこで試しに、ハードトップではない幌屋根タイプの「ロードスター(NDロードスター)」(公式ページ)に再度試乗しました。こちらのエンジンは1500cc。上記ロードスターRFより出力が低く、重量も軽めです。

マツダ「ロードスター(NDロードスター)」。2シーターFRスポーツカーで、排気量1500cc。ロードスターRFと違い、後方までガバッとオープンになり、より高い解放感があります。屋根は幌タイプ。※画像はメーカーサイトより抜粋。

 走ってみたら、なるほど、ロードスターRFよりも軽快な感じ。2台はけっこう性格が違うクルマだと改めて思いました。あとNDロードスターの幌のオープン、メチャメチャ快適ですね。慣れると「片手で5秒」で開閉可能。後方の解放感も抜群で、ハードトップや出力にこだわらなければNDロードスターがかなりイイかも! てなコトも思いました。

 ただ、NDロードスターについても、筆者にとってはパワーを持て余し気味。日本の公道では……NDロードスターもロードスターRFも、十二分にパワーがあるんだと感じました。余裕をもって走れるのでいいことですけどネ。

 でも、なんかモヤモヤと。ロードスターRFもNDロードスターも、パワーの面で筆者の求めるところとは微妙に違うのかな、と。

 結局、もっとパワーがない、っていうか、筆者でも「エンジンを扱い切れている感」が得られるクルマに興味が出てきました。もちろん、走りの良い、走りを楽しめるようなクルマ。

 そこで再浮上したのがホンダ「S660」でした。何となく気になっていた存在ですが、軽自動車ということでスルーしていたクルマです。時々「でも良さそう」と思って調べると、幌を開くのが面倒とか、純正ナビは無し(現在はあります)とか、荷物置き場ほぼゼロといったネガティブ要素が浮上して、そこまで。

 でも、物は試しと、とりあえず試乗。そしたら予想を超えてかな~り好感触。じつはほかの軽スポーツカーにも試乗しましたが、S660が飛び抜けてシックリきました。

 ならばこれも試しにと、ロードスターRFの下取り価格を出してもらったら、あら、まあ、そんな値段で! あ、じゃあ、あの、S660お願いします、買います! というハコビになったんでした。

これは4輪バイクか? 速くて楽しいS660♪

 S660試乗時、購入の後押しになったのは「十分な出力だけど扱い切れそうなエンジン」と「旋回性能の高さ」でした。これならグイグイ&キビキビ&エキサイティングに楽しめそう! みたいな気がしていました。

 納車までの間、ワクテカしつつCB400でツーリングに行きつつ、さらにS660について調べつつも、ネガティブ要素はシラナーイ、キコエナーイ、ワカラナーイ! を貫き通して待ちました。そして納車。速攻でS660ツーリングです。

納車間もないS660。「顔」はホンダ車っぽいですね~。スポーティなデザインもホンダらしい。
納車後に連続してツーリングに。埼玉県・秩父あたりから山梨県・甲府あたり、それから山梨・長野の境にある大弛峠周辺も走りました。これら写真はオープンにしたS660車内から撮ったものです。

 走ってまず驚いたというか改めて実感したのが、車高の低さとボディの小ささです。車高の低さは、そーんなにスピードを出していなくても疾走しているような感じになれる視線の低さ。周囲のクルマやバイクが巨大に見える下からの目線となり、「ホンダFITってこんな大きいクルマだったっけ?」とか、前方からコーナリングですれ違うバイクを見て「リッターバイクがあんなに倒してコーナ……あれ、250cc?」とか。

 あと、小さな軽自動車なので、山岳にありがちな細めの道でも不安感なく走れます。退避可能なスペースがグッと広がるからですね。道幅をたっぷり使って走れる感覚は、バイクに似ています。

 その小ささゆえ、駐車場の左右スペースをさほど気にすることなく駐められます。つまり、隣のクルマを意識してドアを大きく開かず、窮屈に乗り降りしなくてもいい、みたいなメリットも。なんかイロイロと都合がイイです。

 ツイデに、気軽さ。凄まじいパワーを秘めているとか、お値段がすごーくお高いとか、爆発的に速いとか(←場所によっては超速いですが)、そういうイメージではないクルマです。S660をやや詳しく知らないと「かわいい軽自動車」とか思われがち。そんな意味で、気負わず乗れる気楽さがあってとてもイイです。

 そして、肝心の走行感。詳しいインプレッションはネット上に多々上がっているのでそちらにお任せし、ここでは筆者の雑感などを。

 まず、意外にマイルドなこと。試乗時に感じたよりも乗り心地がよく、わりとソフトな感じで走ってくれます。

 また、エンジンも、ブンブン回すタイプではない感じ。予想よりおとなしめ? ただ、筆者としては、「それでもS660のエンジンは軽自動車なのに凄くよく回るし、低回転からのトルクも十分ある」と思います。

 具体的には、スポーツっぽい走りをするときは、エンジン回転数3000~5000回転あたりに「力強さ」を感じます。逆に、急めの上りだと、その回転域を使わないとキビキビ走れない。ので、自然とその回転域を使いがち。それもあって、前述のように「あまり回すエンジンではない」という感覚です。でも筆者的には、その特性が「エンジンを扱い切れる感じ」がして好感触。このくらいがちょうどイイかも♪ みたいな。
 ホンダのエンジンいいな~軽のMT車楽しいな~と標高上げつつ走っていくと、上りの峠道。3速を中心にギアチェンジ(シフトチェンジ)しつつ上がる感じの道ですが、やたらコーナリングがキマる、というか、まとまる。試乗して「よく曲がる」と感じましたが、「よく」どころではなく「確実かつ的確に曲がる」って感じ! ステアリング操作どおり忠実に、狙ったラインを外さずに曲がっていく。かなり快感です。この良さはCB400に似たところがある。

 そして下りの峠道。下りを走って痛感したのは「速い!」ということです。上りのクネクネ道もトルクフルかつクイックに走ってくれるS660ですが、下りはさらに。ブレーキが効くし、意図どおりに旋回するし、曲がり始めから直進に戻るまです安定感があるので、下りクネクネ道で感じがちな不安感がほとんどナーイ! 危なげもナーイ! 速っ、このクルマ!

 そんなクネクネ道の速さや楽しさは、なんかバイクに似てますね~。S660は4輪車ですが、なんかオンロードバイクのエキサイティングさと爽快感があるあたり、さすがホンダ。……もしかしたらスズキのスポーツ方面の軽自動車もそうなのか? ともあれ、S660はよく走るし、実質とても速い。し、予想よりずっと楽しめるクルマとなりました。

 ところで、S660の外観については、そーんなに好んでいませんでした。興味の中心はエンジンとか走りとか。デザインは大して気にしてません~、的な。

 しかし峠道での走りを体感したら、「なんてよく走るのぉ~このクルマ!」という衝撃から、もう急激にS660が超カッコ良く見えてきちゃいました♪ それまでは道を走っているS660を見ても「あーホンダの軽オープンだ」くらいの気分でした。しかしその走りを知って以降は、人様のS660を見ても「あっS660だっ、やっべぇ超カッコイイ、素晴らしいクルマだよね最高だよね!」となどとテンションが上がるほどです。

ひととおり走ったあとに撮ったS660。さっきの写真とは「撮る気合」が違いますネ~。ていうか、うわっ、やっぱカ~ッコイイ! 走りも最高だし外見も最高だしさすが最高なS660だね! 超絶最高!
撮影シチュエーション的に失敗してる感があるように見えるものの、S660の走りの良さと外見的良さを考えたらそのネガ要素が一瞬で蒸発するほどイイねS660は! さすが俺の最高愛車S660! 猛烈に最高だね! ……あきれてますか?

 なんか一瞬でホンダ信者状態です。まあ、でも、S660は想像以上、予想を遙かに超えた走りをしてくれるので、ぜひ、ご試乗を。楽しいクルマですよ~♪

S660のネガティブ要素

 バイク乗り的な観点でS660を考えると、もう最高だしカッコイイし超絶速くてやっぱり最(以下略)。もとい。バイク乗りからすれば、走りが楽しいうえに、4輪だから立ちゴケもコーナー浮き砂転倒とかもないし、ケツ痛くなりにくいし、髪ペッタンコにならないし、屋根も窓もあって雨風もヘーキだし、真夏に冷房入るし冬暖房で超暖かいし、ソロキャンプくらいなら助手席に荷物余裕で乗っちゃうし、じつに愉快で実用的なマシンです。

 しかし、クルマとしては、けっこうネガティブな要素もあります。S660についてよく言われていることかもしれませんが、それらを少々。

 まず「スポーツカーとして」ですが、排気音がちょっと物足りない感じ。2018年モデルのCB400は凄く図太いレーサーレプリカ的な排気音がするんですが、そーゆーバイクをつくったメーカーでも、クルマとなるとフツーの排気音になっちゃうのか(って部門が違うか)。なんか残念。

 エンジンも同様で、トルクがあって走りやすいですし、速いですが、ちょっとおとなしい? 筆者的には扱いきれる感じがするのでイイんですが、走っているなかで、どこかで「豹変」する一面を持つ「凄い力を秘めている」ような雰囲気も欲しかった気が。スポーツカーだし。旋回性とかはモロにスポーツを感じますが、エンジンは常識範囲内、みたいな?

 個人的には、シフトノブのストロークが微妙に長い気が。クイックにギアチェンジできますが、心持ち現行ロードスターのシフトノブのほうがスポーツ感があるような印象。ここも微妙に物足りない感じです。

 それから「乗用車として」ですが、いろいろ我慢が必要です。トランク的なスペースはほぼ皆無で、2人乗っちゃうと手荷物さえ置くのに苦労するというのは、S660に興味のある方なら周知のとおり。

 幌の脱着もちょっと面倒。労せず無難に幌を外してオープンにするには、いったん車外に出たり、フロントのボンネットを開いたりする(幌収納部がフロントにある)必要があります。オープンにするときの利便性は最低限って感じ。ちなみに、運転席に座ったままでも幌の脱着が可能で、丸めた幌を助手席足元あたりに置くのもわりと現実的です。

 それと、幌は張った状態でも一部に弛みからくる凹みあったりします。洗車時にその凹みに水がたまる。これもなんかビミョー。

 それから「こうなるのか~」と思ったのが、シート後方からの熱感。背中の近くにエンジンがあるからだと思いますが、微妙に背中付近が暖かい感じに。背中に熱が少し伝わる感覚です。また、リアの(エンジン音を楽しんだりするための)ウィンドウを開いて走ると、エンジンなどからの熱風が巻き込まれて室内に入ってきます。ちょっとした暖房状態。夏はヤバいかも。ただ、この巻き込み熱風、ある程度の速度になると軽減されたり、サイドウィンドウの開き加減によっては巻き込まなかったりもします。

 それと、走って楽しむクルマとしては「わりとマイルドでソフトな走り」という気がしますが、普通の乗用車として捉えると路面の凸凹を拾う硬い乗り味で、けっこうな振動があります。「走りたい」と思うドライバーだと気にならないんですが、助手席に乗ったらイヤな乗り心地かも、です。

 あと純正ナビを付けたんですが、画面がなんか少し左下がりで傾いていること。それが仕様なんだそうですが、画面は水平にセットされる仕様にして欲しいですよね~。

 とりあえずは、そんなところでしょうか。逆に、ポジティブな要素もけっこうたくさんあるんですけどね。でもまあ、ネガ・ポジ要素は乗る人の価値観によっても違ってきますので、S660に興味があれば実車で確認してみてください。良くも悪くも、いろいろと「ココってこうなんだ~」という発見があると思います。

こういうクルマは、やっぱりイイ!

 筆者はビビりっていうか怖がりなので、バイシクルやモーターサイクルといった二輪車が好きです。というのは、多くの自転車やバイクで「今、どんな路面で、車体がどう動いているのか」が体に伝わりやすいから。

 たとえばロードバイクなら「あっ小石踏んだ」「砂で軽く滑った~!」とか即わかりますし、スポーツ指向のオートバイでも「おわっ段差かよ!」「振動が出てきた、路面変わったな」とかよくわかります。わかると安心。わかればソレに対処できるから、怖くない。

 S660とかロードスターとかって、そういうところがバイクや自転車に似ています。乗り心地という点では硬めですが、路面や車体の挙動が直接的にわかる。どんな路面をどんな状態で走っているかをよく把握できるので、怖くないんですね。

 対照的に、ファミリーユースを想定したような、便利さ・安楽さを優先したクルマになると、どこをどう走ってもフワッとソフトで静かで安楽。乗せてもらっている側としてはとても快適ですが、運転する側っていうか筆者としてはかなり不安。路面や車体の挙動がモワッとぼかされて、はっきりとは把握しにくい。路面や車体の情報が曖昧だと、暗い夜道を足元を見ずに歩いているみたいで、危うい感じで怖い。まあ実際は、賢い安全機能がどんどん介入してくれるから、危険はないんでしょうけれど。

 ともあれ、筆者的にはS660などのスポーツ志向のクルマは、運転していて怖くない。安全を確信して走れるから、もう少し速くだったり、やや大胆にだったり、チャレンジしていけて、自らスキルアップしていけるような楽しさが生まれます。やり過ぎは禁物ですが、筆者は怖がりなので、いつも少~ししずつです。

 で、筆者にとっては、そういう「走りつつの小さなチャレンジやスキルアップ」がかなり楽しい部分。路面や車体の挙動を把握し、安心しながらそういう体験を重ねていけるんだから、ある意味なんかお得っていうかオイシイっていうか、そんな良さがありますよね、スポーツカーの類って。

 そういうクルマで走っていると、気付いたら走りっぱなしで遠くまで来てしまいがちな筆者。凄いスピードを出すわけでも、誰かと競争しているわけでもない。「こうするとどうなる?」「じゃあこれは?」「こうしたらいいかも?」「これは危ない」みたいなことをずっと繰り返している感じ。走るマシンを実際にあれこれ操作して何か探求していくのがサイコーにおもしろいです。

 そういう楽しさを堪能できる、たとえばS660とか、現行ロードスターとかが、ここのところけっこう売れているらしい! いいですね~いいですね~いいですね~。ていうか、このテのクルマが消滅していかないのがイイ! 製造販売している自動車メーカーの姿勢も素晴らしい! そんな状況をとても嬉しく感じています。

 あ、全然関係ナイですけど、こないだ富士五湖にドライブに行ったら、5台くらいS660とすれ違って、かなり嬉しかったです、S660いっぱ走ってるゼ~こういうクルマが好きな人はやっぱりこの道路来るんじゃぁ~んニヒヒッ! 的に。

 愉快です、S660。まだ未体験の方は、ぜひ!

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。