スタパ齋藤のコレに凝りました「コレ凝り!」

オモシロイかも鉄塔&送電線!

“送電本”で長年の「?」が「!」に変わった♪

川を遡り、小説『鉄塔武蔵野線』を読み……

 5年くらい前に、ふと「近くに流れているあの川……源流はどこにあるんだろう?」と気になりました。以前からすこ~し気になっていたんですが、以前よりちょっと強く気になった感じです。そこでマウンテンバイクに乗り、川を遡ってみることにしました。

 まず、Googleマップを使って源流までの道のりを下見。走れそうなルートを頭に入れます。そして翌日、実際に走行。

 上流へと走っていくと、「あ~この道の横を流れていたのか」「この川も同じ流れだったのか」など、いろいろと発見。非常にオモシロいんですが、同時になかなか疲れます。小さな川なので、川沿いにずっと道が走っているわけでもなく、時には畑の脇を、時には全然知らない砂利道を、時には土手沿いの獣道っぽいトコロをと、マウンテンバイクで走ったり降りて押したり担いだり。一日では源流を突き止められませんでした。

 そんなコトを繰り返して数日。Googleマップ上では、遡った川の距離は15km程度でしたが、迷ったり寄り道したりしてやっと源流に到着。湧き水のようなものを期待していましたが、最上流で細くなった川は暗渠に入り込んでいて、雑木林の奥に消えていました。

 しかし、非常におもしろい体験でした。地元を自転車で走り回っただけではありますが、知ったつもりの地元にまだまだ知らない場所がた~くさんあるんだな、と。その後もその周辺は、好んで自転車で走るルートとなりました。

 てな話を、以前にツイッターでつぶやいていたら、マンガ家&小説家のすがやみつる(菅谷充)さん(ご本人のウェブサイトはコチラ)から「そんなアナタにはこの小説がオススメ」とのメッセージをいただきました。そして読んでみたのが『鉄塔武蔵野線』(銀林みのる著)(Amazon.co.jpのリンクはコチラコチラ)でした。

銀林みのる著『鉄塔武蔵野線』。1994年12月に単行本化されたファンタジー作品ですが、実在する鉄塔ともリンクしていて、少年の冒険ドキュメントのようにも楽しめました。映画化もされ、1997年6月に公開されたそうです。小説の主人公である環見晴役は、少年期の伊藤淳史さんが演じています。

 たいへん面白くまた興味深く読みまして、さらに映画版のDVD(Amazon.co.jpのリンクはコチラ)まで観ちゃいました。おもしろかった~♪ この作品について教えてくださったすがやさんに感謝!

 前述の「近所の川を源流まで遡ってみた」のはオッサンのワタクシですが、この作品の少年が鉄塔(送電線)を辿っていく気持ちが、なんだかよくわかったような気が。感慨深いものがあります。

 ところで、この作品に触れたことで、以前からすこ~し気になっていたコトが、以前よりかなり強く気になり始めました。鉄塔や送電線です。

 小説『鉄塔武蔵野線』の中で、鉄塔や送電線に関する知識が少し出てくるんですが、それについて「送電線は3本セットなのか(……でもファンタジー小説だそうだし、正確にはどうなんだろう?)」「そう言えば送電線の碍子(がいし;電線と鉄塔などを絶縁する部品)ってイロイロなパターンがあるよなあ」などと、細々と気になった感じ。

 考えてみれば、以前から送電線にはすこ~し興味があり、見るたびに「あの線の途中にあるのは何だろう?」「送電線(鉄塔)と電線(電柱)ってどういう違いが?」「変電所って具体的にはナニしてるトコロ?」とか思っていました。そんな疑問が強まりました。そこで、この際だから、そういう疑問を一気に解消すべく、ちょいと「鉄塔や送電線」に関して凝ってみました。

技術解説書ってオモシロい!

 凝ってみた、と言っても、単に本を読んだり鉄塔や送電線を眺めてみただけで、こっそりと鉄塔に登ったり送電線を1m購入したりはしていないんですが、さておき最初に読んだのがこの本です。『発電・送電・配電が一番わかる(しくみ図解シリーズ)』(福田務著)(Amazon.co.jpへのリンクはコチラ)。電気系インフラに関する技術書ですが、「そうだったのか!」と何度も思える本でした。

 たとえば小説『鉄塔武蔵野線』の中で、主人公が「送電線は3本が1セット」てなコトを言っていました。「そうなんだ」とは思いましたが「なんで3本?」と疑問が残りました。が、この技術書ではそのあたりの理由もシッカリ書いてありました。位相の異なる3つの交流をそれぞれ流しているそうで、この方法が発電~送電に関してとても都合が良いのだそうです。

『発電・送電・配電が一番わかる(しくみ図解シリーズ)』(福田務著)。発電所、送電網、電力消費地への配電までを網羅し、わかりやすく解説した技術書です。「電気とかわかんないし興味ない」という人には読むのがツラいかもしれませんが、「電気少し興味あるし電線とかにも興味ある」という人にとっては「楽しい読み物」になるように思います。

 本の中には、確かに送電線は3本が1セット(1回線)になっていると書かれていました。また、電柱に張られている電線も同様、3本1セットとなっているとのこと(家屋等に入る線はその限りではない)。技術書に書かれているコトなので、まあその通りなのだろうと思いましたが、一応確かめて見ると、あらホント! 確かにそうなってる! みたいな喜びがあります。本で学んで、現地で確認。楽しいですネ♪

近所にある鉄塔を見てみました。確かに、どの鉄塔にも3本1セットで送電線が張られています。よく見られるのは、縦に3本並んでいるパターン。これが左右にあり、3本(1回線)+3本(1回線)で2回線分となっている送電線です。仕組みや理由を知ってみると、よりオモシロく見学できます。

 こういった基本的なことも含め、他にもイロイロと書いてある本でした。発電の方法、東西での電源周波数の違いと歴史、ダム、核燃料、プルサーマル、スマートグリッド、鉄塔に送電線に碍子に架空地線、電柱にキュービクルに屋内配線等々、身近にある電気インフラを網羅的に解説しています。数ページ読むたびに「アレって、そのためにあったのか~!」みたいに「合点がいく」感じ。こういう技術解説書ってオモシロいですね~♪

楽しく読めた「電線マニアックス?」的な本

 他にもイロイロ読みました。が、「鉄塔」と名が付く本は、わりと小説『鉄塔武蔵野線』の影響を受けたものが多いようで、どちらかと言えば「鉄塔観察」や「鉄塔巡り」に寄った本が多かった感じです。それぞれオモシロかったんですが、技術的な話はあまり見られず、さらに技術的に裏付けられた解説もないあたり、個人的には若干消化不良な感じでした。

 でも、電線関連で1冊、非常に興味深く&楽しく読めた本がありました。『身近な電線のはなし』(社団法人電線総合技術センター編集)(Amazon.co.jpのリンクはコチラ)です。

『身近な電線のはなし』(一般社団法人電線総合技術センター編集)。電線に関して「普通はあまり知られていないコト」がたっぷり書かれた本で、ひらたく説明された項目も多々あります。身近な電線について、様々な角度から親しめるようになる解説書です。

 電線の本ということで、電線のコトばかり書いてありますが、フツーの人が疑問に思うようなところを切り口にしているので、理解しやすい感じ。また、各項目がQ&A形式で書かれています。たとえば「電線にとまっているスズメはなぜ感電しないのですか?」と質問があり、答えとして「1本の電線の上なら電位差がないから電気が流れない=感電しません」などとあり、さらに「でも2本の電線間にヘビが横たわったら感電します」などとあります。なるほどネ~という感じで読める項目が多いです。……若干「アウトリーチっぽい本」ではありますが、内容的に新鮮味があって楽しめました。

 上の写真のように、送電線に関してもイロイロ書かれています。送電線の材質とか、送電線の設置のしかたとか、「そうなんだ、知らなかった!」ということが多々。碍子の数で送電の電圧がだいたいわかるとか、言われてみれば「ああナルホド」なんですが、興味深い話です。

本には、碍子の数で送電電圧が「だいたいわかる」と書いてありました。この送電線の場合、1本に対して12個の碍子が並列に2列付いていました。電圧は15万4千ボルトとありました。

 結局、この本では「碍子の数でだいたいの送電電圧がわかる」ということは理解できましたが、実際の送電線を見てみると、碍子が並列になっていたりします。上の写真のように「1本に対して12個の碍子が並列に2列」です。この場合、碍子が12個と考えるのか、あるいは24個と考えるのか……でもその送電線を支える鉄塔には「15万4千ボルト」との表示が。

 本の表組には、15万4千ボルトの場合は碍子7~21個とありますので、そこから帰納的に考えると「15万4千ボルトで、1列の碍子の数が12個だから、1列分の碍子数を見るのだろう」というコトに。でもホントにそうなのか? と思って調べてみたら、中部電力のサイトに「一列のがいしで強さが足らない時は、二連、三連と並列に増やしていきます。また、電圧を高くする時は直列に連結していきます」(該当ページはコチラ)とありましたので、どうやら「一列の碍子の数でだいたいの送電電圧がわかる」ということのようです。

 列を増やしたら絶縁体として絶縁性能が低くなるっていうか電気が流れやすくなっちゃうような気がしますが、それは十分高い抵抗値があるから考えないのか、碍子の数でどうにかするのか……どうなんでしょう。ちょっと調べましたがイマイチわかりませんでした。

 そんなコトを調べていたら、送電線の碍子って10個毎に色違いのものが使われているということを知りました。鉄塔を見上げたとき、碍子の数を数えやすくするためのようです。ホントかな……あらホントだった! 上の写真の場合も下の写真の場合も、10個目が黒い碍子になっています。なるほどね~♪

この鉄塔の送電線も、碍子部分は10個目が色違いになっています。……鉄塔や電線に関係する人は、この碍子の数や色違い碍子を、実際はどういうふうに見たり利用したりしているんでしょう。

 ……はっ、なんか徐々に鉄塔や送電線を観察する回数が増えている! そして詳しくなりつつもある! こうしてマニアがまたひとり育っていくのか~ッ!? なんて思ったりしました。でも実際、こういう些細な興味から、徐々に徐々に興味が広がり深まり、さらにマニアックな知識を求めていくんでしょうね。

 でもソレがインフラに関する知識だったりすると、多くの人が興味を持てる「ネタ」としてもイイ感じなので、まあそれはソレでいいかな、と。ともあれ、鉄塔や送電線に関して基本的なコトがわかってきたので、もう一度、小説『鉄塔武蔵野線』を読み直そうかな~と思うのでした。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。