ケータイ用語の基礎知識
第703回:格安SIM とは
(2015/4/7 13:02)
MVNOが提供する、安い料金プランの選べるSIM
ここ数年、大手携帯電話会社の回線を借り受けて、モバイル通信サービスを提供するMVNOが増えてきています。今回紹介するワード「格安SIM」は、定義がいろいろあるのですが「MVNOが提供するSIMカードで、主要な携帯電話事業者のものより安い料金プランを選ぶことができるもの」を指すことが一般的です。
「格安SIM」の“SIM”とは、本コーナーの「第157回:USIMカード とは」で紹介したように、ドコモでは「UIMカード」、au(KDDI)では「au ICカード」、ソフトバンクでは「USIMカード」と呼ばれている小型のICカード「SIMカード」のことです。
携帯電話に、そうした大手携帯会社のものではなく、MVNOのSIMカードを入れて使うと、より安い料金で使えることが多いため、最近よく話題に挙がるようになりました。
このようなSIMを提供している事業者としては、ドコモの回線を利用しているMVNOが多く、NTTコミュニケーションズの「OCNモバイルONE」、IIJの「IIJmio」、U-NEXTの「U-mobile」など多数提供されています。auの回線を使っているMVNOには、ケイ・オプティコムの「mineo」、KDDIバリューイネイブラー/沖縄バリューイネイブラーの「UQ mobile」があります。
ドコモの回線を利用しているMVNOのSIMカードは、SIMロックフリーの携帯電話のほか、NTTドコモの端末で利用できます。auの回線を利用しているものも、同じようにSIMロックフリーのほか、auの端末で利用できます。ただし、au回線のMVNOの場合、iOS 8以降のiPhoneでは使えないといった事例が報告されています。
MVNOからは、携帯電話が販売されていることもあります。割安な料金プランのSIMカードとセットで買う、ということもできます。
半額以下で使えることも
格安SIMと呼ばれるMVNOのサービスでは、どの程度、料金が安くなるのでしょうか。2015年4月現在、データ通信のみ使用する場合では、mineoのシングルタイプ/1GBでは850円(税抜、以下同)、DMM Mobileのシングルコース/2GBでは770円などとなっています。一方、大手携帯会社のサービスを観ると、たとえばドコモのデータSパック、auのデータ定額2といった2GBまでのプランは月額3500円(パケット通信料のみ)です。データ通信量によっては大手の半額以下で済んでしまうことになります。
逆にデータ通信を非常に多く使いたいユーザ向けのサービスもあります。たとえばNTTぷららの「定額無制限プラン」は通信速度が3Mbpsに制限されるものの、月額2760円で、通信量に制限なくデータ通信が可能です。
格安SIM・MVNOの制約が利用用途にマッチするかどうか確認が必要
ただし、格安SIMとは言っても「どんな利用状況でも必ず安くなるわけではない」ことは留意しておく必要があるでしょう。
一般的に言って、格安SIMを提供しているMVNOのプランでは、通話は30秒あたり20円程度かかります。一方、最近の大手携帯会社は、かけ放題のサービスが主流になり、その契約者も増えています。通話が多い場合、MVNOのサービスと、大手携帯会社のサービスの差は縮まりますし、極端な場合は逆転してしまうこともあります。
また、格安SIMを提供するMVNOのプランの場合、利用者の使いたい機能やオプション・サポートがないということもあるので、契約前に、必ず利用用途にマッチするかどうか検討することも重要でしょう。
たとえば、MVNOにないサービスの代表的なものとしては、まず「キャリアメール」が挙げられます。キャリアメールとは「docomo.ne.jp」「ezweb.ne.jp」「softbank.ne.jp」というようなアドレスの携帯電話用メールのことです。格安SIMを提供する事業者はメールサービスを提供していなかったり、していてもキャリアメールと異なり、迷惑メールフィルタの設定によっては弾かれて受信されない、パソコンなどと同じタイプのメールサービスになっていたりします。
またLINEでユーザー検索(ID検索)を利用できない(使用可にできない)ということも挙げられます。LINEでは、ユーザー検索を使うためには年齢確認が必要です。年齢確認は、携帯電話会社からの情報を得て判別していますが、MVNOではその確認ができず、結果として利用できないことになっているのです。
このほか、大手携帯会社では全国各地に店舗がありますが、MVNOで店舗があるのはごく一部で、その店舗数もわずかとなるため、対面でのサポートは受けられないことが一般的です。またMVNOによって、端末の修理補償がある場合、ない場合と分かれています。
同じ格安SIMを契約するのでも、まずは現在の電話の利用状況を調べて、必要なオプション、サービス、サポートが受けられるサービスを選ぶことが重要でしょう。
携帯電話の価格も、大手携帯会社が販売するものは、長期間(主に2年間)利用すれば、実質的な支払い額が割安になるケースがあります。一方で、格安SIMを扱うMVNOでは一括価格が割安なSIMロックフリーの端末も扱っています。長期利用で実質負担額が割安になる、あるいは期間拘束がなく自由に好みのサービスを利用できる、とそれぞれ異なるメリットがあると言えるでしょう。