ケータイ用語の基礎知識

第704回:LTE-U とは

 「LTE-U」とは、2.4GHz帯や5GHz帯といった周波数帯を使って、LTEで通信を行う技術のことです。

 2.4GHz帯や5GHz帯は、特定出力以下なら免許が不要な周波数帯(アンライセンスバンド、アンライセンス周波数帯)です。同じ周波数帯を使う、免許不要のワイヤレス通信には、一般的にWi-Fi(無線LAN)やBluetoothがよく知られています。一方、「LTE-U」は、免許不要の周波数帯で、携帯電話向けのLTE方式を使って通信しようというものです。

 このLTE-Uという呼び方は、米クアルコム(Qualcomm)が提唱しているものです。携帯電話をはじめ、モバイル通信の規格について標準化を進める団体、3GPPなどでは「LTE in unlicensed spectrum (免許不要帯域でのLTE)」、あるいは「Licensed Assisted Access using LTE(LTEを用いたライセンス補助アクセス)」、略して「LAA」などと呼んでいます。

 免許不要の帯域を使ったLTE通信方式の標準化に関しては、3GPPが2015年12月にとりまとめる予定の規格「3GPP Release13」での策定を目指しています。この標準化規格に自社規格を盛り込もうとさまざまな企業、団体が要素技術の実験や対応チップの提供を発表し始めています。

 たとえばクアルコムでは、LTE-Uでの通信の実証実験を行ったり(※関連記事)、LTE-U対応RFトランシーバーなどのチップを2015年内にサンプル出荷する予定と発表しています。。2014年には、中国でファーウェイおよびドコモ北京研究所が通信実験(※関連記事)を行っています。

 日本ではまだ商用サービスに関してのアナウンスなどはありませんが、たとえば米国のT-mobile USでは、2016年にもLTE-U/LAAを使ったサービスを始めたいと、意向を表明しています。

現在のLTE-Aに、LTE-Uをキャリアアグリゲーション

 スマートフォンの広がりもあって、データ通信へのニーズは日々高まっています。そこで、さまざまな周波数の帯域を活用し、複数の電波を1つに束ねて使う「キャリアアグリケーション」などで、より広い帯域を活用する方向の技術が模索されています。

 どの国でも電波を使う機器は非常に増えています。新たに割当可能な周波数帯は、かなり限られてきている状況です。現在、日本国内の携帯電話は、LTE-Advancedと呼ばれる方式の導入が進められています。こうしたモバイル用の通信技術だけではなく、誰もが使える免許不要の周波数帯も補助として活用し、高速通信を行おうというのが、このLTE-U/LAAのコンセプトです。

 特にLTE-U/LAAで有望視されているのは5GHz帯の通信をLTEで行う、というものです。この周波数帯は、日本などの国では、屋外で使うためには同じ周波数帯で既に電波を発信している無線LANなどの機器などがないことを確認する「LBT(Listen Before Talk)」という仕組みを使わなければならないなどの制約はあるものの、2014年現在、混雑するということはそう多くありません。そこで、スマートフォンなどのデータ通信を行う機器にLBTの仕組みを取り入れたうえで、この周波数帯を使おうというのが次世代の通信方法の有力な候補になってきているわけです。

 ちなみに、現在日本国内で5GHz帯で無線LANなど無免許での通信に割り当てられている帯域は455MHzの幅があります。携帯電話事業者に割り当てられた帯域はたとえば1社で160MHzというようにその半分以下ですから、この5GHz帯が使えるというのは非常に魅力的です。

無線LANとのキャリアアグリゲーションと対抗、あるいは協調か

 免許不要のアンライセンス周波数帯と従来のモバイル用周波数帯、という組み合わせは、LTE-U/LAAのほかにも、LTEとWi-Fi(無線LAN)のキャリアアグリゲーションなども対抗馬として模索されています。

 現在使われている無線LANは、スマートフォンでデータ通信をしようとすると、無線LANなら無線LAN、LTEならLTEのどちらか、といった形が一般的です。しかし開発中の技術では、LTE-Uと同じく、LTEと無線LANの両方をひとつの通信路とみなして通信できるようにします。

 LTE-Uを推進するグループでは、LTE-UのLTE/無線LANキャリアアグリゲーションと比べてのメリットは電波の利用効率であるとしています。現在主流の無線LANと比べるとLTEは同じ周波数帯域をつかっても効率のよい通信プロトコルになっているので、実行通信速度は上げることができるのです。

 ただし、無線LAN側でも、「IEEE802.11ax」といった次世代の規格で、高密度な環境に対応した規格の標準化を進めています。LTE側も、LTE-Advancedの次にあたる、通称“LTE-B”でさらに高効率な電波の利用方法を模索するなどして競争が激しくなりそうです。このため、アンライセンス周波数帯を活用する技術のうち、どれが普及するか、今はまだ確実なことは言えないようです。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)