ケータイ用語の基礎知識

第635回:車載基地局とは

 車載基地局とは、携帯電話との通信を行うアンテナなど、携帯電話の地上基地局と同様の機能を搭載した自動車のことです。移動基地局車とも呼ばれます。基地局のない場所、作れない場所に一時的に基地局機能を提供します。

 各携帯電話事業者は、地震や大雨などの自然災害発生時に被災地における迅速なエリア復旧を行い、携帯電話による通話やデータ通信のサービスを利用可能とするため、車載基地局を保有しています。

 東日本大震災の発生時には、各事業者が東北などの被災地に行き、設備が津波に流されたり、地震のため損壊、あるいは停電などで機能しなくなったりした基地局に代わって、車載基地局で携帯電話の通話・データ通信エリアを展開しました。

 この震災の際には、たとえばKDDIの場合、1日半で最初の車載基地局を立ち上げ、避難所を中心に携帯電話のエリアを確保するなど迅速なエリア展開を行うのに貢献しています。

 ちなみに、車載基地局からの伝送路に関しては、衛星回線を使った衛星エントランス基地局のほか、マイクロ波を利用した非常用無線回線設備を利用したマイクロエントランス車載基地局などが存在しています。また、通常使われる伝送路である光回線が利用できる場合は、そちらをバックボーンにできる機材も存在します。

 最近では、車載基地局が展開するエリアで、高速なデータ通信を利用できるよう、保有する車載型基地局を改良して、LTE対応とした車載基地局も出てきました。2013年の各地の夏のイベントなどでも、このLTE対応基地局が利用されました。

 2013年10月現在、ドコモの場合は全国で約50台の車載対応基地局(うちXi対応車載基地局車は約30台)、KDDIの場合は全国で約20台の車載基地局を保有しています。また、ソフトバンクの場合、小型乗用車サイズの小型タイプから4tトラックサイズの大型タイプまで合わせると約100台が存在し、そのうち、34台が「SoftBank 4G LTE」に対応しています。

「Xi」対応の移動基地局車

大規模イベントなどの際にも見られるチャンスが

 災害発生時以外でも、音楽フェスティバル、花火大会、大規模同人誌即売会など、数万人規模の大規模なイベントが開催される場合、トラフィック対策として、この車載基地局が活躍します。

 このような大規模イベント時には、携帯電話がつながりづらくなることがあります。

 これは、普段は人がそれほどいない、つまり携帯電話の基地局をあまり多く配置していないような場所で、ある特定の日や時間だけ非常に多くの人が集まると、携帯電話の通話やデータ発信数が基地局の許容量を越えてしまうために起こる現象です。

 こういった場合、多くは、携帯電話上の表示では電波が届いているように見えるのに、通話がつながらなくなり、あるいはメールの送信をしても相手に届かなかったりというような状態になります。基地局に対してトラフィックが多すぎる状態のために起きる現象です。スマートフォンが増えた最近では、アプリによるデータ通信の増加も、トラフィックを逼迫させる原因の一端となっています。

 このような状態を解消するために、各携帯電話事業者はイベント開催時に車載基地局を出動させ、臨時の基地局を構築するわけです。車載基地局の形状は、基地局のアンテナを搭載したトラックかワゴン車のような形をしていますのでイベント会場などで周りをよく見てみると、車載基地局が出張して来ているのを見ることができるかもしれません。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)