ケータイ用語の基礎知識

第591回:nanoSIM とは

 「nanoSIM」は、契約者情報や認証情報などを記録する「USIMカード(SIMカード、UIMカード)」や、その小型版の「microSIMカード」と互換性を保ちながら、サイズをさらに小型化したものです。4FF SIM(4th-Form-Factor SIM)とも呼ばれます。

 microSIMカードの次の世代にあたるSIMカードに関しては、いくつかの携帯電話メーカーが規格を提案していましたが、欧州の携帯電話の標準規格を定める団体、ETSI(the European Telecommunications Standards Institute、欧州電気通信標準化協会)が、2012年6月に標準化を発表しました。

 サイズは、標準のSIMカードが15×25×0.76mmで、microSIMが12×15mm×0.76mmだったのですが、nanoSIMでは8.8×12.3mm×0.67mmとなりました。面積にしてmicroSIMから30%以上小さくなり、さらにSIMカードからmicroSIMでは変わらなかった厚みも、nanoSIMでは0.09mm薄くなりました。

 nanoSIMを採用する機種としては、2012年12月現在、アップルの「iPhone 5」「iPad mini」が存在しています。

 SIMカードの小型化は、携帯電話内部にある、SIMカードスロットが占める容積を削減できることに繋がり、より小さな筐体でも部品を詰め込んだり、あるいは、同じサイズの携帯電話でもより多くの機能を詰め込んだりできるようになるため、メーカーからは歓迎される新規格と言えるでしょう。一方、ユーザーからすると、SIMカードの変更という手続きが必要になるほか、変更直後はそれまで使っていた携帯電話とSIMカードのサイズが違うため差し替えて使う、といったことが基本的にできなくなります。

nanoSIMカード、microSIMカード、SIMカードの大きさ比較。nanoSIMカードは、microSIMカードから面積にしておよそ30%削減。また従来より薄くなった

基本的にサイズが異なるのみ

 nanoSIMカードも、従来のSIMカードやmicroSIMカード同様、1枚のカードの中には、CPUのほかRAM、ROM、EEPROMといったメモリ、暗号化コプロセッサなどが組み込まれ、ワンチップの安価なコンピュータが含まれます。物理的に保護層をはがした場合、回路も壊れて内部データを読まれないようにする耐タンパ性能も備えています。

 基本的にnanoSIMカードは、物理的な特性が従来のSIMカード、microSIMカードと同様に作られています。その特性とは、たとえば、電極の配置、耐衝撃性、データの読み書きのタイミングなどです。これにより、非常に互換性の高い仕上がりになっています。

 規格としては、「ETSI TS 102 221」としてSIMカード、microSIMカードとともにまとめられています。先ほど述べた物理的な特性に加えて、ソフトウェア面でもこれらのカードとnanoSIMカードとは変わりがないようになっています。

 携帯電話に使われているUSIMカード、microSIMカードには、携帯電話番号に紐付けられたIMSI(service-subscriber key)という個別識別番号などが記録されています。携帯電話に装着すれば、USIMカードに記録された電話番号で通話できますし、自分が普段使っている携帯電話であっても、他人のUSIMカードを挿せば、その他人の電話番号で通話できます。逆に言えば、友人が持っている携帯電話に自分のUSIMカードを装着すると、自分の電話番号で通話できます。これはnanoSIMカードでも同じです。

 このように、nanoSIMやmicroSIM、通常のUSIMカードは互換性がありますので形状を変えるアダプタがあれば、たとえばnanoSIMを使ってUSIMカードを使うような携帯電話で使うことも可能と見られます。ただ、アダプタによってはうまく携帯電話側のSIMカードスロットに入らない、あるいは入ったものの、出しにくくなることがあり得ますので、注意が必要でしょう。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)