ケータイ用語の基礎知識

第592回:M2M とは

 「M2M」とは、ネットワークにつながれた機器同士が、互いに情報を交換し、さまざまな制御を自動的に行う仕組みやコンセプトを指す言葉です。その名称は、“機械から機械へ”を意味する英語「Machine-to-Machine」の略が元になっています。

 個人ユーザーにはそれほど馴染みはない言葉ですが、その適用範囲は極めて広く、現在ではさまざまなシーンで利用されています。

 ここでいう“機械”とは、パソコンやサーバーといった、いわゆるコンピュータだけではありません。自動販売機やビルの空調システム、電気やガスのメーター、デジタルサイネージなど、多種多様な機器のことです。これらが、M2Mによって、人手を介さず、相互に情報交換することが特徴であるといえます。

 このような仕組みは、機械自身が周囲の状況をチェックできるセンサーネットワーク技術、あるいは通信技術などの発達によって、実現されたものです。

 特に通信機器が小型化され、さまざまな機械へ容易に組み込めるようになったこと、また携帯電話ネットワークの発達によって、全国どこでも繋がるようになったことは、M2Mの発達に大きな影響を与えています。

WiMAX、LTEも利用

 M2Mにおいては、機器間通信は、無線方式を採用する場合がほとんどです。物理的にケーブルを引いて有線通信の環境を整えるよりも、はるかに手間が少なく通信できるようになります。有線ケーブルの場合、敷設しにくい場所であったり、移動する物体の状況をチェックしたりする場合には向いていません。そのため、無線通信機器の性能向上は、すなわち、M2Mの高度化に繋がっている傾向があるとも言えます。

 M2Mで使われる通信方式は、大きく分けて2種類あります。1つは、Wi-Fiなど無線免許が不要な機器で構築する方式です。煩雑な免許手続きなどをせずともネットワークを構築でき、また通信費用もかからないという敷居の低さがメリットとして挙げられます。Wi-FiのほかにはZig-Beeなどが使われることもあります。

 もう1つは、通信事業者による通信網を利用する方式です。ドコモ、KDDI、ソフトバンクなどの携帯電話事業者の通信網を利用するのが一般的です。通信費用は発生しますが、屋内外を問わず、事業者の携帯電話が繋がる場所なら、どこでも利用できるほか、通信モジュールが製品としてすでに用意されていたり、あるいはセキュリティなどの基本機能を事業者が用意されているなどのメリットがあります。また、免許不要の周波数帯を使う場合と異なり、法的・制度的に電波干渉から保護されている分、他の通信との混信などを心配する必要もありません。

 このようなメリットから、自動販売機の在庫管理や、業務車両の位置情報など、広域で利用するケースや、セキュリティ監視などの通信の信頼性が求められるケースなどで広く採用されています。

 かつてのモバイル通信ネットワークでは、通信速度が限られ、送受信できるデータ容量は比較的小さなものでした。しかし最近では、高速化し、さらにLTEも導入され、WiMAXのようなサービスも利用できるようになっています。これにより、高画質な監視カメラの映像をリモートでチェックしたりできるようになっています。高速通信といえば、かつてはWi-Fiが必要な場面もありましたが、高速になったモバイル通信に置き換えられるケースもあるでしょう。

 自販機、監視カメラなどのほか、気象データの観測、農業での活用など、モバイル通信の発達によってM2Mが活躍できる場面はどんどん広がっています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)