第556回:SATCH とは
「SATCH」(サッチ)とは、KDDIが創設したARのブランドです。2011年12月に発表されました。
ARとは、現実の映像に仮想的なコンテンツを重ねて表示することで、ユーザーにさまざまな情報を提供する技術です。「拡張現実(Augmented Reality)」とも呼ばれています。何もない場所に電子的なマーカーなどによって、スマートフォンなどをかざすとディスプレイ上に何らかのコンテンツが出現する、というものです。現状ではまだ発展途上にある状況で、世間一般では、「AR」というものがどういったものか、まだまだ知られていません。
そこで、ARを普及させるため、日常の生活の中に新しい体験・使い勝手をもたらし、ユーザーの生活に自然とARが入ってくる世界を作り上げたい、という目標を掲げ、KDDIは「SATCH」というブランド名を立ち上げ、普及活動を始めました。ちなみに「SATCH」というブランド名には、“情報を察知する”とか、“サッと携帯電話をかざしてチェックする、”といった意味が込められています。
現在、KDDIでは、この「SATCH」での取り組みとして、開発者向けに「SATCH SDK」を、一般ユーザー向けに「SATCH VIEWER」を配布しています。
■無料の開発キット
2011年12月の発表会で紹介されたデモアプリ |
開発者向けに提供される「SATCH SDK」の“SDK”とは、「ソフトウェア開発キット(Software Development Kit)」のことです。つまり「SATCH SDK」とは、ARを活用したソフトウェアを開発するためのツール類のことです。KDDIでは、ソフトウェア製作者がARアプリを作りやすい環境を整えるため、このSDKを無償で配布しています。
SATCHエンジンの主な部分は、フランスのTotal Immersion社の開発した「D'Fusion」が使われていて、非常に高機能です。SATCH SDKでは、一から作り上げると非常に開発期間のかかる
・任意の二次元平面をマーカーレス認識
・3D/2Dの重ね合わせ表示、アニメーション
・サウンドや動作の再生
・位置測位連動
といったAPIを標準で搭載していて、こうした機能を簡単に実現することができます。
SATCH SDKを、無償で配布することで、KDDIは幅広い分野から開発者・クリエイターがARコンテンツの開発へ参加してくれることを望んでいます。12月の発表会では、いくつかの企業や個人がARソフトウェアのデモがいくつか展示されていました。
■SATCH VIEWER
もうひとつ、KDDIが現在SATCHプロジェクトの一環として配布しているのが「SATCH VIEWER」です。これは先述した「SATCH SDK」と異なり、一般ユーザー向けのAndroidアプリです。Google Play Marketにアクセスし、Androidスマートフォンでダウンロードして利用できます。
この「SATCH VIEWER」は、簡単に言うと、「ARのポータル」と「ARビューワー」のセットです。ARポータル機能では、SATCH SDKを使って作られたARアプリの一覧が表示され、ユーザーは好きなコンテンツを利用できます。
もう一方のARビューワーは、作られたARタグやオブジェクトが見られるツールです。これをONにすると、Androidスマートフォンのカメラで捉えた映像にオーバーラップして、文字表示や動画などを見ることができます。
2012年3月現在、「東京ガールズコレクション」というARビューワーが公開されてます。
SATCH VIEWERのポータル画面でこの「東京ガールズコレクション」を選び、イベント会場で配布される、パンフレットに掲載される洋服の画像をSATCH VIEWERで捉えると、画面上に服を着たモデルが画面上に出現します。また、さらにその商品の通販購入ページを表示できるできるという仕組みが盛り込まれています。
今後の予定では、それ以外では、3月10日からはブラウザゲーム「電脳コイル 放課後探偵局」および雑誌「アニメージュ」との連動で、ゲーム内アイテムが取得できるようになる予定です。
今後は、2012年5月にはスマートフォン上でARコンテンツを作成できる簡易ARオーサリング機能「デコAR(仮称)」、QRコードやバーコードをベースとしたARコンテンツ再生機能「SATCH Player(仮称)」という機能の追加も予定されています。
2012/3/13 06:00