第545回:aptX とは
シャープ製ドコモ向けスマートフォン「AQUOS PHONE SH-01D」では、Bluetooth機能において、「aptX」に対応しています。これにより、aptX対応のヘッドフォンやワイヤレススピーカーと接続して、より高品位なワイヤレスサウンドが楽しめます。
手元の機器同士を繋ぐ無線通信規格の「Bluetooth」では、ワイヤレスで音楽データを楽しむ際にもともと「SBC」と呼ばれるコーデックを用いて、データを圧縮するよう規格で決められています。しかし、オプションとして他のコーデックを使うことも可能で、接続元と接続先の両方が対応していれば、より高品位なコーデックを使えるのです。
その1つが今回紹介する「aptX」です。その特徴は「高音質」「低レイテンシー(低遅延)」「エラー回復機能」といった点が挙げられます。
冒頭紹介した「AQUOS PHONE SH-01D」ではBluetoothでの楽曲再生で「aptX」が利用でき、aptX対応Bluetoothヘッドセットを使えば、従来のSBCのみに対応したヘッドセットで聞くよりも、良い音で音楽を楽しめるのです。
特徴の1つである「低レイテンシー」とは、レイテンシー、つまり音の遅れがより少なくなっているということです。たとえば動画を見た場合、音と動画の動きが従来よりも合うようになりました。
実は、標準のBluetoothヘッドセットでは、200~250ms、つまり1/4秒から1/5秒程度、ヘッドフォンで再生されるときに音が遅れて聞こえていたのです。それが、aptXでは約32ms、つまり1/33秒程度まで遅れが短縮され、人間の耳にはほとんど遅れて聞こえない程度になっています。
さらに、特徴の3つ目に挙げた「エラー回復機能」では、音声データを受け取った際のデータのエラー回復が可能になったため、電波環境の悪い状況でもデータの取りこぼしが少なくなりました。従来のBluetoothヘッドセットなどでは、環境によっては、ときおり、ぷつりぷつりと音が途切れるケースもありましたが、aptXを利用すると、そのようなことはほとんどなくなります。
■Bluetoothのほかにも、プロ用機器で使われるaptXファミリ
aptxは、音声データを圧縮する「オーディオコーデック」の種類の1つで、APT(Audio Processing Technology)社によって開発されました。
先に述べたように、Bluetoothでは、A2DPなどのオーディオ用のプロファイルにおいて、標準のSBCに代わってaptXを利用できます。やや難しい表現をすると、aptXの16bit分解能のデジタルオーディオで、圧縮率1/4の高音質コーデック(SBCは圧縮率1/20)、約32msの低遅延、1/10000の低ビットエラーレートを誇ります。
オリジナルのアルゴリズムは、1980年代にクイーンズ大学(ベルファスト)のステファン・スミス氏によって開発されたADPCMベースのものです。
現在では、aptXは、オリジナルのaptXに加え、「エンハンスド(Enhanced) aptX」「aptX Live」「aptX Lossless」と、さまざまなラインナップが用意されています。これらのバリエーションは、Bluetooth以外の、音声伝送が必要なさまざまな機器で利用されています。
「エンハンスド aptX」は、従来のaptXの16bitオーディオに加えて、20bit、24bitオーディオを利用できるようになりました。16bitオーディオの場合、2チャンネルオーディオで384kbps、5.1チャンネルで1024kbpsでデータ通信を行います。また、「エンハンスド aptX」は、低遅延処理も強化され、エンコード/デコードの処理時間も短縮(最短で1.9ms)されています。より強力になったaptXだと思っていいでしょう。
「aptX Live」は、データの圧縮率を1/8とした、帯域に制限のある環境下でのリアルタイムデジタルワイヤレスオーディオ向けのコーデックです。また、「aptX Lossless」は、lossless(ロスレス)という名前の通り、音質を劣化させないように可逆圧縮を行うコーデックです。
aptXのさまざまなバリエーションは、先述した通り、Bluetooth以外で用いられており、特に放送局内のオーディオデータ転送、ビデオ会議システムなどプロ用のオーディオ市場をターゲットにした製品でよく採用されています。
2011/12/20 14:18