第510回:GMM Informationとは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 “GMM”とは、「GSM(GPRS) Mobility Management」の略で、もともと欧州規格のGSM/GPRS方式の携帯電話で使われているプロトコル(通信時の手順、規則)です。たとえばある基地局のエリアからエリアへ携帯電話が移動すると、基地局から携帯電話端末に対して「移動を把握した」と伝え、電話がかかってきたときにも呼び出されていることを伝える、といった情報の伝達にこのプロトコルが使われます。

 GSM/GPRSの仕組みの多くを採用しているW-CDMA方式でも、この仕組みが採用されていて「3GPP TS 24.008」として標準化されています。

 今回紹介する「GMM Information」は、“GMM”を使って、基地局と端末の間で伝えられるメッセージの種類の1つです。基地局から時間データなどを送ることができます。ただし、「GMM Information」を活用するかどうか、事業者にとってはオプションとされています。そのため世界の携帯電話事業者でも、「GMM Information」を使っている事業者、あるいは使っていない事業者が存在します。

 W-CDMAを採用している日本国内の携帯電話事業者では、2011年4月4日からソフトバンクモバイルが「GMM Information」による時刻データの送信を開始するようになりました。一部地域で4月4日から開始し、4月中旬までに全国で送信を行われるようになる予定です。

 ソフトバンクモバイルでは、他の方法で自動時刻補正機能を提供していましたが、GMM Information対応端末であれば、今回の新たな取り組みによって、携帯電話の電源をONにしたりした場合、自動的に、正確な現地時刻に調整されるようになります。

サマータイム制度にも対応

 3GPPの規格標準では、GMM Informationのメッセージの種類として、

  • ネットワークの(英文での)正式名称
  • ネットワークの(英文での)略称
  • 現地時間帯
  • 世界標準時を基準にした時刻と時間帯
  • LSAアイデンティティ
  • ネットワークのサマータイム

が、定められています。

 ネットワークの正式名称、ネットワークの略称は、その名前の通り、ネットワークの名前を通信で端末に送っています。

 携帯電話は、携帯電話のネットワークに接続する際に、ネットワークID番号でアクセスし、もしGMM Informationによって名称が送られてこなければ、携帯電話端末に記録されている名称が代わりに表示されるようになっています。もし、このデータを携帯電話端末が受信できなければ、そのネットワークが以前使っていた古い名称(ソフトバンク網に接続した際にVodafoneと表示するなど)が表示される可能性もあります。

 GMM Informationで送信する「現地時間帯」は、基地局が存在する地域の時間が世界標準時とどの程度差があるか、端末に伝えます。そして「世界標準時を基準とした時間帯」は、現在の時刻を世界標準時で示したものす。GMM Informationでの時刻補正に対応している携帯電話で、かつ自動時刻補正機能を「自動」や「ON」などに設定している場合、携帯電話は、この世界標準時での時刻と現在の時間帯から計算して、携帯電話内蔵のカレンダーや時計を「2011年4月1日午前9時00分00秒」などとセットします。

 GMM Informationは、携帯電話の電源をON/OFFしたときなどに参照されます。海外へ行く際、飛行機搭乗前に携帯電話の電源を切っておき、到着した時に電源を入れるだけで、現地時刻が表示されるわけです。

 サマータイム(Daylight Saving Time)制度、つまり季節によって現地の世界標準時との差が長くしたり、あるいは縮めたりする制度にも対応しています。このときに現地がサマータイムであったかどうかを示す情報が、ネットワークのサマータイム情報です。

 



(大和 哲)

2011/4/5 12:11