第509回:SIPとは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 SIPとは、インターネットで使われているプロトコルの1つで、P2P(Peer to Peer)を使った、マルチメディアでのコミュニケーション用とされています。インターネットの標準団体「IETF」が標準化を企画したインターネットプロトコルでもあり、その内容は、RFC2543(後にRFC3261で改訂)で文書化されています。

 IETFが標準化したプロトコルには、Webサイトのデータ通信プロトコルとしてよく知られる「HTTP」、インターネットメールの送信やサーバーのメール受信方法に使われる「SMTP」などがありますが、今回紹介する「SIP」は、これらのプロトコルと同様、インターネットの標準として策定されたものです。Webブラウザで使われるHTTPや、メールで使われるSMTPとの違いとしては、「リアルタイムに近い形で、人と人との通信を行う」ために作られたプロトコルであるということが挙げられるでしょう。

 その名称が「セッションを初期化するプロトコル」を意味する英語“Session Initiation Protocol”から来ている通り、本来は、2台の端末同士を接続したり、その接続を制御したりする際の手続きを取り決めた規格です。これを応用することで、さまざまなP2Pマルチメディア通信に使われています。

スマートフォン用のソフト、サービスも

 SIPは、そのセッション制御とRTP(リアルタイム伝送プロトコル、音声や映像をストリーミングでクライアントに伝える)との組み合わせによってインターネット上での通話、TV電話やそれを多人数で行うビデオ会議などで使われています。たとえば、IPネットワーク上で音声を伝える“VoIP”通話が、応用例としては最も知られているところでしょう。

 一般には、SIPを使ったIP電話サービスが最も馴染みのあるところかも知れません。一般家庭でも使われているNTT東日本/NTT西日本の「ひかり電話」といったサービスは、ブロードバンドインターネット回線を使って、従来の電話の代わりにIP電話を利用できるようにするサービスで、SIPを使ったサービスの1つです。

 携帯電話の場合、NTTドコモの「ホームU」では、家庭内の無線LAN(Wi-Fi)圏内では、「050」で始まる電話番号で携帯電話によるIP電話サービスが利用できます。このIP電話の通話を「090」「080」番号でも利用できるワンナンバーサービスも提供されています。このIP電話サービスはSIPを利用しており、このホームUに対応しているFOMAの「N-02C」や「N-08B」などの機種で利用できます。

 スマートフォンでは、Android用のアプリケーションとして、「CSipSimple」や「Sipdroid」などのSIPクライアントソフトウェアがありますし、iPhoneやiPad、iPod touchなどにも「iPhytter」や「iSip」などのSIPクライアントソフトが存在します。このほか、携帯電話事業者以外の企業によるSIPベースのIP電話サービスも提供されています。

 



(大和 哲)

2011/3/29 11:48