第511回:Bluetooth Low Energy とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「Bluetooth Low Energy」は、近距離無線規格の「Bluetooth」の仕様を策定する団体、Bluetooth SIG によって策定されている新しい規格で、“低消費電力版Bluetooth”です。Bluetooth LE、BLEと表記されることもあります。

 一般的なBluetoothと同様に、2.4GHz帯で免許不要の小電力な電波を使った無線通信です。非常に少ない電力で駆動することが特徴で、たとえばコイン電池、ボタン電池やエナジーハーベスト(環境発電)を使用して、利用することが前提となっています。2006年にノキアが開発した「Wibree」という技術が2007年にBluetooth傘下となり、開発が続けられてきました。

 最近では、カシオ計算機がBluetooth Low Energyに対応した、耐衝撃腕時計「G-SHOCK」の新製品を、2011年中に発売すると案内しています。カシオでは、この次世代腕時計をスマートフォンと通信できる「スマートウオッチ」と位置づけています。スマートフォンの時刻情報を腕時計に送信することで、携帯電話が通じる世界中のどこでも現地の時刻に腕時計の時刻を補正できます。また、電話やメールの着信を腕時計で知らせ、鳴っているときに腕時計を軽く叩けばスマートフォンの着信音やバイブレーションを停止させるといったことが可能です。今後、新たなアプリを開発し、スマートフォンにインストールすれば、腕時計同士でコミュニケーションができるなど、今までにない全く新しい腕時計の応用が広がるだろう、とされています。

 今後は他メーカーから、Bluetooth/Bluetooth Low Energy両対応の携帯電話や、ノートパソコンなども登場すると期待されています。

これまでのバージョンを含むデュアルモード機器の開発も可能

 Bluetooth Low Energyは、「第508回:ANT/ANT+ とは」で紹介した超低電力無線通信規格「ANT」とほぼ同じ用途、つまりスポーツやフィットネス、医療、腕時計などでの利用が想定されています。

 仕組みもよく似ていて、低電力での通信のため、データ転送速度は1Mbps、一度に8~27byteというごくごく小さいサイズのデータしかやり取りしません。周波数帯も同じく2.4GHzの“ISMバンド”で、他の同じ周波数帯を使う機械からの干渉を避けるためには、Bluetoothが従来から使っている適応型周波数ホッピング(AFH:Adaptive Frequency Hopping)技術を利用しています。

 Bluetooth SIGが2010年7月に発表したBluetooth 4.0は、このBluetooth LEを採用しており、それ以前のバージョンと比べ、主に低電力での通信や低電力通信のためのテストモード、低電力での通信衝突回避など、低消費電力での通信関連の変更が加えられています。さらに、AES暗号化通信、セキュリティマネージャーもサポートされています。

 Bluetoothには、現在多くの携帯電話で使われている「バージョン2.1(+EDR)」や、Wi-Fiを利用する「バージョン3.0+HS」などがあります。たとえば、「3.0+HS」の特徴はWi-Fiも含めた高速通信で、これまでのBluetoothは高速化を志向してきたことを考えると、「BLE」を基盤とするBluetooth 4.0は従来とは方向性の違う技術を取り入れています。「BLE」には「LE物理層」と呼ばれる、これまでのBluetoothとは違う方法での電波の使い方が規定されており、他のバージョンとの互換性がありません。

 そのような事情から、4.0単体では2.1や3.0との互換性はありませんが、その代わり、Bluetoothチップセットは、4.0に加えて3.0以前のモードを同時に利用できる両モード対応とすることを可能としています。

 



(大和 哲)

2011/4/12 11:05