ケータイ用語の基礎知識

第999回:引っ越したらスマホの電波が悪くなった……? 0円で解決できる「レピーター」と「フェムトセル」

あれ!? 引っ越し先でスマホの電波が届かない……

 春は引っ越しの季節。転居されて新しい環境に移られた方も多いと思います。ところで、新居でこんなことになっている方はいませんか……?

 「あれ、なんかここ妙にスマートフォンの電波が入りが悪い?」。

 引っ越した途端に家の立地、たとえばアパートやマンションの1階や半地下、周囲を建物に囲まれている物件、逆に高層マンションの上層階であった場合、スマートフォン・携帯電話を使うと電波の入りが悪い……というケースがあるかと思います。

 スマートフォンの電波の入りが悪くなったのはどうしてでしょう? 今回は引っ越しでモバイル通信が使いにくくなる理由と

レピーターの例。これはドコモのレピーター

電波はモノに邪魔される? 「伝搬特性」を知ろう

 電波は、一般的に周波数が低いと雨やビル、山などの多少の障害物があっても回り込む特性があります。そのため、遠くまで届きやすくなります。逆に、周波数が高いと光のように反射しやすく少しでも雨、霧などの障害物があると減衰する性質があります。こういった性質を「伝搬特性」といいます。

 3G以降の携帯電話・スマートフォンでは、一般的に800MHz、2GHz、またそれ以上の高い周波数帯の電波を利用しています。一方で、AMラジオ放送は526.5KHz~1606.5KHz、FMラジオ放送が76.1~94.9MHzと、携帯電話の電波はだいぶ高い周波数帯であることがわかります。

 携帯電話・スマートフォンが高い周波数を使うのは、より広い「帯域幅」を利用できるからという理由があります。帯域幅とは、道路で言えば道の広さのようなもの。一度に大量のデータをやりとりできることから、データ転送速度が向上し通信品質が改善されるのです。音声通話やインターネット接続などの多様な用途に対応するために適していると言えます。

 ほぼ世界共通で、各国の政府や国際機関によってこの辺りの周波数を携帯電話やスマートフォンにこれらの周波数帯を割り当てているわけです。

立地次第で電波が悪くなることがある

 こうした理由で、携帯電話・スマートフォンには比較的高い周波数帯の電波を使うように割り当てられているのですが、それゆえにマンションの1階や半地下などで周囲を遮蔽物、つまり近所のマンションやビルの鉄筋コンクリート、土などに覆われてしまっている場合、これらに邪魔されて電波が届きにくいことがあるのです。

 また、基本的に携帯電話の基地局のアンテナも地上にいる携帯電話に向けて電波を発信していますから、新しくできたタワーマンションの上層階などには電波が届きにくい状態になっていることがあります。

 引っ越したら、急に携帯電話がつながりにくくなったという人は、一度立地を見直してみましょう。周りに何か高い建物はありませんか? もしかするとそれが電波が悪くなった原因となっているかもしれません。

室内の電波状況は0円で改善できる

 スマートフォンのアンテナの向きや位置を変える程度で解決できる場合は別ですが、どんなにやっても部屋の中に電波が届かない、届いても微弱で会話をしても途切れて使い物にならない……という場合、0円で改善できる方法があります。

 室内の電波状況を改善するため、大手キャリアでは窓口を設置して対応しているのです。

キャリアWebサイト
ドコモ(ahamo) 屋内の電波改善装置のご案内
KDDI(au/UQ/povo) 電波の改善を要望したい(電波サポート24)
ソフトバンク(ワイモバイル、LINEMO、ジャパネット通信サービス) 屋内の電波改善サービス
楽天モバイル Rakuten Casa

 各自が利用しているキャリアに、上記Webサイト経由などで問い合わせると多くの場合、状況に合わせて「電波改善機器」を設置するといった電波改善の提案をしてくれます。これらの調査や機器設置に料金はかかりません。

 「電波改善機器」とは、「レピーター」「フェムトセル」といった機器を指します。レピーターとは、ある場所で受信した電波を引き込み増幅させることで、別の場所の電波環境を改善させる機械のことです。屋外でなら通話ができるのに、家の中に入ってしまうと電波が届かない、通話が途切れてしまう、という状況ではレピーターが使われることが多いようです。

レピーターとは、アンテナなどで受信した電波を増幅させ、別の場所の電波環境を改善させる機械のこと

 フェムトセルは、第321回:フェムトセルとはで解説したように、たとえば家の中や小さなオフィスなど数m程度のエリアをカバーする、小型の基地局ともいえる装置です。

 多くの場合、携帯電話会社が自宅を訪問するなどして状況を確認し、これらのどちらの対応が適切かをふまえて、対応してくれるでしょう。なお、フェムトセルの場合はインターネット回線が自宅に引き込まれている必要があるので、この通信料はユーザー負担となります。

 また、いずれの事業者も、サブブランド(ahamo・povo・LINEMO)を利用している場合でも、対応をしてもらえるようです。

残念ながらMVNOでは……

 なおいわゆる「格安SIM」とも呼ばれるMVNOではどうかというと、大手キャリアから回線を借りているという立場上、レピーター・フェムトセルの貸し出し・設置はしていないようです。

 代表的なMVNO業者ではたとえば、「弊社ではレピータを提供することができません。恐れ入りますが、ドコモの電波が受信できない場合には、au網を使用するタイプへの契約変更も視野にご検討ください」というように、違う回線網を利用するようすすめるなどの対応を取るようにしています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)