ケータイ用語の基礎知識

第976回:TWT(Target Wake Time)とは

Wi-Fiで省電力が実現するTWT

 TWT(Target Wake Time)とは、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)で導入された省電力機能です。TWT自体はIoT端末向けの無線LAN規格であるIEEE 802.11ah(Wi-Fi HaLow)で導入されていますが、Wi-Fi関連ではWi-Fi 6で初めて導入されました。

 アクセスポイントと端末の双方がTWTに対応していれば、この節電メカニズムによって、アクセスポイントと端末のスリープ状態が同期され、Wi-Fi接続時の省電力が実現します。

 簡単に言えば、iPhone SE(第2世代)やiPhone XRなど、iPhone 11以降のiPhoneを持っているならば、家の無線LANルーターやアクセスポイントを古いものではなく、Wi-Fi 6対応のものに交換したほうが、電池の保ちがよくなる場合が多くなります。

 また、逆に家などよくいる場所のアクセスポイントがWi-Fi 6に対応しているならば、古いスマートフォンより、Wi-Fi 6対応の新しいスマートフォンらの方が、電池保ちがよくなることが多くなるでしょう。

以前のパワーセーブとの違い

 Wi-Fiの規格が、IEEE 802.11b/g/n/ac/axという名称から分かりやすくするために、第4世代に相当するIEEE 802.11nは「Wi-Fi 4」、第5世代に相当するIEEE 802.11acは「Wi-Fi 5」と愛称をつけ、そして現在最新のIEEE 802.11axは「Wi-Fi6」になっているというのは、
「第881回:Wi-Fi 4/5/6 とは」で記した通りです。

 Wi-Fi 6は、周波数帯として2.4GHz帯/5GHz帯を使い、規格上の最大通信速度が9.6Gbpsと高速になったこと、接続方法としてOFDMA(直交周波数分割多元接続)とMACフレームに新たに追加された「カラーコード」によって接続を多元化、つまり一度に多くの端末が接続されていても安定した通信が可能となります。そして、このTWTにより省電力化も図られています。

Wi-Fi AllianceによるTWTの説明

 もともと、無線LAN規格(IEEE 802.11)には、パワーセーブ自体は規定されてはいましたが、その実装の必要性が低かったためか、Wi-Fi 6以前のそれは非常に実用性に乏しいままでいました。

 無線LANルーターの設定をしたことがあれば「DTIM」(Delivery Traffic Indication Message)という項目を目にしたことがあるかもしれません。これが以前からあるパワーセーブに関する項目です。

 簡単に言えば、この以前のパワーセーブではDTIMで設定した「ウェイクアップ」のタイミングでアクセスポイントに接続する全ての端末が仮眠(スリープ状態)から起こされるため、アクセスポイントの設定によっては、端末の電力消費が早くなったりということもあり得たのです。

 Wi-Fi 6のTWTでは、複数の端末が圏内にいることを初めから想定しており、端末がいつスリープしていつ起きるのか、その間隔を端末ごとにネゴシエーション(合意)してスケジュールを設定します。

 つまり、端末がウェイクアップするタイミングは、他の端末が起きるタイミングに影響されなくなるわけです。これによって、端末の消費電力と電池寿命を延ばすことにつながっています。

 また、TWTではさまざまなマルチユーザーモードも使用でき、たとえば圏内にいる端末にネゴシエーションを得ずに、一斉にスリープ・ウェイクアップ間隔を決めて実行する「ブロードキャストTWT」というようなモードも用意されています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)