ケータイ用語の基礎知識
第975回:デジタルプラットフォーム取引透明化法とは
2021年2月16日 06:00
大規模オンラインモール・アプリストアの「透明性」「公平性」向上へ
インターネットやスマートフォンの急激な進歩と利便性快適性のおかげで、オンラインモール・アプリストアといった「デジタルプラットフォーム」は急激にその発展をとげています。
ただ、一部のモール・ストアでは規約の変更や取引拒絶の理由が示されないなど取引の透明性が低いことや、商品などを提供する事業者による、合理的な理由に基づいた要請に対応する手続・体制が不十分であることといった懸念も指摘されています。
こうした状況を踏まえ、デジタルプラットフォームにおける取引の透明性と公正性の向上を図るために、「取引条件等の情報の開示」「運営における公正性確保」「運営状況の報告と評価・評価結果の公表等の必要な措置」が講じられることとなりました。
2020年5月27日に成立、2021年2月1日に施行された、「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」、通称「デジタルプラットフォーム取引透明化法」がそのひとつです。
この法律では、大規模オンラインモール・アプリストアといったデジタルプラットフォームに、取引の「透明性」・「公平性」を高めるよう促します。
特に取引の透明性・公平性を高める必要の高いものとして、まずは下記に当てはまる事業者を「特定デジタルプラットフォーム提供者」と規定して、規制の対象とします。
3000億円以上の国内売上額(前年度)
・アプリストア
2000億円以上の国内売上額(前年度)
これから3月1日までに事業者からの届け出を受け、今春中にはそれら「特定デジタルプラットフォーム提供者」を経済産業省が指定することになっています。
上述の基準で示される規模を超える特定デジタルプラットフォーム提供者は、取引条件などの開示と、自主的な手続・体制を整備することを経産省に報告することになります。経産省では、取引先事業者や消費者、学識者なども関与してレビュー(評価)を行い、結果を公表します。事業者は、このレビュー結果を踏まえて、改善を行わなくてはならない、ということになりました。
なお、本法律の規律は、国内外の別を問わず適用されます。
プラットフォーマーへ、利用者への様々な情報開示義務が
デジタルプラットフォーム取引透明化法での規制の内容ですが、(1)販売等の目的でプラットフォームを利用する者、(2)消費者などそれ以外の目的でプラットフォームを利用する者に分けてプラットフォーマーがそれぞれ開示すべき事項の開示・変更時の事前通知などを義務づけることとしています。
具体的には、販売等の目的でプラットフォームを利用する者に対しては以下のことが挙げられています。
- 取引拒絶する場合はその判断基準
- プラットフォーム利用にあたり他の商品の購入などを要請する場合の内容・理由
- 商品掲載順位に用いられる主要基準
- プラットフォーマーが売上額等の取得・使用する場合、その内容・理由・条件
- 契約変更や契約にない取引を行う場合における内容理由
- 継続取引を拒否する場合、その内容理由
- プラットフォーマーに対する苦情・協議申し入れ方法など
また、消費者などについては、これらのことを開示すべきとしています。
・プラットフォーマーが売上額等の取得・使用する場合、その内容・理由・条件
ただし、この法律は、「取引の透明性と公正性の向上を図る」ことに重きが置かれつつも「デジタルプラットフォーム提供者が透明性及び公正性の向上のための取組を自主的かつ積極的に行うこと」を基本理念とし、国の関与や規制は必要最小限のものとすることと規定しています。
たとえば、デジタルプラットフォーム提供各社は、それぞれのアルゴリズムを用いて売上情報その他のビッグデータを分析し活用するなどして商品掲載順位を決定することによって利用者の獲得や、利益の増大をそれぞれが競っています。したがってアルゴリズムそのものを開示を強制すれば競争力の源泉を奪ってしまい、かえってプラットフォーマーによる競争の芽を摘んでしまいかねません。そのため、アルゴリズム自体の開示などはプラットフォーマーには求めない、としています。
ただし、独占禁止法違反のおそれがあると認められる事案を把握した場合には、公正取引委員会に対し、同法に基づく対処を要請する仕組みを設ける、としています。