ケータイ用語の基礎知識
第937回:PPS(Programmable Power Supply)とは
2020年1月14日 11:32
USB PD 3.0のオプション高速充電規格PPS
PPS(Programmable Power Supply)は、USB PD 3.0のオプションとして用意される高速充電規格です。
USB PDとは、「第747回:USB PDとは」で解説した通り、USBを使った電源供給の規格で、USB PDの「PD」は、電源供給を意味する「Power Delivery」の略から来ています。
USB PD規格は、何度か内容が変更されるRevision(改訂)がかかっています。USB PD 3.0は正確にはUSB PD Revison 3.0、つまり改訂3版ということになります。
USB PD 3.0では、最適な充電を促進するために仕様の中でUSB充電器が使用するデバイスについて2つのメカニズムを定義しています。
1つは、それぞれが流してよい最大電圧電流のリストを持つという方法です。これはPD 2.0でも利用されていた方法で、電力供給側デバイスが、ケーブル許容範囲と電力受電側の示すリストの中から流すべき電圧と電流を選択し、適切な電気を流します。
これは、実現しやすい方法で、実際多くの実装で使われている方法ですが、このモデルの副作用としては、本当に必要な電力より多く電力が供給され充電回路が熱を生成することで、特に小型フォームファクターデバイスでは問題となる場合があります。
2つ目は、それぞれプログラム可能な電圧電流範囲のリストをやりとりしながら充電するという方法です。これが3.0のオプションとして追加されたPPSです。
電力受電側デバイスは、ここまでは大丈夫という範囲内の電圧と最大電流を要求します。供給側は、最大電流に達するまで要求された電圧を供給します。最大電流に達すると、USB充電器は要求された最大電流を超えて供給しないように出力電圧を下げます。充電サイクルの高電流部分では、USB充電器を(適切な安全装置を介して)バッテリーに直接接続できます。このモデルは、内部充電回路の熱影響を最小限に抑えたいデバイスで使用されます。
PPSでは、100mV・50mA刻みで電圧、電流を状況に応じて変えて流すことで、小さなステップで電圧と電流を変化させる。スマートフォン側で充電器から供給される電力を最適なものになるようにコントロールし、熱の発生などの形で捨てられるエネルギーを最小限に抑え、それでいて高速に充電することができるのです。
仕組み上からも分かるとおり、このPPSを利用するには電力を供給するACアダプターやモバイルバッテリー、それに電力を受けるスマートフォンやタブレットともそれぞれPPS対応していなければなりません。それに間を介するケーブルもUSB PD 3.0に対応しているものが必要です。
別名で既に使われているPPS
PPSの名称こそ使用されていないものの、サムスン電子の「Galaxy Note 10+」にはPPSに準拠した技術が採用されています。この端末で採用されている「Super Fast Charging 2.0」という技術が、内容的にはPPSそのものなのです。
Galaxy Note 10+の場合、別売の45WトラベルアダプタがPPS対応ACアダプタになっています。ケーブルには5Aケーブルを利用することで、このPPSによる高速充電を利用することが可能となります。
Galaxy Note 10+の場合、空の状態から4300mAhの本体バッテリーを満充電にするまで約1時間で済み、しかも本体が熱せられるようなことはほとんどないとされています。