ケータイ用語の基礎知識

第911回:逃げなきゃコールとは

 「逃げなきゃコール」とは、災害、特に水害・土砂災害の危険が迫った際に、家族に直接電話をかけさせ、離れた場所に暮らす高齢の親などの避難を呼びかけることを促す取り組みです。

 国土交通省が、NHK・ヤフー・KDDIの協力を得て2019年5月より開始しました。なお、KDDIに関しては7月4日より開始予定です。

 スマートフォンや防災無線などを使って、住民に避難を呼びかける「防災情報の通知」はこれまでも行われてきました。しかし、2018年の西日本豪雨(平成30年7月豪雨)では、自治体の避難情報が出ても、自宅に留まって被災した人が多く出ました。

 これを教訓に、自治体や携帯電話事業者からだけではなく、災害時の避難の説得をより身近な家族からもしてもらうことで、より多くの人が非難できるようにしようと、いくつかの取り組みが導入されることになりました。

子供や親族が、離れた親の居住地の災害情報を受け取る

 「逃げなきゃコール」の仕組みはそれほど複雑なものではありません。

 簡単に言えば、スマートフォンアプリを通じて、とある地域の災害情報を得るというものです。

 一般的に、災害情報のアプリでは、ユーザー自身が住む場所を登録する、あるいは登録していなくとも手元のスマートフォンのあるエリアで警報メッセージを受け取る、といった形です。一方「逃げなきゃコール」では、あらかじめ、災害情報を得る場所を指定しておきます。

 そうすれば、たとえばユーザーが実家の親などと遠く離れた場所に暮らしていたとしても、実家のある地域で警報が発令されれば、プッシュ通知で伝わるのです。

 これで、もし、洪水や土砂災害の警報が流れてきたら、ユーザーは必要なアクション、たとえば電話で安否確認や避難指示といったことができるわけです。

KDDI「逃げなきゃコール」対応サービスの「登録エリア災害・避難情報メールの資料から

 つまり「逃げなきゃコール」は、スマートフォンにアプリをインストールする人は、被災地の人ではなく、その場所に住んでいる人の家族と想定されています。

 2019年6月現在対応アプリとしては「NHKニュース防災」、「Yahoo! 災害情報」の2種類があり、7月4日より「au 登録エリア災害・避難情報メール」も加わる予定です。

 これらのアプリは、水害の他にも、たとえば「NHKニュース防災」であればNHKの番組中テロップで流されるレベルのニュースも送られて来ます。Yahoo! 災害情報も津波や地震、豪雨などの災害・もしくはその予兆となる警報などが発令された場合、プッシュ表示でスマートフォンに災害情報を表示するようになっていますので、インストールしておくといざというとき、さまざまな災害や災難から身を守ってくれるでしょう。。

 「逃げなきゃコール」の対象となる情報は、水害データで、消防庁、資源エネルギー庁、気象庁、もしくは各自治体の緊急速報メール「災害・避難情報」が元データとなります。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)