ケータイ用語の基礎知識

第802回:ペアレンタルコントロール とは

保護者が機能制限、監視すること

 「ペアレンタルコントロール」とは、英語で「親のコントロール」を意味する“Parental contorol”から来ています。その名の通り、保護者が子供の使う機械をコントロールする、つまり機能を制限したり、使い方を監視したりする、そのための仕組みや機能のことを指す言葉です。

 iPhoneやiPadでは、標準で「ペアレンタルコントロール」を利用することができます。iPhone/iPadの「設定」→「一般」→「機能制限」から、インストールされているアプリを使えるかどうか決められるのです。また、たとえば、「アダルトサイトへの接続は禁止する」といった制限もできます。

iPhoneのペアレンタルコントロール。パスコードをかけて、使用者には解除できない機能制限を付けられる

 スマートフォンにはさまざまな機能を持つペアレンタルコントロールアプリが存在します。たとえば、ドコモは、「あんしんフィルター for docomo」というペアレンタルコントロールアプリをAndroid 5.0以上搭載のスマートフォンやタブレット、iPhone/iPad向けに提供しています。「あんしんフィルター for docomo」は、iPhone標準のペアレンタルコントロールより高機能です。たとえば指定した時間帯だけ、スマートフォンの機能を制限することもできます。夜の間や学校の授業中など、使ってはいけない時間は起動しないよう設定できるわけです。ドコモだけではなく、au、ソフトバンクも「あんしんフィルター」という名称でサービスを提供しています。

 使用者の年齢に合わせてインターネット閲覧に制限をかけるというような機能もあります。たとえば、使用者を小学生と設定すれば「ゲーム・懸賞・SNS・掲示板・出会い系・アダルトサイト」への接続は制限されます。子供から保護者に「このページにアクセスさせてほしい」と申請することもできますし、アクセス履歴も残せます。MVNO各社もWebアクセスを制限するフィルタリングサービスのオプションを提供しています。

 ドコモの場合には、機能制限だけでなく、どんな場所にアクセスしたかの「監視」もペアレンタルコントロールに含めているわけです。

子供が正しくスマートフォンを使えるよう、成長を助ける機能

 スマートフォンがもつコミュニケーション機能や、個人が使えるコンピューターとしての機能は、大人にとっても子供にとっても非常に有用なものです。現代の社会は既に、それを使うことが前提となっている部分すらあります。

 しかしながら、子供は大人とは違います。身体は成長途中ですし、精神、知力も年齢相応の能力しかありません。もしスマートフォンを使わせた場合、場合によっては、子供の成長や発達を阻害したり、取り返しのつかない結果を生んだりする可能性もあります。

 不適切な一例としては、スマートフォンでのゲームや動画を楽しむ際に、著しい遊びすぎ/使いすぎが挙げられるでしょう。誰もが夢中になるこれらの機能を子供に利用させた場合、身体が対応可能な限度を超えて利用してしまうことがありえます。そうした場合、結果として、視力の低下を招いたり、精神的な依存に陥ってしまったりするという懸念があります。これは大人でも同じような状況になる可能性はありますが、成長途中の子供には、機能不全や発達不良といった取り返しのつかない影響になり得る分、さらに悪いと言えます。

 スマートフォンの機能としては、便利なコミュニケーション能力があります。この点でも、悪意のある人に出会ってしまう可能性があります。人を騙してでも出会った人間から益を得ようとするような人間が「会おう」と言ってくることは全く珍しいことではありません。そして、悪意の他人から経済的な、あるいは肉体・精神的な被害を受ける人も後を絶ちません。これもまた、大人でも同じ悪影響を受ける可能性はありますが、判断の前提となる知識の不足、あるいは判断に必要な力が発達途中である子供の場合は自己責任にはできません。

 特に保護者は子供の健全な成長・発達に責任を持たなければなりません。ですからそうした被害はなんとしても防がなくてはなりません。そうした社会の要求によって「ペアレンタルコントロール」機能が開発され、スマートフォンにも引き継がれているのです。

 一方で、ペアレンタルコントロールがあるからといって、それで単純に機能を制限すればよい、というのは誤りです。というのも、機能を制限すれば、先述のような問題が全て解決するからではないからです。集中し過ぎてしまうことについては、子供は精神的に未熟であるからこそ、自分の適切な範囲を超えて利用してしまいます。つまり、制限するだけでは、子供の精神的な成長には繋がりません。必要なのは、適切な範囲で利用しつつ、適切さとはなんなのか、どこまでが適切な利用なのかを子供に理解させることでしょう。

 コミュニケーションに関しても同様です。不穏当な欲求を満たそうとする悪意のある人は、この社会には必ず存在します。スマートフォンはその距離感を縮めましたが、アプリで機能制限をしても、そうした悪意の一端から身を守る役割しか果たしません。その上で、社会には何があり、どういった人がいて、どう関わるべきか、子供自身が理解できる、自律できるようになるにはどうすべきなのか保護者は考え、行動する必要があるのでしょう。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)