ケータイ用語の基礎知識
第779回:バースト転送 とは
2016年11月1日 12:14
データ転送速度を抑える要素を除く
スマートフォンやパソコンなどを利用する際、快適な使い心地と感じさせる、重要な鍵のひとつは「データをいかに早く転送するか」ということになります。コンピュータは、データを読み込み、計算して、処理するという一連の流れにあるからです。
しかし、データのやり取りは、その送るルートの事情、送受信双方の事情があります。仕組みそのもので速さの上限があったり、利用料に応じた設定になっていたりするなど、何らかの制約を受けます。
その「制約された条件」を解除して、高速にデータを転送することをよく「バースト転送」といいます。
バーストという言葉は、破裂する、はち切れる、堰を切るといった意味の英単語“burst”から来ています。低速だったデータ転送とは打って変わって、ドーンとまとめて送る様子が、はち切れるように感じられるわけですね。
格安SIMでの「バースト転送」
スマートフォン関連での“バースト転送”として、身近な例は格安SIMと呼ばれるMVNO事業者のサービス「バースト転送」機能でしょう。IIJmioやOCNモバイル、楽天モバイルなど一部のMVNO事業者が導入しています。一般に格安SIMは、多くのユーザーと回線をシェアする形になって、NTTドコモやauといった大手携帯電話のサービスと比べて、遅くなる場面があります。また高速通信を使わないモードにしたり、契約中の通信量を使いきったりすると通信速度が遅くなります。そうした場面でもバースト転送が用意されていれば、メッセージを送ったり、軽量なWebサイトを見たりするときには、快適に利用できるのです。
通信量を使いきって、高速通信ができないモードや、あえて低速なモードにした場合、通信速度は一般的に150~500kbps程度と制限されます。高速通信モードで数十Mbpsで通信できていた場合と比べれば、2桁ほど低い通信速度になってしまうわけです。
MVNOのバースト転送は、この低速状態でも、メールやWebアクセスのセッションが開始された段階……つまりアプリが接続する最初の段階だけ、高速な通信を行ってくれます。
回線のデータ転送速度が低速になっていると、メールやメッセージを読むだけでも非常に時間がかかり利用者にストレスがかかるので、せめて軽い利用の場合だけは、その負担を軽くしようというわけです。
バースト通信が適用される量や時間は、MVNO事業者によってまちまちのようです。たとえばIIJmioや、IIJをMVNEとして利用しているサービスの場合、バースト転送によって、75KB分のみ高速にデータが送られてきます。
メールやメッセージングですと十分な容量で、Webページの場合はテキストやレイアウトがぎりぎり表示されるタイミングになることが多そうです。動画や音声のストリーミングでは最初のバッファリングのときに使い切ってしまいますので、このような用途でバースト転送の恩恵を受けることはないでしょう。
なお、低速モードは契約中の通信量を使い切ったときだけでなく、ユーザー自身の手で設定できることが一般的です。手動で低速モードに切り替えたときもバースト転送は適用されます。普段は低速モードにしておき、本当に必要なときだけ高速な通信モードに切り替えるという使い方をするとデータ通信の使用量を節約することもできます。これは、賢い格安SIMの使い方のひとつと言えるかも知れませんね。
他にもいろいろな場合に使われる「バースト転送」という表現
バースト転送という用語は、格安SIMの通信以外では、本連載の「第181回:IEEE 802.11g とは」でもご紹介しています。このときは、Wi-Fiでのデータ伝送において、複数のデータを連続的に転送し、制御のオーバーヘッドを軽減するモードとして紹介しています。
多くのユーザーが通信する場合、自分が使っているからといって他の利用者が使えないということにならないように、時間を区切って(時分割)短い時間のうちにデータ通信する時間、しない時間と、ON/OFFを切り替えます。しかし他の端末の通信などを顧みずに、一気にまとめて送れるだけデータ伝送を行ってしまうというようなモードがある場合、「バースト転送モード」と呼ばれることがあります。この場合、「他の端末の通信が全くできなくなる」というデメリットが生まれます。
ただ、それでもコンピュータやガジェットの速度が上がるというのは魅力的ですので、この「バースト転送」という用語は、さまざまなシチュエーションで使われます。どんな機器やサービスで、「バースト転送」という用語が使われているのか探してみるのも面白いかもしれませんね。