ケータイ用語の基礎知識
第763回:Desktop App Converter とは
2016年7月5日 12:13
パソコン用アプリをスマホなどでも
「Desktop App Converter」とは、マイクロソフトが提供しているプログラムです。WindowsアプリをUWPアプリに変換するために使われます。かつては「Project Centennial」というコードネームで呼ばれていました。
マイクロソフトからは、このDesktop App Converterは、プレリリース版が無償配布されています。実行するには、2016年8月2日から配布される予定の「Windows 10 Anniversary Update」のEnterprise版、またはProエディションが必要です。またハードウェア支援による仮想化に対応している必要があり、誰しもが使えるというものではありませんが、ある程度の環境を揃えられれば、簡単なコマンドひとつで、パソコン用アプリ(exe形式)をappx形式やappxbundle形式のUWPアプリに変換できます。
Desktop App Converterのコードネームの“Centennial”とは、「百年間」「百年祭」を意味する英単語です。Windowsアプリ、あるいはWindowsそのものが世に出てからそんな期間は経っていませんが、ひとつの時代の区切りを迎えたWindowsにとって、次の時代に向けた祝祭のような存在、との意図があるのかもしれません。
PCアプリからUWPアプリを作り出す
UWPは、かつて本連載で解説したように、「Windows 10で提供される新しいアプリケーション実行環境」のことです。その名は「普遍的なWindowsプラットフォーム」を意味する英語「Universal Windows Platform」を略したものです。
UWP環境向けに作られたアプリは「UWPアプリ」と呼ばれます。UWPアプリは、作成の際に「デバイス限定なし」という設定にすることで、同じプロジェクトで作られた1つのプログラムを、デスクトップパソコン向けのWindows 10や、スマートフォン向けのWindows 10 Mobile、組込用のWindows 10 IoT Core、電子黒板タイプの「Surface Hub」と、さまざまなデバイスで利用できます。
一方、Windowsアプリは、基本的に、ターゲットにしたWindows OS上でしか使うことができません。たとえば、パソコンやタブレット向けのWin32アプリはスマートフォン上では使えません。そこで、マイクロソフトは、WindowsアプリをUWPアプリに変換するための方法を2種類、用意しています。
ひとつは、Windows Anniversary Updateの各種ランタイムテクノロジーで、UWPパッケージを作り出す方法です。Windows Anniversary Updateのランタイムを使う方法の場合、アプリをUWPで「完全な信頼として実行される実行可能ファイル」となるように作り替えます。もうひとつが、今回説明している「Desktop App Converter」です。古いWindowsアプリをそのまま取り込んで、アプリの中身は古い形式のバイナリのまま、UWPアプリにします。
Desktop App Converterは、「アプリコンテナ」という仕組みになっています。これは旧来のアプリにまるごとUWPアプリの“皮”をかぶせるというもの。つまりアプリを動かす機器からすれば、まるでUWPアプリであるかのように見えるのです。
ただ、旧来のアプリではOKだったものの、UWPでは動作しなくなった仕組みもありますので、エラーが起きることがあり、そうした場合は、プログラマーがアプリを改修する必要があります。その意味ではアプリ移植の方法としてDesktop App Converterは、決して万能とは言えません。それでもとても手軽に試せる仕組みであり、短い時間でPCアプリをWindows 10 Mobileスマートフォン向けに移植できる手段です。古いアプリを新しいWindows、それもスマートフォンなどでも動くかどうか試してみたいという場合には、まず最初に試してみるだけの価値はあるコンバートツールであると言えるでしょう。