本日の一品

たった1200円の”なんちゃってセレブ腕時計”に製造の極意を見た!

 毎月の原稿書きも無事終了して、暇つぶしに筆者のいつもの定例回遊コースである海外のショッピングサイトを眺めていたところ、日本までの送料込み約1200円のなんちゃって“宝飾セレブ腕時計”を見つけて衝動買いしてしまった。今年の3月末に注文して約10日ほどで届いた。

 購入したのは単に素っ気なく“女性用腕時計セット”とのみ記述された腕時計のほぼ全面に直径1mm~1.5mmのラインストーンが何百個か埋め込まれた“レディースセレブ腕時計”だ。“セット”と名付けられたのは、腕時計だけではなくオマケに同じようなラインストーンが埋め込まれたブレスレットがついてくるからだ。

 俗に言われるセレブ腕時計は、腕時計が多少趣味の筆者もそれほど真近で見ることがないので、豪華さの雰囲気は正直分からない。今回ご紹介するセレブ腕時計はその価格からして120%なんちゃってであることは間違いない。しかし、本物となんちゃっての見かけ上の差をメリハリを付けて作ることで、表現性と実用性を見事に両立させている。

 まず、誰かがすぐそばでセレブ腕時計を装着しているのを見ても、全体がピカピカ光っていることに目を奪われてしまい、ほとんどそのディティールに目が届かない。運よく手に取って見ても、まだまだその光沢は鮮明でなかなか気づかない。

 実際に自分で購入して、バックルのサイズ調整などでいくつかのコマを取り外すなどしてやっと気づくという感覚で、それほど遠い存在だ。まずベゼルの側面のリュウズとリュウズガードの側面は一切のラインストーンが見当たらない。見えにくいところや人が気にならないところは極力手を抜くのが鉄則だ。

 そして今度はバックルに目を移すと……。ベゼルに接続されている最初のコマから3個目くらいまではラインストーンが埋め込まれているが、4番目以降のコマには一切ない。女性ならどうせこの辺りのコマは少なくても2~3個、細腕の女性ならさらにもう少し取り外してサイズ調整するものなので極めて合理的な判断だ。

 そしてバックルのコマ裏を見て2度ビックリする。何とよくみるとプラモデルの銀色パーツとほぼ同じで、各コマはソリッドな金属ではなく上手く背面がえぐり取られたプラスチック素材を利用している。これが想定外の軽量性を実現しており、超軽くて装着疲れがないのだ。

 もちろん、バックルの長さ調整をするにはシャレたトップがマイナスのネジなどを使っているわけはない。一般的なチープな腕時計と同様ハンマーでピンを叩き出す方法だ。幸いにも今回は、プラスチックヘッドのハンマーを持ち出すまでもなくSIMピンのような道具でピンを押し出すことで簡単にピン抜き作業は完了した。

 サイズ調整の終了したセレブ腕時計を腕に装着してみたが、これがなかなか素晴らしい。とにかく軽いのだ! 一般的な社会人が愛用している、冠婚葬祭でも違和感ゼロのクォーツ腕時計が110~130g前後だと思うが、キッチンスケールで実測してみたところなんとこのセレブ腕時計はたったの79gだった。これはセレブな見かけと大きな差だ。

 海外からチープな腕時計などを購入すると、腕時計本体だけがプチプチに入れられている場合は極めて安価だが、紙ケースを含む何らかのプチゴージャスなケースに入れると本体の価格も送料も一気に高くなることがある。過去の経験から、今回もセレブ腕時計本体とオマケのブレスレットがそのままプチプチで包装された荷姿で受け取った。

 日本には“馬子にも衣裳”という古い言葉があるが、セレブ腕時計のためにあるような言葉だ。自宅にあった別の腕時計の白い木箱に、セレブ腕時計を収納してみたらさらに高級感が加速して。もはや誰も1118円とは思わないだろう。普段は最近手に入れたお気に入りの腕時計スタンドにのっけて机の上に飾ってある。

 やけに気に入ってしまったセレブ腕時計だが、この腕時計の販売ページのタグワードは“女性用セレブ腕時計”だったと思う。たが、女性の腕周りに合わせてサイズ調整するには今からあと数個のブレスレットのコマを取り外す必要がありそうだ。

 しかしブレスレットのコマを取り外しても、男性用のバックルが付けられているのでバランス的にはかなり微妙だ。男女どちらでも装着できる、昨今のボーイズサイズ系の腕時計を使用している女性なら、十分マッチするかもしれない。ブランド物と合わせて身に着けていれば誰もこの腕時計が香港から日本までの送料込みで1118円とは思わないだろう。世界は広い、腕時計の世界は深い、人の好みの世界はもっと大きい。

製品名実売元購入価格
女性用宝飾セレブ腕時計-1118円