石川温の「スマホ業界 Watch」

「auマネ活プラン+」「使い放題MAX+」が本日3日スタート、2025年のキャリアの通信品質はどうなる?

KDDIは新料金プラン「auマネ活プラン+」を12月3日より開始する。従来のauマネ活プランから、決済によるポイント付与を強化。NTTドコモ「eximoポイ活」、ソフトバンク「ペイトク」を意識したようだ。

 キャリアとすれば、2020年ごろからの「官製値下げ」以降、世間のあらゆるものが値上げ基調にあるなか、なかなかわかりやすい料金値上げには踏み込みづらい。そのため、基本料金は値上げしつつも、ポイント付与というお得さをアピールすることで、批判の声を交わそうとしているようだ。

 今回、KDDIではauマネ活プラン+の元となる通信プランにも変更を加えている。「使い放題MAX+」では、テザリングやデータシェアの容量制限が月間60GBとなっているほか、新たに「月間のデータ通信利用量が200GBを超えた場合は当月末まで最大5Mbpsまでに制限する」という条件が追加されているのだ。
 プラン名は「使い放題」なのに、実態は「200GBまで」というのはどういうことなのか。

 KDDI・パーソナル事業本部マーケティング本部の渡邊和也副本部長は「200GB制限は、非常に大量の通信をする方がごく一部いるため、ネットワークの公平性から設けた。とはいえ、制限下でも通信速度は5Mbpsとなるので、利用しやすい使い放題となっている」と語る。

 KDDIといえば、先日、調査会社のOpensignalが発表した「モバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポート」において、18部門中13部門で1位を獲得。よほど嬉しかったのか、Opensignalは発表するやいなや、広告などで事前に用意していたであろう「つながる体感No.1」をアピールしている。

 これまでソフトバンクが多くの部門で1位を獲得していたが、宮川潤一社長によれば「能登半島地震で3G停波が遅れ、全体の計画に影響が出た」ということで、ネットワーク品質の改善に手が出せないなか、KDDIが1位をかっさらっていたのであった。

 KDDIの説明では、5GのSub6において、2023年度末に衛星による干渉条件が緩和され、基地局の出力アップ及びアンテナ角度の最適化を実施できたのが大きかったという。また、KDDIはSub6を2ブロック、200MHz幅を所有しているため、帯域幅が広く、速度が出やすいという好条件によって、多くの部門で1位を獲得できたようだ。

 ただ、Sub6を2ブロック、200MHz幅を所有し、一見、余裕があるように見えるKDDIであっても、新料金プランで200GBという容量制限をつけるということは、相当、慎重というか、すべてのユーザーを公平に扱いつつ、通信品質を維持していこうという表れなのだろう。

どうなる「200GB制限」

 ただ、今回のKDDIによる「使い放題と言いつつ200GB制限」が他のキャリアでも導入されていくかが気になるところでもある。

 3278円でデータ使い放題というプランを提供し、ユーザーを増やしている楽天モバイル。直近では812万契約を突破するなど、黒字化に向けて順調そうだ。

 ただ、楽天モバイルはユーザー一人あたりの1カ月におけるデータ利用量が31.1GBとかなりヘビーに使われている。

 楽天モバイルにおいては、4Gにおいては1.7GHzがメインであり、プラチナバンドも手に入れたがエリア対策がメインで容量対策には向かない。

 11月27日には「楽天モバイル ネットワーク技術に関する勉強会」が開催されたが、そのなかで「Sub6がトラフィック容量対策の周波数帯」ということが説明された。

 とはいえ、楽天モバイルのSub6は1ブロック、100MHz幅しかない。KDDIと比べてユーザーが少ないとは言え、一人あたり31.1GBも使っている。果たして、楽天モバイルが持つ周波数だけで、将来的にトラフィックを裁き続けることはできるのだろうか。

 楽天モバイルの副CTO兼モバイルネットワーク本部長である竹下紘氏は「この2年間で一人あたりのトラフィックが急激に伸びている。この勢いは今後、2年間ぐらいは変わらないだろう。一人あたりのトラフィックと契約者数のかけ算になってくるが、それだけのトラフィックを収容できるネットワークが必要になっている。都心部はSub6の基地局を広げて4Gのトラフィックを逃がしていきたい。基地局の追加が対策になってくる」と語る。

 ネットワークを運用する立場とすれば「容量制限」を導入したいのだろうが、楽天モバイル全体の成長戦略を考えると、おいそれと「容量制限する」とは口が裂けても言えないだろう。

 一方で、逆に早期に容量制限すべきだと心配したくなるのがNTTドコモだ。
 ネットワーク品質の低下が叫ばれて久しく、対策も打っているようだが、いまだにOpensignalの成績も振るわない。実際に街中で使っていても「あれれ」と思うことも相変わらずだ。

 NTTドコモの使い放題プラン「eximo」は、本当に使い放題で、制限に関しても「ネットワーク混雑時、大量通信時等に通信制限がかかる場合がある」とかなりゆるめだ。

 5Gデータプラスなどのペア回線は30GBという制限があるが、メイン回線はテザリングで使っても無制限だ。これでは、大量に使うユーザーが殺到し、ネットワークに負荷がかかっているのではないか。

 NTTドコモではネットワークの品質改善のためにSub6基地局を積極的に打つなど対策をしているが、まずは料金プランに通信制限の蓋を着けた方が公平性、さらにはネットワーク品質の改善という面でも特効薬になるのではないだろうか。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。