石川温の「スマホ業界 Watch」

「ドコモ×Amazon」のポイント連携、競合サービスが狙える“Amazon側の穴”

 NTTドコモは10日、アマゾンジャパンとポイントサービスに関する協業を発表した。同日より、Amazonでの買い物で、dポイントが貯まる、使えるようになった。

 これまでもAmazon.co.jpでは独自のポイントが付与されていたが、あまりザクザクと貯まるという印象はなかった。Amazon.co.jpの利用者にとってポイントサービスは二の次で、とにかく「欲しいものが何でも揃う豊富な在庫」「欲しいときにすぐに届く利便性」といったところに利用価値を感じ、使い続けているのではないか。

 今回、NTTドコモとアマゾンとの協業では、dアカウントを持つユーザーがAmazon.co.jpと連携すると、5000円以上の買い物で1%のdポイントが貯まる。また、dポイントでの支払いも可能だ。

 さらにNTTドコモを通じてAmazonプライムに登録すれば毎月120ポイントを還元。

 ahamo、eximo、ギガホ契約もしくは60歳以上のドコモユーザーなら1%、ポイント還元率が上がる。d払いで支払いすれば、さらに0.5%となり、最大3.5%還元となる。

 楽天グループのSPUやPayPayなどに比べると「シブチン」な感は否めない。

 「他社のポイントが貯まる、使える」という取り組みは、Amazonでは「初」とのこと。

 しかし、実際は先月から、リクルートのポイントがAmazonで「使える」という。果たして、これはどういうことなのか。
 質疑応答で尋ねたところ、アマゾンジャパン バイスプレジデント 鈴木浩司プライム・マーケティング事業統括本部長によれば「先月発表したリクルートポイントの連携についてはAmazonのポイントパートナープログラムというアクティビティの枠組みとなる。

 Amazonのポイントパートナープログラムというのは、パートナーのポイントを我々Amazonでの買い物で使えるというものだ。

 今回のNTTドコモとの協業については、Amazonでdポイントを貯めたり使えたり、両方できることがユニークな点になる。

 Amazonのポイントパートナープログラムとはかなり別物のアクティビティといえる」とのことだった。

 NTTドコモとアマゾンジャパンによる「dポイントが貯まる、使える」というのは、記者会見のタイトルが「dポイントの活用等における戦略的協業記者発表会」というタイトルがついているぐらいだから、かなり特別なものなのだろう。

 NTTドコモの田原務ウォレットサービス部長は「今回の提携が独占的なものかどうかについては、お答えを控えさせていただきたい。

 基本的にdポイントはオープンなプログラムであり、独占的な考え方ではなく、大きなプラットフォームとしてさまざまな加盟店に活用していただける」としている。

 一方、アマゾンの鈴木氏は「ドコモさま、および、dポイントに関しては、戦略的に非常に重要な取組みだと考えている」と語っているぐらいなので、「Amazonで他社ポイントが貯まる」という点においては他社のポイントサービスが参入する余地はないのかも知れない。

 ただ、一方で他社にも門戸が開かれていそうなのがAmazonの「ポイントパートナープログラム」だ。わざわざ「パートナープログラム」という名称がついているということは、ある程度、ルール化され、Amazonから提示される条件などがあり、それを飲むことができれば、リクルートに続き、他社のポイントサービスも参入できる余地があるような雰囲気が漂っている。

実際、パートナープログラムは、リクルートは2社目であり、すでにJCB「Oki Doki ポイント」が2012年12月から参加していたのだった。

 アマゾンの鈴木氏に「ドコモのようなパートナーはこれ以上、増えないが、リクルートのような関係の会社は増えていくのか」と直撃したところ「今回はドコモとの記者発表であり、それ以外のAmazonのポイントパートナープログラムに関しては、あらためてご回答したい」と含みのある回答であった。

 ここ最近、携帯電話市場は2020年に楽天モバイルが第4のキャリアとして参入して以降、「ポイント経済圏競争」が過熱している。

会見のプレゼンテーションはドコモの井伊基之社長(左)とアマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長が行った

 今回のNTTドコモとアマゾンジャパンとの競合も、両社はともに否定するが、楽天経済圏を相当、意識した取り組みであることは間違いない。

 ネット通販の巨人であるアマゾンジャパンと手を組み、「dポイントを貯める、使える」を実現したNTTドコモとしては「してやったり」なのかも知れないが、「ポイントパートナープログラム」という「穴」が開いた状態ではある。

 そんななか、KDDIはアマゾンジャパンとは、Amazonプライムが着いてくる料金プランを現在も提供中だ。

 「AmazonでPontaが貯まる、使える」を実現できなくても、ポイントパートナープログラムに参加し、「AmazonでPontaが使える」という対抗策は打てなくもない。

 さすがにヤフーショッピングと関係性が近いPayPayポイント、楽天経済圏の楽天ポイントが「Amazonで貯まる、使える」を提供するのは無理があるが、PontaやVポイントあたりがポイントパートナープログラムに参加して、dポイントの牙城を崩すなんてことも十分にあり得るだろう。

 もちろん、NTTドコモがアマゾンジャパンに対して、さらに有利な条件などを提示する可能性もあるわけで、ポイントサービスを軸とした、引く手あまたのアマゾンジャパンを巡る争奪戦が勃発するのは時間の問題だろう。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。