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ドコモがAmazonと新たな協業に至った理由とは? 担当者との一問一答

 NTTドコモとアマゾンジャパンは10日、dポイントやAmazonプライムに関する協業を開始した。本稿では、発表会における質疑応答と、発表会後の囲み取材の様子をお届けする。

 質疑に応じたのは、ドコモ ウォレットサービス部長の田原務氏、営業戦略部長の山本明宏氏、アマゾンジャパン バイスプレジデント プライム・マーケティング事業統括本部長の鈴木浩司氏。囲み取材には、田原氏と山本氏が応じた。

写真左から山本氏、田原氏、鈴木氏

質疑応答

――提携の協議を始めた時期を知りたい。どちらから提案したのか。

田原氏
 協議を始めた時期やどちらから提案したのかということは、申し訳ありません、控えさせていただきたいと思います。Amazonさまとの長い協業の中でこういった話が出てきました。

――以前、ドコモの料金プランにAmazonプライムが1年間ついてくるというものがあり、2021年に終了している。今回あらためてAmazonと提携した理由は。ドコモが独自でeコマースをやるという考えはなかったのか。

山本氏
 今回はプランや期間に関係なく、Amazonプライムに加入いただくことで+1%のポイントが貯まるなどといった建付けで、買い物の体験を変えるということです。

 以前と比べるとプランの縛りはなくなり期間も長くなったということで、Amazonさまとの協業のご相談の中で、このようなことになりました。

田原氏
 今回は、日本最大規模のeコマース事業者であるAmazonさまと組むことで、ニーズに応えてdポイントクラブをより魅力的なものにできるのかなと考えました。

 ドコモ自身のeコマースというところでは、dショッピングなどがありますが、お客さまに選んでいただけるようなサービスにすべく、ドコモの取組みとして進めていきたいです。

鈴木氏
 Amazonでお買い物を楽しみながらdポイントを貯めたり使ったりできることは、Amazonとしても画期的な取組みだと考えます。

 ドコモさまとの協業によって新たな価値や利便性を生んで、ワクワクするお買い物体験を一緒に、dポイントのアカウントのユーザーやAmazonのカスタマー、そしてドコモのカスタマーに提供できればと考えています。

――5000円以上で1%還元というのは、インパクトに欠ける印象がある。ポイントが変動する可能性はあるのか。また、還元の原資は両社で折半するのかなど、扱いを教えてほしい。

田原氏
 還元率については、Amazonさまといろいろ協議した結果です。より多くの方々にdポイントを貯めていただきたいと思い、今回の設定となりました。今後についてはまったく決まっていません。

 原資としてどちらが負担するかというところについては、回答を控えさせていただきます。

 両社で、今回の取組みを盛り上げていくために、今回の条件以外のキャンペーンなども検討していきたいです。

鈴木氏
 5000円以上という制約はありますが、Amazonの2億点以上の商品が対象となりますので、それをベースに、より多くのdポイントのアカウントユーザーに対して、さまざまなオファーが提供できるのではと考えています。

――dポイントまたはd払いの中で、Amazon(での利用)が占める割合というのはどの程度なのか。

田原氏
 Amazonさまは日本で最大規模のeコマース事業者ですので、かなりの規模感だと認識しています。

 具体的にどれぐらいかというのは控えさせていただきますが、かなりの取扱高ということでご認識いただければ。

――ドコモの中では結構大きく、上から数えたほうが早いくらいなのか。

田原氏
 おっしゃる通りでございます。

――Amazonでは先月、リクルートポイントが使えるという発表があったばかり。今回の発表も、パートナーを増やすという取組みの一環なのか。

鈴木氏
 先月発表したリクルートさまとのリクルートポイントの連携については、Amazonのポイントパートナープログラムというアクティビティの中での内容です。

 Amazonのポイントパートナープログラムというのは、我々のパートナーのポイントを、Amazonでの買い物で使えるという取組みです。

 今回のドコモさまとの協業については、Amazonでdポイントを貯めたり使えたり、両方できることがユニークな点になるかと思います。

 Amazonのポイントパートナープログラムとはかなり別物のアクティビティとなっています。

――(Amazonにとって)ドコモのようなパートナーは増えないが、リクルートのような関係性の会社は増えていくということか。

鈴木氏
 今回はドコモさまとの記者発表ですので、それ以外のAmazonのポイントパートナープログラムに関しては、あらためてご回答したいと思います。

――今回の両者の関係は従来のプログラムと異なるという話だったが、独占的なものと考えていいのか。

田原氏
 今回の提携が独占的なものかどうかについては、お答えを控えさせていただきたいと思います。

 基本的にdポイントはオープンなプログラムとなっていて、独占的な考え方ではなく、大きなプラットフォームとしてさまざまな加盟店さまにご活用いただけます。

 (今回も)基本的にそこに沿った取組みだと言い続けています。

鈴木氏
 Amazonとして、今後の取組みについては今回の記者発表では控えさせていただきますが、ドコモさまおよびd ポイントに関しては、戦略的に非常に重要な取組みだと考えています。

――Amazonポイントの現在の状況を教えてほしい。ドコモを受け入れることによる効果は。

鈴木氏
 基本的にすべての我々の考えや取組みは、「日本のお客さまのために何をすべきか」というところから始まっています。

 日本のお客さまにとってポイントは非常に重要なサービスになります。Amazonのサービスや提供価値を発展させるにはどうすべきかと考える中で、Amazon(での買い物)を楽しみながらdポイントを貯めたり使ったりという発想が、(今回の協業の)背景にあります。

――60歳以上の人は+1%という条件があったが、これが加わった背景は。

山本氏
 60歳以上の方々にもっとネットショッピングを楽しんでいただきたいということで、拡大の余地があると考えています。

 我々の強みであるドコモショップにも60歳以上の方が多くいらっしゃいますので、そういった方に丁寧にお教えできるということで、特典を設けました。

鈴木氏
 基本的にこの取組みはドコモさま側での取組みとなりまして、Amazonからのリクエストというかたちではありません。

 ただ、Amazonのお客さまを全体的に広く見渡すと60歳以上のお客さまもたくさんおられます。Amazonとしても、60歳以上のお客さまにdポイントを活用いただきつつ、さまざまなサービスをご提供したいと考えています。

――ドコモから見たAmazonの強みを聞きたい。Amazonに対して最も期待したポイントはどういったところだったのか。

田原氏
 ドコモではdポイントクラブを2015年から提供してきていますが、eコマースのところが、平たく言うと弱いのではという話がありました。

 そういった部分も、パートナーさまというところで多くの会員さまからのリクエストがありました。今回Amazonさまという日本有数のeコマース事業者さまと組むことで、その期待にしっかり応えられるのではと考えています。

 ドコモの回線サービスの利用有無に関わらずdポイントプログラムを提供するということに加え、ドコモをお使いの方にはさらにメリットを提供したいということがありまして、Amazonさまとの協業によって実現できるという期待があります。

――Amazonにおけるdポイントの付与と利用について、バランスはどういったものを見込んでいるのか。

田原氏
 まずdポイントの全体をお話しすると、直近で年間3300億ポイント程度の発行量があります。

 その中の2200億ぐらいのポイントは、加盟店さまで使っていただいているポイントプログラムとなっています。

 Amazonさまとの協業における具体的な数字はお伝えできないところがありますが、多くのdポイントがほかの加盟店さまでも使われていますので、それと同じぐらいのボリューム感、割合で、Amazonさまでも使われるのではと考えています。

鈴木氏
 今回のドコモさまとの協業によって新しいイノベーションが起こせたと思います。

 Amazonのショッピング体験の中で、dポイントを貯めたり使ったりというところが、直感的なカスタマーエクスペリエンスとして提供されます。お買い物の体験を飛躍的に良くするということをできるのではと考えています。

――ポイントとeコマースで言うと楽天市場が有名だと思う。楽天をライバルとして意識していたか。

鈴木氏
 Amazonとしては「地球上で最もお客さまを大切にする企業になること」をミッションに掲げています。

 我々がやっているすべての取り組みは、基本的に「お客さまのために何をすべきか?」から逆算し、「Amazonとして何をすべきか」という考え方に基づいています。

 ですから、他社さまがやっているからというわけではありません。他社さまが実施されているアクティビティはそれはそれと考えて、Amazonとして我々のお客さまをとらえた時に何をすべきかという発想から、今回の協業を考えました。

田原氏
 ドコモとしても、dポイントプログラムのお客さまにとっての魅力やニーズが何なのかということを考えました。

 eコマースというサービスへのニーズは、生活と切っても切れないものになっていると思っていて、そこでポイントを貯めたり使ったりしたいという話をいただいていました。

 競合他社というよりも、dポイントクラブ会員の皆さまのニーズに応えるにはどうすればいいのか、というところが起点になりました。

 その中でも、そういったニーズを一番満たしていただけるのはAmazonさまではないかということで、今回の検討が始まりました。

囲み取材

――今回の提携で乗り越えたハードルは。

田原氏
 長い交渉の中で、両社にとって何がいいのかとか、お客さまにとって何がいいのかということを合わせていくところに、一番時間をかけました。

 最後はそれがうまく合って、今回の提携に至りました。

――dポイントはオープンという話があった。たとえばプライム特典は以前ドコモで提供されていて、今は au(の料金プラン)で提供されている。今回のdポイントとAmazonの座組自体は独占なのか、同じように他社が入ってくる可能性があるのか。

田原氏
 そこのところは契約の中身になりますが、基本的にdポイントは独占というよりオープンです。

――楽天モバイルのSPUや、ソフトバンクがYahoo!ショッピングで提供している還元と比べると、還元率が低いようにも見える。

田原氏
 今回は5000円以上という条件がついていますが、Amazonさまといろいろ協議する中で、まずは多くの方々にdポイントが貯まる体験を提供したいということがあり、今回の条件を設定しました。

 今後については何も決まっていませんが、いろいろな状況を踏まえて議論が出てくる可能性はあるのかなと思います。

 今回は、キャンペーン的にではなく、期間を決めずにお得を提供できる座組を実現できたのかなと思います。

――基本的には永続的な取り組みとして考えているということか。

田原氏
 はい、そのような取り組みとなっています。

――ポイントの原資は非公開ということだったが。

田原氏
 dポイントのビジネスモデルとして、基本的にdポイントの加盟店発行分の費用については、加盟店さまのほうでお持ちいただくということで、今回も基本的には同じスキームです。

――Amazonプライムの特典について、年間プランではなく月間プランを対象とした理由は。

山本氏
 月間プランのほうが割とフレキシブルに自由にお入りいただけるということで、月間プランをベースに考えました。

――Amazonでの購買データを取得するのか。

田原氏
 今回の提携の中では、「何を買ったか」といったデータのやり取りは含まれていません。

――何らかのデータを取得できるということなのか。

田原氏
 そういった意味では、通常のdポイント加盟店さまと同じです。加盟店さまの決済システムとドコモのポイント管理システム、今回はその間で必要なやり取りだけをしています。

――dポイントをAmazonで使う場合のしくみはシンプルなものになるのか。

田原氏
 これまではd払いをAmazonで使うときにdポイントを充当いただけるというサービスを提供してきましたが、そこの操作が少し分かりにくいというのは今後改善していきます。

 それとは別に、今回はd払いを経由せずdポイントとして設定いただけるような導線になっていますので、そこは設定しやすいかなと思います。

――ドコモのdポイント側から見ると、Amazonは加盟店という何か特殊な契約に基づく協業というかたちなのか。

田原氏
 dポイントが貯まる使えるという取組みと、プライム会員に加入いただくパッケージについてAmazonさまと合意できたというところが、通常のdポイント加盟店の契約とは違うところです。

――ポイントパートナープログラムはAmazon側の話で、ドコモがそれではなくAmazonをdポイント加盟店扱いにした理由は。

田原氏
 ポイントパートナープログラムは、Amazonさまのパートナーさまで発行されたポイントを使う場です。

 我々としては、dポイントクラブ会員の方々からeコマースで貯まる使えるということをやりたいというお声をいただいていました。使うだけではそこのニーズを満たせないかなと考えました。

――dマーケットは力不足だったということか。

田原氏
 お客さまに選んでいただけるサービスにしないといけないという課題感はありますので、ドコモの取り組みとしてしっかりとやっていく必要があると思っています。

――コンビニを強化する考えは。

田原氏
 コンビニで言えばローソンさまやファミリーマートさまと提携させていただいています。そこはしっかりとした提携関係というのを結べているのかなと思います。

――マクドナルドでdポイントのサービスが終了した。ECとリアル店舗のバランスはどう考えているのか。

田原氏
 マクドナルドさまの話は個別の話になってしまうので、コメントを差し控えさせていただきます。

 お客さまの生活動線上にできるだけ多く、dポイント対応店舗を増やしていこうという取組みです。

 その中でeコマースが切っても切れないサービスになってきているところがあります。

 リアル(店舗)かネットのどちらかに傾倒するわけではなく、ニーズに応じて対応店舗を増やしたいと思っています。

――サービス面では動画配信サービスの「Lemino」や、マネー関連での資本提携など、自社でサービス強化する方向へ向かっていたと思う。今回は逆の方向に見える。

田原氏
 どちらかというとそれは手段的な話であって、資本提携のない協業で魅力的なサービス提供を実現できるのであれば、手段としては排除する必要はないのかなと思っています。

 資本関係のない提携だけというパターンも今後はあると思います。

――サービスの内製にこだわるのか。

田原氏
 やはり内製はやっていく必要があるのかなと思っています

 単純に買収して終わりというものではなく、提携することによって付加価値ができるかできないかということがあります。

 内製のほうが良ければ内製にしますし、パートナーとの協業を含めてやったほうが良ければその選択をしていきます。

 ただ、相手さまがいてこその資本提携や協業関係というのもありますので、個々で判断していくことになります。

――KPIは何になるのか。

田原氏
 まずはdポイントとAmazonのIDを連携していただいて、利用者をいかに増やしていくかが、両社にとっての重要なKPIになるのかなと思います。

――もともとd払い自体は、コンビニやファストフード、ドラッグストアあたりが強いという認識。Amazonでの支払いを増やしたいという意図もあるのか。

田原氏
 やはりd払いについて、ドコモ回線を契約されている方以外にも使っていただきたいという思いがあります。

 今回の取組みは、dポイントが貯まる使えるというところについて、回線や支払手段は関係ありません。

 さらにというところで、ドコモの回線やd払いを使っていただくと、もっとお得になるという設計です。

――d払いとドコモ回線のリンク率は。

田原氏
 ドコモ回線ユーザーの方は多いです。ドコモショップでおすすめしていることもあり、ドコモ回線ユーザーの割合は非常に高い状態です。

――ahamoで「ドコモポイ活プラン」が始まった。それとの関係性は。

山本氏
 ドコモポイ活プランについては、「d払いで4万ポイントを使って4000ポイントの還元を得られるというのは少し厳しいのでは」という声がありました。

 今回のこの発表によって、Amazonさまでのご購入もカウントされます。そういう意味では上限に達しやすくなったというか、ahamoポイ活の魅力が増したのではないかなと。今回の発表、うずうずしていました(笑)。

――今回の提携、今後の展望について知りたい。

田原氏
 今決まっていることはないというお答えになりますが、これまでAmazonさまとはいろんなディスカッションを通じて、お客さまにとっての価値の届け方を話し合ってきました。

 今回は取組みのひとつというところですが、次に向けた話もありますので、何かは具体的に言えない状況ですが、考えていきたいと思っています。

――Amazonにとって他社ポイントが貯まる使えるというのは初めてとのことだった。dポイントにとって初めての部分はあるのか。

田原氏
 基本的にはdポイント加盟店の中でもEC事業者さまとの提携があり、dポイントが貯まる使えるという意味では、(今回も)基本的に同じスキームです。

 ですが、Amazonさまとの取組みとしては、回線部分を含めていることもあり、そこは従来との差分になります。

――dポイントの消費ポイントの割合はどうなっているのか。

田原氏
 dポイントの加盟店さまにリアルの加盟店さまが非常に多く、消費されているポイントの割合で言うと、リアルの加盟店さまのほうが多い状況になっています。