石川温の「スマホ業界 Watch」
米国で展開するスマホメーカー「Orbic」が日本上陸か――そこから見える「海外企業が日本市場を目指す理由」
2023年1月13日 00:00
年明け一発目の仕事として米国ラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジー展示会「CES 2023」に行ってきた。去年も取材しに行こうと思ったが、直前にオミクロン株が流行し断念。個人的には3年ぶりのラスベガス訪問となった。
3年ぶりのラスベガスは、空港の名前が変わっていたり、会場に新たなホールができ、展示されている企業の配置が変わっていたりと、戸惑うこともしばしばあった。
この手の展示会イベントは、業界関係者などに会い、インタビュー取材するだけでなく、立ち話などをして情報交換するのが楽しいのだが、今年は「久々な再会だけど、いままでと違っていて戸惑った人」もいた。
ダニー・アダモポウロスさん。
モバイル業界関係者なら、知っている人も多いだろう。モトローラ・モビリティ・ジャパンの社長として、ケータイWatchをはじめとする媒体に数多く露出していた人だ。
しかし、今年、ラスベガスで再会した時には「モトローラ・モビリティ・ジャパンの社長」ではなく「OrbicのEVP Global Strategy and Operations」に変わっていた。
Orbicは、アメリカではベライゾン(Verizon)などのキャリアにも納入しているメーカー。スマートフォンやタブレット、パソコン、モバイルWi-Fiルーターなど幅広く展開している。
ちなみにベライゾンの製品ラインナップではトップ4に入る企業となっている(サムスン、アップル、モトローラの次)。
実は、筆者がCESを取材することになり、Orbicから「話を聞いて欲しい」と呼び出されたのだが、どうやらOrbicとしては今年2月に日本で発表会をやるようだ。
ダニーさんはタブレット(TAB10R 4G)、スマートフォン(FUN +)、ケータイ、ノートパソコンを熱心に紹介してくれたので、おそらく、日本にはこれらの製品が投入されるとみられている。
Orbicは、2019年にアメリカのベライゾンに納入したのを皮切りに、昨年ごろから世界展開を強化しはじめているようだ。
資料にはアメリカだけでなく、カナダ、英国をはじめとする欧州、インド、アフリカ、韓国、オーストラリア、南米といったエリア名が並んでいた。
日本展開は2022年を予定していたようだが、コロナ禍などにより、遅れが出て、2023年になったようだ。ちなみに資料にはどこかで聞いたことのあるような日本の企業名が並んでいた。
Orbicは日本展開するにあたり、ダニーさんはコールセンターを用意すると語っていた。「これはモトローラでもやっていなかった」とかなり自慢していた。
もうひとつ、ダニーさんから紹介されたのがスマートフォンのケースブランド「dbramante1928」だ。これで「デブラマンテ」と読むらしい。
デンマークのブランドで、iPhoneやAndroid向けの本体ケースを展開。また、カバンなども手がけている。
さらに画面保護ガラスも販売しており、世界初の「100%クリア(CLEAR)」「100%再生素材(RECYCLED)」「100%リサイクル可能(RECYCLABLE)」をうたっている。
「100%クリア」で「100%リサイクルしている」というのは理解できるが「100%リサイクル可能」といっても、画面保護ガラスをどうやってリサイクルするために回収するというのか。ダニーさんによれば「キャリアショップなどで回収する」とのことだった。
海外メーカーが日本市場を目指す理由
これまでも数多くのスマホメーカーが日本に参入してきたが、彼らが日本に上陸するうえで共通しているのが「高い品質を求める日本市場で認められたい」という点だ。
実際のところ、日本でヒットを飛ばしたとしても、売れる台数というのは限られている。本気で台数を稼ごうと思えば、FeliCa対応などもしなくてはならず、海外メーカーにとってはコストがかかる割には儲からない市場だ。
しかし、「日本の市場で受けいれられた」という評価につながると、その実績を武器に海外展開がさらにやりやすくなる。「高い品質を求める日本市場でも認められたクオリティ」ということで、世界のキャリアからの評価が変わるというわけだ。
その点、Orbicはベライゾンなどアメリカのキャリアにはすでに認められている。日本展開する上で、オープンマーケットだけでなく、MVNO、さらにキャリアにも導入が進められれば、Orbicしては大成功になるだろう。
ただ、かつてダニーさんがリードしたモトローラ・モビリティ・ジャパンは、ブランド力はあったものの、なかなか、キャリアへの納入ができず、苦戦していた感がある。
Orbicは日本に上陸し、モトローラ・モビリティ・ジャパンを超えることができるのか。日本市場と、ライバルであるモトローラを知り尽くすダニーさんの手腕にかかっているといえそうだ。