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電力の次は金融サービス、2016年は「ライフスタイル戦略」で攻めるau

 17日、auは「auのほけん・ローン」を発表し、auブランドで本格的に金融関連の事業に乗り出すことを明らかにした。発表会では、説明を行ったKDDI代表取締役執行役員専務の高橋誠氏が、auの新たな戦略について語った。

auライフデザイン戦略

 2012年、KDDIは「3M戦略」を発表し、「マルチユース」「マルチネットワーク」「マルチデバイス」という3つの“M”にあわせた事業を展開してきた。まずはau IDを導入し、コンテンツ使い放題サービスの「auスマートパス」を採り入れてスマートフォンの利用を図り、スマートフォンが普及し始めると有料サポートに注力するなど使いこなせる環境とスマホ向けサービスの拡充に注力した。そして2014年に始まったのが決済サービスで3M戦略第三弾の取り組みである「au WALLET」。その累計枚数は1810万枚を超えて一定の規模にまで成長した。

 こうした流れは普及するスマートフォンを土台としつつ、au IDを通じてユーザー1人1人とサービスを連携しやすくし、さらにau WALLETによって「携帯電話を利用すると還元がある」「ショッピングに繋がる」とリアルとの連携をはかってきたものだ。

 今回の「auのほけん・ローン」は、人口の減少局面を迎えつつ、一人暮らしが増えたり、核家族で暮らす、あるいは二世帯・三世帯で同居するなど、人々の生活がひとくくりにできない中で、多様化するライフスタイルにマッチするサービスを展開するというauの新たな取り組み「auライフデザイン戦略」にあわせたもの、と位置付けられる。

家計を見直したい

 高橋氏は、今回の発表に向けた事前調査で、ユーザーには「住居費」「保険」「通信料」「電気代(光熱費)」と、生活費の中でも4点を見直したい、という要望が大きいことがわかった、と語る。折しも今春、電力小売の自由化によって、さまざまな業種から電力サービスへの参入が発表されており、KDDIも「au でんき」を発表済。今回、保険・ローンに関するサービスを用意することで、電力とあわせてユーザーの生活においてauの関わる領域を増やしていく。

高橋氏
「4つのコストが家計のメインを閉めていて、見直しをする年ではないか。携帯電話の料金は、たくさん使わないユーザー向けの料金を提供するようになった。電力も自由化で対応した。金融関連では、マイナス金利で住宅ローンの利用が増えている。お客さまの家計の見直しの年になる。コンテンツ、Eコマースを実現してきたが、家計見直しではまず電気。それに加えて、住居費、保険や医療にも経済圏を拡大できないか」

 高橋氏はこう語り、世帯ごとによって異なるユーザーの状況にマッチする選択肢を揃えつつ、au IDやau WALLETが中核となる「au WALLET経済圏」の拡大をはかる考えを示す。

フィンテックって?

 金融とITを組み合わせ、これまでよりも利便性を高める――そうしたジャンルはこのところ「フィンテック」と呼ばれる。ただ、フィンテックと一口に言っても、その言葉が含む範囲は広い、と高橋氏。コンシューマーにとっては家計簿アプリもフィンテックのひとつとされるが、銀行のような金融機関にとって、窓口をWebにすることで人件費を抑えられるほか、これまでよりも安価にシステムを構築できる、といった分野も含まれる。

 高橋氏は、かねてより提供されているネットバンキング、モバイルバンキングも、フィンテックのひとつになるとしつつ、ユーザー目線でサービスを整理しなおしたものが今回の取り組みであり、新たに「フィンテック」として提供できるものだとする。

 説明に同席したバリュー事業本部金融・コマース推進本部長の勝木朋彦氏は、2008年のじぶん銀行設立時から、KDDI側のスタッフとして参画。「モバイル専業」をうたう、“じぶん銀行”らしいサービスや機能の確立に向けて、じぶん銀行を牽引したキーパーソンだ。たとえば、じぶん銀行は口座開設だけをとっても、専用のアプリを既に提供済。また、不正な振込を防ぐスマホ認証サービスといった独自の仕組みも用意している。仮に競合他社が類似のサービスを提供したとしても、「技術的に優位性を確立している。全ての手続きがモバイルだけで完結する」と勝木氏は胸を張る。

囲み取材一問一答

――セット割について、通信料を割引したとしても、禁止されている保険料の割引と見なされると難しいと思うが、法的にどう対応するのか。

勝木氏
 レギュレーションに対してはきちんと精査し、ルールの範囲内でできる手立てを考えている。目処はついている。

――ポイント(の還元など)ならばいいのか。

高橋氏
 形態は金融庁と話している。まだ課題はあるのでお話はできない。ポイントなのか、通信料の割引なのか、お客さまには必ずおトクな形でお届けする。

――4月からか。

高橋氏
 はい、4月から提供します。

――住宅ローンと携帯電話では、大きく金額が異なる。多少の割引でも加入してもらえるのか。

高橋氏
 確かに最初そう思った。ただ、こういうものをきっかけに、モバイルを使ったネット住宅ローンが注目されて知ってもらえれば、おトク感があると思う。社内でも、実際にセット割に加えて、モバイルで手続きできるサービスがこんなに安いのかと驚きがある。auが関わることで安心感がある。保険でもauなら払ってくれるだろう、住宅ローンでもauなら途中で返済を迫られることはないだろうと思ってもらえるのではないか。利便性と安心感、そしてセット割が実現できれば響くのではないかと思っている。

――フィンテックであれば、携帯電話を使うことで審査の単純化など、コストの削減といったことが可能なのか。

髙橋氏
 すでにライフネット生命が実現して保険代が安くなっている。auとクロスすることでお客さまにとどきやすくなるのではないか。

――今後、独自商品を展開するのか。

勝木氏
 今後、既存商品を届けつつ、ユーザーのニーズにあわせて、auユーザーに特化した商品を検討していく。

――たとえばじぶん銀行の商品として新開発するのか。

高橋氏
 いろいろとデータを分析しつつ、「こういう商品ならauユーザーに届く」となれば、たとえばじぶん銀行やライフネット生命さんに用意していただいて、auの冠を付けて展開するということになる。

――住宅ローンではなく自動車ローンなど、他の種類を扱わなかったのはなぜか。金額は住宅のほうが重いが。

高橋氏
 住宅ローンのほうが、今回は金利政策があって取り扱いやすい。一方、自動車はシニア層が増えていて、事故率も高まっており、保険料率は厳しかったりする。そういう意味では、手をつけやすい分野から入った。というか、ユーザーが見直したいところを中心にした。

 ライフデザインと銘打ったので、ユーザーの生活にインパクトあるところをまず手がけた。ただ、自動車保険はいろいろと大変なようだ。

――店員の教育はこれから進めるのか。

高橋氏
 保険のような商品を、保険について素人のスタッフが扱うのは(規制として)ダメ。まず有資格者の教育を優先する。ライフデザインとして広がればauショップのスタッフにも学んでいただく。1~2週間で資格を得られるらしいので。

――支払いはau WALLETが中心か?

高橋氏
 (通信料金と合算する)かんたん決済にも対応する。クレジットカード払いの方もいらっしゃるでしょう。

――au回線を解約しても利用し続けられるのか。

勝木氏
 たとえば住宅ローンは、じぶん銀行の口座に預金があれば引き落とされる仕組み。

――金利が下がり、利ざやを確保するのが難しいなかで、どう取り組むのか。

高橋氏
 確かに競争は厳しくなっていくが、じぶん銀行にとっては運用の手段でもある。住宅ローンは非常に重要な位置づけになる。運用という観点では有効な手段と捉えている。

――携帯電話との連動感が薄いような印象を受ける。

高橋氏
 保険やWALLETは技術的にau IDとの連携は簡単できる。ただ口座については金融庁の絡み、セキュリティもあって難しいが将来的に検討するのだろう。

 また新興国の状況を見ると、口座の情報はモバイルの延長線上にある。そういう世の中は当たり前になっていくと思う。そのあたりは戦略があって、おいおい。

――auユーザー以外への販売は?

高橋氏
 じぶん銀行、ライフネット生命、au損保いずれも既に、auユーザー以外も利用できる構造。そこにセット割を用意する。

――他社ユーザーへ積極的に販売することはない?

高橋氏
 それはない。auユーザーが長く深く、というのがコンセプト。auユーザーによりよいサービスを提供したい。

――競合他社がキャッチアップしてきた場合の優位性は?

高橋氏
 他社がどう出るかわからないが、ドコモさんは日本生命さんと一緒にやるという話(※関連記事)があると聞いていて、どういう形になるかまた見ていく。(au側は)モバイルフィンテック、インターネットらしい商品をこれまでずっと作ってきたつもり。ソフトバンクさんはあまり動きがないようですが、ドコモさんがどういう形で来られるか、ちょっと気になるが、そのあたりが我々の優位性になるだろう。

関口 聖