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「自信を失ったが、答えは見えた」孫氏が示す米スプリント逆転の一手
(2015/8/6 20:36)
「スプリントとT-mobileを合併させて、米国で第三極として戦うつもりだった。しかし米国当局からは認可を受けられず、自信を失った。しかし、自信が蘇ってきた。戦略が見えた、設計図ができた」――ソフトバンクグループは6日、2015年度の第1四半期決算を発表、その説明会の席上で、同社代表取締役社長の孫正義氏は米国事業の巻き返しに自信を見せ、「2年ほどで、1位にはならないが、着実に改善する。投資家の不安も払拭できるだろう」と語った。
説明の大半はスプリント事業
連結決算の内容は、ロボットの「Pepper」が説明し、孫氏はスプリント事業における方向性の説明に専念する形となった今回。具体的な数字、あるいは手段は明らかにされなかったが、「日本での成功体験を再び米国で展開する」という基本的なコンセプトが紹介された。
孫氏によれば、かつてのボーダフォン日本法人では、売上が減る中で費用の上昇という傾向にあった。そこで買収後は、「営業費用の大幅な削減」「価格競争を何度か仕掛ける」「少ない設備投資でナンバーワンのネットワークを作る」という三段階のステップで改善していくことを目指した。
米スプリント側では、こうした案に大きな反対の声が挙がった、というが、孫氏は1つ1つ丁寧に反論していき、今や日本のエンジニアと米国側のエンジニアが一体となっていると説明。もともとの計画では5年掛けて次世代のネットワークを構築する予定だったが、孫氏のリードの結果、2年で構築し、設備投資費用の大幅な圧縮が可能になったのだという。
孫氏は、スプリント事業のキーワードの1つは「2.5GHz帯」とする。120MHz幅と豊富な帯域を保有することから、高速かつ余裕のある通信サービスを提供しやすい。800MHz帯と1.9GHz帯でエリアカバレッジを拡げることは必須、と孫氏は指摘した上で、2.5GHz帯で大容量とスピードをもってアドバンテージを打ち出すとした。米国内の競合他社に真似されるのでは、という問いに「表面は真似できるかもしれないが、我々のほうが細やかで積み重ねている。日本でも一番少ない費用で、一番改善できた」と胸を張った。
またスプリント事業に必要な資金も、日本で割賦販売および債権の流動化によって調達した事例を参考に、端末リースとそれによる資金調達を行うという。
こうしたアイデアは、3カ月ほど前に思いついた、本質中の本質は予定していた投資額を大幅に減らすことと孫氏。まずはT-mobileとの合併を期し、米国側のエンジニアによるネットワーク改善策にゆだねるつもりだったが、合併できず、米国からのアイデアも費用が大幅にかさむと予想できたことから、孫氏がリードすることになった。
また日本ではiPhoneが武器だったのではないか、米国ではどうするのか、という問いに孫氏は「iPhoneは、ボーダフォン買収後に導入したもの。導入前から利益は(減少傾向から増加傾向に)反転していた」とコメント。
純減要因はPHS
同社が開示した資料によれば、2015年度第1四半期、契約数は46万9000件の純減を記録した。その一方で、同社では、契約数から通信モジュールやプリペイド、見守りケータイ、PHSを除いたものを「主要回線」と定義し、その主要回線に含まれるスマートフォンやフィーチャーフォン、タブレット、データ通信端末の契約数は2万件の増加を達成した、とする。
ソフトバンクの宮内謙社長は、「これまでは純増ナンバーワンで走ってきたが、これからはスマートフォン、タブレットを中心に事業を拡大したい。主要回線ではPHSが40数万の純減となったが、利益的には影響がない」と説明。PHS事業そのものは、最近、東大病院に6000台納入したり、ガスメーターの遠隔計測といった10年ほど駆動可能なモジュールとして利用されたりするなど、依然として利用されており、「いずれフェードアウトする時期が来るとは思うが、現在はたくさん利用されており、続けて行かざるを得ない。ただし、携帯各社が音声通話定額を導入して、音声通話が安いというPHSのアドバンテージは薄れた」と説明した。
このほか、MNP(携帯電話番号ポータビリティ)について、他社に負けているのでは? と問われた孫氏は「負けているというか、今は月間で1万、2万という件数で争っている。顧客は3000万、4000万存在する中で(MNPの件数は)ほとんど誤差のうち」と言い切った。
2年縛り、ルールに従う
総務省の有識者会合で、いわゆる「2年縛り」の撤廃に向けた方針が示されたことについて問われた孫氏は「そういうルールになれば、ルールに従う。もともと他社が先にそうしたので、従ったといういきさつがある」と述べるに留まった。
電力自由化「通信とのセット販売は良い組み合わせ」
2016年4月から電力の自由化が実現し、携帯電話サービスとのセット割の導入が予測される中で、質疑応答で問われた孫氏は「コメントするには時期尚早」としつつ、「通信と電力は良い組み合わせではないか」と語る。
孫氏
「(電力自由化は)全く新しい取り組みで、コメントするには時期尚早。ただ、通信と電気は両方とも現代人に欠かせない基本的なインフラサービス。セット販売で一番良い組み合わせではないか。しっかり立ち上げたい。あわてて発表するのではなく、練り上げたうえで、時期が来れば実行したい」
「一言付け加えるなら、インドでは、ソーラー発電に取り組む用意があると発表した。金額は日本で考えるよりはるかに大きい、日本の日照量の倍、建設コストは半分。日本の4倍効率が良い。政府の投資なくとも競争力を持てる。熱い想いを持っている」