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ソフトバンク孫氏「米スプリント、ネットワークで一番に」

 19日、ソフトバンクの第35回株主総会が開催された。2014年度の業績や事業があらためて紹介されたほか、質疑を通して孫正義氏の経営方針が紹介された。国内の携帯電話事業については決算会見の際と同様の報告が行われた程度で、株主からの質問もほとんど挙がらなかった。その一方で孫氏は、米国子会社で携帯電話事業者であるスプリント(Sprint)について「特にネットワークが一番にならないといけない。相当良い計画ができ、自信がふつふつと湧いてきている」と述べた。

毎晩の打ち合わせ

 米国での事業展開について株主から問われた孫氏は「米スプリントによるT-mobile USA(米国4位の携帯事業者)による買収は規制当局が合併はならん、ということになった。今はスプリント自らがしっかりと業績を回復できるよう手を打っている」と説明。

孫氏

 その一手こそが、ネットワーク(サービスエリア)とのことで、「ほぼ毎晩、22時~翌2時くらいまで毎晩、スプリント側も含めて、技術責任者たち20~30人と、次の設計と具体的な方法論を打ち合わせしてきた」と胸を張る。

 検討を重ねた結果、「相当良いものがと自信がふつふつと湧いてきている」とにやり。続けて「難しい局面に追い込まれると心がぐっと燃えてくる。そうするとだいたい良い結果が出てくることが多い。ちょっと見ていてください」と、厳しい環境にあることを認めつつも、打開策に手応えを感じている様子だった。

ニケシュ氏、抱く想いを語る

 先の決算発表会で、後継者に指名されたニケシュ・アローラ氏との出会いについて、孫氏が語る場面もあった。

 「数年前、ヤフー・ジャパンの検索エンジンを検討することがあった(※2009年7月、関連記事)。それまで米ヤフーのエンジンを使っていたが、米ヤフーはマイクロソフトの検索エンジンに切り替えることになり、ヤフー・ジャパンの検索エンジンもマイクロソフトにするのか、グーグルにするのか検討することになった。両方と話して、グーグルのエンジンを使うことにしたが、その時の交渉相手がニケシュだった。丁々発止で条件交渉した。さまざまな駆け引きがあったが、試合をしてみると相手のことがよくわかる。真剣勝負して、ただものではないと心から思った。ニケシュはグーグルで数十億円の上のほうという給与だったが(現在の規定で役員報酬が最大8億円の)ソフトバンクにあえて来てくれた」

 一方のニケシュ氏は、取締役に選任されたのち、壇上に立ち、英語で株主に向かって挨拶した。

ニケシュ・アローラ氏

「22歳のとき、父から300ドルもらって、7000マイル離れた米国に渡った。その時手にしていた2つのスーツケースには、衣服や鉛筆、日用品が入っていた」

「米国では2つの修士号を得て、素晴らしい仕事を得ることができた。まずボストンで投資関係の仕事をした。ロンドンやドイツではモバイル関連のスタートアップを始めた。ドイツテレコムには5年間、従事した。直近の10年間は、グーグルに在籍し、ロンドンやカリフォルニアで仕事した」

「2つのスーツケースで渡米して以来、ずっと冒険をしてきた。まったく同じような気持ちでさらに学ぼう、控えめな心構えをもって冒険で新しい事を成し遂げよう。そうして孫さんのもとで新しい仕事をすることになった」

「ソフトバンクにとって多くの困難、機会があるでしょう。孫さんのようにエネルギーに、知性に溢れたひとのもとで仕事するのは簡単ではない。ただベストを尽くしたい。私から会社へ提供できるのは父から学んだ価値観、それは正しいことをする、ということ。会社のため、株主のために正しいことを成し遂げたい」

孫氏の幸せ度

 ソフトバンクの株主総会は、ライバルの携帯電話会社とは大きく異なる雰囲気だ。創業者であり、度重なる事業拡大を成し遂げてきた孫氏が今もリーダーシップをとる中で、株主総会の質疑は、多かれ少なかれ、株主が孫氏への敬愛の気持ちを抱いていることが、傍聴する報道陣にもよく伝わる。例年、孫氏の健康などを気遣う質問が出るが、今回は「孫氏の幸福度」を問う質問が挙がった。

 これに孫氏は「私自身の幸せ度は100に近いかな。でも、満足はしていない。やりたいこと、やらねばならぬこと(の達成度)は3%くらいしかできていない」と精気みなぎる返事。

 今後はIoTや人工知能などが普及していくとの見方を示し、Pepperなどへの事業に注力することをあらためて説明。日本の大手家電メーカーを買収して本当にネットに繋がって役立つ家電を開発してくれないか、という株主の声も寄せられたが、これには株価への影響もあるとしてコメントは差し控えた。

関口 聖