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ソフトバンクのシリコンバレー拠点は縮小へ、孫氏が決算会見で語る
(2015/2/10 18:15)
ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は、2月10日に開催された第3四半期の決算説明会において、米国シリコンバレーに構えていた拠点を縮小することを明らかにした。
同社では、米国の通信事業者、スプリント(Sprint)の買収にあわせ、シリコンバレーに拠点を設置。日本からも多くの人材が渡米して、端末開発やサービス開発にあたってきた。その一方で、スプリントの業績は赤字が続き、最近では2000億円を超える減損処理も実施することになった。
そうした状況の変化の中で、シリコンバレーの拠点をどう扱うのか問われた孫氏は、「いろいろな端末だとかアクセサリーを、調達・開発しようとしていたが、現時点ではむしろ縮小、コスト削減と考えている」と明言した。
また、日米共同での端末調達については「実態はiPhoneがダントツに大きな存在」とコメント。日本には日本に適した機種としてAQUOSやXperiaが向いているのでは、と語る。ただ、1つ1つの事例に対して是々非々で対応していくとも語っていた。
「ワイモバイルはAndroid新規販売トップ」
ソフトバンクモバイルやワイモバイル、ガンホーなどを含むモバイル事業の売上高は、3兆874億5800万円で、前年同期より40.1%増加した。利益は5717億8300万円で、9.7%増。このうち、ソフトバンクモバイルは、売上が1兆7226億9600万円だった。
ソフトバンクモバイルのオペレーションデータを見ると、第3四半期における純増契約数は、147万7000件。ARPUは、ARPU単価の端末が増加したことで4250円(前年同期比で240円減)となった。解約率は1.34%(前年同期比0.06ポイント増)。機種変更率は、iPhoneの機種変更が進み、0.23ポイント増の1.87%だった。
決算の概要は手短に説明した孫氏は、その合間に、モバイルサービスの繋がりやすさをあらためてアピール。また具体的な数値は明らかにしないものの、ソフトバンクモバイルとワイモバイルの実績として、両社のAndroidスマートフォン販売が前年から63%増加したと胸を張る。さらにワイモバイルの新規のAndroid端末販売数は全キャリアの中で1位になったとも語り、その実績を強調した。
スプリント事業、再び「改善の兆し」と語る孫氏
今回の決算において、赤字が続く米スプリントは21.3億ドル(約2500億円)の減損処理が行われることになった。ただしこれは米国会計基準での話。ソフトバンクの採用する国際会計基準では、減損処理のための条件を満たしていないとのことで、減損となっていない。今回のプレゼンテーションで孫氏は、「保守的な計上がいいと考え、減損するときはできるだけ早くと考えている」「減損したつもりで経営すべき」などと語り、日米で異なる会計処理になりつつも、日本側でも深刻に受け止めたことを繰り返し説明した。
そして、スプリントのCEOを務めるマルセロ・クラウレ氏のもとで、経営チームが一丸となって改善に取り組んでおり、たとえばポストペイ(後払い)の契約数は増加傾向に転じたと説明。設備投資の結果、通話中に突然切断される“コールドロップ”の割合も低減していたとして、「状況は一歩ずつだが、改善の兆し」と孫氏。ただ、前四半期の決算説明会でも状況の改善に繋がる兆しが出てきた、と孫氏は語っており、この3カ月間ではあまり大きく変化しなかったことがうかがえる。
設備投資への考え
足を引っ張る格好となっているスプリント事業に対して、国内の事業は安定的な状態にあるとした孫氏は、接続率も好調であり、「鉄塔を建てるなど大きな山は越えた」との認識を示す。現在はLTEが主流となってきた国内のモバイルサービスのインフラは、2020年ごろになると、さらに次の世代、5G(第5世代の通信技術)が本格的に導入される方針が総務省などから掲げられている。
孫氏は、定期的に通信技術には転換期を迎えることがある、として、現在は技術的に落ち着く時期に差し掛かり始めた、と説明。「波乱に強いソフトバンク、平時は寝たふり」として、企業としてはリスクがあっても果敢にチャレンジする姿勢としつつ、しばらくは設備投資は落ち着き、「少しフリーキャッシュフローが楽になるのではないか」とする。今はインドやインドネシアが本格的なモバイルインターネットの普及を迎えつつある、とも説明し、日本よりも海外に注力する方針。また新規技術の開発には今後も取り組むとした。
セット割で各社の差別化がなくなった
NTT東西の光コラボレーションモデルが提供されることで、NTTドコモやソフトバンクモバイルが光回線とモバイルのセット割を提供することになった。
孫氏は「かつてはソフトバンクだけがiPhoneを提供して差別化になっていた時期があったが今は各社が取り扱い、iPhoneによる差別化がなくなった。固定とモバイルのセット割は今までKDDI(au)だけだったが、これで3社とも提供することになり、基本的にセット割による差別化がなくなった、というのが今の置かれた状況」と分析。
セット割をめぐる競争環境がどのように推移し、業績にどう影響するのか。孫氏は「お互いに様子を観ないとまだわからない」と述べるに留まった。
ソフトバンクとワイモバイルの合併について
このほかソフトバンクモバイルやワイモバイルなどが統合されることについては、管理部門、ネットワークなどでの一本化は進めてコスト効率は進めるもののあらためて「ブランド、店舗、料金体系は別サービスとして提供する」と説明。1社になると契約数は国内2位になる見込みだが、ワイモバイルでもスマートフォンはさほど多くないとして、「携帯電話としての台数は依然としてまだ3位。謙虚に受け止める」と語る。スプリントの事業でも謙虚な姿勢を示したことから「今日の僕のキーワードは謙虚ですね」と笑って語る場面を挟みつつ、合併前と同じように、ソフトバンクモバイルとワイモバイルは、異なるターゲット層を目指して展開していくと語る。
ソフトバンクとしての保有周波数も相当の規模になるが、これもPHSは異なる技術であり、携帯電話には利用できない、として、今後の免許獲得などへの影響はないとした。