インタビュー
7.7mmに詰め込んだ「arrows NX F-01J」の強さと優しさ
当たり前に見かける“画面割れ”を減らしたい
2016年11月29日 15:30
NTTドコモから2016年冬春モデルとして発表された富士通コネクテッドテクノロジーズの「arrows NX F-01J」。米国防総省の装備品に求められるMIL規格への準拠を継続するとともに、1.5mの高さからコンクリート面に26方向の角度で落としても画面割れが発生しないという試験をクリアした高い堅牢性をアピールしている。それでいて本体の薄さは7.7mmと、実は冬春モデルの中では最薄となっている。
ひときわ頑丈な作りにしながら、ハイレゾへの取り組みを本格化するなど新たな要素も取り入れつつ、最近は少なくなってきた7mm台の端末として開発、デザインするに当たっては、そこに並々ならぬこだわりと苦労があったはずだ。今回の新しいarrows NXはどのように進化させてきたのか、企画、デザイン、ハードウェア開発のそれぞれの側面から携わった同社の担当者に詳しい話を伺った。
日常のさまざまな不安を取り除いて安心を与えたい
――最初にarrows NX F-01Jの開発コンセプトについて教えていただけますか。
光安氏
F-01Jは、当初から“「強さ」と「優しさ」を半分ずつ”というコンセプトに定めて企画を進めてきました。「強さ」に関しては、今回は「画面割れへの強さ」「傷への強さ」を徹底的に追求しています。
その中でも、画面割れについては、構造面で新しい技術を取り入れた上で、それを検証する厳しい試験も実施して、日常使用で地面に落としてしまった場合でも画面割れが発生しにくい強さを実現しています。
もう1つの「優しさ」に対しては、2015年夏モデルのARROWS NX F-04Gから導入している虹彩認証の3代目として、新しいカメラセンサーと新しいアルゴリズムの採用によって使い勝手を向上させたところが1つ。オンキヨーさんとコラボレーションして音質向上にも取り組み、高音質なサウンドを実現したところも、快適さ、優しさを実現するポイントと思っています。
――前モデルからデザインを大きく変えつつ薄さは7.7mmを実現していますが、この中で強さをどう実現しているのでしょうか。
橋氏
「強さ」の実現のために、今回は特に装置自体の剛性をとことん突き詰めました。厚みを増やして強度を上げたステンレスホルダーに、ステンレスフレームを組み合わせた「SOLID SHIELD構造」として、内部から剛性を上げています。それと同時に外周のアルミパーツには7000番台の高強度アルミニウムを使用することで、外部の強度も向上させています。内と外の両方から剛性を上げることで、高い堅牢性を達成しました。
――一般的には剛性を高めると重くなるでしょうし、サイズ面でも不利になると思います。それでも強さにこだわった理由とは?
光安氏
当社ではもともと防水端末をフィーチャーフォンの時代から作るなど、安心・安全への取り組みはずっと以前からやってきました。その延長として、日常で使える幅を広げ、いろいろな利用シーンで何も気にせず使えるのが価値になるだろうと考えて、2015年冬モデルからMIL規格に準拠しました。
でもまだそれだけでは足りないということで、日常生活の中で不意に落としてしまった時でも画面が割れないようにしようと考えました。目指したのは“絶対に割れない”こと。そういった日常のさまざまな不安を取り除いて安心を与えたい、というところが、当社ならではの独自の視点、価値になると考えました。
――端末の耐久性を高めるには、「G'zOne」や「TORQUE」のように、バンパーを設けて衝撃を吸収するという発想もあるわけですが、F-01Jは普通のフォルムをしています。こちらの方が難易度としては高いですよね。
橋氏
そこはやはり苦労したところです。外側のデザインはスタイリッシュな形を残した上で強度を上げる必要があったため、特に内部の剛性を突き詰めていきました。シミュレーションをしながら弱点の分析を行い、そこを補強していくという手順を何度も繰り返して、SOLID SHIELD構造を作り上げました。
岡本氏
「強くする」というと、上から何かを付加していく発想になりがちですが、内部から筋肉質にしていくかのように、密度を高めることによって堅牢性を引き出す方向性で検討しました。内部シャーシに強いフレームを入れていくと同時に、外周のアルミフレームとディスプレイ端面の間に、もう一層樹脂のピースを挟んでいます。これが衝撃を吸収させるダンパーとしての役割も果たしています。
また、ディスプレイガラスのフラット面から0.3mm、アルミフレームが突出したような形状を保っています。arrows SV F-03Hもそうですが、落下時にディスプレイガラス面の接地を防ぐことに強いこだわりをもっていまして、樹脂ピースと合わせ、2重の意味でガラスの端面を保護する設計にしています。
ただ、そういった突起を設けることで持ちやすさを損なってもいけません。アルミならではの細かい切削加工が行えるメリットも活かして、適度な山なりの形状を施すことで手当たりの良さを保ちながら画面をガードするというディテール処理にもこだわっています。
――業界的には「2.5D構造」でディスプレイガラスの側面を丸くするという手法が流行っていますが。
岡本氏
継ぎ目がなく、触り心地も良くて、かつ未来的に見えるという意味では、つるんとした2.5D造形は今のトレンドだとは思います。その反面、街中や電車でも、10人に1人くらいは画面が割れてしまっている状況を日常的に目にします。それを私たちは仕方なく受け入れていますが、どうにかならないかな、という不満点でもあると思っています。しっかり“今らしさ”をキープしつつ、日常の使い勝手に支障をきたさないという、中間を突いたデザインを目指したいと思いました。
今後、2.5Dのガラスが、どんな時でも割れを起こさない段階にきたら、それはもう大手を振って使っていきたいと思いますけども(笑)。スマートフォンは、日常生活のなかで(壊れるなどして)止まってはいけないプロダクトです。「壊れにくさ」は一番最初に達成しなきゃいけないポイントですね。見た目ももちろん大事ですが。
――アルミパーツのハードアルマイト加工は以前のモデルにもありましたが、今回はさらに耐傷性が上がっています。具体的にどのようにして強化したのでしょうか。
橋氏
アルミパーツについては、素材によるところが大きいですね。今までの6000番台から7000番台のアルミに材料を変更したのが一番の違いです。その分、含有金属の影響で色の出方がこれまでと違ったり、素材が硬いため、加工が難しかったり、その辺りはかなり苦労しました。
岡本氏
ただ同時にそこにはメリットもあって、傷つきにくいことで、ブラックやカッパーのボディカラーに使っている深みのある黒暗色は非常に出しやすくなりました。長く使ってもらう上でも、摩耗によって素地のシルバー色が出にくいという点では、使いやすくなった素材かと思います。
未来のarrowsは“柔らかさ”で耐久性を上げる?
――耐久性を測る試験として、1.5mの高さからの落下試験などが公開されていますが、他にはどんなテストを行っているのでしょう。
橋氏
他にも多数の試験をしていますが、ノウハウの蓄積でもあるので、詳細に言えないことも多くあります。今のところ、1.5mから26方向でコンクリートに落としても画面が割れない、という落下試験が、一番厳しい試験だと思います。これまでと同様の試験項目についても(落下)高さを上げたり、サイクル数(繰り返し)を増やすなど、F-01Jではより厳しい条件で試験しています。
――画面の割れにくさやMIL規格への準拠という“強さ”は、今後の端末でも引き続きコンセプトとして継続されていくのでしょうか。
光安氏
構造をどうするかという具体的なところは未定なんですが、少なくとも日常の不安を取り除いて安心・安全を提供する、という点については、どの機種においても当社独自の価値として今後も取り組んでいこうかなと。画面割れに対する強さや、いろいろな使用シーンでの強さというのは継続していきますが、それをどう実現するかは、ひょっとしたら機種ごとに違ってくるかもしれません。
――今後も耐久性能はどんどん高めていくということですか。
光安氏
まさにまだアイデアレベルですが検討しております。もっと違うシーンにおける耐久性を進化させることや、数値的な強度をさらに高めること、などが簡単に思いつくアイデアです。例えば1.5mの落下試験の高さをさらに上げるとか、落下面をアスファルトも対象にするとか、海水にも耐えられるようにするとか、ですね。
一方で、現時点ですでに十分という意見もあります。この堅牢性のレベルをどの機種でも必ず実現していく、という考え方もあると思いますし、堅牢性をキープしたまま他の快適性を追求していくという方向性もあるでしょう。今後そのどちらを取るか、というのはまだはっきり決まっていません。
ただ、少なくともデザイン面で明らかに見た目がゴツゴツなバンパーを付ける、といったようなものは我々の目指すところではないと思っています。日常生活に溶け込む、万人がいいねと思えるデザインのなかで、実はしっかり強い、というところは崩さずにやっていきたいですね。
――折り曲げられるディスプレイなども出てきています。端末を頑丈にして耐久性を上げる以外にも、反対に柔らかい素材で作るという方向性もありそうです。
岡本氏
そこは柔軟に捉えたいと思っています。なんでもかんでも固くして弾く、という考え方ではなく、吸収して分散する、逃がすというスタンスもあるだろうと思っています。
――ここまでは構造としての「強さ」の部分でした。「優しさ」についても詳しく教えていただけますか。
光安氏
ハードウェアの中身の部分で、より快適に使える「優しさ」を実現するよう進化させているところがあります。日常使用において注目されやすい電池もちと、ストレスなく使えるところは、ハイエンドモデルとして出す以上きちんとやりましょうということで、パフォーマンス面で最適なバランスの、電力効率の良いMSM8953(Snapdragon 625)をCPUに選びました。
電池もちがどれくらいになるかは計測中ですが、現行のラインナップの中では他社端末と比べてもトップレベルの電池もちになりそうです。パフォーマンスに関しても、重たいアプリや重たいWebサイトでも反応良く快適に動くという評価が出てきていますし、今回はすごく良いCPUを選べたと思っています。
――arrows NXシリーズとしては珍しく、ハイエンドではない、他社もあまり使っていないチップです。
光安氏
日常使用で考えた時には、ハイエンドチップのように“超短距離走”で最初だけ速いロケットダッシュだけではダメで、ずっと一定の、快適に使えるポイントを長く持続できるところが良いと考えました。それができるCPUは何かと探した時に、MSM8953が最適だったということになります。
今までのarrows NXシリーズのことを考えれば、CPUだけを見るとハイエンドではないように見える、というのはあるかもしれませんが、そのイメージを払拭したい。今までは最新、最先端、最高峰のものを採用してきましたが、その考え方を少し変えて、お客さんが一番求めているものは何かを考えて、これだと自信をもって選びました。
生活になじむデザインを目指した「スクエアラウンドフォルム」と「カッパー」
――デザイン面での「優しさ」についてはいかがでしょうか。
岡本氏
パッと見、なかなか分かりづらいですが、ディスプレイ面側のアルミフレームが背面側の樹脂パーツの内部に潜り込むような処理にしています。このように段々にして“面”を違えることによって、熱をもちにくくなる効果もあるでしょうし、手で持つ時も、実際は金属より樹脂に触れていることが多いように配慮しています。ですので、手に持った時に過剰に冷たい・熱いということがないようケアできたと思います。
――今や正面から見た時のデザインには差をつけにくいところがあるかと思います。その点、デザイナーとしてはどうお考えですか。
岡本氏
液晶ディスプレイも進化してきて、カバーガラスとのコントラストがほぼなくなって、真っ黒なきれいな一枚面を達成できるようになりました。そんな中でも、虹彩認証のカメラを引き立てるなど、押したいところに対して他は引く、というようなアプローチはしています。
最近のスマートフォンは必ず角が取れていて、ほとんど同じプロポーションになっています。お店に端末がずらっと並んでいるところで、お客様ももはや正面視だけでは選ばないと思うんですね。必ず手に取って全体像を確かめながら、自分に一番マッチしたものは何かを選択するので、あまり正面視だけを意識しすぎないように、と考えるようにしています。
カタログにも見て取れますが、側面に個性を持たせることを今回は強調しています。ですので、ぜひ横から見てほしいです(笑)。
――アウトカメラ部分の四角形のデザインは評価が分かれているようです。
岡本氏
カメラのレンズをそのまま表現する際には、真円でアウトラインを決めていくことが物理的にも撮影効果としても一番効率の良い望ましい造形ではあります。しかし今回、端末の上部に多くの実装物を詰め込んだ上で、7.7mmと薄さについても訴求しています。
この四角形のカメラパネルの下は、カメラユニットがギリギリまで迫っている状態です。カメラユニットの上にカメラパネルを直接貼っているくらいの、肉薄した実装レイアウトです。ここに円形のアウトラインを出すよう肉を盛って処理することも1つの策でしたが、お客様にとって目障りや手触りを損なうことだけは避けたかった。置いた時にガタつきを起こしたくないという思いもあって、これが今できる最良の策ではないかと。
それでも、カメラパネルも外周も、すべてにおいて角にラウンドを設けています。私たちは「スクエアラウンドフォルム」と呼んでいますが、端末全体にしっかり統一された印象を保つよう、このカメラパネルのアウトラインも決めています。その下にあるカメラライト自体も同調するデザインにしています。
先ほども話があったように、今は流線型だったりシームレスな造形が主流になっています。でも、持ち心地は良くても滑り落ちやすいんですね。「優しい」けれど、端末を取り上げる時は少しだけ引っかかりみたいなものがある造形の方が良いでしょうし、手で持っている時は抵抗をほんの少し感じるくらいがベストなのではないか、と判断しました。
――インカメラの位置が端末下部から上部に戻ったのも個人的には注目しています。
橋氏
インカメラを端末の上部に置きたい、という思いはみんな一緒だったので(笑)、そこは時間を掛けて検討しました。正直なところ、虹彩認証用のセンサーがあるので、このあたりはかなり混雑しています。各要素が全く隙間なく並んでいるので、近接センサーをレシーバー(受話スピーカー)の上に移動したり、細かいところですが、そういう構成の工夫で達成できたところもあります。
――ボディカラーはカッパー、ホワイト、ブラックという3色です。このラインナップはどのように決めたのでしょう。
岡本氏
カラーのトレンドにも周期があって、寒色系と暖色系が行ったり来たりしています。その流れから、青系や緑系の端末はこれからどんどん増えて行くだろうなという風に予測はしていました。
そこで富士通がもつ特色としてどんな色が適しているか考えた時に、「お客様のさまざまなシーンをケアしていきたい」というのが端末全体のコンセプトでしたので、それを色でも再現したかった。そのため、ビジネスとプライベートという両極端なシーンにもしっかりフィットするカラーリングがまず第一の条件でした。
それに合う3色目として、他メーカーではゴールドがよく見当たりますけれども、そことは違いを出したくて、同じ金属調ではあるけれど、使い込んだり生活のなかで経年変化を受け入れやすそうな色味ということで、カッパー(銅)にしました。
通常カッパーというと、どちらかというとピンクゴールドのイメージで、“新品の銅”はたしかにそういう色なんです。ですが、ユーザーがだいぶ前から使っていたような“持ち物”として、他とも同調するなじみやすい色ということで、「エージングカッパー」のようなイメージを狙いました。
“先進”というよりは生活になじむもの、生活のワンシーンのなかにさりげなく置かれている、ようなものが僕らの抱くイメージです。生活用品を購入する時に、ものすごく“情報機器”的なものよりは、少し自然物やアナログな趣向のものを買い求める傾向が強くなってきていると感じていますので、新しいIT機器ですけど、より生活の一部となれるような側面を強調してこの色を選択しました。
オンキヨーとのコラボでハイレゾの音質を向上
――今回、音響機器メーカーであるオンキヨーとのコラボレーションも強調しています。どういった経緯で実現することになったのでしょうか。
光安氏
同じ国内メーカーですし、それぞれ独自の技術をもっているので、それを組み合わせることで相乗効果を出せるのではないかと考えました。企業理念として「チャレンジしていく」という部分も合致するところでした。
以前はオーディオプレーヤーとしてスマートフォンを使う際に電池もちを気にすることが多かったように思いますが、現在は電池もちが改善し、スマートフォンで音楽を聞くシーンが増えています。我々としてもスマートフォンの進化点を探していく中で、イヤフォン出力の音質を向上させることでそういった利用シーンに応えることができるのではないかと思いました。その第1弾として、オンキヨー様には音響回路設計についてアドバイスをいただいたり、部品の選定に関わっていただきました。
――実際のところ、以前からの違いが分かるほど音質向上はありましたか。
光安氏
同じハイレゾ音源で聞いても、従来機種と比べて明らかに音の広がりや、重なっている音1つ1つが独立して聞こえるところなどは違っていますし、ノイズや歪みも減っています。実際に聞いてみて違いが分かる音にできていると思います。
もちろん100円ショップのイヤフォンでも音が良く聞こえるようにはしていますが(笑)、より違いに気付けるようにするには、ちょっといいイヤフォン・ヘッドフォンを使っていただいた方が良いかと。
――虹彩認証もアップデートしたとのことですが、具体的に何が変わったのか教えていただけますか。
光安氏
ソフトウェアのアルゴリズムと、カメラセンサーのフィルターの作りを変えました。ソフトウェアとハードウェアの両面で改善して、認証率や認証にかかる時間と、認証可能なカメラレンズからの距離の面でも改善しています。これによって、従来機種に比べてより自然な操作で虹彩認証を使えるようになりました。
屋外の明るい場所での認証にも強くなりましたし、揺れている状態や、暗所でメガネをかけている場合でもしっかり認証できるようにしています。虹彩認証は、今回から搭載された画面のダブルタップでディスプレイをオンにする機能との相性も良いのではないかと。国内では元祖といえるスマートフォンの虹彩認証として、今後も継続的に改善していきたいと思っています。
――新しい機能としては、他にどんなものがあるでしょうか。
光安氏
「はっきり文字」と「いつでもズーム」という機能を追加しました。F-01Jのメインターゲットは30~40代としているのですが、arrows NXを実際に買っている人の中には40~50代の方もいらっしゃいます。そういった方々は、IT機器の進化とともに過ごしてきたリテラシーの高い人たちです。だからまだ「らくらくスマートフォン」ではないのですが、身体的な衰えはやはりあります。具体的には目が見づらくなってきている、などですね。
そういった方々に便利な機能として用意したのが「はっきり文字」と「いつでもズーム」です。「はっきり文字」は、画面の文字サイズを大きくし、見やすいフォントに簡単に切り替えられる機能で、通知パネルからワンタッチでスマートに切り替えられるようにしています。「いつでもズーム」は、ピンチイン・アウトで拡大縮小できないWebページでも、強制的にズームイン・アウトすることで、見やすさを向上させることが可能です。
それから、「パーソナルノート」を新たに用意しました。これは、従来「パスワードマネージャー」という名前で提供していた機能の進化版です。パスワードマネージャーは、あらかじめ登録しておいたIDとパスワードを、WebサイトのID・パスワード入力欄に自動的に入力できるというものでしたが、お客様の中にはID・パスワードだけでなく、クレジットカードの番号や住所、口座情報の管理などに使っている人がいっぱいいらっしゃいました。
それをもう「そういう使い方をしていただくものです」として、個人情報や口座情報やクレジットカードの番号などを登録して、虹彩認証ですぐに呼び出せるようにしたのが「パーソナルノート」です。改善点の1つとして、ID・パスワードを自動的に入力しようとしても、1画面内で何度も認証しなければならなかったのを、今回は1画面内なら一度認証すれば次々に入力していけるようにしました。
実際には均等に分かれていない、側面の2層構造
――最後に、ここを見て欲しい、というアピールポイントがありましたら。
光安氏
今回ディスプレイも進化させています。いわゆるNTSC比で96%の色再現性として、有機ELと同等の液晶ディスプレイにしています。前モデルのarrows NX F-02Hをはるかに凌ぐ色再現性を実現できました。日常使いで写真を撮った時によりきれいに見える、という価値を提供できているのかなと感じています。
橋氏
個人的に一番苦労したのは7000番台のアルミパーツです。金属としては硬いけれど、触った時の尖った感じや痛く感じるところはないように設計しています。装置としての質感も含めて、細かい部分の完成度を見て欲しいなと思います。
岡本氏
今回「強さ」と「優しさ」という2つの大きい要素を、デザイン面でも50:50を意識して作っていきました。開発中にはボリューム感を測るため、7.7mmという厚みのものを製品版のような2層に分けず、ただソリッドの塊にしたモデルも作りましたが、それと並べると2層構造の方が視覚的に圧倒的に薄く見えることが分かりました。
それと、50:50と銘打ったからには、色の異なる2層を絶対に均等に見えるようにと最後の最後まで粘りました。正直言うと、本当に均等には分かれていないんです(笑)。実際は背面側の層が少しだけ厚いです。遠目から見た時にはしっかり半分ずつに見えるように作る、というバランス調整には本当に苦労しました。その視覚的なところと、せっかくこの堅牢性も兼ね備えることができたので、ぜひともカバーをつけずに、単体のまま使っていただきたいな、と思っています。
――本日はお忙しいなか、ありがとうございました。
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