世界初! クラウド対応ボールペン「Livescribe sky WiFi Smartpen」
“Livescribe社”は、筆記文字や手書きの図をデジタイズするデジタルペンや関連ステーショナリー、アプリケーションを提供している米国オークランドに本社を置くユニークな企業だ。基盤となるテクノロジーは、北欧スウェーデン“Anoto”(アノト)社の開発したデジタル化技術を採用している。
コンピューターとのデータ共有のために、手書き文字のデジタル化を目論む企業の多くが採用しているアノト社のデジタル化技術の詳細はここでは割愛するが、ペン先の一部にデジタルカメラを搭載した特殊なペンと、ユニークなドットパターンの印刷された専用ノートとのコンビネーションで、ボールペンの先が今、どの位置に何を描いているか認識して、内蔵メモリーにベクトル筆記データとして記録する技術だ。
筆者もユーザーだったLivescribe社の初代デジタルペンである「Pulse」は、手書き文字のデジタイズ機能に加えてボイスレコーダー機能も搭載したかなり先進的なデジタルペンであった。筆記データや録音データの両方は、内部クロック(時計機構)により紐付け管理され、内蔵ストレージに記録される。
例えば、セミナーや授業などで、講師の話す音声を録音しながら、その時の要点を専用ノートに手書きした場合、事後、手書きした文字周辺部分をペン先でクリックするだけで、その同じ時刻に講師が話していた音声を再生できるという仕組みだ。しかし、従来モデルでは、データの共有はパソコン経由の運用・管理であった。
今回、同社の最新商品として販売開始されたデジタルペン「sky」は、従来の「Pulse」の機能に加えて、Wi-Fiを利用して、筆記データや録音データのクラウドサービスへのアップロードをデジタルペン単体で実現した世界初の「クラウドサービス対応ボールペン」だ。
Livescribe社では、Pulse 、Ecjoに続く3世代目にあたる sky WiFi Smartpen | クラウド連携商品らしく、パッケージも機器もきわめてシンプル | 基本的には、デジタルペンskyと専用ノートさえあればいつでもどこでもアイデア出しとその記録ができる。Wi-Fi環境があればデータは一気にクラウドサービスにアップロードできる |
パッケージを開くと、デジタルボールペン“sky”と専用ペンキャップ、交換芯、専用ノート、マイクロUSBケーブル(充電やPC接続によるskyのバージョンアップに利用)、各種設定用ステッカー等が出てくる。skyの表面と内部には、液晶ディスプレイの他、マイクロUSBコネクター、オーディオジャック(イヤフォン用)、マイクロフォン、スピーカー、パワースイッチ、そしてWi-Fi回路、記録メモリー回路等、目一杯搭載されている。
初期の設定を終えてしまうと、基本的にはデジタルペンの「sky」と付属の専用ノートさえあれば、いつでもどこでもごく普通にメモをとる動作だけで、筆記した内容や録音した内容は全てskyの内部ストレージに蓄積される。インターネットに接続できるWi-Fi環境さえあれば、事前設定で指定されたクラウドサービスにすべてのデータは自動的にアップロードされる。
初めての設定作業にはネットに接続されたパソコン環境が必要だ。Livescribe社の提供する専用サイトのセットアップページにアクセスし、指示に従ってユーザーIDの作成、skyのアクティベーション、今日現在、skyが現在唯一連携するクラウドサービスであるEvernoteとの紐付けなどを行う。後は、デジタルペンである「sky」で、普段使う可能性の高いWi-Fiルーターやアクセスポイントを検知、登録する作業になる。
なお、Evernote以外のDropbox、Google Drive、Facebookは今後のバージョンアップで対応予定だという。
文字入力用のキーボードが装備されていないデジタルガジェット――ホビー用ロボットや、スマート家電、クラウド型名刺リーダーなど――と同じで、「sky」もキーボードレスのクライアントだ。このような、キーボードレスのWi-Fiクライアント機器を、従来のWi-Fiルーターやアクセスポイントに接続できるようにするには、セキュリティ・パスワードの設定手順に何か工夫が必要だ。
「sky」は、アノト社のテクノロジーである、“専用紙を使用する前提なら、ペン先が今どこにあるかを自らが検知できる”という仕組みを利用して、Wi-Fiセットアップのスタートからパスワードの入力までの一連の作業を、付属の“専用設定用紙”である「Sky-wifi smartpen stickers」を利用する極めて簡単な仕組みをユーザーに提供している。
筆者は、自宅でskyを使用するときのために、自室に設置しているWi-Fiルーターとの接続設定を行い、続いて、アウトドアの環境で利用するイーモバイルのモバイルWi-Fiルーターとの連携を設定した。skyのディスプレイでWi-Fiルーター、アクセスポイントとのリンクが終了したことを確認したら、すべての設定作業は終了だ。Wi-Fiルーターやアクセスポイントは、使用する可能性のあるモノを複数台登録しても、実在するものをskyは自動選択し接続してくれる。
実際に、デジタルペン「sky」を使用して専用ノートに手書きした内容データは、筆者のモバイルWi-Fiルーターを経由してアッという間に、筆者の利用しているクラウドサービスであるEvernoteにアップロードされた。近未来は、パソコンがクラウドサービスとの仲介をしていた時代から大きく変化し、ほどなくパソコンレスが当たり前の時代となるだろう。
クライアント機器やクラウドサービス関係の機器を提供している日本企業が、今後、真っ先に考えなければいけないのは、「パソコンレス」をどういう形で実現するかという事だろう。日本は1990年代にパソコン市場への対応が遅れ、世界の後塵を拝し、今度はパソコンからの脱却にも再び世界から遅れを取ろうとしている。デジタルペン「sky」を見るだけでも“IT社会のこれから”が見えてくる。
製品名 | 購入場所 | 購入価格 |
Livescribe sky WiFi Smartpen | Amazon.com(日本への配送は不可) | 195.55ドル |
2012/11/27 06:00