ケータイ用語の基礎知識

第648回:Wi-SUN とは

 「Wi-SUN」とは、次世代電力量計「スマートメーター」などに採用されることで注目を集めている次世代無線通信規格の1つです。日本主導で規格の標準化が進められています。

 スマートメーターとは、電力会社と、電力の消費者である工場やオフィス、家庭などに設置される検針機器のネットワークであり、導入することで電力消費量をリアルタイムに把握でき、その結果から電力使用の無駄使いを減らすといった制御をすることができるとされています。

 「Wi-SUN」は、東京電力が2020年までにエリア内の全2700万戸に設置を予定している「スマートメーター」と、宅内のエネルギーを管理し各電子機器のハブになる「ホームゲートウェイ」の通信方式として採用されることになっており、この面からも注目されています。

 携帯電話などで、この方式の無線通信インタフェースが搭載される予定は今のところありませんが、この方式を推進している情報通信研究機構(NICT)によれば、いずれはスマートフォンやタブレットも対応するとされています。

 「Wi-SUN」の“SUN”とは、ガスや電気、水道のメーターに端末機を搭載し無線通信をつかって、効率的に検針データを収集する無線通信システムのことです。スマートな実用的なネットワークを意味する「Smart Utility Network」の頭文字からその名前がついています。

低電力で効率よい通信

 ここ数年、電気やガス、水道といったインフラの検針(使用量の確認)に“スマートさ”を取り入れ、エネルギー効率を高めようという取り組みが進んでいます。Wi-SUNはその有力な手段の1つです。

 Wi-SUNという規格は、日本の情報通信研究機構(NICT)、米Elster、Itron、Landis+Gyr、Silver Spring Networksなどが創設した業界団体「Wi-SUNアライアンス」が、標準化、普及促進活動を行っています。通信規格として、物理層の仕様は「IEEE 802.15.4g」として、米国電気電子学会(IEEE)でも標準化された国際規格です。

 Wi-SUN(IEEE 802.15.4g)は、通信速度がそれほど速くないものの、強力な低消費電力が特徴です。そのための工夫のひとつがマルチホッピング対応です。

 マルチホッピングとは、端末同士が通信を中継しあい、バケツリレーのようにデータを遠隔地まで届ける仕組みのことです。ちなみに、Wi-SUNでは、端末同士の通信可能な距離は500m程度ですが、何台もの端末で中継することで、数km、数十kmと離れた場所にある拠点まで、データを届けます。

 2.4GHz帯や、サブGHz(ギガヘルツ)帯と呼ばれる周波数帯などで利用でき、さらに複数の変調方式が選べます。こうした柔軟性も特徴の1つと言えるでしょう。ちなみにサブGHz帯とは、1GHz以下の周波数帯で、1GHzに近い900MHz近辺の周波数帯を指す言葉です。日本では2012年、920MHz帯がISMバンド(免許不要で利用できる帯域)として割り当てられ、スマートメーターなどでも利用が可能になりました。こうしたIMSバンドには、既に2.4GHz帯などがあります。サブGHz帯は、無線LANなどで利用される2.4GHz帯と比べ、障害物などがあっても電波が届きやすく、他の機器などからの干渉も少ない周波数帯、というメリットがあります。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)