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「日本のすべての企業でDXを実現」、楽天モバイルがもたらす法人サービスの新たな体験価値とは

楽天モバイル 代表取締役共同CEO 鈴木和洋氏

 楽天がグループを挙げて開催する最大級の体験イベント「Rakuten Optimism 2024」が8月1日から4日までの4日間、東京ビッグサイトで開催された。

 ここではビジネスカンファレンスのプログラム「楽天モバイルと戦略パートナーによるスペシャルセッション ~AI × DXで日本のすべての法人の常識を変える」の内容を紹介しよう。

3つのステップでDXを実現

 楽天モバイルの法人戦略について語ったのは、代表取締役共同CEOの鈴木和洋氏だ。

 鈴木氏は、まず、IMD(国際経営開発研究所)による世界競争力ランキング2023年度版をもとに、日本が総合順位で32位と過去最低を更新したことに触れる。

 IMDの世界競争力ランキングにおいて、日本はブロードバンドの普及率は2位。しかしスマホやビッグデータの活用は最下位に近い状況だ。

 これに鈴木氏は「インフラの普及は進んでいるが、日本はその上でなにをやったらいいか分からない。デジタル化、DX化にインフラを活かせていない」状況と警鐘を鳴らす。

楽天モバイルの法人ビジネスは、日本のすべての企業でスマホを活用し、DXの実現を目指す

 どうすれば、日本の競争力は伸びるのか。鈴木氏は、日本企業の99.5%を占めるとされる中堅・中小企業のデジタル化がキーポイントと指摘し、そのためには3つのステップがあると語る。

 ステップの1つ目は、大容量のデータを自由に使える基盤を作ることだ。

 そのために、楽天モバイルでは「Rakuten最強プラン ビジネス」を用意。月額2980円(税込3278円、※混雑時など公平なサービス提供のため速度制御する場合あり。※通話料等別)でデータ通信が無制限に利用でき、たとえばリモートワークでのビデオ会議も気兼ねなく利用できる。

大容量のデータを自由に使える基盤は「Rakuten最強プラン ビジネス」が提供

 大容量データを自由に使えるようになれば、次のステップは、さまざまな業務課題を解決するためのソリューションを活用すること。

 これに楽天モバイルでは、ビジネスコミュニケーション、デバイス管理、セキュリティ、クラウド業務支援、マーケティングなどで、業務効率を上げて企業内のDXを推進するソリューションを幅広く提供している。

楽天モバイルは様々なソリューションを提供

 3つ目のステップはAIの活用だ。

 そこで、今後、楽天グループの知見やノウハウを結集したAIチャットサービス「Rakuten AI for Business」をリリースする予定と発表した。

 「Rakuten AI for Business」では、OpenAI社の最新のモデル「GPT-4o」をベースに、楽天の持っている知見やノウハウを活用。企業のコンプライアンスを守るセキュリティを搭載しながら、議事録の作成や、商談がうまく進むようなトークスクリプト、メールの自動作成などの営業支援活動などで活用できる。

OpenAI社の最新のモデル「GPT-4o」を搭載したAIチャットサービス「Rakuten AI for Business」を近日中にリリースする

 「ステップ1で無制限にデータを使える基盤を作り、その上で課題解決、業務解決のソリューションを動かして、さらにそこにAIのエッセンスを注入し、企業のDX化を実現していくという形で支援していきたい」(鈴木氏)

 楽天モバイルは、他にも様々なDXソリューションを開発中で、これらにも「ぜひ期待していただきたい」と呼びかけた。

今後も様々なDXソリューションを開発し、サービスラインアップを拡充していく

木下グループの楽天モバイル導入事例

 楽天モバイルの法人向けサービスを導入する企業として今回、登壇したのは、木下グループ 専務取締役 木下の介護 代表取締役社長の佐久間大介氏だ。

木下グループ 専務取締役 木下の介護 代表取締役社長 佐久間大介氏

 木下グループは、住宅関連事業、介護、保育、スポーツ支援、エンターテインメント、不動産事業、飲食事業、医療機関など、非常に幅広い事業を展開している。ただ、幅広い事業領域は「それぞれの事業体が飛び地のような状態」(佐久間氏)でもあった。

 スタッフの年齢層が幅広いことから、自然とスマートフォンの活用までは考えていた――という木下グループの前に現れたのが楽天モバイル。最終的に、楽天モバイル回線のスマートフォン8000台が導入され、グループの従業員ほぼ全員の手に渡ることになった。

楽天モバイルを選んだ理由

 では、なぜ楽天モバイルを選んだのか。

 一番大きかったのは「向き合って悩みを解決してくれる」ことと語る佐久間氏は、「『できません』『難しい』という言葉が絶対出ない。『できますよ』『○○まで時間をください。やります』という言葉がすべての事柄、相談において出てくる」と、楽天モバイル側の姿勢を評価。

 山あいにある介護施設などを手掛ける木下グループにとって、「電波がどこまで届くかの不安は正直、あった」(佐久間氏)というが、楽天側に相談すると「『分かりました、対応します』と非常にスピーディーに対応してくれた」という。

 木下グループに共通する「ゼロからイチを生み出す社風」や、デジタル化の進展によって「エコシステムとのシナジーが生まれる期待」も、楽天モバイルを選ぶ決め手になったという。

スタッフからも好評

 楽天モバイル回線のスマートフォン8000台を導入したことで、たとえば、介護事業では掲示板などによる連絡・報告といった手法がデジタル化。さらに報告の自動化、あるいは勤怠管理や受発注システムによって、効率化が進んだ。従業員からも「業務がスムースに行える」と非常に好評だ。
 今後について佐久間氏は、「スマートフォンとAIにより、業務効率化と競争力の強化を目指していきたい。拠点間のネットワークの高速化も、実は楽天モバイルにお願いしている。Wi-Fi環境の整備なども計画進行中」と語った。

 「木下グループの経営理念でもある、全ての人たちが物心両面の豊かさを実感できる暮らしの実現、これを楽天モバイルと木下グループとでタッグを組んで進めていきたい」(佐久間氏)

「DXを実現するAI×セキュリティ」をテーマにパネルディスカッション

 佐久間氏の講演の後は、サイエンスアーツ 代表取締役社長 平岡秀一氏、エムオーテックス 代表取締役社長 宮崎吉朗氏、そして楽天モバイル 代表取締役共同CEO 鈴木和洋氏によるパネルディスカッションが行われた。

 テーマは「DXを実現するAI×セキュリティ」で、一部、デモンストレーションを交えながらセッションは進んだ。

後半は3氏によるパネルディスカッション

 サイエンスアーツは、ホテルや店舗、空港、鉄道など、デスクレスワーカーを対象にしたコミュニケーションプラットフォーム「Buddycom」を提供している。スマホで使えるインカムといったサービスだが、音声がテキスト化されて残る。また、音声は録音され、データはサーバー上に保存。また、翻訳機能が利用でき、位置情報も確認できる。これらが1つのアプリで提供されている。

 現在、1000社以上の大手企業に導入されているが、平岡氏は「中小企業に注力していこうと考えている」と述べた。実際、デスクレスワーカー人口の75%は中小企業で働いている。グローバルでは80%がデスクレスワーカーだとされる。「中小企業の皆様にBuddycomを楽天さんと一緒にお届けしようと思っている」と語った。

サイエンスアーツ 代表取締役社長 平岡秀一氏

 Buddycomを導入している宿泊施設では、1人当たり、1日2.4時間の時短に成功している事例もあると鈴木氏は紹介。また「データとして残ることが経営的には大きい」と指摘した。

 「こんなことが起きた時はこう対処をするのがいいといったように、業務改善、サービス改善につながっていく。現場で日々やり取りされている会話をデータ化し、それをAIで分析していくことが、今後、非常に大きな効果を生む」(鈴木氏)

 一方、エムオーテックスは、サイバーセキュリティに関するプロダクトの開発・サービス事業を「LANSCOPE」というブランドで展開している。そのなかでも、IT資産管理・MDMの「LANSCOPE エンドポイントマネージャー クラウド版」は、1万2000社以上に導入されている。

 「LANSCOPE エンドポイントマネージャー クラウド版」は、スマホやパソコンなどの端末を一元管理できるMDM「楽天モバイルあんしん管理」で採用されている。

 「楽天モバイルあんしん管理 powered by LANSCOPE」では、スマホの現在地を確認可能。紛失時には遠隔操作で画面をロックしたり、情報を消去したりできる。ロック画面にメッセージを表示させることも可能だ。

エムオーテックスの「LANSCOPE」が採用されている「楽天モバイルあんしん管理 powered by LANSCOPE」
エムオーテックス 代表取締役社長 宮崎吉朗氏

 SDカードの利用禁止、アプリのインストール禁止など、端末の利用制限も設定できる。業務アプリのアップデート管理なども行え、安全に業務用スマホを使うことができるようになっている。

 昨今は情報漏洩への対処が非常に重要になっている。鈴木氏も「情報漏洩は事業の存続に関わってくる非常に重大な事案」と指摘。「情報漏洩を未然に、スマートに防ぐ楽天モバイルあんしん管理 powered by LANSCOPEは、スマホを契約される全ての法人のお客さまにデフォルトで付けていく形でお勧めしていきたい」と述べた。

AI活用の効果

 Buddycomについては、すでにAIを活用した「Buddycom AI」を展開している。

 「Buddycomを使った会話は全て音声で残しています。テキストにも変えられます。ディープラーニングできるということです。我々の財産は実は音声」(平岡氏)

 簡単なところでは、社内マニュアルを音声で呼び出したり、蓄積した音声データの分析を行ったりしている。たとえば介護現場でシフトが交代する際の引き継ぎ(申し送り)では、前の担当者の録音された音声の要約が次の人に引き継がれる。

 また、監視カメラは監視だけでなく、サービスを充実させるためにも使われているという。いわゆる“お得意様”の顧客が訪れたとき、顔認証でAIから「○○様がいらっしゃいました」とインカムに通知が来ることで、名前で出迎えやすくなる。

 小売店では、来店客が商品を見ている時間を認識し、接客に活かすこともできる。

 Buddycomは、人手不足の現場でトレーニングに活用されることもある。交通系事業では、「危険」や「事故」といったキーワードをキャッチできるようにして、グループ内でダイナミックに会話をする機能が期待されているという。

 「現在、Buddycomに関してはお客様からAIの要求が非常に多いです。音声とAIは非常に相性がいい。そこを今後、楽天さんとソリューション開発を進めていきたい」(平岡氏)

AI活用の課題は「ルール作り」から

 多くの企業が期待するAIだが、企業に対して調査をすると、情報漏洩が気になるという結果が出ているという。

 宮崎氏は「生成AIを利用するにあたってのルール作りが非常に重要」と指摘した。

 具体的には「AI利用ガイドラインを策定をすること。そして生成AI利用状況の把握、AIに関する知識の習得といったところを定めていく必要がある」(宮崎氏)

生成AIを企業内で活用するためにはルール作りが必要だ。

 なお、生成AIの利用状況の把握については、楽天モバイルあんしん管理 powered by LANSCOPEだとChatGPTの利用状況を把握することができる。例えばIDとパスワードなどの機密情報を入力した際に、ルール違反ということを注意喚起するという。

楽天グループ、楽天モバイルにおけるAI活用

 最後に、鈴木氏が楽天グループ、楽天モバイルにおけるAI活用について紹介した。

 楽天グループは、楽天社員3万人が楽天のAIを通常業務として使い、AIのエキスパートになることを目指している。まずは楽天社内の業務効率、生産効率を上げ、コストを削減することに取り組む。

 2024年8月時点で、楽天エコシステムには、1億以上のIDがあり、4500万人以上のユーザーが何らかのサービスを使っている。また、取引先も約90万社だ。

 「4社に1社は楽天と何らかの取引がある会社」ということで、楽天グループには莫大なデータがある。「そのデータを使って、新しいAIのサービスを作っていく」という。

 「データを活用することによって、コンシューマーの皆さんにも、ビジネスの皆さんにも、より効果のあるサービスを提供していきたい」と語った鈴木氏。スマホを活用してDXを実現してもらい、さらにそこにAIを活用していくことで、「日本の企業全部を元気にして、日本全体を活性化していく。パートナーの企業と一緒になって実現をしていきたい」と意気込んだ。

法人ブースも出展! デモを交えて各サービスを紹介

 楽天モバイルの法人向けサービスは、展示エリアにブースを出展してサービスを詳しく紹介していた。その中から一部を紹介しよう。

Rakuten AI for Business

 講演の中で今後、リリース予定と紹介されたAIチャットボットの「Rakuten AI for Business」。ブースでは実際にパソコン上でのβ版のデモを見ることができた。

 ChatGPTをはじめとする生成AIサービスを利用する際、入力するプロンプトによっては思い通りの回答を得られない場合もある。そこで「Rakuten AI for Business」では、さまざまな業務に対応するテンプレートが用意されており、効率よく高品質な回答を得られるようになる。テンプレートは、楽天グループの内部で実際に業務で使われているものを参考に作成された。

メールのサンプル

 その使い方は、メールの作成や文章の要約、アイデア出し、翻訳からコーディング(プログラミング)・データ分析まで非常に多岐に渡る。

 実際に楽天社内では、新入社員かベテラン社員、営業マンから開発部隊まで、幅広く従業員の業務効率化に寄与しているという。

 また、新入社員にとっては会議の議事録を作ることも重労働だが、Rakuten AI for Businessを使うと以前だったら2時間もかかってていた会議の要約も30分程度で仕上げられるという。箇条書きやメモ程度でも、Rakuten AI for Businessを使うと、うまくまとめてくれる。さらに、日本語の会議のメモを英語の議事録にしたり、その逆なども可能だという。

 今後は、管理者向け機能が実装される予定で、法人のお客さまに向けた利便性の向上が進められる。導入企業の社内データと連携させ、“社内のヘルプデスク”のような使い方もできるようになる。

 将来的には、楽天の各サービスから得られるデータと組み合わせていく構想もある。例えば、マーケティングの担当者が、ECでどんなものが売れているのかを調べた場合、楽天市場で売れているものが売上別にグラフで表示されるなど、さらなる発展の可能性もあるという。

 担当者は「楽天が持つ、さまざまなアセットを組み合わせて、よりよいサービスに進化させていく構想です」と語っていた。

次世代型デジタルサイネージ

 楽天モバイルは、モバイル回線を利用することでコンテンツの自動アップデート、AIやセンサーによる近隣環境の把握と分析ができるデジタルサイネージを提供している。

 たとえば、カメラが接続されているサイネージでは、男性/女性、年齢、顔、注視時間をAIが認識し、分析する。分析結果からDXやマーケティングへの活用を行い、情報発信の有益性を高めることができる。

カメラが接続されたサイネージ
カメラとAIで得られたデータを可視化して提供する

 また、サイネージの前に製品を置き、お客が製品を手に取るとセンサーが感知し、その製品に合った映像を表示するタイプも展示されていた。

 タッチパネルを作用した小型のサイネージも展示されていた。こちらは主にホテルなどで導入されている。インバウンドの施設利用者にも、画面をタッチして⾔語表⽰を切り替えることで、希望言語に合った情報を伝えられる。

 サイネージはこれまで広告映像を表示するものだったが、担当者は「最近は、どのぐらい見られたのか、どういった人が見たのかを知りたいという要望がある。我々はサイネージだけでなく、カメラやAI、センサーといった装置を使って、可視化されたデータまでお客様に提供する」と説明していた。

KŌSOKU Access

 「KŌSOKU Access」は、法人向けの超高速インターネット接続サービスだ。強みは、専有型による高速通信。光ファイバーをユーザーの拠点へ1本、専有で線を引くことで、共有型よりも高速な通信を実現している。また、非常に低価格だ。1Gbpsプランは1万7800円(税込1万9580円)と、他社と比べると確実に安い(固定IP 1個/1Gbpsでの比較。2024年4月時点)。

 さらに、KŌSOKU Accessは全国で提供されている。他社の場合、専有型だと首都圏に限るところもある。担当者は「全国で、専有で、低価格で、という3つの強み」を強調していた。

「楽天モバイルあんしん管理 powered by LANSCOPE」

 パネルディスカッションで紹介されていた「楽天モバイルあんしん管理 powered by LANSCOPE」。端末管理(MDM)サービスには様々なものがあるが、本サービスの特徴はMDMでありながら、GPSなどを活用し、端末の位置をトラッキングできることだという。

 「端末のOS問わず、その日にどこに行って、何時にどこにあるかという移動の履歴が分かることは、ほかのMDMと比べ、大きな特長かなと思います」(担当者)

 また、管理画面では登録端末が一元表示される。1管理画面に周辺機器も含め1万機まで登録可能で、会社の資産をまとめて管理できる。

端末の位置を地図上で確認できる。この機能を備えているMDMは珍しい

 「元々作っていた資産の管理ベースがあるなら、それに合わせてデータをインポートすることができます。例えば、MNPでスマホを全部移行しますというときに、エクセルで管理していたデータをこちらに入れてしまうことが可能です」(担当者)

Buddycom

 Buddycomも展示され、実際に使って機能を確認することができた。Buddycomはインカムのように使えるが、通常のインカムだと距離的な制限がある。一方、Buddycomはインターネットを介して通信しているので、Wi-Fiや携帯電話回線につながっていれば、世界中どこにいてもつながる。

 話した言葉はテキスト化されるので、聞き逃してしまった時に後から見返すことができる。録音も確認できる。

話した言葉がテキスト化される

 管理画面上では、グループ、個別に関わらず、全てのやり取りが確認できる。データファイルもダウンロード可能でログの監査などに利用できる。

 法人向けの場合、グループの作成ができるのは管理者のみ。スマホのアプリ上ではグループの作成や変更、設定の変更などはできず、設定を誤って会話の履歴が一般公開されてしまうような危険もない。

 最大18言語(2024年8月時点)に対応し、会話中のリアルタイム翻訳も可能。なお、処理はクラウド上で行われているが、反応速度は非常に速いと感じた。

18言語に対応し、互いの声がリアルタイムに翻訳される

 映像を配信する機能、マップ上で区域を指定し、そのエリアにいるメンバーだけに発信をする機能、複数グループの会話を同時に聞ける機能など、便利機能が盛りだくさんだ。

 AIのデータ活用について担当者は「APIも公開されているので、外部サービスと連携できることも強み。外部サービスとの連携による蓄積したデータの活用も検討中」と今後も進化が続くとした。