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「スマホで地域を盛り上げよう!」楽天モバイルが備前市と進めた“すべての人がスマホを使える”しくみに迫る

特別講演を実施した楽天グループ 専務執行役員 兼 楽天モバイル 代表取締役共同CEO 鈴木和洋氏

 『安寧で持続的な未来を創る地域と産業 ~「超快適」スマート社会の創出~』をテーマに10月5日~6日まで開催された「京都スマートシティエキスポ2023」に楽天モバイルは出展。さらに6日には特別講演「楽天グループが実現するスマートシティ:共に歩む、あらゆる人が豊かに生きる社会」も実施された。

 特別講演では、まず楽天グループ 専務執行役員 兼 楽天モバイル 代表取締役共同CEOの鈴木和洋氏が登壇し、楽天グループの地域創生・地域共創への取り組みについてプレゼンを行った。

「京都スマートシティエキスポ2023」に出展していた楽天モバイルのブース

楽天モバイルが取り組む「地域創生・共創」

 楽天グループにおいて、地域創生・地域共創に大きく関わりがある事業のひとつは「楽天モバイル」だ。

 楽天モバイルは2020年に携帯通信事業をスタートさせており、法人や自治体向けのビジネスも2023年1月に開始。2023年9月時点で、すでに 約5000社の企業との契約 がある。

法人向けプランを今年の1月からスタートしている
法人プランでもRakuten Link Officeのデスクトップ版が利用可能になる予定

 鈴木氏は、楽天モバイルの法人事業について「3つの注力分野がある」と説明する。

 ひとつは2980円(税込3278円)で使い放題となっているプランで、一般法人のDX推進を手伝うこと。

 もうひとつは、企業との戦略的なパートナーシップにより、5G時代にあった新しいビジネスを作り上げていくことだ。

展示ブースでは、企業とのパートナーシップの例として、楽天モバイルの回線を使った翻訳機の「ポケトーク」を展示

 そして最後が、自治体が抱える少子高齢化など、さまざまな社会問題を自治体と協力しながら解決していくこと。この3つめの事例として、取り上げられたのが岡山県備前市で行われている「スマート自治体戦略」。

 特別講演では備前市長の𠮷村武司氏も登壇し、楽天グループの鈴木氏と対談形式で、備前市スマート自治体戦略について説明が行われた。

備前市長 𠮷村武司氏

備前市をバックアップする楽天モバイル

 実は備前市は以前からITの導入に積極的な自治体。GIGAスクール構想がスタートするよりも前から、市内の生徒に対してタブレットを配布したり、99%以上の市民が光ファイバーによるインターネット接続ができるよう、NTTと交渉してエリアを広げるといった取り組みをしている。

 そういった取り組みをさらに一歩すすめた「備前市スマート自治体戦略」では、子育てや介護、住民票や粗大ゴミ処理といった自治体での手続を24時間365日いつでも受けられることを目指している。

 ここで重要となってくるのが、市民が使用するスマートフォン。𠮷村市長は「みんながスマートフォンを持ち、そのスマートフォンからいろんなことができる。 ポケットに入る市役所 を目指している」と話している。

 しかし、市のDX化を進めていくにあたり、高齢者の多くがスマートフォンを持っていないという課題があった。

備前市では「備前市スマート自治体戦略」を推進中

 そこで備前市では、スマートフォン貸与事業をスタート。備前市に住民票がある1才以上の市民に対して、端末(AQUOS wish)1500台(2023年9月末時点)を通信料(5GB/テザリング不可)も含めて無償で提供している。

 このスマートフォン貸与事業をバックアップしているのが楽天モバイルだ。楽天モバイルの場合、 専用アプリの「Rakuten Link Office」を使えば、通話やSMSも無料 で利用できる(※一部対象外番号あり。アプリ未使用時30秒22円)。

市民に対してスマートフォンの端末を無料で提供

 𠮷村市長は、このスマートフォン貸与事業を5月に始めてから「毎日のように市民から問い合わせがある」と言うほど好評となっており、事業を始める際にあたっては「どのぐらいの予算がいるのか」と心配していたとのこと。

 そこで楽天モバイルは備前市にあったプランを提供。楽天モバイル法人プランを導入したことにより、1回線あたりの導入コストを抑えることができた。

 さらに、スマホ初心者や子ども向けのフィルタリング機能なども提供。 市民が安心安全にスマートフォンを使える環境構築に協力 している。

楽天モバイルの支援体制

ヘルスケアサービスとイベントの連携も

 さらに鈴木氏は、スマホをより活用してもらう取り組みとして、備前市が開催している「びぜんウオークラリー」と楽天グループの提供する「楽天ヘルスケア」との連携も発表。びぜんウオークラリーでは、街歩きで魅力を再発見してもらうイベントだが、これと楽天ヘルスケアを組み合わせることで、イベントのDX化を促進するだけでなく、参加者の健康状態などがチェックできるようになるとのこと。

 鈴木氏は「将来的には参加した市民の健康状態を行政側が把握することによって、今後の医療施策に活用できるのでは」と話している。

「びぜんウオークラリー」と「楽天ヘルスケア」を連携

 𠮷村市長は「市役所もこれから対応できるデジタル人材を職員として確保し、また育成をしていかなければと思っている」とさらにDXを推進していくと宣言。

 これに対して鈴木氏は「𠮷村市長のビジョンの実現のために、これからもぜひ協力していきたい。今後の日本の地域、都市のあるべき姿を一緒につくっていければ」と話しており、 自治体と企業の連携が日本全体のDXを進めていくポイント となることをあらためて確認していた。

楽天グループが地域の盛り上げに提供するソリューション

 講演のなかで、鈴木氏は1997年の楽天創業時の話を踏まえつつ、今年で26年目となる楽天グループの地域との関わりについて、「地域の皆さんに、楽天のECサイトに出店をしていただくというところから始まっている会社。楽天の創業は地域の皆さんの協力と認定によって支えられている」と話している。 地域経済の活性化なくして、日本経済の復活はない というわけだ。

地域の店舗を元気にしたいというのが楽天創業時からの想い
楽天グループの強み

 そのうえで、楽天の強みとして鈴木氏は「 1億以上の楽天IDを保有している 」ことを挙げる。

 さらにショッピングだけでなく、「トラベルや銀行、証券、保険、モバイル・通信も含めてたくさんのサービスを提供している」(鈴木氏)こともアドバンテージ。これらのサービスで横断的な分析ができることで、鈴木氏は「アイデアを持った方にさまざまなサービスを利用いただける」と力強く語る。

 鈴木氏が一例とした「ふるさと納税」では、寄附をしたユーザーに対して、その地区の観光の案内をするといったアプローチができる。京都府以外の人が京都の宿泊施設に、何人そしてどういう人が泊まったか(居住エリアやライフステージなど個人を特定しない)などのデータを可視化できる。

 そういったデータを自治体職員向けに提供しているのが、自治体向けデータ分析ツール「RakuDash」(ラクダッシュ)。

 「RakuDash」のデータ利活用を超実践的に学ぶワークショップ「RakuDemy」(ラクデミー)も提供している。また、データ利活用の事例を含む自治体との連携内容などは、情報ポータルサイトの「地域創生ポータルサイト」(WEBサイト)にて紹介している。

 また楽天は、さまざまな課題を自治体と共に解決するべく、日本各地47の自治体と包括連携協定を締結している。

地域DX推進のための自治体向けデータ分析ツール「RakuDash」(ラクダッシュ)およびデータ利活用ワークショップ「RakuDemy」
日本各地47の自治体と包括連携協定を締結

楽天ペイメント

 地域を盛り上げる楽天グループの事業のひとつはキャッシュレスサービスを提供している楽天ペイメント。

楽天ペイメント展示コーナー

 楽天ペイメントは主にIC型電子マネー「楽天Edy」と「楽天ペイ(アプリ決済)」をラインアップしており、「楽天Edy」は高齢層で、「楽天ペイ(アプリ決済)」は中若年層での利用が多い。

 たとえば楽天ペイメントが対応する「自治体マイナポイント」は、マイナンバーカードを取得した人に、地方自治体がさまざまな施策を通して、キャッシュレスのサービス決済などで使えるポイントなどが付与される。こうした状況で、幅広い年齢層に対応している楽天ペイメントのサービスは、マイナンバーカードの普及を促進するタイミングで、迅速かつ効果的に給付などを実現できるメリットがある。

「楽天Edy」と「楽天ペイ(アプリ決済)」の2つのサービスで、幅広い年齢層にアプローチできるのが強み
自治体のキャッシュレス化を促進させる手伝いをする楽天ペイメント

楽天トラベル

 もうひとつ、地域の創生・共創としてピックアップされるのが「楽天トラベル」。とくに企業、自治体向けに楽天トラベルが提供しているのが、初期導入費がかからない 総合出張管理サービス「Racco」 だ。

 一見すると「楽天トラベル」のような使い勝手で出張先への移動・宿泊施設を手配できるところ、代理検索サービスや団体の手配など複雑なニーズにも応えられるほか、出張者の立て替え精算をなくして、企業や自治体にまとめて一括請求できる。

展示ブースではRaccoのダッシュボードを実際に見せながら、来場者へ解説していた

 つまり、経費精算に関する業務工数が効果的に削減でき一例として、導入企業のなかには、 間接コストを年間で約156万円も削減 できたところもある。「Racco」の管理画面からは、リアルタイムで職員や関係者の宿泊状況も把握できる。予約プランの内容に係わる不正抑止にも効果がある。

Raccoの導入によって、大幅に経費を削減できるとのこと

 「楽天市場」というサービスから拡大してきた楽天グループでは、金融・旅行などに加え、今や、携帯電話サービスまで提供している。こうした幅の広いサービスラインアップは、一般のユーザーだけではなく、地方自治体にとっても心強い味方。はからずも京都の地で、いかに楽天のサービス群が地域の盛り上げに役目を果たせるか、その地力が示された格好だ。